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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十章 魔界への条件

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姉弟子クレア

「じゃ、今日は帰んな。ハイセ、連絡方法だけど、この店に来てあたしの名前を出しな」

「……わかった」

「サーシャは残りな。身体のサイズを測るからね」

「な、なに? さ、サイズ?」

「店で着る衣装の話さ。ククク、久しぶりにいい素材だからね……たっぷり楽しませてもらうよ」

「……おい、さすがに妙な衣装だったら私も怒るぞ」


 ハイセは立ち上がる。すると、リネットがカーリープーランを見た。

 カーリープーランはハイセを顎で指すと、リネットがハイセの後ろにぴったり付く。


「…………」

「弟子、一緒に住んでるんだろ? 世話も頼むよ」

「……おい、これで約束破ろうもんなら」

「あんた相手にそんな真似すると思うかい?」


 ハイセは舌打ちし、リネットを連れてバーを出た。

 残されたサーシャは、ハイセの消えたドアを見る。


「気になるかい?」

「……お前、何が目的だ? あんな子供を……何に」

「なぁに。リネットの『能力』は希少なマスター系……鍛えて『使える』ようになれば、いずれ『大魔盗賊(アリババ)』の役に立つと思うからねぇ」

「…………」


 胡散臭い。と、サーシャは思う。

 だが、今はどうしようもない。すると、カーリープーランが立ち上がる。


「さ、脱ぎな。服も下着も全部だ」

「は!?」

「ところで、ウサギとメイド、どっちが好きだい?」

「ど、どういう意味の質問だ!?」


 まるで仕返しするかのように、カーリープーランはサーシャをいじるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 宿に戻るまで、リネットはただ後ろを付いて来るだけだった。

 宿に入ると、クレアとエクリプスがカードゲームをしていた。なんとも意外な光景に一瞬だけ視線を移し、カウンターに座る主人の元へ。


「部屋、一つ空いてたよな。今日からこいつが住む」


 そう言い、金貨を数枚置く。

 すると、ようやくハイセに気付いたクレア、エクリプス。


「あ、師匠!! おかえ……え、誰ですか」

「おかえりなさい。あら、可愛い子ね」


 リネットはモジモジしたまま、ハイセの後ろに隠れてしまう。

 一応、預かると決めたし、クレアは弟子……なので簡単に説明した。


「こいつはリネット。今日から俺の弟子になった」

「は!? ででで、弟子!? し、師匠の!?」

「ああ。理由は」

「わ、私!! 私は!? まさか卒業ですか!? 嫌ですぅぅぅぅ!! 師匠、私はずっと弟子だって言ったのにぃぃぃぃ!!」

「あーもうくっつくな、話を聞け!!」


 腕にしがみつくクレアを引き剥がす。

 クレアは今にも泣きそうだった。それに対し、エクリプスは落ち着いてお茶を飲んでいる。そして、キッチンにいるシムーンに「お茶、みんなの分を」と注文までした。

 部屋に行く前に、クレア(ついでにエクリプス)に説明するしかなかった。

 ハイセはため息を吐き椅子に座る。リネットは迷っていたが、ハイセに言われ隣に座った。

 クレアは腕組み、エクリプスは落ち着いている。

 シムーンの紅茶が運ばれ、ハイセは事情を説明……説明を終えると、紅茶を飲む。


「──……なるほどね。魔界へ行くために魔族と取引を」

「ああ。その一つが、リネットを弟子にして鍛えることだ」


 エクリプスは納得してくれた。

 まだ少しだけムスッとしているクレアは、リネットを見て言う。


「リネットさん、でしたっけ」

「は、はい」

「師匠の弟子になるってことは、私が姉弟子ってことです!! いいですか、師匠の独り占めは許しませんからね!!」

「あ、あう……」

「お前は何言ってんだ。おい、こいつの言うこと気にするなよ。それと、部屋に案内する」


 主人から鍵をもらい、部屋に案内する。

 ハイセの隣の部屋。もともとは倉庫として使っていたが、客を受け入れるためにハイセが荷物を整理したのだ。

 今では、ベッドにクローゼット、小さな椅子とテーブル、ソファが置かれている。ベッドメイクも済んでおり、きちんと『宿屋の一室』になっていた。


「そういや……お前、着替えとかは?」

「いえ、なにも」

「……カーリープーランのヤツ。全部俺に世話させるつもりか。まあいい」


 ハイセはクレアに言う。


「クレア、お前の着替え貸してやってくれ。それと、風呂も頼む」

「むー……わかりましたあ。じゃ、リネットさん、お風呂行きましょう」

「お、おふろ」


 何だかんだで、クレアはリネットの世話をするようだ。

 リネットの手を掴み、階段を下りて行く。

 その後ろ姿を見送り……ハイセはため息を吐いた。


「はあ……」

「面倒ごとになったわね」

「全くだ。禁忌六迷宮最後の一つ、その第一歩か……」

「あの子を指導するの? どういう能力?」

「『模剣(フェイク)マスター』……知ってるか?」

「……十六あるマスター系能力の一つで、そんな名前のがあったわね。でも、今は能力者がいないはず。私やあなたと同じね」

「世界でただ一人、ってやつか……」


 ハイセは『武器(ウェポン)マスター』で、エクリプスは『魔法(マジック)マスター』……どちらも、この世界で一人しかいない。

 ハイセはエクリプスに言う。


「……おいエクリプス。指導の過程で、お前に意見を聞くかもしれないが……いいか?」

「え? え、ええ!! いつでもいいわ」


 まさか、ハイセに頼られるとは思っていなかったエクリプス。実は『ハイセとお喋り……』と喜んでいたのだが、顔に出ないよう必死だった。

 

「やれやれ……唯一の救いは、リネットがクレアみたいに騒がしくないところか」


 その後、風呂から上がったリネットは眠そうだったので寝かせた。

 自室でコートを脱ぎ、アイテムボックスから水のボトルを出しグラスに注ぐ。


「指導、か……」


 クレアには『最強のソードマスターになる』という目標があった。

 冒険者として鍛え、S級冒険者と遜色のない実力を付けさせた。

 だが、リネットにはそれがない。

 カーリープーランにも『鍛えろ』としか言われていない。

 そもそも、『模剣(フェイク)マスター』なんて聞いたこともない。


「……何か書いてあるかな」


 ハイセはノブナガの日記を取り出す。

 

「この本も久しぶりだな……最近じゃ、使える武器も増えたし、『兵器』も使えるようになったし……見る機会、めっきり減ったけど」


 本をパラパラめくると、読めるページがあった。


 ◇◇◇◇◇◇

 〇月×日 はれ

 今日、面白い能力者と出会った。

 なんでも、いろんな刀剣を自由に作れるとか。そういや、日本のアニメでそんな設定のキャラいた気がする……あんま覚えてないけど。

 こいつのすごいところは、創造って思い描いた刀剣なら何でも自由に作れるってところだ。形状や大きさだけじゃなくて、炎の剣とか水の剣とか、いろんな属性の剣を作っていた。しかも恐ろしいのはそこじゃない……こういう創造系って魔力を消費するのが大半なんだが、この『模剣マスター』は何の消費もなく、ノーリスクで自在に創造できるってところ。これ、チートってやつだよな。

 面白い奴だからいろいろ話してみたけど、こいつが『会心の出来だ!』って見せてくれたのがなんと、剣じゃなくて包丁だったのがまた驚き。こいつ、これだけの能力を悪用することなく、包丁職人として働いてるからスゲーと思った。

 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセはそこまで読み、本を閉じた。


「いい情報なんだか、どうでもいい情報なのかわからん……包丁職人?」


 でも、ヒントはあった。


「様々な属性を宿した剣か……その前にまず、リネットがどういう奴なのか、そこから知らないとな」


 とりあえずの方針は決まった。

 ハイセは窓を開け、外の景色を眺める。


「……サーシャのヤツ、大丈夫だろうか」


 空を見上げると雲一つない、美しい夜空が輝いていた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] サーシャもたまには痛い目を見たほうがいいだろ! サーシャのメイド姿とか見たらピアソラが発狂しそうだが。
[一言] サーシャ以外のヒロイン達の方が可愛い。サーシャは昔の失敗を後悔してばかりいる印象。
[一言] 確かつい最近サーシャは勝手にウルからの依頼を受けてセイクリッドメンバーと揉めたんじゃ無かったかな?またメンバーに報告も無しに勝手にカーリープーランの所で働いて大丈夫なのかな?それとも揉めた事…
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