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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十一章 魔界への道

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ノブナガを知る旅⑨/歓楽街、再び

 ディザーラ王国を出て数日。

 最初は厳しかった暑さも和らぎ、馬車内で汗だくになることもなくなった。

 クレアは、馬車内で懐かしむように言う。


「以前、『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』に来た時は、アリババ関連で遊ぶ暇なんてなかったし、殺伐としてましたからあんまりよく見てないんですよねー」

「アリババ……キディ様の?」

「はい。でも、私たちが相手をしたのは人間でした。そうだ、そのへんお話しましょう!!」


 クレアは、リネットに『シムーン誘拐事件』の話をする。

 ハイセは窓の外を見ていると、ヒジリがジーっとハイセを見ていた。


「……何だよ」

「べ!! べつに……なんでもないし!!」


 頬を染め、デカい声を出し、首をぐりんと捻ってそっぽ向く。

 ここ数日、ヒジリはあまりしゃべることなく、ハイセをジッと見ては顔を逸らすという奇行を繰り返していた。

 ハイセはプレセアに「こいつどうした?」と聞くが、プレセアは肩を竦める。

 なんとなくラプラスを見ると、「ククク……」と笑っていた。

 数日前、『聖なる知識』とやらを一晩かけてヒジリに教えた日から、こんな感じである。

 ヒジリは「マジで入るのかな……」や「い、痛いってどのくらいかな……」と、ハイセを見ながらブツブツ言っていた。

 とりあえずハイセは無視していたが、どうも気になった。


「おいヒジリ。お前、言いたいことあるなら言え。お前らしくねえな」

「う……べ、べつに」

「……ふーん。あなた、女の子みたいね」

「はぁ!? あ、アタシは女だし!!」

「そ。男に怯える少女みたい(・・・・・・・・・・)に見えたから、驚いただけ」

「……っ」


 頬を染め、何も言い返さずにそっぽ向いた。

 ハイセには理解できないが『重症』だと感じ、めんどくさそうに言う。


「ヒジリ。『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』の第五区画に闘技場がある。以前は参加できなかったが、今回参加したらどうだ」

「……まあ、気が向いたら」


 本気で重症……ハイセは戦いに消極的なヒジリを見て、今夜にでもラプラスに『聖なる知識』について聞いてみるしかないと思った。


 ◇◇◇◇◇◇


 クラン『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』へ到着。

 馬車から降り、徒歩でクラン内へ。


「……わぁぁ」


 リネットは、周囲に釘付けだった。

 キラキラ輝き、クラン内を照らす街灯。

 大きな建物、小さな建物はいろんな形があり、どれも彩りに満ちている。

 いろいろな店があり、いい香りもすればガラス越しに玩具が見える店もある。

 クランからは、いろいろな音楽が聞こえて来たり、人々の楽しそうな声も聞こえてくる。

 楽園……リネットは、別世界に来たように、夢見心地だった。


「宿を確保したら自由にしていい。俺はクランマスターのメリーアベルさんに面会申請してくる」


 ハイセはそう言い、景観も気にならないのか普通に歩き出した。

 すると、クレアがリネットの手を掴む。


「さ、行きましょう!! ふふふ、ここの案内はお任せを。リネット、行きたいところありますか?」

「えと、えと……な、何を見ればいいのか、何をすればいいのか」


 情報量についてこれないのか、リネットはワタワタする。

 リネットの背後から、ラプラスがにゅっと現れた。


「ではでは、とにかく遊びまくりましょう……と、神は言っています」

「あ、あそぶ」

「はい。ナイトプールで泳いだり、世界各国の美味しい物を食べたり、体験型の玩具で身体を動かしたり、博物館で勉強をしたり……ふふふ、実は御者をやって収入を得たのは、ここで遊ぶお小遣いを稼ぐため……と、神は言っています」

「は、はい……」


 リネットは、よくわかっていないようだ。

 ハイセはすでに先を行き、クレアたちは慌てて後を追う。

 ヒジリは、そんなハイセの背中をジッと見ている。そして、プレセアが隣に並んだ。


「あなた、男が怖くなった? 結婚、妻、子供欲しいなんて言ってたけど……ただ知識がなかっただけなのね」

「む……アンタはどうなのよ」

「私はお子様じゃないもの」

「……」

「ちゃんとハイセとの関係、考えた方がいいかもね。口先だけじゃなくて、あなたの将来だもの」

「……」


 ヒジリは何も言えなかった。

 ラプラスの『授業』は、性教育がメインだったが……男を受け入れ、子を産み、育てるという知識がヒジリにはほとんどなく、『ケッコンすれば子供ができる、幸せになれる』くらいしかない。

 ハイセが気になっているから、ハイセとケッコンすればいい。

 考えが甘かった……と、ヒジリはずっと思っていた。


「……ハイセのこと、アタシは好きだし」

「そうね。じゃあ、覚悟はあるの?」

「……ある」

「じゃあ、私は何も言わないわ。モヤモヤしてるなら、闘技場でスッキリしてきたら?」

「…………」


 プレセアはそれだけ言い、ハイセの背を追った。

 ヒジリは、背中を見る。

 プレセアの背中は近く、ハイセの背はやや遠い。

 負けたくない……そう思い、プレセアの隣に並び、胸を張って歩くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』の高級宿を取り、ハイセは出て行った。

 早速、リネット、クレア、ラプラスは宿の外に出る。


「では!! お腹空いたのでお昼を食べましょう!!」

「は、はい、姉弟子。あの~……何を食べますか?」

「神は言いました、『肉!!』と……『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』は、世界各国の料理が食べられると聞きました。まずは飲食店街を回りましょう」


 三人は、第一区画にある『カフェ・ストリート』へ。

 カフェがメインだが、少し道を外れると『飲食店街』もある。三人は並んで歩き、キョロキョロしながら店を見る。


「お肉、お魚、お野菜のニオイ……ん~、スパイス? 辛い系のニオイです!!」

「おお、あちらはお鍋ですね。あっちは煮物? よくわかりませんが、知らない料理です」

「えと……私、よくわからないかもです」


 とりあえず、いろんな店を回る。

 少量ずつ頼み、何か所かの店を巡ることにした三人だった。


 ◇◇◇◇◇◇


「闘技場、行くわよ」

「……私も?」


 部屋に入るなり、ヒジリがプレセアを闘技場に誘いに来た。

 ヒジリは言う。


「アンタがスッキリしろって言うんだし、付き合いなさいよ」

「……まあ、いいけど」


 二人は、闘技場のある第五区画へ。

 その道中、ヒジリは言う。


「アタシ、口先だけだったわ。でも……ハイセのことは大好きだし、覚悟はもう決めたわ。いつまでもうじうじしてるの、アタシらしくないしね」

「……そう」


 ヒジリは拳をパシッと合わせ、ニカっと笑った。


「とりあえず!! 闘技場で汗流したらお風呂、その後はハイセね!!」

「……なんでそこでハイセ?」

「決まってるじゃない。女にしてもらうのよ。アタシ、覚悟決めたから」

「…………」


 忘れていた。

 ヒジリは、覚悟を決めるとトコトン突き進む女だった。

 なんとなく『一番』は渡したくない……そう思い、プレセアはヒジリを思いとどまらせようと言葉をかけるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] このままハーレム路線に行くのか、流れを断ち切るのか、お茶を濁して曖昧な感じで終わらせるのか?
[良い点] ラプラスが物語のロマンチックな側面を前進させるために欠けているピースであると誰が想像したでしょうか? ヒジリはどうなるのかな、いつもと違って可愛かった。
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