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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第四章 ハイベルグ王国の危機

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サーシャの想い

 サーシャは、クランマスタールームで書類を書いていた。

 事務員は雇ったが、サーシャの仕事がなくなるわけではない。マスターとして、クランに関わる報告書などは自分で書かなくてはならないのだ。

 今は、一人ではない。


「ねぇサーシャぁ……せっかくいいお天気ですし、外でお茶でもしません?」

「ピアソラ……すまない、私は忙しいんだ」

「もぉ、いけずぅ」


 ソファから立ち、サーシャの背後へ移動。

 背中に抱きつき、髪を弄ぶ。

 ピアソラの手がサーシャの胸に伸びたところで、サーシャはその手を軽く叩く。


「こら、じゃれつくな」

「だって、構ってくれないんですもの。私、今日はお休みなのにぃ」

「ふぅ……わかったわかった。少し、散歩にでも行こう」

「やったぁ!! ん~……ちゅっ」

「お、おい!?」


 ピアソラは、サーシャの頬にキスをした。

 さっそく、部屋を出て外へ。

 すると、レイノルドが大きな包みを持ってドアの前にいた。


「お、いいタイミングだな。サーシャ、ドーナツ屋のおっさんから、新作のドーナツ山ほどもらったんだ。一緒に食おうぜ」

「おお、それはいいな」

「ピアソラも───」


 と、言いかけたところで、猛烈な殺気がレイノルドを射抜く。

 サーシャの後ろで、顔中に青筋を浮かべてピアソラはレイノルドを睨んでいた。どうやら、サーシャとの時間を邪魔してしまったらしい。

 が、レイノルドにとってピアソラに睨まれるのはいつものことだ。


「外で食おうぜ。お茶も用意する」

「ああ」

「ギギギ……レイノルドォォォォ」


 三人は、クランホームの外にある中庭へ。

 小さいが、憩いの場として訓練場の隅に作った休憩場だ。今日は訓練をしているチームもなく、サーシャたちだけの空間になっている。

 ドーナツを皿に乗せ、レイノルドがタイクーンからもらった紅茶を淹れる。

 紅茶は、なかなかの香りだった。


「レイノルドのお茶か……久しぶりだな」

「そうか? ま、お茶はタイクーンの仕事だからな。ほれ、ピアソラも」

「……ふん」


 お茶を受取り、ドーナツをモグモグ食べ始めるピアソラ。

 レイノルドは、訓練場を眺めながら言った。


「チーム、二次募集は締めきったんだよな」

「ああ。一番下のチームもD級まで上がった。そろそろ新しいチームを加入させて育てるべきだと、タイクーンが言うのでな」


 クランは基本的に、高ランクのチームを入れる傾向が強い。

 チーム等級が高いチームが加入すれば、難しい依頼をこなす確率が上がるし、クランの名も売れる。

 だが、チーム『セイクリッド』は、等級の低いチームを加入させ、育成する傾向が強い。

 一番下のチームだったロランたち『サウザンド』は、短期間でD級チームにまで上っていた。


「育成とか、面倒だわぁ……」

「そう言うな。私は、面白いぞ? それに……嬉しい」

「「嬉しい?」」

「ああ。自分に自信のない者が、成長を実感し自信を持つようになる姿は、見てて気分がいい」


 サーシャは紅茶を飲み、ドーナツに手を伸ばす。

 レイノルドは言った。


「確かになぁ……オレの育ててる『盾士』も、けっこう戦えるようになってきたけど、見てて気分いいぜ」

「私は別にぃ」

「お前は怖がられてるもんなぁ?」

「あぁ!?」


 キレたピアソラがレイノルドを睨む。

 いつもの光景に、サーシャは笑った。

 そして、思い出す。


「…………ハイセも、追放しなければ私たちの元で強くなれたのかな」

「「…………」」


 ハイセ。

 その名前が出ると、レイノルドとピアソラは面白くない。


「それはどうかな」

「え?」

「あいつがどんな能力に目覚めたのかは知らねぇ。でも……きっかけは、追放してソロで戦ったからだとオレは思うぜ。キツイ言い方だけど、あいつは追放して、ソロでやらせて正解だった。オレたちとだったら、全員が無理して守るハメになってただろうな」

「同感。S級冒険者になれたのはすごいと思うけどぉ……一人じゃ、いずれ死ぬわねぇ? まあぁ、本人もそれを望んでるんじゃないかしら?」

「…………」


 サーシャは、紅茶のカップをソーサーに置く。


「…………」

「そういや、ちゃんと聞いたことねぇな。サーシャ、ハイセとはどんな出会いだったんだ?」

「……私の家とハイセの家は隣同士でな。共に片親で、似たような境遇からか毎日一緒に遊ぶようになった。故郷の村に何度か冒険者が来てな、憧れたものだ……後に、私とハイセに『能力』があるとわかり、一緒に冒険者になることを誓った。そして、十二歳になり、私とハイセの親が魔獣に襲われて亡くなり……身寄りのない私たちは、互いに支え合いながら王都にきて、冒険者となり、ガイストさんに師事した。その後、チーム『セイクリッド』を結成した」

「オレが最初に加入したんっだっけな。懐かしいぜ」

「その次は私。そしてタイクーン、ロビンでしたわねぇ」


 過去を懐かしむ。

 ピアソラは、意地悪そうに言った。


「ハイセが戦いに付いてこれなくなったのも、このころでしたわねぇ?」

「…………そうだな」


 想いだすと、サーシャは苦しそうな笑みを浮かべる。

 やはり、まだ吹っ切れてはいないようだ。

 サーシャにとってハイセは、大事な存在ということに。


「……な、サーシャ」

「ん?」

「オレが付いてる。そう、苦しそうな顔するな」

「レイノルド……うん、ありがとう。ふふ、お前は本当に頼りになるな」

「まぁな。もっと頼っていいんだぜ?」

「ああ……そうさせてもらうよ」

「むぅぅぅぅ!! サーシャ、サーシャ、私も、私も!!」

「ああ、ピアソラも」

「うん!! ね、サーシャ、今日も一緒にお風呂入りましょうねぇ!! くっくっく……一緒に洗いっこするんだから。くひひ」

「……オレを見て言うなよ。べつに羨ましくねぇからな」


 実はかなり羨ましいというのはナイショのレイノルド。

 すると、憩いの場に誰かが来た。


「失礼します。S級冒険者サーシャ様、王家より招集命令です」


 王城からの使いだ。

 手には書状を持ち、サーシャに差しだしてくる。

 それを受取る。


「わかりました。ありがとうございます」

「では、失礼します」


 使いが帰り、サーシャは書状を広げる。

 そこには、緊急招集の知らせが書かれていた。


「おいサーシャ……それ」

「ああ。王家の招集……ただごとではない」

「……むぅぅ、せっかくのお茶会に水を差して!! 許しませんわ!!」

「……行ってくる」


 サーシャは立ち上がり、書状を懐にしまってクランホームを出た。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
なんかレイノルドも壊れてきたな。拗れてきたか? サーシャも他の雑魚を教育して代替行為してるみたいだし、正直キメェわ
レイノルドとピアソラ。 前者はまだましな精神性を持っているが、後者は全くダメ。 間違いなく、今後、獅子身中の害虫になる。
[一言] サーシャsideなくていいんじゃ? 読むのが不快。
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