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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十八章 七大冒険者の会合

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ガイストのお願い③

 ハイセは起床、欠伸をしながら宿の一階に降りると、シムーンが紅茶を淹れてエクリプスに運んでいるところに遭遇した。

 エクリプスは新聞を読み、食後の一杯を楽しむようだ。

 ハイセを見るなり柔らかく微笑み、新聞をテーブルに置く。


「おはよう、ハイセ」

「……おお」


 ハイセは適当に返事をして、エクリプスの隣の席へ座る。

 決してエクリプスの隣に座りたいわけじゃない。そもそも、ハイセの指定席の隣に座り出したのはエクリプスである。

 すると、シムーンがニコニコしながらハイセに紅茶を出す。


「おはようございます。ハイセさん、朝食はすぐにお召し上がりになりますか?」

「いや……紅茶一杯飲んでからがいいな。お前のタイミングで出してくれ」

「はい、わかりました」


 新しいエプロンを付け、スカートを翻してキッチンへ。

 すっかり看板娘であり、カウンターで新聞を読む店主の可愛い孫だ。

 すると、汗だくのイーサンとクレアが宿に入ってきた。


「ふい~……あ、師匠!! おはようございます!!」

「……朝から声がデカい」

「えへへ。あ、イーサンくんお風呂どうします? 一緒に入りますか?」

「え!? いいい、いやいや、クレアさん先にどうぞ!! おれ、掃除しますんで!!」


 本気なのか冗談なのかわかりにくい。

 イーサンは真っ赤になりキッチンへ。どうやらフェンリルのエサを取りに来たようだ。

 するとキッチンから「もう、汚れたまま入らないで!!」や「ご、ごめん!!」と謝る声が聞こえ、エサ入れを持ったイーサンが慌てて外へ。

 クレアは風呂場へ。そして、シムーンが朝食のプレートをハイセの前に置いた。


「もう、イーサンってば」

「許してやれ。それと、イーサンの分の朝食も用意してやってくれ」

「あ、もう準備してます」

「じゃあ、俺のところに持ってきてくれ」

「はい!!」


 ちなみにイーサンは、井戸で水浴びをしてから来る。

 ハイセと朝食を食べると、風呂から上がったクレアと入れ替わりで風呂へ。そのまま風呂掃除から始めるようだ。

 そして、朝食を食べ終わったハイセはおかわりの紅茶を楽しみ、イーサンと入れ替わったクレアが朝食を食べ始める。


「師匠、今日は依頼ですか?」

「ああ」

「あの~……今日は私、お休みします。実はエアリアさんに頼まれて、王都を案内するんです」

「……好きにしろ」


 ハイセは新聞をめくる。

 エクリプスも同じように新聞を読み、クレアをチラッと見た。


「クレア」

「え?」

「その案内だけど……どこに行くの?」

「えっと、エアリアさんが『面白いところ』と、『おいしい物いっぱい食べれるところ』って希望だったので……とりあえず、中央広場と、飲食店街に行こうかと」

「……それ、私も一緒にいい?」

「え」


 思わぬところからの誘いに、クレアはパンを食べる手を止めた。

 ハイセも、チラッとエクリプスを見る。


「……お前、王都に来てけっこう経つだろ」


 ハイセの質問に、エクリプスは目を輝かせる。

 まさか、ハイセから質問されるとは思っていなかったようだ。


「ええ。私、お散歩はするけど、お店とかに入ったことはあまりないの。食事もここで済ませるし、アイテムボックスに物資があるからお買い物もしないし」

「…………」


 そもそも、エクリプスはハイセに会いに来たのだ。

 それ以外の用事はない。だが、ハイセから『許し』をもらい、一から関係性を築くことができるようになり、少しずつ余裕が出てきたようだ。

 だが、ハイセにはどうでもいいのか「へえ」と興味なさそうに返事をした。

 するとここで、二階からふよふよと光翼を生やしたエアリアが、パジャマ姿で飛んできた。


「ふああああああ……よくねた」

「あ、エアリアさん。おはようございます」

「ん……あさごはん」


 そのままフワフワと、クレアの隣に座る。

 ひどい寝ぐせで、パジャマはズレて、眼はショボショボしており、首もフラフラ動いている。

 朝が苦手だとすぐにわかった。


「ひどい寝ぐせですね……後で直してあげますね」

「ん~……ハイベルグ王国あったかいし、ついつい寝すぎちゃうぞ」

「あはは。その気持ちわかります。朝ご飯食べたら出かけましょうね」

「ん~……」


 そして、シムーンが朝食を運んでくると、エアリアはモグモグ食べ始めた。

 ハイセは新聞を閉じ、シムーンに言う。


「行ってくる。晩飯頼むな」

「はい。お気を付けて」


 そして、カウンターに座る主人をチラッと見ると、主人は軽く頷いた。

 この中で最も付き合いが古いが、対応はまるで変わらない。

 その態度が、ハイセにはありがたかった。


「あれ……ハイセ、どこ行く?」

「依頼ですよ。冒険者ですから」

「ん~……」


 ハイセは眠そうなエアリアが『余計な事』を言い出す前に、さっさと宿を出るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 一時間後。

 ようやく目が覚めたエアリアは、クレアに髪を梳いてもらっていた。

 

「うー、ハイセも誘いたかったぞ」

「あはは……でも師匠、たぶん『めんどくさい』とか『嫌だ』とか言いそうですよね」


 一階ロビーには、まだ紅茶を飲んでいるエクリプス、そしてクレアとエアリアがいた。

 エアリアの支度が終わったら、三人で街に出かける予定だ。

 クレアは、チラッとキッチンを見る。

 ここからは見えないが、シムーンもいるだろう。

 すると、主人が言う。


「シムーン。ちょっといいか?」

「あ、はーい。なに、おじいちゃん」

「……最近、ワシは運動不足でな。今日の仕事はワシがやろう。お前はお休みだ」

「え……ど、どうしたのいきなり」

「ははは。今言った通り、運動不足なんだよ。ささ、行きなさい」

「う、うん」


 主人はクレアをチラッと見た。それだけでクレアは察した。


「あ、シムーンちゃん。お休みなら一緒に出掛けませんか?」

「え……あ、はい!!」

「じゃあ、着替えて一緒に出掛けましょう。あ、イーサンくんは……」

「じいちゃん、風呂掃除終わったよ!!」

「そうか。じゃあ、今日はじいちゃんと一緒に、フェンリルの散歩でも行こうかの」

「わかった!!」


 どうやら、心配はなさそうだ。

 シムーンが母屋に着替えに行くと、宿の入口のドアが開いた。


「朝早くから失礼」

「あれ、ガイストさん」


 なんと、ガイストが現れた。

 ギルドマスターの登場に、エクリプスの目がスッと細くなる。


「……ハイセならいないわよ」

「ああ、用事はあるのはエクリプス殿、そしてエアリアの二人だ。時間は取らせない……少しだけいいかな?」

「私たち、これから出かけるの。悪いけど邪魔はさせないわ」

「すぐに終わる。五分でいい……話を聞いてくれないか?」

「あたいはいいぞ。その代わり五分、それといつかメシ奢れー!!」

「ははは、構わんぞ……それにしても。ずいぶんと賑やかな宿になったものだ」


 ガイストはエクリプスの前に座る。

 主人は、シムーンの代わりに紅茶を淹れようとしたが、ガイストは丁寧に拒否した。

 そして言う。


「用件だけ。近々、七大冒険者を集めた会合を開きたいと考えている。序列二位エクリプス殿、序列七位エアリア、ぜひ参加して欲しい」

「おおー、なんか面白そうだな!! あたい出てもいいぞ。ふふん、どんな連中がいるのか楽しみだ!!」


 エアリアは即答した。あまり深く考えていないようである。

 エクリプスは少し考える。


「……それ、ハイセは出るの?」

「話はしたが、あまり乗り気ではなさそうだった。とりあえず、サーシャにヒジリ、ウル、シグムントの四人は確定している。ああ、エアリアもだな」

「エアロ・スミスだ!! そこ間違えんな!!」

「ははは、悪い悪い」

「……ハイセが出るなら参加してもいいわ。出ないなら参加しない」

「ほう」

「遅れましたっ!! って……あ、ガイストさん!! すみません、いまお茶を」

「いや、もういい。これからお出かけなんだろう? 楽しんでくるといい」


 ガイストは立ち上がり、シムーンの頭をポンと撫でた。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 宿から出たガイストは、一人歩いていた。


「予想通りの返事か……やはり、ハイセを説得せねばな」


 七大冒険者の会合。

 これが実現すれば、今の冒険者たちにとってもいい刺激になる。

 ガイストは、ギルドへの道を歩きながら呟く。


「とりあえず……今夜あたり、ガポ爺さんの屋台にでも誘ってみるか」


 そう言い、ガイストはギルドへ戻るのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 一言で言えばこのガイストって計画性の無いバカとしか思えない。まぁ自分が頼めばハイセやサーシャは断らないという判断してたんだろうが計画を練る段階で最低でも1位のハイセに根回しをしとけよと思った…
[一言] エクリプスが可愛い。 ハイセを説得しないと、トップの1、2が抜けてかなり微妙な集まりに
[良い点] だからエクリプスは私のお気に入りのキャラクターです 彼女は愛する人のためにできる限りのことをします 彼女がどんな姿をしているのかを見るのが一番楽しみだったキャラクターだと思います
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