七大冒険者会合②
冒険者ギルドに向かう途中、大勢の冒険者がギルド前に集まっていた。
「……?」
ハイセが訝しむ。すると、数名の冒険者がハイセに気付いた。
「見ろ、闇の化身……」「おお、マジで……」
「会合よね……」「やべ、緊張してきた」
注目されるのを嫌うハイセは、それらを無視してギルドへ。
すると、待ち構えていたのかミイナが出迎え、ハイセの腕を掴んだ。
「ハイセさん!! ささ、こっちですこっち」
「なんだお前。掴むな、引っ張るな」
「いいから早くです!! もう、会合なのに堂々と正面から来ないでくださいよ!!」
「…………」
怒られた。
ハイセが「大したことない」と思っている会合は、他の冒険者からすれば「大したこと」であるらしい。すると、再び外が騒がしくなる。
「ははは、押すな押すな。ささ、通してくれ!!」
序列六位『技巧の絡手』シグムントが来た。若い冒険者たちに囲まれており、恐れから注目されていたハイセとは別に騒がれていた。
シグムントはニコニコしながら、若い冒険者たちの前で足を止める。
「あ、あの。シグムントさんに憧れて冒険者になりました!!」
「ははは、それは嬉しいな!! いつか一緒に冒険者しようぜ!!」
「は、はい!!」
冒険者の背中をバシバシ叩くシグムント。ハイセには絶対真似のできないやり方だ。
そして、シグムントの後ろから現れたのは……サーシャだった。
「見て、サーシャさん」「綺麗……」
「なんか、最近さらに綺麗になったよな……」「わかる……」
十八歳になり、その美貌にさらに磨きをかけたサーシャだった。
サーシャは「特に磨いてるわけではないが……」と言うだろうが、クラン運営を始め、子供っぽさが消え、美しいだけでなく艶やかさも身に纏い始めた。少女から女性に変わる……そう表現すべきだろう。
長い銀髪をふわりと揺らしながら、白と銀に輝くサーシャは歩を進める。
そんな時だった。
「到着っ!!」
上空から突如、エアリアが落下してきた。
宿から飛んできたのだろう。背中には光翼が生えており、着地と同時に消える。
そして、サーシャに向かって胸を張った。
「わっはっは。遅いなサーシャ、あたいのが速いぞっ」
「……べ、別に勝負していたわけじゃない」
負けず嫌いのサーシャ。まだ素直に認めないところは子供だった。
すると───周囲が静まり返る。
サーシャたちの後ろから、白いフリルの付いた日傘に、艶やかなドレスを着たエクリプスが現れた。
冒険者というより貴族令嬢。その優雅なる振る舞いに、冒険者たちはただ見惚れるだけ。
「───おはよう、サーシャ」
「ああ、おはよう。時間通りだな」
「そうね……ふふ」
「む、なんだ?」
「いえ。あなたと並ぶと、すごく目立つわね。ほら……周囲の視線を独占しているわ」
「そうか? まあ、七大冒険者同士、目立つだろう」
「そうじゃないわ。私とあなたの美貌で、周囲を虜にしてる、って意味よ」
「と、とりこ、って……わ、っ私はそんなの」
「ふふ、さ、行きましょ」
「お、おい!! むう……」
「なんかあたいを無視してる気がする!! おのれー!!」
三人はギルドに入る。そして三人がギルドに入って数分後、何やら満足したような表情のヒジリが、プレセアとクレアに連れられやって来た。
「あ~お腹いっぱい。朝から焼肉って最高ね!!」
「……あなた、これから会合でしょ」
「うー、なんで私まで……プレセアさぁん」
どうやら、プレセアに拉致されたクレアは、ヒジリの「朝から焼き肉」に付き合わされたようだ。
サーシャ、エクリプスほどではないが、美少女三人が並んでギルドに入る姿は注目された。
こうして、七大冒険者たちがギルドへ……。
「……孤高の荒鷲は、注目されるの嫌うんだぜ」
ウルは人知れず、ヒジリたちのあとにギルドへ入るのだった。
◇◇◇◇◇◇
サーシャたちが会議場に入ると、すでにハイセは座って読書していた。
「ハイセ、おはよう」
「……ん」
「はいはーい。七大冒険者の皆さん、序列順に座ってくださーい」
ミイナがそれぞれの席に案内する。
半円形のテーブルに序列順に座り、会議場の後ろにはS級冒険者とA級冒険者の席、そして王族用の立派な席が用意してある。
ミイナが席に案内していると、他の受付嬢たちが言う。
「ミイナ、なんであんなハキハキ案内できるんだろ……」
「ってか、ハイセさんにあんな態度できるのすごい」
「あの子、新人の頃から変わってないわよね……」
確かに、七大冒険者だろうとミイナはミイナ。ガイストに対しても砕けた態度であるミイナは、ある意味ではハイセもありがたい存在だ。
「ハイセさん、読書はそこまで!! ささ、始まりが近いですよー!!」
「うるさい。デカい声出すな」
「はいはーい。あ、今日終わったらギルマスと飲みに行きません? んふふ、いろいろ聞きたいことありますしー」
ハイセは「シッシ」と追い払うように手を振るが……「駄目だ」とは言わなかった。
ミイナも満足したのか、全員を席に座らせると退室する。
他のS級、A級冒険者たちも席に着いた。クレア、プレセアもいる。クレアはハイセに向かって軽く手を振っていた。
そして、ドアが開き……国王バルバロスとガイスト、ミュアネが入ってくる。
全員が立ち上がり一礼。意外にもヒジリやエアリアもきちんとお辞儀していた。
国王が制すると全員が座る。
「ふむ。七大冒険者が揃い踏み……すごい光景だな、ガイスト」
「ええ。恐らく、今日が最初で最後かと」
「はっはっは。ではでは、始めようか。七大冒険者会合を」
こうして、七大冒険者会合が始まるのだった。





