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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十章 魔界への条件

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そのころ、サーシャは

「ほうほう……素材が一流だと、何を着ても映えるねぇ」


 カーリープーランは、ニヤニヤしていた。

 目の前に立つのはサーシャ。だが、今は顔を真っ赤にして、胸元を隠し、短すぎるスカートを引っ張り太ももを隠そうとしている。

 奇妙な服だった。胸元が開き、少し動くと『こぼれて』しまいそうな頼りなさ。

 下着が見えそうなほど短いスカート。そして、長い銀髪はツインテールに結わえてある。

 サーシャは、涙目でカーリープーランを睨んだ。


「こ、こんな破廉恥な衣装で、何をさせるつもりだ!!」

「ウリしろって話じゃない。健全な接客サービスの店だよ。ふふ、給仕の経験は?」

「な、ない……能力を得てから、冒険者一筋だ」

「ふふん、面白いねぇ……じゃあ、今日が初めての出勤だ」


 現在、サーシャがいるのは『店』の更衣室だ。

 カーリープーランに連れてこられ、いきなりこの衣装に着替えさせられ今に至る。

 サーシャは恥ずかしそうに睨むが、カーリープーランは言う。


「別に、嫌ならやめてもいいんだよ。その時は、魔界に行く手段が失われるだけさね」

「ぐ……」

「お前に言っておく。別に、この仕事に意味なんてない。お前に『四十人の大盗賊(アリババ)』をやられた仕返しが半分と、もう半分はあたしの嫌がらせさ。七大冒険者序列四位『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャが、破廉恥な格好をして給仕する姿を見せてくれる……ふふ、実に楽しいねえ」

「……お前は最低だ」

「最高の褒め言葉さね。さ、ハイセも頑張っている。お前もしっかりやりな。ああ、チップはそのデカい胸の谷間にでも突っ込んでもらいな」

「お、おい……本当に、健全な店なのか?」

「ああ。ステージで踊り子が踊り、客が楽しみ、給仕が酒を注ぐ……健全しかないだろう?」


 カーリープーランはサーシャの背中を押し、店のバックヤードから店内へ押し出す。

 店内は広かった。


「……なんだ、ここは」


 まずステージの上では、ダンサーの女性が際どい衣装を着て踊り、胸の谷間を強調させるようなポーズで、ステージ前にいる男性を魅了している……ダンサーはサキュバスだ。

 そして、給仕の女性。サーシャと同じ衣装を着た女性たちだけで、みんなきびきびと酒を配ったり、お客の注文を受けている。

 サーシャは気付いた。


「……従業員は皆、サキュバスか。まさかここは……」


 ハイベルグ王国第九区、通称『歓楽街』。

 サキュバスたちが『性気』を集める場所であった。

 すると、一人のサキュバスがサーシャの元へ。


「あなたが新入りね。私はロネ。さ、仕事するわ……あなた、サキュバスじゃないの?」

「私は人間だ」

「オーナーの紹介って言うから、どんなやり手のサキュバスかと思ったんだけど……まあ、身体は立派ね」


 ロネと名乗ったサキュバスは、サーシャの胸を見て頷く。

 サーシャは赤くなり胸を押さえた。


「あなた、大丈夫? ここ、サキュバスには天国みたいな場所だけど……普通の人間、しかも女の子にはかなりキツイ仕事よ? あなた、触られるの大丈夫?」

「い、いや」

「なら、バーカウンターでお酒作りの手伝いして。ほらほら、行った行った」

「あ、ああ」

「それと、返事は『はい』ね。オーナーの紹介だろうと、ここでは一番下だから」

「は、はい……」


 どうしてこうなったのか。

 サーシャはため息を吐き、バーカウンターに向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 仕事は、簡単な酒作りとおつまみ作りだった。

 どうも、バーで味わいながら飲む酒ではなく、踊りを見ながら酔えればいいという考えらしいので、酒に拘りがない。

 それに、簡単なカクテルばかりなのに、値段が高い。

 サーシャは、カクテルをマドラーでかき回しながら、隣に立つサキュバスの女性に聞く。


「この一杯で銀貨七枚とは……普通なら、多くて銅貨五枚だぞ」

「ま、ここは全部が高いから」


 サキュバスの女性はエンリと言った。

 エンリは慣れた手つきで乾き物を皿に並べてカウンターへ。サーシャの作った酒と一緒に、恰幅のよさそうな男性客の元へ運ばれる。

 エンリは言う。


「サーシャだっけ。あなた、人間だけど……『サービス』はする?」

「…………?」

「あっちの部屋」


 エンリが指差すのは、壁際にあるドアだ。

 等間隔に、同じようなドアがいくつも並んでいる。

 すると、先ほどおつまみと酒を運んだサキュバスの女性が、男性客を連れて中へ。


「……あの部屋は?」

「あそこで『精』をもらうの。男性は楽しめるし、サキュバスは美味しい食事にありつける……ふふ、いい商売ね」

「……ま、まさか」


 ドアの先で『何が行われているのか』を想像し、サーシャは赤くなる。

 いろいろな意味で、この店は刺激が強い。


「ね、サーシャ。あなた、どのくらい働くの?」

「一応、一か月……毎日だ」


 クラン『セイクリッド』には事情を説明してある。

 カーリープーランの元で働き、その対価で魔界に連れて行ってもらう。

 現在、レイノルドを筆頭に、クラン『セイクリッド』では『ネクロファンタジア・マウンテン』の情報集めと、魔界へ向かう準備を進めていた。

 サーシャの仕事は、三十日間ここで働くこと。


「ね、サービスするなら事前に言ってね? 男性の『精』はサキュバスの食事であると共に、至上の至福なんだから」

「し、しない!! 私はそういうことをするつもりはない!!」

「そうなの? いい身体してるのに……あら?」

「……な、なんだ。ジロジロ見て」


 エンリはクスっと笑い、自分の胸を指でトントン叩く。


「胸、隠したら?」

「へ?」


 そう言われ、自分の胸を見ると……立派な胸が服からはみ出していた。

 サーシャは慌てて隠し、周りをキョロキョロ見て真っ赤になる。今日はもうずっと顔が赤く、今にも頭頂部から血が噴き出しそうだった。


「ふふ、安心して。こぼれたのはついさっきよ」

「……もう帰りたい」


 たとえ七大冒険者序列四位『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』だろうと、サキュバスの店で働くのには何の意味もないのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] セイクリッドの人気は作中の世界と読者で反比例の法則にある。作中で名声が高まる程、読者のヘイトも高まる。
[気になる点] 敵対してるカーリープーランとの関係を矮小化 禁忌六迷宮の情報を餌にしたらサーシャは風俗店と知ってても働く [一言] >「ね、サーシャ……私ね、女の子が大好きなの」 「……」 「禁忌六…
[気になる点] カーリープーランとの関係は、公にされていましたっけ? 本番行為有りの店ですし、身バレは致命的でしょうね。嬢(料理番のみのサーシャ)に対するセクハラは店側が収めるでしょうけど、外への漏…
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