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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第二十章 魔界への条件

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アリババへの提案

 カーリープーランは、どこか白けたような顔で言う。


「逢引きを邪魔するつもりなんてなかったんだけどねぇ……ま、あたしはあんたの『メッセージ』を拾って、わざわざ会いに来ただけなんだ」

「……メッセージ?」


 サーシャが首を傾げる。

 ハイセはチラッとサーシャを見て言った。


「『闇の化身(ダークストーカー)が大魔盗賊を探している』……そういう暗号を、ハイベルグ王国のいくつかの場所に残しておいた。こいつの性格ならきっと、俺の周囲を監視していると思ったからな」

「監視なんてしてないさ。ハイベルグ王国にある拠点のチェックをするついでに、チラッと様子を見ただけ……こっちは一度、アンタに殺されかけてるんだ。下手な接触は寿命を縮めるって本気で理解してるからねぇ」

「ハイセ、なぜ……」


 魔族と?

 そう言おうとしたが、サーシャはすぐにハッとした。


「ハイセ、まさかお前……」

「それしかないだろ」


 ハイセがカーリープーランに会おうと手の込んだことをした理由。


「禁忌六迷宮『ネクロファンタジア・マウンテン』……魔界にある山。魔界に行くには、魔族の手を借りるのが一番だ」


 ◇◇◇◇◇◇


 場所を変え、話をすることにした。

 カーリープーランが「あたしの行きつけに行くよ」と言い、案内されたのは、ハイセたちのいた場所から五分ほど歩いたところにある路地裏。

 そこに目立たないようにあった小さなバーだった。


「ここではあたしのこと、キディって呼びな」


 カーリープーランが指を鳴らすと、肌の色が変わり、ツノが消えた。

 店に入ると、老人がペコっと一礼。


「マスター、二階借りるよ」

「……どうぞ」


 二階の階段を上り、カーリープーランは一つしかないドアを開ける。

 部屋の中は対面で座れるソファがあり、バーカウンターがあった。

 カーリープーランは適当にグラスを用意し、氷を入れてブランデーを注ぐ。

 当然だが、ハイセたちに酒を出すことはない。

 ソファに座るなり、足を組んで言う。


「で、あたしに頼みってことでいいんだね?」

「ああ。魔界に行きたい」

「……対価は?」

「金。いくらでも出す」

「悪いけど、金は腐るほどある。欲しいのは自分で手に入れることにしてるから、望みの物なんてチャチな言葉では動かないよ」

「……じゃあ、どうすればいい?」

「……ふう。下手なことを言えば殺されそうだね……あんた、あたしが『手を貸さない』って言えば別の方法を模索するだろ? 無茶な条件を付けてあんたの逆鱗に触れたら死ぬし……」

「かもな」


 例えば、シムーンやイーサンを条件に出すとか……とは、カーリープーランも言わない。言っただけで脳天をブチ抜かれる可能性もゼロじゃない。

 一応、部屋には仲間のカルミーネが液状化してカウンターに潜んでいる。


「喉が渇いたな……」


 そう呟いただけで、ハイセは気付いていると確信した。

 同様にサーシャもだ。今は何も言わないが、ソファに対面で座っている今、半秒以下でカーリープーランの首をはねることができるだろう。

 有利なのはカーリープーランの方だ。だが、命のやり取りとなれば、間違いなくこちらが遥か下。

 

「キディ、お前……俺に協力するつもりがないのに、なぜ接触した?」

「…………」

「無視すればいいはずだ。だがお前は、死のリスクを冒して俺に接触した……その理由は?」

「…………なぜだろうねぇ。有利に立ちたいだけだったのかもしれない」

「じゃあ一つだけ聞かせろ。今、人間界にある『力』で、魔界に行けるか?」

「……無理だね。ここから東にある『アズマ』の国からさらに東にある魔界……海は常に荒れ狂い船は出せず、空も荒れて飛ぶこともできない。行けるとしたら、魔族が作ってる『魔導船』か、あたしが独占している『転移魔法陣』による転送くらいだ」

「…………」


 ハイセは黙りこむ。

 つまり……カーリープーランに頼るしか、魔界に行く方法はない。

 だが、カーリープーランは協力するつもりがない。


「カーリー……いや、キディ。私たちに手を貸してはくれないのか?」


 サーシャの質問に、カーリープーランは鼻で笑った。


「あんた馬鹿かい? こっちは子飼いの人間を全滅させられ、さらに命を失いかけたんだ。こうして会うだけでもリスクが高いってのに、なんで協力しなきゃいけない」

「そ、それは……そうだが」


 サーシャは声を詰まらせる。

 カーリープーランは、バーカウンターからワインを取り出し、自分のグラスに注いだ。


「なあ『闇の化身(ダークストーカー)』……禁忌六迷宮だか何だか知らないけど、もう諦めたらどうだい? そもそも……あんた、魔界を知ってるのかい?」

「…………」

「ネクロファンタジア・マウンテン。あそこは魔族ですら近づかない『死の山』だ。魔界最強の魔獣、古の存在が封じられた山……」

「魔界最強の、魔獣? なんだそれは?」

「そういう伝説って話さ。内容は不明。魔族の調査隊も誰も帰ってこないからねぇ。わかっているのは、あそこには『不死の存在』がいるってことくらいだね」


 不死の存在。

 死なない生物が存在する。それがネクロファンタジア・マウンテンの秘密。

 情報が少なく、今はわからないことが多い。


「悪いが、俺は諦めない」

「……なぜだい?」

「禁忌六迷宮が古の魔獣を封じ込めた場所ってのは、もうとっくに知っている。でも……俺は禁忌六迷宮を踏破するって決めた。そのために冒険者を続けている。だから……真実がどうであれ、俺はネクロファンタジア・マウンテンを諦めない」

「…………」


 カーリープーランは煙管を出し、煙草を吸い始めた。


「もう五つは踏破した。残り一つ……そこを踏破すれば、俺の目標は達成される」

「……ハイセ」

「サーシャ、お前もだろ? お前も禁忌六迷宮を踏破する目標があったはずだ」

「当然だ。そこは揺らぐことのない、私の目標だ」


 ハイセとサーシャは、同じ目をしていた。

 カーリープーランは煙管を吸い、煙を吐き出す。


「……あんたら、幼馴染だったかい?」

「そうだ。それがどうかしたのか?」


 サーシャが言うと、カーリープーランはクスっと笑う。


「サーシャ。あんた、ハイセに身体は許したのかい?」

「なっ……!? ば、馬鹿なことを!! そ、そういう関係ではない!!」

「ハイセ。もしあたしが『サーシャを抱けば魔界への道を開く』と言ったら、あんたはどうする?」

「…………」

「なななっ!? は、ハイセ……」


 真っ赤になるサーシャ。そして、つい先ほど自分がしようとした『行為』を思いだし、さらに『もし先を求められたら……』と考え、さらに赤くなる。

 ハイセは、「はっ」と鼻で笑った。


「こいつは、そんな理由で身体を許すほど、馬鹿な女じゃない」

「……そ、その通りだ!!」

「ふーん」


 カーリープーランはクスっと微笑み、煙管の灰を落とした。


「気が変わった。ハイセ、サーシャ……あんたらを魔界に連れて行ってもいい」

「「!!」」

「ただし、条件がある。もちろん、それぞれにね」


 カーリープーランはサーシャを見て言う。


「まずサーシャ……あんたにはしばらく、あたしの店で働いてもらう」

「み、店? キディ……お前、店なんてやっていたのか?」

「ああ。こう見えて、いくつもの顔と名前があるんだ。あんたにはあたしの経営する酒場で働いてもらおうか」

「さ、酒場? な、なぜ?」

「もちろん、面白いからさ。ククク……どんな衣装を着てもらおうかねぇ」

「な、な……」

「ああ、嫌ならいいよ? その時はまあ……どうなるか、楽しみだけどね」

「く、くぬぅ……い、いいだろう。お前の店で働いてやる!!」


 ややヤケクソ気味だが、サーシャは了承した。

 これは完全な嫌がらせ……どうやら、カーリープーランはサーシャで遊ぶつもりのようだ。


「そしてハイセ。あんたには……『弟子』を取ってもらおうかね」

「……何?」

「弟子さ。実は、闇オークションで面白い『奴隷』を手に入れてね。まだ十五歳の女の子なんだが……その子の『能力』がまた面白いんだ」

「……面白い?」

「ああ。カルミーネ、連れて来な」

「はいは~い。あーあ、バレちゃった」

「馬鹿だね。最初からハイセたちは気付いてたよ」

「うっそマジで? うぇ~ん」


 と、バーカウンターのシンクから液状化した魔族の少女、カルミーネが姿を現した。

 そして、一瞬で人の形になり部屋から出て、一分しないうちに戻ってきた。

 一緒に連れてきたのは、淡い灰色の髪をした少女。首のあたりで髪をひと房結んでいた。

 瞳は綺麗なゴールドで、どこかモジモジしながらハイセを見ている。


「名前はリネット。この子の能力は……」


 カーリープーランが頷くと、リネットと呼ばれた少女が両手でお椀のように形を作る。

 すると、リネットの手に、小さな『ナイフ』が現れた。

 ハイセは驚愕した。


「まさか、この子……」

「そう。あんたと似てないかい? リネットは、あらゆる刀剣を(・・・・・・・)作り出す能力(・・・・・・)がある(・・・)


 『摸剣(フェイク)マスター』。

 自分で考えた剣を作り出すことができる能力。

 武器を生み出すハイセと似た能力。


「あんたと同じような能力だ。指導しやすいだろう? ああ、二人目の弟子ってところだ」

「…………」

「どうだい? 受けてくれるかい? ああ、鍛えてくれるなら、好きにしていいよ。ほれリネット、挨拶をしな」

「……あ、あの、おねがいします」


 リネットはぺこりと頭を下げ、どこかおびえたようにハイセとサーシャを見るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
さすがにこれは言い訳きかんてー いずれここまで出すんなら出版社がどう言い訳するのか見ものだわ いや、あのクズどもの事だから知らん顔して出しそうだな。作者や他のクリエイターキレさせる天才集団だし
漫画から続き気になってコッチに来てここまで読んだけど、疑問。 1度更新された内容とここ数ページの内容(特にこの章に入ってからの内容)が被ってるのは、書籍化などのメディア化の内容と元々の更新内容の違い?
[気になる点] ヒジリの“メタルマスター”は、あらゆる金属の生成でしたね。 ヒジリは拳とか観音様とか創ってますから、“メタルマスター”も剣くらい余裕ですね。 現状“フェイクマスター”の説明には、『…
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