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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十一章 魔界への道

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ハイセの思うこと

 ハイセが宿に戻ると、エクリプスが一階のソファに座り、新聞を読んでいた。

 そして、ハイセを見て新聞を閉じ、華のような微笑を浮かべる。


「おかえりなさい」

「ああ」


 それだけしか言わなかった。

 エクリプスはそれでも満足したのか、ハイセに言う。


「ね、少しお話しない? あなたの旅……聞きたいわ」

「特に面白いことはないぞ。五大クランのマスターに会って、話を聞いただけだ。観光とか、遊んだ話ならクレアから聞け」

「そう……こっちはいろいろあったわ。私、サーシャに挑まれたの」

「……何?」


 と、エクリプスは立たず、ソファに座ったまま。

 仕方なく、ハイセはエクリプスの対面へ。こうして向かい合って座ると、初めて『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』で会った日のことを少しだけ思い出す。

 今は、とても眩しい笑みを浮かべているエクリプス。


「サーシャが、私の強さを知りたいと言ってね……私も運動不足だったから、魔界に行く前に準備運動をしたのよ」

「……戦ったのか」

「ええ。サーシャ本気だった。私は軽い準備運動のつもりだったけど、まさか『禁忌項目(タブーページ)』の一枚を使わされるとは思わなかった。サーシャ……彼女は強いわ」


 禁忌項目が何なのかハイセは知らないが、エクリプスの切り札の一つなのだろう。

 それを使わせただけで、序列二位のエクリプスが、序列四位のサーシャよりも強いことに間違いはない。同時に、ハイセも思う。


「……俺とお前、どのくらい差がある?」

「あなたの方が強いわ。命懸けになれば相打ちに持ち込めるかも……と、昔の私なら思ったでしょうけど、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』を破壊した攻撃は、私の魔法じゃ完全に防御できない……あるんでしょう? あれ以上の攻撃が」

「まあな」

「ふふ。七大冒険者の序列は正しいわね」


 エクリプスがクスっと微笑む。

 そして、やっぱりと思っていると…。


「……少し、身体が鈍ってる」

「え?」


 冒険者として、数多くの魔獣を屠ってきたハイセだが……近頃は物足りなさもあった。

 クロスファルドと摸擬戦をした時、普段より動きが鈍く感じた。

 命を賭けたような、全力の戦いから遠ざかっており、ハイセは強くなっていない。サーシャやヒジリ、エクリプスが強くなるが、ハイセは全く伸びていない。


「……このままじゃ、少しまずいな。エクリプス、カーリープーランの方はどうなってる?」

「魔界行きの準備はできてるそうよ。準備ができたら、東の『アズマ』まで来て欲しいと言ってたわ」

「アズマ? 魔界に最も近い国か……?」

「ええ。転移魔法陣は、そこに張ってあるみたい。どうやら、魔界行きの魔法は、私たちが思っている以上に万能じゃなさそうね」

「仕方ないか。まだ時間に余裕があるなら……俺も、少し追い込む必要がある」

「……何をするの?」


 ハイセは拳を見つめ、強く握った。


「俺も、一度全力を出したい。出したことのない力を出して、万全にしたい」


 その勢いに、エクリプスは息を飲むのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。ハイセは、新しくなった宿のカフェスペースで夕食を取っていた。


「ん~!! なんだか新鮮な感じですね、師匠」

「まあな」

「なんだか、料理もおいしく感じます」


 ハイセ、クレア、リネットのテーブル。本来なら一人ひとつのテーブルなのだが、ハイセと一緒に食べたいとクレア、リネットが自分の机をくっつけて食べていた。

 そして、少し離れたところにエクリプス、そしてエアリア。


「なーなーエクリプス、食べたらお風呂入るぞ!!」

「結構よ」

「即答!! あんた、うちのこと嫌いなのかー!!」

「ええ」

「そ、即答……なんだか悲しいぞ」


 エアリアは、エクリプスにかまいぞんざいな扱いを受けていた。

 カフェは夜営業はしていない。すると、妙にフリフリしたメイド服を着たラプラスが、ワイン片手にやって来た。


「ダークストーカー様。ワインはいかがですか」

「お前、なんだその恰好」

「ふふふ。当店の制服です。神は言いました……『追加料金を支払っても今日中に仕上げてもらう価値はあった』と」

「まだ手伝い頼んで半日も経ってないだろうが。どんだけ無茶させたんだ」


 呆れるハイセ。すると同じメイド服を着たシムーンが、お皿を下げておつまみを置いた。


「宿泊者様には、お酒のご提供もしますね。おじいちゃんにいろいろ聞いて、ワインやブランデーを仕入れたんです」

「……お前、その服」

「えへへ。なんだか可愛いですよね。エプロンもあるので、このまま調理もできます」

「そ、そうか……気に入ったならいい」

「ふふふ。ダークストーカー様も大喜び……と。あ、リネットさんの分もあるので」

「えええ!?」


 シムーンが嬉しそうだったので、ハイセはもう気にしないことにした。

 すると、エクリプスとエアリアがハイセの前へ座る。


「お酒も飲めるなら、一緒に呑みましょう」

「あたいも飲むぞ!! ふふん、ハイセと飲むのは久しぶりなのだ!!」

「あ!! 私も飲みます!! リネット、宿のおじいさんを呼んでください。飲み会です!!」

「はーい」

「おい、勝手に……ああもう、なんでこうも騒がしいんだ」


 結局……この日は、帰って早々、帰還祝いということで飲むことになるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ハイセは誰より早く朝食を食べに一階へ。するとリネットが、制服を着てテーブルを拭いていた。


「あ、師匠……あ」


 と、制服が恥ずかしいのか、きゅっと胸元を押さえる。

 ハイセは気にしないように座ると、テーブルにあった新聞を読み始めた。


「もう、手伝いしてるのか?」

「はい。ラプラスさんが朝食後に来るので、それまでは宿泊者さんの朝食手伝いで……ラプラスさんが来たら、イーサンくんと宿のお掃除をします」

「そうか。頑張れよ」

「はい。その……師匠、今日は冒険者のお仕事ですか?」

「いや、メシ食ったらすぐにガイストさんのところに行く。やることがまたできたからな」

 

 魔界に行く前に、一度全力で『能力』を行使する。

 リネットは言う。


「あの、私の修行も、見ていただけたら……」

「ああ、帰ったら見る。悪いな、構ってやれなくて」

「いえ。師匠、頑張ってくださいね」


 リネットは奥へ。そして、朝食のプレートを運んできた。

 ハイセは食事を始め、リネットが運んできた紅茶を味わい、いい気分で宿を出るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] ノリノリでカフェで働くラプラスが面白い。なんかメイド喫茶みたいなカフェにして儲けようとしそう。 [気になる点] エクリプスの『禁忌項目』がどんな物なのかは解らないがこれを含めて色々と使用し…
[一言] ハイセの全力「無差別かつ大規模破壊」をぶつけられる対象・・・どこらへんに行くつもりやら・・・南? ちゃんと同行者たちにも見せとく必要があるけど近づけないような
[良い点] エクリプスvsサーシャ戦は作中でも屈指の戦闘シーンだったからカットされたのは正直残念 でもエクリプスが勝ったから満足です!! どっちが勝ってもおかしくない結末じゃなくてエクリプスは全力を出…
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