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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十九章 しばしの休息

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エクリプスと一緒に

 ある日、ハイセは一人、宿の一階でお茶を飲んでいた。

 朝食を食べ終わり、新聞を読みながら過ごす時間。

 しかも、今日は休日……昨日、依頼掲示板にあった討伐依頼を終えると、ミイナが「明日は討伐依頼ないですねー」と言ったのだ。

 なので、今日は休み。

 クレアはヒジリ、プレセアに誘われて出かけ、イーサンとシムーンも買い物に行ってしまった。

 宿の主人はいるが、いていないような者。

 机の上には本も置いてある。今日は一日読書に時間を使おうと思ったのだが。


「あら、ハイセ」

「…………お前か」


 二階から、エクリプスが降りてきた。

 ラフな服装で、手には分厚い本。


「今日はお休みなのね。ふふ、読書かしら?」

「見ての通りだ」


 最後の六迷宮、『ネクロファンタジア・マウンテン』に行くにはまだ準備が足りない。そもそも……魔界に行く『アテ』はあるのだが、その『アテ』とどう連絡すればいいのかわからないのが現状だ。

 なので、ハイセはある『仕込み』をして待つ。その『仕込み』が活きた時が、準備の整う時。

 エクリプスは、ハイセの席に座る。


「あの……一緒に読書してもいいかしら」

「……好きにしろよ」


 ハイセは新聞から目を離さずに言う。

 エクリプスは嬉しそうに笑い、読書を開始した。


 ◇◇◇◇◇◇


 一時間ほど経過。

 ハイセ、エクリプスは全く喋ることなく読書。

 紅茶をすっかり飲み干したが、宿屋の主人は「おかわりいるかい」と気を利かせたことを言うことはない。シムーンのサービスが行き届きすぎてるだけだ。

 エクリプスも、最初の一杯だけ飲み干し、今は読書に夢中。

 ハイセは、チラッとエクリプスを見た。


「…………」


 白い髪、整いすぎた容姿、そしてスタイル。

 間違いなく美少女。百人中……いや、千人中千人が「絶世の美少女」と褒めるだろう。

 かつては敵として対峙したが、今は何故かハイセに惚れ、結婚を申し込み、自分のクランを置いてまでハイセの傍に来た。

 ハイセには、全く理解できない。

 だが、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』とのいざこざは水に流したし、クランを物理的に壊滅させたことで落とし前も付けた。

 今は、ただのS級冒険。ハイセはそう思っている。


「──……なに?」

「……いや」


 目が合った。

 視線に気づいたのか、やや恥ずかしそうに頬を染める。


「あの、ハイセ。お昼はどうするのかしら」

「適当に外で食う」

「……じゃ、じゃあ。私も一緒にいい?」

「……まあ、いいけど」


 ただ一緒に、同じ席でメシを食うだけ。

 特に断る理由もないので了承すると、エクリプスは立ち上がる。


「少し、お部屋でお化粧直しするから」

「……?」


 それだけ言い、エクリプスは部屋に戻った。

 メシを食うのに化粧? と、ハイセは首を傾げる。


「……やれやれ」


 宿屋の主人は、仕方なさそうに首を振るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 お昼ごろ。

 ハイセは本を閉じて立ち上がると、エクリプスが慌てて階段から降りてきた。


「お、遅れてごめんなさい」


 どう見ても外行き用の服、髪を整え、化粧をしてる。

 ハイセは理解できず、首を傾げて言う。


「……メシ食いに行くんだぞ?」

「え、ええ。あの……ハイセ、お願いしてもいい? その……ちょっとお買い物したいから、付き合ってくれないかしら」

「……別にいいけど」


 ここで「めんどくさい」と断らないのが、ハイセである。

 エクリプスは嬉しそうにほほ笑む。

 ハイセは宿から出ると、エクリプスがその腕を取った。


「んだよ、クレアじゃあるまいし」

「あら、男の人と一緒に歩くときは、腕を借りるものじゃなくて?」

「……そーいやお前、貴族のお嬢様だったな」

「ふふ。そういうこと」

 

 平民であるハイセには理解できないが、どうもそういうことらしい。

 仕方なく、腕を貸してやる。

 歩く速度も合わせてやると、エクリプスは嬉しそうに言う。


「優しいのね」

「はぁ?」

「歩幅、何も言わずに合わせてくれるから」

「…………」


 ハイセは何も言わない。

 そのまま大通りに出て、適当な店に入ろうと周りを確認する。

 少し悩んだが、ハイセは聞いた。


「……食いたいモン、あるか」

「え……あ、そうね、えっと……お魚がいいわね」

「魚か」


 まさか聞かれると思わなかったのか、エクリプスは驚いていた。

 魚と聞き、ハイセが見たのは大衆食堂。

 けっこうな頻度で利用する食堂で、よくクレアが魚を食べていたことを思いだす。


「あそこの食堂、魚料理出してたな……行くか」

「ええ。ふふ」


 エクリプスが腕を掴む力が強くなり、少しだけ胸を押し付けてきた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセが頼んだのは、焼いた魚をソースに絡め、野菜と一緒にパンで挟んだ料理。エクリプスは魚のステーキを頼み、二人で食べる。

 ハイセは驚いた。


「……美味いな。いつも肉だから、新鮮な感じだ」

「確かに美味しいわ。味付けがすごく濃い……初めての味ね」

「貴族の食事は薄味っぽいもんな」

「ええ。油も控えめだし、香辛料もそんなに使わないの。お肉も一切れか二切れほどだし……あまり言えないけど、物足りないのよね」

「ふーん」


 ハイセは『バーガー』というパン料理にかぶりつく。

 エクリプスは上品にナイフとフォークで身を切り分けて食べていた。

 大衆食堂なのに、まるで貴族専門のレストランで食事をしているような、エクリプスは浮いていた。

 だが、美味しそうに食べ、ときおり顔を綻ばせる姿は、クレアとそう変わらない。


「……気に入ったか?」

「ええ、とても。シムーンがいないとき、今度からここで食事をするわ」

「好きにしろ」


 食事を終え、店を出る。

 エクリプスの買い物が何か聞くと。


「新しい下着を買うの。その……少し胸がキツくてね」

「帰る」

「え、ちょっと!!」

「そういうのはプレセアとか連れていけ」

「そんな……ね、お願い。せっかく一緒にお出かけしているのに……」

「……はあ」


 ハイセは、エクリプスに腕を突き出した。


「今回だけだぞ」

「っ!! ええ、ありがとう!!」


 たかが下着屋……ハイセはそう考え、エクリプスに付き合うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 だが、ハイセはすぐ後悔した。


「な、は、ハイセ……?」

「あらあらあらあら……フフフ、これは面白いわねぇ」

「ありゃあ……」


 エクリプスに案内された下着屋に、サーシャ、ピアソラ、ロビンがいた。

 しかも、エクリプスと腕を組んでの来店。

 ピアソラはサーシャが驚愕しているのを見てニヤリと笑い、エクリプスに言う。


「まさか、S級冒険者序列一位と二位が『デート!!』とはねぇ。しかも下着屋……もしかして、ハイセに見せる用の下着を、ハイセに選んでもらうつもりかしら?」

「ちょ、ピアソラ」

「なっ……そ、そうなのかハイセ」


 驚愕のサーシャ。

 ロビンは、ピアソラがハイセの評価を落とすために、わざと質問していると気付いた。

 エクリプスはハイセの腕を外すと、サーシャに近づく。


「ご安心くださいな。ここに来たのは私の意思……私が連れてきただけ」

「え」

「サーシャ。あなたも下着を選びに?」

「え、ああ。その」

「胸がおっきくなってね~、ねえサーシャ」

「ろ、ロビン!!」

「そう。実は私もなの。ね、一緒に選ばない?」

「え、ああ。うん」

「そこのあなたも一緒に。ね」

「へ? あたしも? まあいいけど~」


 そして、エクリプスはサーシャとロビンを連れて店の奥へ。

 残されたのはピアソラ、そしてハイセ。


「え、なんですのこれ」

「俺が知るか」


 当然、ハイセは知る由もない。

 エクリプスはピアソラの狙いを一瞬で看破……ハイセの中にあるサーシャの評価を落とすことより、この場を宥めてサーシャの評価、そしてハイセの評価を上げることに決めたのだ。

 サーシャと敵対するメリットはない。それに、ハイセが少なからずサーシャのことを想っていることも知っている。

 なので、こういう態度に出たのだ。

 すると、店員が近づいてきた。


「あら、ピアソラさんの彼氏さんですか? ふふふ、お好みのデザインありますか? ピアソラさんはセクシーなボディの持ち主ですので、どんな下着も映えますよ~?」

「想像したくもないし気色悪い」

「アァァァァァァァァァァァァァ!? んだとテメェェェェェェェェ!!」


 この日、ハイセは少しだけエクリプスを見直した。

 サーシャのフォローに回り、誤解させることもなかった。

 エクリプスとしては、ハイセに気に入られご機嫌。

 なんと、夕食も一緒に食べ、バーで一緒にお酒を飲むまで付き合ってくれたのだ。

 帰り道、エクリプスは酔っているのかハイセに甘える。


「んふふ、今日は素晴らしい一日でしたわ~」

「お前、酒癖悪いのかよ……もう飲むな」

「はぁ~い。ねえハイセ、またお出かけしてくれる?」

「……二人きりは嫌だ」


 エクリプスにとって、今日は本当に最高の一日だったそうだ。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] ピアソラが良いスパイスになっている回でした。 [気になる点] “「ご安心くださいな。ここに来たのは私の意思……私が連れてきただけ」” ハイセを格下、ただの木偶に見た発言になってしまってま…
[一言] ラストダンジョン手前、大概の闇堕ち系主人公は流石にパーティー組んでいるんだけど、ソロのハイセその割に強さも中途半端だよね。
[一言] ピアソラの言動はサーシャがハイセを好きと自覚していれば煽りとして使えるんだが300話を目前にしても未だに自覚してない相手にやっても意味無い事。 というか確かに同じ町に居るんだから会う事はある…
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