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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十一章 魔界への道

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ノブナガを知る旅⑪/十一人の冒険者

「───……というわけで、十一人のメンバーは揃ったな」


 クラン『セイクリッド』の会議室にて、タイクーンは眼鏡をクイッと上げる。最近新調したのか、眼鏡のデザインが少し変わっていた。

 だが、誰も気付いていないのかそのことには触れない。

 レイノルドは、なぜか縮こまっているエアリアを見る。


「オレ、サーシャ、タイクーンにピアソラ、ロビンで五人。ハイセにエクリプス、プレセア、ヒジリ、クレアちゃんで五人。んでそこの序列七位、エアロ・スミスちゃん……なあ、なんで怯えてんだ?」

「お、怯えてないし!! うー……ちょっとサーシャとエクリプスのこと『スイカ四つ』って言っただけなのに、めちゃくちゃキレられたのだ」

「す、スイカ? ああ……」


 レイノルドは察したが、口には出さない。

 どうやら、サーシャとエクリプスにお説教されたのか、二人が怖いようだ。

 だが、こうして会議に出る以上は、魔界行きに賛同したということ。

 エアリアは、平べったい胸を張る。


「フン。魔界だろーと、あたいに飛べない空はない!!」

「ふ……上空から地上を見下ろすだけで、かなりの情報が得られる。序列七位エアロ・スミスの加入で、ボクたち十一人の冒険者も安定したチームになるだろう」

「ふふん。そこのおしゃれメガネ、わかってるじゃん!!」


 エアリアは、タイクーンにビシッと指を差してニカっと笑う。

 おしゃれ眼鏡に気分をよくしたのか、タイクーンは「ふっ」とほほ笑んだ。

 タイクーンは咳払いし、会議場にあるホワイドボードの前へ。


「では、現時点での情報を整理……魔界についておさらいしておこう」

「ねーねーピアソラ、タイクーン楽しそうだね」

「まあ、こういう男ですからね」


 ロビンとピアソラがヒソヒソ話していたが、タイクーンは聞いていないフリをした。


 ◇◇◇◇◇◇


 魔界。

 人間界から遥か遠く、海を隔てた先にある大陸。

 主に生活しているのは魔族。人間とは違う『スキル』を持ち、スキルの規模は人間の『能力』を遥かに上回る。

 

 主要国は三つ。

 工業国メガラニカ、農業国パシフィス、産業国レムリア。

 魔界三大国家と呼ばれ、それぞれの国を『魔王』が統治している。


 そして、それら三つの国、三つの魔王を束ねる魔界の最高権力者、大魔王。

 その名は『カミシロ・レオンハルト・ヒデヨシ』。

 そこまで話し、タイクーンは言う。


「我々冒険者の歴史は長い。だが、一つだけ変わらず、忘れられる事のない存在がある……それは、伝説の冒険者チーム『ヒノマルヤマト』だ。人間、エルフ、ドワーフ、サキュバス、竜人で構成された、それぞれの種族で最強の五人のチーム。そして、今はそれぞれがクランを率いている。五大クランと言われているが……こんな言い方はしたくないが、我々『セイクリッド』とは歴史の重みも経験も桁違い。四大クラン、プラスワンとの言い方のが正しい気もする」


 タイクーンは苦笑する。だが、誰も笑わない。

 クラン『セイクリッド』の面々は、五大クランと言われてはいるが、同格など思ったことがない。


「そして、『ヒノマルヤマト』を率いた人間……『カミシロ・レオンハルト・ノブナガ』だったか。不思議なことに、彼に関する記述が全くない。一つだけわかっているのは、ハイセと同じ『能力』を持ち、仲間の中でも最強だったということか」

「そうだ。そして今、ハイセはノブナガのことを知るために、四大クランを回っている」


 サーシャが付け足すと、タイクーンは頷いた。


「カミシロ・レオンハルトという苗字……魔界という地にいる『大魔王』と同じ名だ。ノブナガのことを知ることで、ヒデヨシのことを理解する材料にはなるかもしれないな」

「はは。ユグドラで大自然の恵みを、ディザーラでオアシスの恵み、『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』で快楽を満喫し、聖十字アドラメルク神国で歴史文学探求……行く先々で遊びまくれるな。しかもあいつ、女の子いっぱい連れてったんだろ? いいねえ」


 と、レイノルドが茶化した瞬間、サーシャがニコニコしながら言う。


「レイノルド。ハイセはそんな不埒な男ではないぞ?」

「お、おう……すみませんでした」

「ふふ、あなたって面白いのね。正妻を前にそんなことを言うなんて……凍ってみる?」

「す、すみませんでした」


 レイノルドはサーシャとエクリプスに頭を下げた……かなり怖いと感じていた。


「正妻って、エクリプスはハイセとケッコンするんだっけ」

「おー、ケッコンか!! おい、ケッコン式するなら呼べよ、あたい、美味いもんいっぱい食べるぞ!!」


 ロビンが言い、エアリアはウキウキしながらエクリプスへ。

 エクリプスは機嫌をよくしたのか「もちろん」と笑顔で答えた。

 結婚……そう聞き、サーシャは少しだけ考え込む。だが、タイクーンが話を変えた。


「そんなことはどうでもいい。次に、現在の準備について確認だ。それぞれ個人の準備はもちろんだが、共有のアイテムボックス……ああ、時間停止型だな。これをいくつか用意したい。食材を数年分、全てに置いて不測の事態を想定した物資の選定をボクがした。リストを見て確認し、足りない物があれば……」


 会議は二時間ほど続き、エアリアが「メシ食いたい」と言うので休憩となった。


 ◇◇◇◇◇◇


 クラン『セイクリッド』内にある食堂で、サーシャはエクリプスと食事をしていた。

 互いに物凄い美少女なので、周囲の目を引く。だが、二人とも気にしていない。

 エクリプスは、紅茶を飲みながら聞いてみた。


「サーシャ。私はもう自分の人生をどう歩むか決めたわ。S級冒険者として、一人の女として歩む道……あなたは決めた?」

「な、なんだいきなり」

「別に……ただの独り言、かな」

「私に聞く時点で、独り言ではないだろう……」


 サーシャは、大盛ステーキを食べ終え、口元を拭う。

 ちなみにエクリプスも同じ大盛ステーキだった。


「ここ、いいお肉を使っているわね。うちの『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』よりもいい味……料理人の腕もいいわ」

「ふ、肉にはこだわっている。クランの食堂は一般開放もしているし、外から食事だけの客も多い」

「それ、お肉もだけど、あなたに会えるかもって希望もあるんじゃない?」

「私? 私に会いたいのなら、普通に言えばいい。最近は所属チームも減り、自由な時間も増えたしな。前みたいに、書類仕事でてんやわんやということはない。訓練にも多く時間が割ける……しっかり鍛えないと、抜かれてしまうからな」


 誰に抜かれるか、それはもちろん三人目のソードマスターのことだ。

 それに、サーシャにも追いつきたい人がいる。


「エクリプス。時間があるなら、頼みがある」

「何?」

「……S級冒険者序列二位『聖典魔卿(アヴェスター・ワン)』としてのお前に頼みだ」


 スッとサーシャの気配が変わる。だが、エクリプスは変わらない。


「……一度、全力で挑んでみたい。エクリプス……お前の強さを、まだ知らない」


 それは、挑戦状だった。

 エクリプスは序列二位。明晰な頭脳、全ての魔法を使いこなす事はもう知っているが、戦いでの強さは知らない。

 間違いなく、強いはずなのだ。もしかしたらヒジリ、そして自分よりも。

 一人での訓練ではできないことを、エクリプスとならできるかもしれない。

 エクリプスはカップを置いた。


「……いいわ。ふふ、私自身で戦うなんて何年ぶりかしら」

「……よし。では、見届け人はガイストさんにお願いするか。明日、冒険者ギルドへ行こう」

「ええ、いいわ」


 互いに見つめ合う二人。

 S級冒険者序列二位『聖典魔卿(アヴェスター・ワン)』と序列四位『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』の決闘が、始まろうとしていた。


「んー? あはは!! サーシャにエクリプス、でっかい肉食ったのか!! オマエらそんなのばかり食ってるから、チチがでっかくなるんだなー!!」


 だが、突如として現れたエアリアによって、その空気はブチ壊されるのだった。

 決闘の前にやることができた……と、二人はエアリアに向かって微笑むのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりのエクリプス登場もう正ヒロイン化してる感じが良い。 [気になる点] 毎回クラン『セイクリッド』の内情が出るたびに疑問なんだけど設立僅か一年であっという間に800ものチームが加入して…
[一言] エクリプスの恋愛の攻勢。ハイセが許容するギリギリを攻める。 魔界行きのメンバーが決まったけど、この旅でハイセとセイクリッドの連携が取れる様になって、心の距離が縮んでハイセがセイクリッドに戻る…
[良い点] エアリアのキャラが立ってきて面白くなってきた 最初はまたこういうキャラか…とかヒジリのぱちもんって印象だったし [気になる点] 決闘で思い出したけどハイセって神の箱庭の報酬代わりにヒジリ…
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