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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十七章 狂乱磁空大森林

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迷いの森・狂乱磁空大森林②/状況把握

「む……」

「あ、起きた。大丈夫ですか? エアリアさん」

「……おまえ、ダフネ?」

「あー……」

「おーいクレア、ご飯の準備できたわよー!!」

「……クレア?」


 寝ていたエアリアが身体を起こすと、そこにいたのは『ダフネ』だった……が、ぼんやり目で見ていたせいか、『ダフネ』が『クレア王女』に見えてしまっていた。

 『ダフネ』が慌ててカツラを被るが、テントに飛び込んで来たヒジリが言う。


「なに変なカツラ被ってんのよ。さ、食事食事。先行ってるから!」

「……えっと」

「……お前、どういうことだ?」


 完全に目を覚ましたエアリアが、カツラを外す『クレア』を見て警戒する。

 もう隠せないと感じたのか……『クレア』は苦笑し、頭を下げた。


「ごめんなさいエアリアさん。実は……」


 クレアは全て説明した。

 今いる『クレア王女』は侍女のダフネであり、本物は『ソードマスター』として冒険者をやっている自分であることを。

 信じてもらえるか微妙だったが。


「なーんだ、そういうことなのか!!」


 エアリアはあっさり信じ、ウンウン頷いていた。

 驚くクレアだが、エアリアはニカッと笑って言う。


「あたいも、エアリアって偽名を名乗る時あるしな!! 名前なんてどーでもいい、オマエはダフネで、クレア王女なんだしな!!」

「…………えーっと」

「ダフネ、クレア、どっちで呼べばいい? クレアか?」

「じゃ、じゃあクレアで」

「うむ!! よし、メシにしよー!!」


 エアリアはテントを飛び出し、残されたクレアは苦笑するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 エアリアが外に出ると、そこは森だった。

 周囲は緑だらけ。テントの裏には大きな岩があり、テントの前ではサーシャが竈の上に置いた鍋をスプーンでかき混ぜていた。

 サーシャが気付くと、にっこり微笑む。


「おはよう。体調はどうだ?」

「……い、いいぞ!! うむ、助けられたようだな!!」

「ああ、気にしなくていい。さあ、食事にしようか」

「…………」


 美しい少女だった。

 綺麗な銀色の髪、白を基調とした鎧や服装、大きな瞳。まるで一国の姫……失礼な考えだが、クレア王女より王女っぽい女、そう思うエアリアだった。

 やや警戒しているのに気付いたのか、サーシャが言う。


「自己紹介がまだだったな。私はサーシャ……S級冒険者序列四位『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』と言えばわかるか?」

「ブリュンヒルデ……あ!! オマエがそうなのか!?」

「ああ。お前は序列七位『空の支配者(スカイライナー)』エアリアか」

「エアロ・スミスだ!! エアロ・スミス!!」

「あ、ああ。わかったわかった。さ、食事にしよう」

「おーい、あっちに川流れてた!! 綺麗な水だったし、あとで水浴びしよっ」

「…………」


 と、呼びに行ったのかヒジリがハイセと戻って来た。

 ヒジリはエアリアに気付く。


「アンタ、大丈夫?」

「む、オマエは誰だ」

「ヒジリ。序列三位『金剛の拳(ヘラクレス)』よ」

「さ、三位……ぐぬぬ」

「で、大丈夫?」

「う、うむ。平気だ」

「よし。じゃあハイセ、みんな揃ったしご飯にしよっ」

「ああ」

「あ!! 我がライバルのハイセ!!」

「ライバル? ちょっと、アタシを差し置いてライバルとかどーいうことよ」

「……サーシャ、メシ」

「あ、ああ」

「わぁ、なんだか楽しそうなメンバーになりましたねっ!!」


 どこか嬉しそうなクレアをよそに、ハイセはため息を吐くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 食事を終え、ハイセは言う。


「まず、現状を整理する」


 サーシャ、クレア、エアリア、ヒジリの四人は頷いた。

 

「ここは禁忌六迷宮の一つ、『狂乱磁空大森林』で間違いない。ここは『移動する森』で、俺とクレアはツンドラ山脈から、サーシャとヒジリはハイベルク王国近くの街道で巻き込まれたようだ。で、エアリア……お前はツンドラ山脈の上空からだったな?」

「う、うむ。お前とクレアを迎えに行ったら、すごく頭が痛くなって……気付いたら能力が解除されかけて、ここにいた」

「この森の特性と関係あるのかもな……ともかく、俺たちは巻き込まれた以上、ここを脱出……いや、踏破する」


 それしかない。

 サーシャもクレアも同じ意見だった。するとヒジリが言う。


「ね、ハイセ。禁忌六迷宮ってとんでもないバケモノがいるところなのよね? じゃあここも?」

「恐らくな。対決は免れないかもしれない」

「滾ってきた!! ダンジョンとか彷徨うの最悪だけど、そーいうのは大歓迎!!」


 ヒジリは拳をパシッと打ち付け気合を入れる。

 クレアは全員を見渡しつつ言う。


「こんな言い方はアレですけど……師匠にサーシャさん、ヒジリさんにエアリアさん。七大冒険者が四人もいるなんて、幸運です」

「お気楽なやつめ……」

「ハイセ。現状は理解したが……これからどうする?」

「森を知るべきだな。ここがどういう森かわからない以上、単独行動は避けたい。はぐれて迷子にでもなったら即詰みと考え、五人全員で行動しよう」

「賛成だ。だが、闇雲に動いてもな……何か目立つ、導のような物でもあれば」

「はいはーい!! あたいが飛んで偵察するっ!!」

「……それはやめておけ。エアリア、お前、上空で頭痛に襲われたんだろ? 下手に上空に飛んでまた痛んだらどうする?」

「うぐう……痛いのはヤダな」

「とはいえ、飛べるお前がいるのは運がいいと考えるべきか。まずは、ここを拠点にして、周りに目印を付けつつ探索しよう」


 ハイセは大きな鉄の缶を出し、中に生木を入れて火を点ける。

 すると、水分を含んだ木は大量の煙を出し、空へ登っていく。


「エアリア。まずはどの程度まで上空に行けるか確認してくれ。この煙を目印に、周囲の探索も頼む。いいか、絶対に無理するなよ」

「おう!! じゃあいくぞ」


 エアリアの背中に『光翼』が生える。

 能力『スカイマスター』。あらゆるものに『翼』を生やし、自分に生やせば自由に飛行可能という能力。

 自分の場合は自在に飛び回れるが、他人の場合だと制御が厳しく吹っ飛ばしてしまうらしい。

 エアリアはゆっくり上昇。ハイセはその高度を煙を基準に計算していく。

 

「ぅ……なんか、気持ち悪い。ぅぅ、ここ限界……」


 百メートルほど上昇したのち、エアリアは気分が悪くなり停止。

 そのまま周囲を見て、ゆっくり降りて来た。

 降りるなり、エアリアはサーシャの胸にボフッと倒れる。


「うう、きぶん悪い」

「お、おい大丈夫か?」

「ん……」

「……目算で百メートルくらいか。エアリア、お前は普段どこまで飛べる?」

「ん~……雲の上とかは余裕。限界まで試したけど途中で怖くなってやめちゃった」

「ドレナ・デ・スタールの空中城も、この子がいれば楽だったかもな……」


 サーシャはエアリアの頭を撫でつつ苦笑した。

ハイセは考える。


「雲の上……ヘリの高度計では二千メートルくらいだったか。それ以上飛べるエアリアが、百メートル足らずで限界……上空に、脱出させないための『何か』があるかもな」

「なーにそれ? 毒でもバラ撒いてんの?」

「わからん……おいエアリア。俺を掴んで飛べるか?」

「いけるけど……今はヤダ。気持ち悪い」

「じゃあ、回復したらでいい。一度確認しないとな」

「う~……わかった」

「ハイセ、危険じゃないのか?」

「わからん。でも、今はとにかく情報が必要だ。ここが禁忌六迷宮である以上、『七大災厄』の一体がいることは確定しているし……脱出法を探るためにも、とにかく情報を集める」


 すると、ヒジリがピクリと何かに反応。

 遅れてハイセ、サーシャ、クレアが反応し、気分の悪そうなエアリアが最後に反応した。


「チッ……考え事で忙しいのに」


 森の奥から現れたのは──巨大な、緑色の『虎』だった。

 ヒジリは嬉しそうに拳を合わせる。


「じゃあ休んでたら? アタシ、難しい話嫌いだし、身体動かすわ」

「ヒジリ。数は一体じゃない……私も参戦しよう」

「私もです!!」

「うう、あたいはまだ気持ち悪い……」

「……じゃあお前らに任せる。おいエアリア、テントで休んでろ」


 二人のソードマスターに、一人のメタルマスター。

 この三人に任せれば問題ない。そう思ったハイセは振り返り、エアリアをテントへ連れて行き、自分は植物の採取を始めるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] サーシャは見た目だけはお姫様、中身は一流のクズ男 エクリプスは本当のプリンセスだよ サーシャがアリアの能力を知っていたとしても、その恩恵を受けることはできない。カーリーキングダムに行くには時…
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