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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十二章 再来のスタンピード

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一週間前

 ハイセは、クレアと一緒に城下町を歩いていた。


「いやー、今日も大変な依頼でした!!」

「……帰ってメシだ」

「はい!!」


 今日は二人で依頼を受け、当然のごとく達成……そして、冒険者ギルドに報告した帰りである。

 クレアはウキウキしていた。それもそのはず、なんとクレアにS級昇格の話が持ち上がったのだ。その話をガイストから聞き、こうして喜んでいるのである。

 クレアは、ウキウキしながらハイセの腕を取る。


「えへへ、師匠~!! 私もS級ですって!! 二つ名が付きますー」

「お前だけじゃなく、プレセアもだぞ」

「あ、そうでした。えへへ」


 嬉しいのか、ハイセの腕にギューッと抱き着く。

 胸を押し当て、猫のように甘えるクレア……最近、スキンシップが激しい。ハイセはため息を吐き、クレアの腕を外した。


「師匠、二つ名って誰が決めるんですか?」

「……自分で決めることもできるし、冒険者ギルドが決めることもある。今回の場合、プレセアはアイビスさんからの推薦もあって、アイビスさんが『草麗の妖精(ティターニア)』っていう二つ名を提出したそうだ」

「へ~……私は?」

「お前は、功績を積み重ねての昇格だ。特に推薦者もいないし、自分で考えるか、ギルドに丸投げしろ」

「じゃあ師匠が」

「パス」

「まだ最後まで言ってないのにぃ」

 

 ムスッとするクレア。すると、思い出したように言う。


「そう言えば私、周りから『青藍の双剣姫(ロスヴァイセ)』って呼ばれてたっけ……カッコいいし、それにしちゃおうかなー」

「好きにしろ」

「師匠は? あ~……自分でカッコいいの決める感じじゃないし、ギルドに丸投げした感じですか?」

「……」


 ハイセは答えず、そのままスタスタ歩くのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 夕飯までは少し早いので、バー『ブラッドスターク』で軽く飲んで帰ることにした。

 ハイセ、クレアが店に入ると、ヘルミネの顔色がやや悪い。


「……いらっしゃい。二人とも」

「……お任せで軽く」

「私も師匠と同じで」

「はぁい。ふふ、お仕事終わりかな?」

「はい!! まだ晩ごはんまで早いので、一杯飲んで帰ろうかと」

「じゃあ、シムーンちゃんの夕飯が待ってるのね。ふふ、おつまみは一品だけで、お酒も軽くするわね……ふう」


 ヘルミネの顔色が優れないことに、ハイセもクレアも気が付いた。

 クレアが、心配そうに言う。


「あの、ヘルミネさん……体調、悪いんですか?」

「え? あ、ああ……少しだけね。大丈夫、問題ないわ」

「うう、心配です。ね、師匠」

「……無理、しないでいいですよ」

「ううん、お客様にはしっかりおもてなししないとね。少し待ってて」


 ヘルミネはカクテルの準備をする。

 少し心配だったが、クレアは話題を変えた。


「そうだ師匠。あの~……S級冒険者になると、王族と一緒に依頼を受けるんですよね?」

「ああ、そういう風習がある」

「それ、師匠も一緒に……ダメですか?」

「お前な、もうS級になるんだ。いつまでも俺のこと頼りにするな」

「でもでも、私……師匠がいいです。師匠が大好きだから、頼りにしちゃうんです」

「…………」


 天然なのか、本気なのか……まるで愛の告白。恐ろしいのは、クレアが照れもせず、本気の言葉を当然のように言っている。

 ハイセは何も言わず、聞いていたヘルミネも驚いていた。

 妹……以前もそんな考えがよぎったが、ハイセもつい甘やかしてしまう。


「……クレス殿下と二人きりって可能性もあるしな。どうしても無理だったら言え」

「師匠!! やったあ、ありがとうございますー!!」

「だから、くっつくなっての」


 ハイセの腕を取り甘えるクレア。実力ではS級に相応しいが……やはり、まだ早いのではとハイセは思ってしまうのだった。

 そして、二人の前におつまみとカクテルが出され、それぞれ飲む。


「あ、そうだ。師匠、S級になったらお祝いしてください!!」

「……は?」

「それと、プレゼントも欲しいです!! 一日甘えてもいいですか?」

「もう甘えてるだろうが」

「じゃあプレゼント!!」

「…………はあ」


 図々しいというか、不思議なことにハイセは嫌な気がしなかった。

 めんどうなので「S級になったらな」と言い、カクテルを飲む……すると、店のドアが開いた。


「あら」


 入ってきたのはプレセアだった。

 ヘルミネに軽く手を振り、ハイセの隣に座り、「おまかせで」と注文する。

 

「あと一週間。私、準備できたから」


 座るなり、プレセアが言う。

 それは、スタンピード戦、そして魔界へ行く準備が整ったという意味だった。

 ハイセはプレセアをチラッと見て言う。


「お前のことは心配していない。ヒジリは?」

「相変わらず討伐依頼ばかり。準備なんて何もしてないわ」

「……手、貸してやってくれ」

「ええ。そのつもり」

「プレセアさん!! S級昇格ですね!! やりましたね!!」

「声がデカいわ」

「声がデカい」


 二人に注意され、クレアは慌てて口をつぐむ……そして小声で言う。


「プレセアさん、一緒にS級になれますね。えへへ、うれしいです」

「そうね」

「あの、王族からの依頼ってあるんですけど、プレセアさん、大丈夫ですか?」

「何が?」

「その、第一王子のクレス様と、王女のミュアネ様と一緒に依頼を受けるんですけど」

「別に、問題ないわ。あなたは?」

「私は無理なので、師匠に同行をお願いしました」

「……本当に、クレアに甘いわね」

「うるせ。自覚はあるよ」


 すると、ヘルミネがプレセアの前にお酒とおつまみを置く。

 プレセアは「ありがと」と言い、ヘルミネを見て……目を細めた。


「……ヘルミネ」

「ん? なに、プレセアちゃん」

「……ちょっといい?」

「え? え?」


 プレセアは立ち上がりカウンター内へ。ヘルミネの額に手を当て、腕を取り、脈を取り……人差し指を淡く発光させると、ヘルミネの心臓付近に触れた。

 そして、驚いたように顔を上げ、ヘルミネを見る。

 一連の行動をハイセ、クレアはジッと見ていた。


「ヘルミネ、あなた……」

「ど、どうしたの?」

「体調、悪いわね? 食欲もないし、ずっとだるいでしょ?」

「え、ええ……シグが家のことをやってくれるから、せめてお仕事だけでもって思って」

「しばらく休業するべきね。シグムントはいる?」

「ええ、二階の自宅にいるけど」

「大至急……ううん、私が呼ぶわ。クレア、お店の看板下げてきて」

「は、はい」

「ちょ、ぷ、プレセアちゃん?」


 プレセアが指を鳴らすと、二階からドタドタと音がして、シグムントが駆け下りてきた。

 エプロン姿で、頭に手ぬぐいを巻いている。


「どうしたどうした!! そこのエルフさん、ヘルミネの体調不良とは何事か!!」


 精霊で呼んだのだろう。シグムントはヘルミネの傍へ。

 クレアが看板を下げて戻ってくると同時に、プレセアが言った。


「すぐ医者に行った方がいいわ。ヘルミネ……あなた、妊娠してるわよ」

「「…………え」」

「ににに、妊娠!! しし、師匠、マジですか!?」

「……俺に聞くな」


 たっぷり数秒沈黙し、ヘルミネがお腹を押さえる。


「に、妊娠って……わ、私が?」

「覚えはあるんでしょ? こう見えて私、医者の資格もあるし、薬師でもあるのよ」

「……へ、ヘルミネが、妊娠!! お、オレの子供……!!」

「し、シグ……」

「はは、ははは!! やったぞ!! オレとヘルミネの子供だ!! やったあああああ!! って!! 嬉しいけどそれどころじゃない!! へへ、ヘルミネ!! 店じまい!! べ、ベッドへ!! うおおおおおおおどうすれば!!」

「落ち着きなさい。ヘルミネは私が見てるから、そうね……私の知り合いにエルフの医師がいるわ。家まで精霊に案内させるから呼んできなさい。その医師、何度も出産に立ち会ったことのあるベテランだから。私の紹介状を持っていけばいいわ」

「わわ、わかったあ!! うおおおおおおおおお精霊ェェェェ!!」


 プレセアが指を鳴らすと、淡い光がシグムントを包み込む。

 シグムントは店を飛び出した。


「クレア、そこの水差しを持って一緒に来て。ハイセ、あなたはここで待機してて」

「わかりました!!」

「……まあ、いるだけなら」

「ごめんなさい。その、迷惑かけるわね」

「何言ってるんですか!! おめでたいです。ヘルミネさん、おめでとうございます!!」

「……うん。ありがとう」

「そういうこと。さ、二階へ」


 三人は店の奥へ消えた。

 残されたハイセは座り、残った酒を飲む。


「……子供、か」


 それから十分もしないうちに、エルフの女医を抱えてダッシュで戻って来たシグムントが、ダッシュで二階へ駆け上るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
「でもでも、私……師匠がいいです。師匠が大好きだから、頼りにしちゃうんです」 こんなこという冒険者はS級とは言えないのでは?
[一言] ハイセとエクリプスの絡みが少ないのでもっと増えると良いな。過去の悪行の数々をなあなあで済ますセイクリッドとの絡みはいりません。
[一言] エクリプス、プレセア、ヒジリ、クレアはハイセの元に集っているのだから、ハイセにはセイクリッドに対抗するためにもこのメンバーでパーティーを組んで欲しい。 セイクリッドってメンバーの性格悪いから…
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