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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十八章 七大冒険者の会合

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クレアの今

 ハイセは宿に戻ると、主人とシムーンがお金の計算をしているのを見た。


「あ、ハイセさん。お帰りなさい」

「ああ……ただいま」

「お疲れですか? お茶でも淹れますか?」

「そうだな……うん、頼む」


 ハイセは、食堂スペースの椅子に座る。

 大きく伸びをすると、風呂場のドアが開きクレアが出てきた。


「あー気持ちよかった……あ、師匠!! お帰りなさい!!」

「ああ」

「いやー、毎日お風呂に入れるって幸せですね。あ、シムーンちゃん、果実水ありますか?」

「はーい。今持っていきますね」


 クレアは当たり前のようにハイセの前に座り、嬉しそうにニコニコする。

 

「……なんだよ」

「いえ。なんだか師匠と一緒が嬉しくて」

「なんだそれ……ったく」


 クレアは、タンクトップに短パンとかなり薄着だ。前かがみなので胸の谷間が見えているのだが、クレアは気にしていない。

 するとクレアは聞く。


「そういえば、エクリプスさんから聞いたんですけど……七大冒険者の会合ってやるんですよね」

「ああ」

「師匠も出るんですか?」

「まあな」

「そっか。じゃあエクリプスさんも参加するんですね」


 ハイセが参加するならエクリプスも参加する、ということだ。

 どうでもいいのか、ハイセはシムーンが運んできた紅茶を飲む。

 クレアも、果実水を飲み「ぷはーっ」と唸る。


「師匠、明日はどうしますか? そのー……久しぶりに稽古を付けてほしいです」

「いいぞ。ただし、あまり手加減できない」

「は、はい」


 最近、クレアに稽古を付けていない。

 純粋にクレアが強くなったのもあるし、依頼優先だったのもある。対人より魔獣との戦いを優先させたりといろいろあるのだが、ここらでクレアの強さを確認するのもいいかもしれない。


「そういやお前、今の冒険者等級は?」

「えっと、A級になりました。C級だったんですけど、『神の箱庭』と『狂乱磁空大森林』を踏破したことで評価されちゃって」

「A級か……もう立派な一人前だな」

「で、でもでも!! 師匠にはまだ教えてもらいますから!! それにサーシャさんより強くなるには師匠に教えてもらわないと!!」

「わかったわかった。とりあえず……庭じゃ厳しいな。明日は郊外の平原まで行く。早めに休んでおけよ」

「はい!!」


 A級冒険者。

 ピアソラ、タイクーン、ロビンと肩を並べたクレア。

 まだ冒険者になって一年も経っていない。才能だけじゃなく努力を重ねた結果だ。

 だからこそ、ハイセは知る必要がある……今のクレアの実力を。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ハイセはクレアと二人で、早朝からハイベルグ王国郊外の平原に来た。

 クレアは双剣を抜き構えを取る……以前だったら剣を抜かず、ダラダラとお喋りをしてハイセを萎えさせていたが、今はもう到着するなり冒険者の顔になっている。


「師匠」

「来い」


 青銀の闘気が爆発するように膨れ上がった。


(───ここまでとはな)


 少しだけ、サーシャと重なって見えたハイセ。

 ニヤリと笑うと、腰のホルスターから自動拳銃を二丁抜き、クルクル回転させてクレアに向けた。一丁はゴム弾、もう一丁は実弾だ。

 クレアは無言で地面を蹴り、緩急を付けた動きでハイセを惑わす。


「『幻想歩法イリュージョンステップ』」


 残像───しかもこれは、闘気を応用した残像だ。

 鏡のように自分の姿を闘気に移し、あたかもそこにいるように見せている。

 サーシャもやったことのない闘気の使い方に、ハイセは目を剥いた。


「青銀剣、『青の狙撃銃(ブルーライフル)』!!」

「ッ!!」


 そして驚愕した。全く有り得ない方向から『闘気の弾丸』が飛んできた。

 狙いは心臓。ハイセの教え通り『殺す』つもりの一撃。

 だがハイセは反射的に銃を連射。闘気と弾丸が相殺される。


「やるな」


 ハイセは飛び出す。

 クレアの間合い。分身したクレアの斬撃がハイセに襲い掛かる。


「青銀剣、『青の連刃(ブルーエッジ)幻想(ファンタジア)』!!」


 全ての分身による同時攻撃。

 四方から迫る斬撃にハイセはニヤリと笑い、パチンと指を鳴らす。

 すると、地面が爆発した。


「うぁぁぁぁっ!?」


 分身が全て消え、爆風でクレアが吹っ飛んだ。

 そして、いつの間にか接近していたハイセのゴム弾がクレアの両腕に命中……剣を落とし、銃口を額に押し付けられ、決着した。


「いい動きだった。まさか闘気で分身を作るなんてな……だが甘い。実体のある分身を作るのは大した技術だが、動きが単調すぎる。分身を作りすぎたせいで完全に操作できていない」

「ううう……」


 クレアの作った『闘気分身(ソードアバター)』の人数は十人。だが、『剣を振る』くらいの動きしかできていないせいで、ハイセにはすぐ本物のクレアがわかった。

 なので、爆風の直撃ではなく余波で吹っ飛ぶよう地雷の位置を調整し、分身のクレアに踏ませ爆発させ、全ての分身を消した。

 クレアは起き上がる。


「いたた……うう、誰にも見せたことのない分身、通じると思ったのにぃ」

「まずは一体、完全に動かせるようになってから数を増やしていけ。それと……驚いた。成長したな、クレア」

「───っ!! はい!!」


 クレアは嬉しそうに笑い、ハイセの腕に飛びついた。


「えへへ、嬉しいです~!! 師匠~!!」

「だから、くっつくな!!」

「師匠、撫でてくださ~い!!」

「ああもう……子供かお前は」


 クレアを引き剥がし、ハイセはクレアの指導を始めた。


「その分身、どうやって使ってる?」

「えっと、闘気を発射することが得意なので……発射した闘気を操作できないかなって考えて、やってみたらできました。なので、闘気を自分の形にして、私をイメージして……」


 クレアは実演する。

 闘気を纏い、手のひらから闘気の塊を放出、ぐねぐねと人の形になり、色が付き、瓜二つの『クレア』となった。


「こんな感じです。武器も闘気で具現化して、ある程度は命令できます」


 すると、闘気のクレアは剣を振る。


「私の思い通りに動きますけど……けっこう疲れます。今の私じゃ十体が限界です」

「……まずは一体だ。完璧に操作できるようになってから二体、三体と増やしていけ」

「はい!!」


 この日は、クレアの指導で終わった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夕方、ハイベルグ王国城下町。

 夕飯はシムーンが作っているので、素通りする予定だった。

 だが……。


「よう、ハイセ」

「……レイノルド」


 レイノルドがいた。

 ハイセは、レイノルドが自分を待っていたと確信した。

 なので、クレアに言う。


「クレア。先に帰ってろ」

「え、もうすぐ夕飯ですけど……」

「悪い。シムーンに『夜食作ってくれ』って言っておいてくれ。俺の分の晩飯はお前とエアリアで食っていい」

「わ、わかりました……じゃあ、先に帰ってますね」


 クレアはレイノルドにぺこっと頭を下げ、宿に向かって走り出した。

 その後ろ姿を見ながらレイノルドは言う。


「相変わらずいい子だな」

「……俺に用事あるんだろ」

「ああ。一杯飲みながらでいいか?」

「……わかった」


 ハイセはレイノルドと共に、バー『ブラッドスターク』に向かうのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] クレアの成長の早さに驚かされる。冒険者になって一年経たないうちにA級まで昇り詰め、タイクーン・ピアソラ・ロビンに追いつくなど並大抵の努力ではなかったろう。 スピード出世ぶりは横綱大の里を彷彿…
[気になる点] レイノルドがどうのと色々匂わせ的な事はあったけど流石に結成1年のクランでクランリーダーの交代は無いだろうしセイクリッド=サーシャな感じを出していたんで交代やクランを離れてハイセの所へな…
[一言] レイノルドは仕事では頼れる兄貴でも、恋愛関連ではサーシャと恋人という噂を否定しないで利用しようとしたりと姑息だからな。懺悔にでもきた?
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