表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十八章 七大冒険者の会合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

288/422

七大冒険者会合④

 七大冒険者たちの会話が一息つくと、バルバロスが挙手。


「では、ワシから七大冒険者たちに質問だ。きみたち、将来の自分について語ってくれないか。まずはハイセ、頼む」

「……将来」


 明確な『将来』について、ハイセに答えはない。

 だが、ぼんやりと考えていることはある。


「俺はまあ……禁忌六迷宮を攻略した後も、普通に冒険者やってると思う。まだまだ弱っちい弟子も育てなきゃいけないし、持ち込まれるヤバそうな依頼もあるし……まあ、死ぬまでなんて言うつもりはないが。…俺の人生は冒険者と共にあるし…」

「なるほどな。お前らしいというか……」


 バルバロスは笑った。


「だが忘れるなよハイセ。お前はハイベルグ天爵だ。引退後にお前に与える土地はもう見繕っているんだからな? ああ、やりたいことがあるなら今のうちに考えておけ。農場をやるのもいい、家畜を育てるのもいい。どんな我儘を言っても許される功績がお前にはあるのだからな」

「……ど、どうも」

「もちろん。嫁さんも一緒にな。はっはっは!!」


 国王という肩書はあるが、仮になくても勝てそうにない人間……ハイセはそう思った。

 そして、バルバロスはエクリプスを見る。


「きみは将来をどう考えている?」

「…………」


 エクリプスはハイセをチラッと見て、少しだけ目を閉じ……静かに開く。


「クランは信用できる後継に任せて、私は引退ね。何かをしたいわけじゃないし、平穏に、静かに暮らすと思うわ。まあ……私が生きていればだけど」


 冒険者は、命の危機が常に隣にある。

 それが例え序列二位のエクリプスでも同じ。ある日突然、ゴブリンの棍棒で殴られて死ぬことだってあるのだから。

 ヒジリはつまらなそうに椅子にもたれ、頭の上で腕を組んだ。


「アタシは戦いの人生だし……まあ、考えてることはあるけどね。まあそれは内緒」


 サーシャはヒジリをチラッと見た。

 以前、ハイセと結婚と言っていたが、この場で言うとハイセに迷惑をかけるから言わないのだろう。そのくらいの配慮はできるようだ。

 サーシャは言う。


「私もエクリプスと同じだ。信用できる者にクランを任せた後は……私の人生を歩む。まあ、具体的なことは何も考えていないというのが現状だがな」


 将来───……サーシャにとって実感のわかない、いわば未知の領域だ。

 女であるなら結婚、そして自分の子供を持つという考えもある。

 でも、まだそこまで具体的に考えるほど、大人ではない。

 ウルは軽い感じで言う。


「オレは稼いだ金でバーのマスターにでもなろうかね。経営はしてるが、店は任せっきりだしな……オレの考えたオリジナルカクテルのレシピも大量にあるし、いずれは……なんてな」


 どこまで本気なのかわからない言い方だ。

 その話を聞き、シグムントが「はっはっは!!」と笑う。


「オレは幸せな家庭を築くぞ!! 息子が生まれたら技を伝授したい。ああ、道場を開くのもいいな。クラン運営もあるし、これからの人生は楽しいことばかりだな!!」


 底抜けに明るい。シグムントのいいところだろう。

 すると、エアリアも笑った。


「あっはっは。兄ちゃんなんか明るいな。あたい気に入ったぞ!!」

「はっはっは!! ありがとう、少女よ」

「エアリア!! じゃなくて『空の支配者(スカイライナー)』エアロ・スミス!!」

「はっはっは!! すまんな、エアリア殿。その名、『カッコいいと思い冒険者登録するときに考えた名前』だな?」

「な、なぜそれを……!?」

「オレも同じことをして、母上に殴られたからだ。カッコいい名だと思うぞ!!」

「兄ちゃん、さっすがわかってる!!」

「うむうむ。さてエアリア殿、きみは将来どうしたい?」

「ふふん。あたいは『空の支配者スカイライナー』だ。飛べる限りはずっと空を飛ぶぞ!!」

「おお、素晴らしいな!!」


 エアリア、シグムントは何故か盛り上がり、バルバロスですら口を挟めなかった。意外……でもなく、この二人は相性がよかった。

 それぞれの話を聞き満足したのか、バルバロスは言う。


「七大冒険者でも、それぞれ将来を考えている。若き冒険者たち、今の栄光に手を伸ばすのもいいが、将来を見据えて冒険するということも大切ということだ」


 そして、S級冒険者やA級冒険者に向けて、バルバロスは言った。

 将来……戦い、依頼をこなし、金を稼ぐだけが冒険者ではない。

 冒険に終わりは来る。バルバロスはそのことを伝えたかったのだろう。

 ガイストが補足する。


「冒険者の数は増えていると先ほど言ったが、冒険者協会として、引退した冒険者を講師として雇い、能力の使い方や戦い方を学ぶ場を作ることも考えている。聖アドラメルク神国にある冒険者専用の学園みたいにな」


 それはハイセも初耳だった。

 以前、ガイストもアドラメルク神国に行ったが、学園の下見をすることも理由だったのかもしれない。

 バルバロスの質問が終わり、傍聴している冒険者たちの質問となった。

 質問に、それぞれ指名されたS級冒険者が答えるのだが。


「あの、エクリプス様……その、あなたのクランに加入するにはどうすれば」

「プルメリア王国に行ってちょうだい」

「あの、クラン『セイクリッド』に加入するには……」

「すまない。今はクラン加入の受付はしていない」


 メインは二人、サーシャとエクリプスに質問が殺到する。

 特に、クランに加入するにはどうすればいいのか? という当たり前のことばかり。どうやら、ここで発言して名前を憶えてもらうという算段らしい。

 そんな質問ばかりが続き、ハイセが飽き飽きし始めたころ。


「A級冒険者プレセア。ハイセに質問……」

「……」


 そういえばこいつがいた、とハイセは思った。

 視線だけを送ると、プレセアが立ち上がる。


「……ハイセ。あなたの好きな食べ物、教えてくれないかしら」

「……は?」

「あるでしょ。一つくらい」

「…………」

「決まってんじゃん。パンケーキでしょパンケーキ。蜂蜜とクリームたっぷりの!!」

「お前黙ってろ。あと違う」


 茶化すヒジリ。プレセアも真に受けてはいないようだ。

 特に知られても困らないのでハイセは言う。


「……ミートサンドイッチは好きだな」

「ミートサンドイッチ……わかったわ」

「おい、何考えてる」

「別に? 質問は以上よ」


 プレセアは座った。

 この場にいた勘のいい『女子』は『作る気だな』と思っていた。

 プレセアがハイセのことを特別視しているのは、そこそこ有名な話だった。

 そして、クレアが挙手。


「はい!! 師匠に質問です!!」

「…………」


 どうも嫌な予感がするハイセ。

 クレアはどこかワクワクしながら言う。


「師匠の好きな女の子のタイプを教えてください!!」

「却下」

「そんな!? もう、真面目に答えてくださいよー」

「生涯独身で生きる。はい終わり」

「ひどい!!」


 ハイセは適当に答えた。案の定、クレアは関係のない質問をブッ込んできた。

 普段では、まともに質問しても答えてくれないと思ったらしく、国王やガイストもいる場でなら言うかも……と考えての発言だが、誰の前だろうとハイセは変わらないだろう。

 どこか不満そうなクレアだが、プレセアが指を鳴らすと口がピタッと閉じてしまう。


「むむむー!!」

「あなた、静かになさい」

「むぅぅ!!」


 この時ばかり、ハイセはプレセアに感謝するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] エクリプスはヘイズの食べ物が何であるかを知るためだけにこれを計画したのでしょうか? ハイセに質問するのはエクリプスかハギリかと思いましたが、きちんとした態度でした。
[一言] エクリプスとヒジリはハイセと結婚とか言うと思っていた。この章は恋愛バトル回かと思ったけど違うのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ