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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十七章 狂乱磁空大森林

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迷いの森・狂乱磁空大森林④/真の攻略

 ハイセは手にバインダーを持ち、さらに上空から垂らされる鎖を掴み歩いていた。

 上空にはエアリア。頭痛がしない程度の高さで飛行し、遠くに見える『巨大な何か』を目指し飛んでいる。

 エアリアは、やや顔色が悪い。


「うー、頭痛はしないけど、なんか気分あんまりよくないぞ」

「耐えろ。お前だって早く仲間と合流したいだろ」

「そうだけどー」


 と、その時だった。

 エアリアを襲おうと飛んできた怪鳥が、地上から放たれた『闘気の刃』で両断された。

 

「おおー、すごいですサーシャさん。私も闘気を飛ばすの得意ですけど、サーシャさんほど鋭い感じではないです」

「お前は闘気を飛ばすのが得意だったな。私は身体強化が得意だが……苦手だからこそ訓練を厳しくしている」

「ふむ……私もさらに師匠と鍛えないと!!」

「ちょっとそこ、楽しそうにしてないで手伝いなさいよ」


 サーシャとクレアの談笑している場所から近いところでは、ヒジリが猿の群れと戦っていた。討伐レートこそ高くないが、なかなかすばしっこく面倒な猿である。

 

「このエロ猿、アタシの胸触ったり押し倒そうとしてくるのよ。攻撃性高くないかなーって思ったら、急所を突いた攻撃たまにしてくるし。まあ、そういうつもりなら殺せるけど」


 ズドン!! と、ヒジリが猿の腹を殴る。

 猿は悶絶し、ヒジリはそのまま蹴り飛ばした。

 指をコキコキ鳴らし、不敵な笑みを浮かべるヒジリに、猿は恐怖。

 サーシャとクレアを見るが、二人も闘気を発し戦意充分。

 不利とわかるなり、猿は逃げ出した。

 その様子をチラ見しながらハイセは言う。


「……どの魔獣も新種だな。『狂乱磁空大森林』の固有種か。はあ……地図に魔獣の記録に進路確認と忙しい。こういう時にレイノルドやタイクーン、ロビンがいれば助かるんだが」


 少しぼやくハイセ。

 レイノルドはマッパーの基礎知識を備えているし、タイクーンは魔獣の記録が得意。ロビンは斥候として優秀なので進路確認はお手の物だ。

 すると、クレアがひょこっとハイセの隣へ。


「わー、師匠の字ってすごく綺麗ですね。それに、地図作成とか……あの~、これ私もできますか?」

「マッパーの基礎知識がないと無理だ。勉強するなら参考書くらい貸してやる」

「じゃあお願いします!! 野営の時に読んでみたいです」

「わかった。何だお前、やる気あるな」

「えへへ、師匠の役に立ちたいので」

「……そうか」


 ハイセは少しだけ嬉しかったのか微笑んだ。それを見たクレアはドキッとして胸を押さえる。


「え、えっと……じゃあ、サーシャさんと周囲の護衛しますんで!!」

「ああ。サーシャに『できるだけ魔獣を寄せ付けるな』って言っておいてくれ」

「はい!!」


 それから数時間、ハイセたちは森の奥にある『巨大な何か』を目指して進んだ。

 現れる新種の魔獣を倒し、記録。

 戦うサーシャたちもだが、記録するハイセも疲労してくる。

 そして、半日ほど進み上空のエアリアが。


「ううー……ハイセー、そろそろ休みたいぞー」

「ん、そうか。ふう……確かに疲れたな」


 首をコキコキ鳴らすハイセ。みんなに集合を呼びかけた。

 エアリアが地上に降り、ぐでっとしながらハイセに抱きついた。


「喉かわいたー……今日はもう飛びたくないー」

「わかったわかった。今日はもう野営しよう。サーシャ、どこかいい場所ないか?」

「そうだな……水音がする方向に向かおう。川や泉があるかもしれん」


 サーシャが耳を澄ませながら歩くと、近くで水音がした。

 そこに向かうと、ちょうどいい感じに岩の隙間から水が流れており、その水が溜まって小さな泉となっている場所があった。

 サーシャが水を手で掬って舐める。


「……毒はないな」

「さ、サーシャさん。いきなり舐めるのは危険じゃ……」

「安心しろ。私もよくわからないが、毒が効かない体質なんだ」

「ど、毒が効かない?」

「ああ。妙なことに、傷薬や治療薬は効くが、毒は効かないんだ。ははは、ありがたい体質だよ」

「…………」


 ハイセは少しだけ昔を思い出す。

 ピアソラ……サーシャが寝ている時、こっそり治療魔法を何度もかけたり、怪我をしていないのに回復魔法を何度もかけていた。

 そういうのが蓄積され、サーシャの体質が変わったのでは……と、ハイセは思った。推測に過ぎないし、言ったところで意味がないので何も言わないが。 

 そのまま野営の支度をして、食事となる。

 今日は、ヒジリが狩った牛の魔獣肉。ヒジリは器用に首を手刀で斬り落とし、心臓を殴って一時的に収縮力を増加させ、豪快に血抜きをした。

 後は、サーシャがその場で、一瞬で斬り刻み解体……その手際にクレアが感動していた。

 肉を焼き、シンプルに塩コショウで味付け。ヒジリは美味しそうに肉を齧る。


「で、アンタの方はどう? 目標までどんくらい?」

「…………」


 ハイセは考え込む。

 羊皮紙に何度も計算式を書き込んで結論を出した。


「最初に上空に上がって目算した時と、今日歩いた距離を計算すれば、あと数日で到着する予定だが……簡単すぎる。新種の魔獣も脅威だが、本当にそれだけで『禁忌六迷宮』といえるのか……」

「難しいのはわかんないわ。で、どうなのよ」

「……わからん。とにかく、気を引き締めよう」

「えー? なによそれ」

「……とにかく、メシ食ったら寝ろ」


 そう言い、すでに寝ているエアリアをチラッと見て、ハイセはテントへ入った。

 

「……もう一度だけ、無理してもらうしかないか」


 ◇◇◇◇◇◇


 夜。

 見張りの交代となり、ハイセはテントから出た。

 近くのテントではすでに、ヒジリやクレアの寝息が聞こえる。

 サーシャが見張りをしているはずだが、誰もいない。


「……まさか」


 何かあったのか。

 ハイセは警戒していると、近くの泉で水音がした。

 何かがいる。そう思い近づくとそこにいたのは。


「えっ……ハイセ?」

「サーシャ……」


 サーシャが水浴びをしていた。

 裸身を晒し、水が身体を流れていく姿をハイセは見た。

 美しいという表現はこの身体のためにある。

 柔らかそうな胸、引き締まった身体付き、白く滑らかな肌。そして月光に輝く銀色の髪。

 思わず凝視していると、サーシャが恥ずかしそうに身を隠す。だが、大きな胸は隠しきれず、腕からこぼれていた。


「あ、あの……」

「───……っ、す、すまん」


 我に返り、ハイセは後ろを向く。そして、呼吸を整えつつ聞いた。


「み、見張り中に何をやってんだよ……水浴びとか、交代後でもいいだろ」

「す、すまない。お茶をこぼしてしまって、少し汚れてしまってな……魔獣の気配もないし、そのまま水浴びしていた」

「そ、そうか……その、悪かった」

「い、いや。私も軽率だった……」


 会話が途切れる。

 ハイセはその場を去ろうとしたが、サーシャが言った。


「ま、待てハイセ。その……聞きたいことがある」

「……今じゃなきゃダメか?」

「うぐ。その、別にいい。こっちを見なければ」

「……何だよ」

「その、先程お前は何か言い淀んだな? ここをいつ出られるのかとヒジリが聞いた時だ。ハイセ……お前、何かを隠しているんじゃないか?」

「…………」


 少し黙り、ハイセは言う。


「お前は誤魔化せないな。ああ……俺は懸念している。もしかしたら、この森から出れないかもしれないってな」

「……何?」

「本来なら、もう到着しているはずなんだ。でも、到着どころか『巨大な何か』に全く近づいている感じがしない。まるで、俺たちから逃げているみたいにな」

「……どういうことだ?」

「ここは、普通の森じゃない。禁忌六迷宮の名にふさわしい森ってことだ。ふ……面白くなってきた。サーシャ、ここを踏破するぞ。そうすれば、残りの禁忌六迷宮はひとつ……」

「なるほどな。困難な道ほど挑み甲斐がある、ということか」


 サーシャが泉から上がり、布で髪を拭き始める。

 そして、クスっと微笑んだ。


「面白い……ハイセ、私にできることなら何でも言ってくれ。この剣、攻略のために全力で振るうぞ。」

「ああ、頼むぞ」


 ハイセが思わず振り返ると、そこには裸で剣を掲げるサーシャがいた。

 

「って、こ、こっちを向くな!!」

「す、すまん!! ってか服着ろ!!」


 禁忌六迷宮『狂乱磁空大森林』の、真の攻略が始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 夜間の不寝番や警戒の交代は、原則として持ち場を離れてはならない。交代時に現状や物品の申し送りや申し受けを行う。持ち場を離れて水浴びとは⋯冒険者としてあるまじき行為。しかも、クランマスターなら…
When Sasha hear that Haise saw Claire naked twice. she made sure that haise will see her naked twice…
[気になる点] ハイセって本当にサーシャ以外の女キャラには塩対応しかしませんね。サーシャがエアリアみたいな状態なら断言します!絶対に気にして休むかとか気遣いをするはずです!例え和解前の状態だったとして…
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