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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十七章 狂乱磁空大森林

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迷いの森・狂乱磁空大森林③/遠くにある何か

「ど、どうだ……うっぶ」

「う……確かに、気持ち悪いな」


 現在、ハイセはエアリアに抱えられ上空にいた。

 上空百メートルほどに上昇し、そのまま周囲を観察する。

 ハイセは吐き気を堪え、周りを見て言う。


「一面が森、で……奥の方は霧に包まれている。川も流れているし、湖みたいなのもある……この森が『移動』する仕組みがわかるかと思ったが……ん?」


 ふと、ハイセは気付いた。

 森の奥が霧に包まれ見えにくいが……霧に隠れ、妙な『何か』が見えたような気がした。

 すると、ゆっくりと下降が始まる。エアリアが限界のようで、真っ青だった。

 そして、地上に降りるなり、エアリアは森の奥へ……どうやら嘔吐しているようだ。

 ハイセも顔色は悪いが、エアリアほどではない。地上ではサーシャが待っていた。


「とりあえず、西の方向だな」

「西? 何か見えたのか?」

「霧で見えにくかったが、巨大な何か……塔みたいのが見えた」

「なるほど……ところでハイセ、気分はどうだ?」


 サーシャに言われ、ハイセは軽く肩を動かす。


「ガイストさんとの組手に比べたら大したことがない」

「あの組手か……内臓がグルングルン揺れるような」

「俺もお前も何度も吐いたよな。俺の場合、ソロになってからまた修行付けてもらったけど……俺とお前で受けた組手がどれだけ『優しい』のか理解したよ」

「そ、そうか……」

「おーい!! 肉、焼けるわよー!!」

「いっぱいあります!! 今日はお肉パーティーです!!」


 少し離れた拠点では、ヒジリとクレアが魔獣の肉を焼いていた。

 少し前に襲って来た魔獣は、ハイセも知らない新種の『虎』だった。間違いなく『狂乱磁空大森林』にのみ棲む新種の魔獣だろう。

 ハイセは言う。


「あの魔獣肉、食えるのか?」

「恐らくな。新種だからわからんが……毒はないと思う。討伐レートは推定Sといったところか。素材などは私が持ち帰り、ギルドに卸そう」

「次に遭遇したら俺も戦う。新種の魔獣を見つけたら、できるかぎり情報を集めてギルドに報告する義務もあるからな」

「冒険者の基本だな。ふふ、なんだか懐かしい」

「……お前、楽しそうだな」


 ハイセがやや呆れたように言うと、サーシャが少しモジモジしながら言う。


「その……ハイセ、みんなには内緒にしてくれ。実は……少し嬉しいんだ」

「嬉しい?」

「ああ。『セイクリッド』としてじゃない、一人の冒険者として、未知の迷宮に挑む今の気持ち……こんな言い方をしていいのかわからないけど……やっぱり冒険は楽しい」

「……お前、事務仕事ばかりしてそうだよな。まあ、レイノルドたちもだろうけど」

「ああ。また『セイクリッド』で依頼を受けようと話もしていた」


 ハイセは、サーシャをジッと見て、少しだけ笑う。


「なあ、サーシャ」

「ん?」

「……チーム『セイクリッド』で依頼を受けるんじゃなくて、たまにはソロで、一人の冒険者として依頼を受けてみるのも悪くないんじゃないか? レイノルドも、ロビンも、仲間でする冒険が好きなんだろうけど……ソロでしか見えない物も、きっとある」

「……ハイセ」

「あー……俺らしくないな。悪い、忘れろ」

「いや、覚えておく。ふふ、お前の助言、みんなに伝えていいか?」

「やめろっての……」


 サーシャは嬉しそうに微笑み、骨付き肉を振り回しているヒジリの元へ。

 ヒジリとクレアは肉を齧り、至福の笑みを浮かべていた。


「おいっしい!! この肉、めっちゃ美味いわ!!」

「すっごいです!! 濃厚な肉の脂が滴ってるのに、鶏肉みたいにハラハラほぐれて……んんん~!!」

「ヒジリ、クレア、そんな口に詰め込みながら喋るな。全く……」


 サーシャは姉のように、二人の世話を焼く。

 すると、藪からエアリアが出て来た。


「ううう……肉の匂い。いつもなら嬉しいけど、今はなんかヤダ……」

「大丈夫か? 悪いな、無理させて」

「いい……」

「……シチューでも食うか? シムーンが作った栄養満点のがあるけど」

「シチュー!! そんなのあるのか!?」

「ああ。野菜を溶かして、さらに野菜を入れて煮込んだ特製のシチューだ。野営でも栄養のある食事を、って作ってくれたんだ。寸胴鍋で十個ほどある」

「食べたい!!」

「わかった。今日の功労者はお前だ。他に食いたいのあるなら言え」

「じゃあケーキ!!」

「あるけど……食えるのか?」

「ふふん。甘いな我がライバル!! フリズドにはこういう言葉がある……『ケーキは凍る前に食え』ってな!!」

「意味わからん。でもまあ、出してやる」


 ハイセはシチューをアイテムボックスから出し、自分用とエアリア用にと皿へ盛ると、羨ましがったクレアやヒジリが騒ぎ出し、サーシャも欲しがったので結局全員分を皿に盛った。

 禁忌六迷宮『狂乱磁空大森林』にいるとは思えないほど、楽しく騒がしい夕食となるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夕食を終え、今後の行動方針を話すことにした。


「上空を飛んでわかったが……ガスや毒が散布されているわけじゃない。恐らく、雷系の魔法に近い『何か』で、身体に妙な振動を与えている……と、思う」

「雷? そういえばタイクーンが言っていたな……痺れさせるだけが雷ではないと」

「俺も詳しくはわからない。でも、その可能性が高い。ヘリでの移動や脱出も考えたが…、あの最悪な気分のまま操縦すると墜落の可能性もある。正攻法での脱出、『踏破』を目指すしかない」

「では……先程言った『巨大な何か』を目指すのだな?」

「ああ。何度も言うが、可能性があるなら何でも試す。目算だが、数十キロ先、恐らく西方向だ」


 そこまでハイセが言うと、クレアが挙手。


「あの師匠、その『巨大な何か』を目指すのはいいんですけど……本当にまっすぐ進めるんですか? 私なりに禁忌六迷宮を調べてみたことがあるんですけど、狂乱磁空大森林は迷いの森で、入った人間を惑わすって……」

「いい質問だ。恐らく厳しい……だから、エアリアに頼るしかない」

「む、あたいか? って……まさか」

「ああ。お前は上空から、目的地を見ながら飛んで欲しい」

「……ヤダ。気持ち悪くなる」

「わかってる。だから、今日の高さまで行かなくていい。二十メートルくらいで飛んで、とにかくまっすぐ進め」


 ハイセはアイテムボックスから『鎖の束』を出し、エアリアに渡す。


「こいつを腰に巻いて、地面に垂らせ。俺がそれを掴んで進む」

「おお、いいアイデアだな!!」

「サーシャ、ヒジリ、クレア。戦闘はお前たちに任せる。俺はマップを作成しながら進む」

「そういえばお前はマッパーの資格も持っていたな」

「え!! そうなんですか師匠!!」

「……冒険者として使えそうな資格だから取っただけだ」

「アンタ、前から思ってたけどかなり頭いいのねー」

「うるさい。とにかく、俺は先に仮眠する。四時間後に起こせ」


 そう言うと、ハイセはテントへ戻った。

 有無を言わさぬ決定。ちなみに現在は夕方過ぎ。これから四時間後だとちょうど眠くなる時間で、女性陣は朝までぐっすり眠れるだろう。

 クレアは嬉しそうに言う。


「師匠、すっごく優しいです。それに、命の恩人だし、カッコいいし、紳士的で…」

「紳士ぃ? アンタ、ハイセがそう見えるの?」

「はい。実は……ツンドラ氷山で私と師匠が雪崩に巻き込まれたんですけど、師匠は身を挺して私を救ってくれて……冷え切った私の身体を温めるために、お風呂に入れてくれて」

「ま、待った!!」

 

 と、サーシャがストップをかけた。


「お、お風呂とは……」

「え、えと……その、恥ずかしいんですけど、私気を失ってて、でも身体が冷えちゃって……師匠が服を脱がしてくれて、お湯の入った樽に入れてくれて」

「つ、つまり……」

「うう、恥ずかしいです。師匠に見られたの、二回目です」

「クレア、それ……『責任』取ってもらわないとね!!」

「へ?」


 なぜか自信満々にヒジリが胸を張って言う。


「知ってる? 女はね、結婚する男以外に裸見せちゃダメなのよ!! つまり!! アンタはもう、ハイセ以外と結婚しちゃダメってこと!!」

「え!? し、師匠と結婚ですか!?」

「どうどう? アタシはするけど、アンタはどう?」

「えっと、どうと言われても……そりゃ、師匠のことは大好きですけど」

「じゃあ決まり!! うんうん、賑やかなのはアタシも嬉しいわ」

「えっと……よくわかんないですけど、よろしくお願いします!!」

「ま、待った!!」


 二度目のストップ。

 サーシャはヒジリに顔を寄せ、耳元で言う。


「お前、まだ結婚とか言ってるのか」

「そりゃそうよ。将来は大事じゃん」

「いやその、ハイセに決定権はないのか?」

「駄目とは言わないでしょ。それにハイセ、アタシやクレアみたいな美少女と毎日一緒にいれるなら、喜んで受け入れるわ!!」

「その自信はどこから来るんだ……」

「アンタもハイセのこと好きでしょ。素直になりなさいよ」

「う、うぐ……べ、別にその」

「はいはいはい。って……」


 妙に静かなエアリアを見ると、椅子に深く座ってグースカ寝ていた。

 話は終わり、サーシャはエアリアに毛布を掛けてやるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] これはエクリプスの計画なのか? ハイセが自分の気持ちを拒否できない状況を作り出す 確かに、女の子全員がこれに同意すれば、ヘイズは拒否できないでしょう すばらしい だから私はこの女の子が大好…
[良い点] エアリアは磁気酔い?してるくらいが丁度良い。 [気になる点] 何が封印されているのでしょう。 やたらデカくて檻となる施設を作れず、大森林ごと封印した感じでしょうかね? [一言] もし結婚す…
[良い点] これまでのいろいろが、変化につながっているところ。 サーシャは、「セイクリッド」から離れていても冒険が素直に楽しいと感じられるようになった。 (空中城のとき、あまり楽しいと感じられなかっ…
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