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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十一章 魔界への道

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ノブナガを知る旅①/まずは旅支度

 ハイセは、ガイストの部屋で紅茶を飲んでいた。


「なるほどな」


 ガイストはハイセの話を聞き終え、熱々の『緑茶』を啜る。

 今、聞いた話はガイストにとっても驚きだった。

 魔界の『大魔王』が、伝説の冒険者チーム『ヒノマルヤマト』のリーダー、ノブナガと同じ字名を持つ者であるということ。

 ハイセはまず、ヒノマルヤマトと縁の深いガイストに話を聞きに来たのである。

 ガイストは湯呑を置き、懐かしむように言う。


「ワシは昔、ヒノマルヤマトの四人に鍛えられた。まあ……弟子というやつだな」

「なんとなく、そんな気はしていました」


 ガイストは、アイビスに紹介状を書いたり、クロスファルドとも縁が深いように見えた。


「ワシは、姉上と冒険者を始め、クロスファルドに師事した。身体の使い方を習い、バルガンに身体を鍛えてもらい、メリーアベルに駆け引きを学び、アイビスに知恵を学んだ……おかげで、当時では最強の冒険者とも言われたよ」

「……」

「ワシが子供のころ、すでにノブナガという人間はいなかった。だが、あの四人はいつも、ノブナガがすぐ傍にいるようなつもりで、かつての冒険譚を語ってくれた」

「……どんな人だったんですか?」

「ワシが知る限りでは、お前と同じ能力を持ち、この世界の人間ではないということだ」

「イセカイ、ってやつですね……」

「ああ。こことは違う世界……想像もつかん」


 ハイセには、なんとなくわかった。

 かつて『デルマドロームの大迷宮』で見た古代の遺産。見慣れない乗り物、建築物、意味不明な遊具……どれも、ノブナガの世界にあったもの。

 いくつか推測を立てることはあったが、確証は得られていない。


「ワシより、同じ時代を生きた四人から話を聞くといい。必要ないかもしれんが……ワシの方からも紹介状を書こう」

「ありがとうございます」


 ハイセは頭を下げた。

 ガイストは頷く。そして、質問を変えた。


「そういえばお前、また弟子を取ったようだな……しかも、マスター級の能力者」

「まあ、なりゆきで」

「ふ……他人を育てるのは面白いか?」

「面白いのは認めます。でも、周りがうっとおしいですね……」

「ははは。お前も変わったな……禁忌六迷宮に挑むようになってから、様々な出会い、経験、そして困難が、今のお前を形作った。本当に、成長したな……ハイセ」

「…………」


 妙に気恥ずかしくなり、ハイセは目を反らす。

 すると、ドアがノックされ返事する間もなくミイナが入って来た。


「失礼しまーす!! ハイセさん、お茶のおかわりお持ちしましたー」

「…………」

「お? なんですかジッと見て」

「いや、お前は変わらないなって」

「えー? なんですかなんですか。変わらない私が好きってことですかー? んふふ、ハイセさんも十八歳。若い身体を持て余しているなら、私がお相手しましょうかねー?」

「へえ、何してくれるんだ?」

「ふっふっふ。実は、この近くに新しく『カード酒場』がオープンしましてね。私、こう見えてカードめちゃ強なんですよ!! 朝までカード勝負しましょうぜ!!」


 ミイナはビシッと親指を立てる。

 ハイセはガイストを見るが、ガイストは肩を軽くすくめた。


「まあ、変わらない方がいいこともある」

「ですね。コイツと結婚するヤツ、本気で苦労しそうだ」

「ちょ!! ハイセさんにギルマス、なんか馬鹿にしてませんか!?」


 こうして、ハイセはガイストへの挨拶を終え、ユグドラ王国へ向かう用意をするのだった。


 ◇◇◇◇◇


「あの、姉弟子……これは?」

「パンツは大事ですね。転んで濡れることもあるし、座りっぱなしでお尻に汗もかくし、もちろん毎日お着替えで交換しますから、パンツはいっぱいあった方がいいです!!」

「なるほど……じゃあ、これは?」

「靴も大事ですね。これから向かう森国ユグドラは森の中ですし、歩きやすい靴は大事です!! 念のため予備もあった方がいいですねー」

「ふむふむ。さすが姉弟子です!!」

「ふふん、なんでも聞いてください」


 宿に戻ると、クレアがリネットに『旅の支度』を教えていた。

 ハイセが買い与えたアイテムボックス(時間停止型、超高価)に、リネットは言われるがまま、必要そうな物を入れている。

 やや不安な気もしたが、とりあえず『姉弟子』に任せることに。

 ハイセは、宿の主人に言う。


「俺とリネットの部屋賃、二ヵ月分支払いしておく。掃除を頼む」

「ああ。それと、お前さんたちが旅だった後、宿の増築をする予定だ」

「ああ……カフェを作るんだっけ」

「そうだ。シムーンが『すきる』とやらで拡張子し、イーサンが仕上げるというが……まあ、ワシにはよくわからんし、あの子たちを信用しておる。好きに任せるさ」

「だな。まあ、安心していい」

 

 現在、宿屋の一階スペースはお世辞にも広いとは言えない。

 食堂スペースは小さいテーブルが六つに椅子が六脚だけ、カウンターには主人が座り、その横には共用トイレ、その隣のドアには風呂がある。

 カフェをやるために、食堂スペースを独立させるそうだ。今ある食堂スペースにソファーやテーブルを置いて休憩所とし、その隣に部屋を設け、朝はハイセたちの朝食会場、昼はカフェを営業するという。


「カフェ、か……シムーンが料理をするのか?」

「ああ。そういやお前さんに言ってなかったな。リネット……あの子が、うちで働きたいと言ってな。シムーンは調理を専属に、リネットとイーサンが宿屋の掃除関係をやる。ふ……いずれは、宿も増築ねせばな」

「へえ、あんたもやる気になってるじゃないか」

「やまかしい。まだまだ老いぼれるわけにはいかないだけだ」

「……身体には気を付けろよ」

「……フン」


 ハイセにとって宿の主人は、ガイストと同じくらい付き合いが長い。

 距離感は、道行く他人と同じレベル。だが、この距離感こそが、二人にはピッタリだった。

 身内ではない。でも、無視はできない他人。

 ハイセ、主人はそれ以上言うことはなかった。


「あ、師匠!! ふふん、リネットの旅支度、そろそろ終わります!!」

「お前な、リネットの手伝いはいいけど、お前はどうなんだよ。今度テント忘れたら貸さないからな」

「あ、だ、大丈夫……じゃない!! 干したままでしたっ!!」


 クレアはダッシュで部屋へ。

 ハイセは、ポカンとしているリネットに言う。


「宿で働くんだってな」

「あ、はい。その……私に、姉弟子や師匠みたいな冒険者は無理ですし。でも、何かしたいとご主人に相談したら、宿のお手伝いをするといいって……宿、改築するみたいで、お手伝いが欲しいとのことだったので」

「いいと思うぞ。お前の好きにするといい」

「はい。えへへ……あ、修行は続けたいです!! 師匠、ご指導お願いします!!」

「ああ、わかった」


 と、ハイセは思わず、リネットの頭をなでてしまった。

 猫のように顔をほころばせ、嬉しそうに受け入れるリネット。


「あ!! リネット、師匠になでなでされてます!!」

「わわ、姉弟子。姉弟子もいっしょに」

「師匠、私も撫でてください!!」

「うるさい。ったく……二人とも、出発は明日だから、荷物の確認をしておけよ」

「「はい!!」」


 騒がしい……と思いつつも、ハイセは「悪くない」と考えているのだった。


 ◇◇◇◇◇


 翌日。

 シムーンの朝食を食べ、三人で宿を出ると。


「さ、ユグドラに行くわよ!!」

「道案内は任せて」

「…………」


 頼んでもいない、同行の許可をした覚えもない、そもそも今日出発と言っていないのに、プレセアとヒジリが宿の前にいた。


「イーサン。修行メニュー、きちんとやるように!! 戻ってきたら昇段試験ね!!」

「押忍!! 師匠!!」

「シムーン。お土産にユグドラの薬草や香草、たくさん持ってくるわね」

「ありがとうございます。プレセアさん!!」

『わんわん!!』


 シムーン、イーサン、そしてフェンリルと挨拶をしている二人。

 ハイセは、頭を抱えたくなったが、一応言う。


「お前ら……本気で付いてくる気か?」

「あったりまえじゃん。最近、あんまりハイセと一緒にいれなかったし。将来の妻としては、夫の傍にいたくなるモンなんでしょ?」

「意味不明すぎる。なんだ将来の妻って」

「アタシ、アンタと結婚するからに決まってんじゃん。愛よ愛。そして恋」

「……」


 これには頭を抱え、プレセアを見る。


「私は里帰りのついで。お子様とは違うわ」

「誰がお子様よ!! アンタむかつくし!!」

「それと、もう一人いるから」


 プレセアが視線を投げかけた先にいたのは、『教会』に所属する『聖女』の一人、ラプラスだった。


「お久しぶりです。ダークストーカー様。最近、めっきり出番のないラプラス・ドレミファソラティ・ドです」

「…………なんでいるんだ」

「もちろん、『旅に回復役は必須。儲けるチャンスだぜグッフッフ』など思っていません。純粋に、旅での負傷を治療するため、と神が仰っています」

「その神に『お帰りください』って言っておけ」

「さて、世界を巡る冒険ですね。胸がわくわくします。ちなみに私、十六歳ですが脱ぐとすごいです、と神が仰っています」

「帰れ」


 こうして、ハイセの『ノブナガを知る旅』が始まるのだが……始まる前から疲労が凄まじく、ベッドに寝転がりたくなるハイセだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
セイクリッドとは対照的な組み合わせだな⋯ 男女比も1:5とハイセが白一点の体を成すのみ。 昔の異世界作品なら女子は少なかったのだが、本作品は肉食系女子が多くガッツリ攻めてくる。 恋愛に関して疎いハイセ…
濃ゆいw濃すぎるwww
[一言] 個人的にラプラスはお気に入りキャラなので今回の登場は嬉しい。正直もう出て来ないと思ってたから特に。
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