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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十一章 魔界への道

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ノブナガを知る旅⑩/メリーアベル

 クラン『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』、第一区画『クラン本部』にやってきたハイセは、クランの本拠地でもあり『案内所』でもある受付にやってきた。

 受付は、まるで異世界のような、幻想的な建物だ。レンガ造りなのだが、カラフルなレンガが積まれ、不思議な建築物と化した建物となっている。

 だがハイセは気にすることなく、大きな入口に入り、受付内を見る。


「…………」


 一般的なクランの受付は、冒険者ギルドと似るものだが……この『楽園』は違う。

 もてなし八割、受付二割と言えばいいのか、土産物屋、飲食店が並び、カラフルな服を着た女性たちが給仕をしている。

 一応、受付カウンターはあった。やはり、カラフルな服を着た女性が座っている。

 とりあえず、自身の身分を明かし、クランマスターであるメリーアベルとの面会を申請しようと考えた……序列一位の肩書など興味はないが、こういう時は便利だとハイセは思った。

 そして、受付カウンターに近づこうとした時だった。


「ウェルカ~ム!! 久しぶり、ハイセく~んっ!!」

「ッ!?」


 いきなり、背中に抱き着かれた。

 柔らかな胸が押し付けられ、ハイセは思わず銃を抜こうとしてしまう……が、柔らかな感触はすぐに離れ、くるりとハイセの前に来た。


「お久しぶり~、まさか楽園にいるなんて、遊びに来たのかな~?」

「め、メリーアベルさん……」


 伝説の冒険者チーム『ヒノマルヤマト』のメンバーにして、五大クランの一つ『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』のクランマスター、メリーアベル。

 挨拶はしたことがあるが、こうして一対一で会話をするのは初めてだった。


「ふふ、わたしに何か用事かな?」

「はい。聞きたいことがあって来ました」

「ふむふむ……うん、いいわ。お話する? わたしのお部屋に行こっか♪」


 メリーアベルは妖艶な笑みを浮かべ、ハイセの腕を掴んで歩き出すのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 メリーアベルの自室は、ハイセのいた『受付』の裏から少し歩いた離れにあった。

 大きな塀に囲まれた立派な庭で、大きな池には魚が泳いでいる。

 意外なことに、離れに建つ家は、ユグドラのアイビスがいた家と同じ構造で、タタミという草のニオイがする床になっていた。

 そこに、座布団を敷き、ハイセとメリーアベルは向かい合う。


「ふふ、ユグドラみたい、って思ったでしょ? このおうち、アイビスちゃんが作ってくれたのよ」

「へえ……なんだか、落ち着きますね」

「そうでしょ? ノブナガちゃんも、同じこと言ってくれたの」

 

 ノブナガ。

 その名前を聞き、ハイセは反応する。


「今回、用事があって来たのは……そのノブナガのことです」

「……ノブナガちゃんの?」


 ハイセは、アイビスやバルガンにしたのと同じ話をする。

 魔界に渡ったノブナガ。そして、カミシロ・レオンハルト・ヒデヨシという魔界の大魔王のこと。

 話を終え、ハイセは日記を出して言う。


「俺は、魔界に行く前に知りたいんです。この日記の持ち主、俺と同じ『能力』を持つ者が、どういう人間だったのか……魔界行きに、ネクロファンタジア・マウンテンの攻略に役立つとかじゃない。魔界に行って魔界の町に入るかもしれない以上、知っておきたいんです」

「……そっかあ」


 メリーアベルは、少し悲しそうな顔をしていた。


「ノブナガちゃん、わたしやアイビスちゃんのことすっごく愛してくれてね……来る者拒まず!! って感じのヒトだったねぇ。わたしが長い人生で本気で愛した人……」

「…………」


 愛。

 ハイセには、よくわからない感情だった。

 だが、ハイセは聞く。


「どういう人物だったか……って言えば、愛の深い人だったわ」

「……愛」

「ええ。あの人の周りでは、みんな笑顔だった。バルガンですら、口元を歪めて笑うくらい……ノブナガと過ごした時間は長くないけど、あの時間はわたしの人生の中で、一番楽しい時間」

「……愛か」

「わかる? ハイセくんは、誰かを愛したこと、ある?」

「…………」


 わからない。

 愛。最強を目指すのに、必要なのかどうかも。


「俺は、愛とかよくわかりません」

「ノブナガは、誰よりも愛を理解していたわ。魔族……こっちではいい話を聞かないけど、ノブナガが魔界に渡って最後を迎えたのならきっと、愛にあふれたところなのでしょうねえ……」

「…………」


 そうとは思えないハイセ。

 ノブナガは確かに素晴らしい人だったのだろう。だが、その子孫が素晴らしいのかと聞かれれば……『視なければわからない』とハイセは答える。

 カーリープーランや、禁忌六迷宮で出会った魔族は、友好的とはいえない。

 魔族にも国があり、生活がある。そこに人間であるハイセたちが向かえばどうなるのか。


「……メリーアベルさんの知るノブナガは『愛』に、バルガンさんは『強さ』、アイビスさんは『馬鹿な男』……それぞれ違うみたいですけど、悪い奴じゃないってことはわかりました」

「そうね。これだけは言える……もしノブナガが生きていたら、ハイセくんとも仲良くやれたと思うわ」


 それには同意できないハイセ。正直、あまり関わりたくない男だとは思った。

 知れば知るほど、ノブナガは偉大で、自分には合わないと感じるハイセ。


「クロスファルドのところにも行くの?」

「ええ。聖十字アドラメルク神国……少し遠いけど、行きます」

「それなら、数日くれない? わたしの方で馬車を用意してあげる」

「え? いいんですか?」

「ええ。ハイセくん、それまでわたしのクランで、ゆっくり休んでいってね」

「……じゃあ、お世話になります」


 こうして、ハイセはメリーアベルの言葉に甘えることにした。

 数日間の休暇……町で遊ぶつもりはなかったが、ノブナガのことを整理するのにぴったりの時間になると、ハイセは考えるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「日記」が妙に大人しくしてる [一言] ハイセはメリーアベルと挨拶交わしてたんですね。 おめでとうパーティーかな? クロスファルドはパーティーで挨拶できなかったって言ってたけど。 アイ…
[一言] ノブナガはサーシャと同じご都合主義の固まりにしか思えないけど、人生を楽しんでいそう。ハイセもそういう所は見習ってもう少し人生を楽しめば良いと思う。
[良い点] 少しずつではあるがノブナガの実像が解ってきた事 [気になる点] この話はハイセにハーレムでも問題無いって思わせる為の旅でもあるのかな?正直良く解らん章でもある。 [一言] この物語は章単体…
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