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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十九章 しばしの休息

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宿屋の主人ホーエンハイムの一日

 ハイセたちの住まう宿屋の主人、ホーエンハイム。

 彼の一日は日が昇った直後に始まる。

 ホーエンハイムは毎日、決まった時間に目を覚ます。かれこれ数十年同じ時間に起きるので、体内時計の目覚ましが完璧にセットされていた。

 着替え、母屋から宿屋へ移動。

 新聞受けの新聞を取り、受付カウンターと食事スペースのあるハイセの席に置く。

 そして、食事スペースと受付カウンターの掃除をする。

 すると、シムーンがやって来た。


「おはよう、おじいちゃん」

「ああ、おはよう」


 ホーエンハイムはにっこり笑う。

 ハイセの連れてきた、新しい孫。

 かつてスタンピードで家族を失い、孤独に過ごしていたホーエンハイムの新しい家族。

 いつ死んでもいい……そう思っていたこともあったが、死ねない理由ができた。

 少なくとも、イーサンとシムーンが結婚するまでは……そして、お節介で意外に世話焼きなS級冒険者が、この宿を出るまでは。

 シムーンは、さっそく朝食の支度をする。

 この間、ホーエンハイムは掃除を続け、ちょうど三人分の朝食が完成すると、イーサンが宿屋に入ってきた。


「ふあ……じいちゃん、姉ちゃん、おはよう」

「ああ、おはよう」

「おはよー、イーサンお皿並べてー」

「はーい」


 ホーエンハイムにとって、この朝食の時間は何より幸せな時間だった。

 三人で食事……話題は、今日の仕事について。


「おじいちゃん。わたし、今日は香辛料を買いに行ってくるね。イーサン、手伝って」

「はーい。あ、買い物終わったらおれ、ヒジリさんと修行するから」

「ああ、好きにやりなさい。シムーン、お金は足りるか?」

「うん。大丈夫」


 朝食を終えると、イーサンはフェンリルにエサを、そして朝の訓練を始める。

 シムーンはホーエンハイムにお茶を淹れ、食器の片付けを始める。

 ホーエンハイムは受付カウンターに座り、新聞を読み始めた……すると。


「……ふあ」


 ハイセが、欠伸をしながら降りてきた。

 そして自分の席に座り、新聞を広げる。


「おはようございますハイセさん」

「ああ、お茶くれ」

「はーい」


 新聞を少し読み、お茶を飲む。

 その後に朝食……このスタイルはずっと変わっていない。

 そして少し静かな時間が流れ……ドアが開き、バタバタ階段を下りる音がした。


「おはようございますっ!! 師匠!!」

「お前、何度も何度も言ってるだろ……朝っぱらからデカい声出すな」

「はい!! あ、シムーンちゃん、私と師匠の朝ご飯をお願いしますっ!!」

「はーい」


 ハイセは「ったく」と呆れ、新聞を閉じる。

 二人が朝食を取り始めると、静かに階段を下りてくるエクリプス。


「おはよう、二人とも」

「おはようございますっ!!」

「……ん」


 エクリプスが席に座ると、シムーンが朝食を運んで来る。

 そしてすぐに、エアリアが階段を飛び降りて着地する。


「朝!! シムーン、ご飯っ!!」

「はーい」


 エアリアが最後だ。

 このころにはハイセも朝食を終え、新聞と紅茶を楽しんでいる。

 クレアはハイセの隣で新聞をのぞき込み、エクリプスは静かに紅茶を楽しんでいる。

 エアリアはパンをモグモグ食べ、宿屋はとても賑わっていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセたち冒険者がギルドに向かうと、宿屋はとても静かになる。


「じいちゃん、おれ風呂の掃除するね」

「ああ、ゆっくりでいいからな」

「大丈夫!! そのあとは宿の掃除と、母屋の掃除、それと姉ちゃんの買い物は午後に行くね!!」

「宿屋はワシが掃除するから、母屋を頼むよ」

「ん、わかった!!」


 シムーンはキッチンで、夜の仕込みをしている。

 ホーエンハイムは宿の掃除。まずか一階から始まり、二階の廊下や窓掃除をする。

 部屋の掃除は、女性はシムーン、ハイセはホーエンハイムが担当している。自然とシムーンの負担が多いので、ホーエンハイムは一階と二階の廊下掃除を担当していた。

 シーツを交換し、窓ふきやモップ掛けなどで終わらせる。

 洗濯なども、部屋にあるカゴに入れておけば、ホーエンハイムたちがやることになっていた。


「ふう……」

 

 ホーエンハイムは一階の掃除を終え、二階の掃除を始める。

 渡り廊下を掃除し、ハイセの部屋へ。

 ハイセの部屋は、難しい本が山積みになり、壁のボードに古文書の解読結果や研究データなどが張ってあった。

 それ以外は特に何もない。ベッドのシーツを交換するくらいで終わってしまう。

 掃除を終えると、ホーエンハイムは受付カウンターで休憩だ。

 シムーンはまだ掃除をしているが……最初は手伝おうとしたが、仕事が楽しいのか「自分でやらせて!」と手伝わせてくれないのだ。

 イーサンも、風呂掃除を終えて母屋の掃除をしている。

 なので、ホーエンハイムはフェンリルのエサやりをすることにした。


『きゃん!!』

「さあ、メシの時間だぞ」


 餌皿と水を交換すると、フェンリルはガツガツ食べ始める。

 ホーエンハイムは、イーサンが作り直した犬小屋を見た。


「ふむ、本職のようだ」

『くぅ?』

「いや。お前の家は立派だと思ってな』


 フェンリルを撫でると、尻尾がブンブン揺れた。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。


「あーお腹空いたぁ……シムーンちゃ~ん」

「はーい」

「メシくれ~!!」

「はぁい。クレアさん、エアリアさん、お席でお待ちくださーい」


 クレア、エアリアが帰ってきた。

 そしてエクリプスが戻り、最後にハイセが戻ってくる。

 その様子を見ながら、ホーエンハイムは思う。


『町には、酒場も飯屋もいくらでもあるのに……』

 

 若い冒険者たちは、この宿に戻り、シムーンの作る料理を楽しそうに食べる。


「ね、ハイセ。いいワインを買ってきたけれど……少し飲まない?」

「……もらう」

「あ、私も欲しいですー!!」

「あたいも!! おーい主人、主人も飲もうー!!」


 エアリアがニコニコしながらホーエンハイムに手招き。

 少し前まで、考えられないことだった。

 ホーエンハイムはハイセを見ると、軽く肩を竦めていた。


「……やれやれ」

「あ、おじいちゃんも飲むの? じゃあはい、グラス」


 本当に、騒がしくなった。

 だが、悪くない……ホーエンハイムはそう思い、シムーンからワイングラスを受け取るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 宿にプレセアとヒジリの分の部屋がなくなったまま。増築とか改築あるいは建て直しとかしないのかな? 日常の様子やそもそもの出番が少ない人物だと残りもオジサンやお爺さん?
[良い点] これこそが日常回と思う。ハイセとサーシャを無理に絡ませようとしてピアソラの不快な言動が無いしどこぞの5大クラン(笑)の最高の仲間達(笑)の談笑の話も一文も無いのが素晴らしい。 [気になる点…
[一言] セイクリッドはほぼ毎回ご都合主義の日常回だし、観光地に遊びに行ったりとかもしてるから、今回のような章で出番は無い方がいい。 エアリアはまだいたの?これからもハイセに絡むレギュラーキャラになる…
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