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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第四章 ハイベルグ王国の危機

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遭遇

 サーシャは、レイノルドと一緒に古商業区を歩いていた。

 今日は古商業区全体が『古書市場』になっているようだ。

 本棚を並べた露店、普段は開いていない古書店の扉が全開放、いつもはないカフェスペースがあり、読書スペースとなっていたりと、人が大勢いて読書や買い物を楽しんでいる。


「タイクーンが喜びそうだな」

「あいつは別な日に行くだろ。えーと、十日間開催されてるみたいだからな」


 羊皮紙を見ながらレイノルドは言う。

 そして、チラリとサーシャを見た。


「古紙、インクの香りがいいな……」


 普段着のサーシャなんて、久しぶりだった。

 シンプルなシャツとスカートのみ。アクセサリーはあまり好まないのか、翼を模した髪飾りだけ付けている。そして、財布が入った小さなカバンを手に歩く姿は、少なからず注目を浴びていた。


「あれ、S級の……」「あっちはA級のレイノルドだぜ」

「付き合ってるって噂、ホントみたい」「いいよな、サーシャさん」


 冒険者たちだろうか、ヒソヒソ噂をしていた。

 だが、悪い気はしないレイノルド。

 サーシャと二人きりになるのは、久しぶりだった。


「な、なぁサーシャ。いろいろ見てみようぜ」

「ああ。お、あそこの本屋……ふむ、見てみるか」


 初老の、眼鏡をかけた男性が一人でやっている露店だった。

 小さな本棚が二つだけの露店で、他には栞を売っている。


「銀細工の栞……」

「いらっしゃい、買うかね?」

「……素晴らしい細工だな」


 サーシャが褒める。

 蝶を模した栞は、かなり精巧にできている。

 男性はニコニコしながら言う。


「これはうちの孫が作ってくれた栞でねぇ……ふふ、綺麗だろう?」

「ああ、美しい……よし、これをくれ」

「まいど。本はどうだい?」

「おっと、そっちも見せてもらおう」


 サーシャは、本棚を物色し始めた。

 その後姿を、レイノルドは満足そうに眺め、隣に並んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセは、たまたま目に入った露店本屋で、面白そうな古書を何冊か買った。

 アイテムボックスに入れ、他の本屋を見ながら歩く。

 一緒に来たプレセアは、いつの間にかいなくなっていた。プレセアは本当に、一人で本屋を探すために行ったようで、ハイセは一安心。

 古商業区の中心に来ると、なかなか活気があった。

 ハイセは、この辺りで一番大きな本屋に入り、物色を始める。


「久しぶりに来たけど、やっぱりいいな」


 趣味は読書。そう言っていいくらい、本は好きなハイセ。

 最初は、教養として読んでいた。

 戦術書や、引退した冒険者が執筆した体験談などが好きだった。引退冒険者が執筆した本の半分近くは『盛っている』と言われているが、そういうのを含めて読むのが好きだった。

 大型店を出て、少し外れにある小さな古書店へ入り、本棚を物色する。

 すると、面白そうなタイトルの本があった。


「お、『S級冒険者ジェラルドの冒険記』……S級冒険者にジェラルドなんていたのかな?」


 S級冒険者は、ハイベルク王国の『冒険者記録』に名が残る。

 ギルドでも確認できるので、暇な時調べてみるかとハイセは思い、手を伸ばした。

 すると、ちょうど横から伸びてきた柔らかな手が触れる。


「「あ───すみませ……え」」


 そこにいたのは、サーシャだった。

 全く同じ本、同じタイミングで手を伸ばし、手が触れ合った。


「あ……す、すまん」

「あ、ああ」


 会話が終わる。

 ハイセは一瞬動揺したが、すぐに平静になる。

 すると、レイノルドが来た。


「おーいサーシャ……って、ハイセ。なんだ、お前も来たのか?」

「まぁな。追放された後は忙しくて、そんな暇なかったけどな」

「……そうかい」


 どこか棘のあるハイセの言葉に、レイノルドが眉をひそめる。

 ハイセは続ける。


「お前たちはデートか? 恋人同士、仲がいいことで」

「な、こ、恋人……!?」

「ま、そういうこった」


 すると、レイノルドがサーシャの肩を抱いた。


「れ、レイノルド!?」

「じゃあなハイセ。せいぜい、楽しくな」

「…………」

「待て。ハイセ、私たちは恋人では───「ハイセ」


 すると、本を大量に抱えたプレセアがハイセの隣に立った。


「楽しそうだけど、どうしたの?」

「別に」

「そ。ね、お茶にしない? 歩き疲れたわ」

「そんな本抱えてるからだろうが……」


 ハイセは歩き出し、プレセアが後を追う。

 その後姿を、サーシャは呆然と見送った。


「へっ……どうやら、寂しくはないみたいだな」


 レイノルドの言葉が、なぜかサーシャの胸に突き刺さった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 戦闘行動は秀逸でも肝心の決断力や咄嗟の判断力が鈍いサーシャ。冒険者駆け出しの頃、ガイストから「判断が遅い」と何度も指摘されていたんだろうね⋯
[気になる点] 古文書を読み解く手がかりが…と思ったらこっちか [一言] 王子の時といい、サーシャは肝心なところで優柔不断というか判断が鈍るね こういうとき即座に肘打ちも出来ないようだと、その内何か取…
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