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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十七章 狂乱磁空大森林

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迷いの森・狂乱磁空大森林①/そのころ

「あの、できましたプレセアさん。確認お願いします」

「ええ、見せて」


 ハイベルグ王国、ハイセの宿にて。

 母屋の一室を『薬品室』にしていいと主人に許可を取ったので、イーサンに頼み棚を増築。プレセアのお古である調合器具をもらい、シムーンは薬の調合をしていた。

 棚には、大量の薬草が瓶に入っている。どれも乾燥し、粉末状になっていた。

 プレセアはいくつかの瓶を並べており、シムーンが声をかけたのでその手を止める。


「……うん。いい感じね。痛み止めの完成よ」

「やった。ふう……私の作った薬……嬉しいです」

「ふふ。ちゃんとできてるわよ」


 プレセアは粉末を包装紙に少しづつ入れ、丁寧に折る。


「空気に触れさせなければ一年は持つから。作った薬はちゃんと日付を書いて保存すること」

「はい!!」

 

 シムーンは戸棚へ。

 小さな引き出しが大量にある戸棚の一つを開け、日付を書いて入れる。

 

「今日はここまで。さ、後片付けをしましょうか」

「はい!!」

「それと……シムーン、あなたがよければだけど、三級薬師の試験を受けてみる? 今のあなたなら、知識も調合も大丈夫だと思うわ。私の推薦状があれば、ハイベルグ王国の薬学試験を受けられる」

「し、試験……」

「ふふ。緊張する? あなたに任せるけど」

「う……受けてみたいです!!」


 ちなみに。

 シムーンはまだ十二歳。

 試験に年齢は関係ないが、間違いなく最年少。

 だがプレセアがこう言うのも、シムーンは才能があるからだ。頭脳明晰であり、手先も器用。一度覚えた調合法は絶対に忘れない。

 

「薬師になると、どうなるんですか?」

「三級薬師になれば、開業できるようになるわ」

「開業……」

「診断し、病人に薬品を処方することができるのは二級からだけどね。三級は簡易的な痛み止めや塗り薬を販売することができるの。基本的に三級薬師は、二級、一級薬師のお店で修行するのが定例よ」

「でも私、宿を離れるのは……」

「大丈夫。私が教えるから」

「……あの、プレセアさんは何級ですか?」

「私は特級よ」


 特級薬師。

 ハイベルグ王国には二人しかいない。世界で十二人しかいない薬師の頂点。ちなみに特級薬師は全員がエルフであり、その知識は人間とは比べ物にならない。

 

「医師の資格もあるから、わからないことは教えてあげる」

「わあ、ありがとうございます!! プレセアさんってすごいですね!!」

「ありがとう。ふふ、弟子なんて初めてね」


 本業は冒険者であるが、もし薬師として開業したなら、間違いなく大繁盛するだろう。

 でも今は、冒険者としての生活が何より好きなプレセアだった。

 二人で道具を片付け、シムーンの焼いたクッキーを食べながら休憩しようとした時だった。


「───……ッ!!」


 プレセアが、急に明後日の方向を見て硬直した。

 その様子を見ていたシムーンが首を傾げる。


「プレセアさん、どうしたんですか?」

「…………」


 その問いには答えず、プレセアがポツリとつぶやく。


「……ヒジリに付けた精霊が、消えた」


 ◇◇◇◇◇◇


 エクリプスは魔法による遠隔会議を終えると、自室から出た。


「ふう、本部の復旧は順調……予定は一年だったけど、あと半年以内には何とかなりそうね」


 仮に『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』や魔法学園が復旧しても、エクリプスは帰るつもりなどサラサラないが。

 部屋から出て、一階に降りると、イーサンがいた。


「あ、こんにちは」

「こんにちは。坊や」

「は、はい」


 十二歳の少年には、エクリプスは大人の女性……少し緊張しているのがわかった。

 エクリプスはクスっと微笑み、ポケットから飴を出す。


「はい、あげる」

「は、はい……ありがとうございます」

「ええ。ところで、ハイセはまだ帰ってきてない?」

「ええ、えっと……フリズドだったかな。クレアさんと行ってまだ帰ってきてないです」

「そう……」


 エクリプスは考え込み、イーサンを見て微笑んだ。


「まあいいわ。帰ってきたら構ってもらうから。ね、坊や……時間ある?」

「え、いえ……おれ、これからフェンリルの散歩に行こうと」

「じゃあ、私も行くわ。少しお散歩したかったから」

「え!?」

「さ、行くわよ」


 こうして、イーサンはエクリプスと散歩に行くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 クラン『セイクリッド』にある執務室では、レイノルドがピアソラと二人で執務を行っていた。

 サーシャは休暇中。ロビンはクランの弓士の指導。タイクーンも休暇中なのだが『神の箱庭』の研究で部屋に籠った状態だ。

 レイノルドは、意外にも丁寧な文字で書類を処理し、ピアソラに渡す。


「ほい、確認」

「ええ……くぅ、レイノルドのくせに綺麗な字」

「んだよそれ。オレが字ぃ綺麗で悪いのかよ……」


 苦笑するレイノルド。

 ピアソラは書類を確認すると、ため息を吐く。


「はあ……サーシャ、早く戻らないかしら」

「ま、あの仕事人間のことだ。すぐ戻ってくんだろ」

「うー……休んでほしい気持ちはありますけど、早く戻ってきて欲しい気持ちもありますわ」

「まあな。というか、また『セイクリッド』で仕事したいぜ」


 話しながらも、二人の手は速い。

 事務仕事においては最高のパートナーであるのだが、ピアソラは認めていなかった。

 すると、ノックもせずドアが開き、ロビンが入ってくる。


「あー疲れた!! ね、ピアソラお昼行こっ」

「いきなりですわね……まだこっちは終わっていないの。お昼なら一人で行きなさいな」

「えー……せっかく来たのに。ね、休憩しようよー」

「全く、子供なんだから……レイノルド、休憩しますわよ」

「へいへい。せっかくだし、オレも行こうかね」

「待った!! その前に、タイクーンの口にパン詰めに行かないと。またお昼食べないで仕事してるに決まってるからさ!!」


 三人はタイクーンの部屋に押しかけると口にパンを無理やり詰め込み、食事に行くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ツンドラ山脈上空。

 エアリアは、ハイセたちを迎えに行くという名目で飛んでいた。

 空中戦では世界最強の、S級冒険者序列七位のエアリア。当然だが、空は陸よりも慣れている。

 だが……エアリアが高度を下げた瞬間、猛烈な頭痛に襲われた。


「ぅ……っぎ、な、何だ、これ?」


 ジリジリとした痛み。

 思わず頭を押さえるが、能力の制御も甘くなってしまう。

 そして、翼が消えかかり、エアリアは慌てて制御を取り戻す。

 でも、徐々に、徐々に高度が下がり……ようやく気付いた。


「……え」


 高度百メートルほどで、自分が飛んでいるのがツンドラ山脈付近ではなく、見たこともない『森』だと気付いた。気温も急激に変化している。

 唖然としていると、破裂音が聞こえてきた。


「この音、なんだ……? ぅ……頭痛いぞ」


 フラフラと地上に向かって飛んでいくと……聞き覚えのある声が。


「あれ? 師匠あれ、エアリアさんじゃないですか!?」

「……次から次へと、何なんだ」

「エアリア? 誰だそれは」

「飛んでるわねー」


 エアリアが地上に降りると、クレアに抱きしめられた。


「わわわ、顔真っ青です!! どうしたんですか?」

「……うぅ、頭、いたい」

「ど、どうしましょう!。師匠、師匠!!」

「騒ぐな。どうやらこいつも、狂乱磁空大森林に巻き込まれたようだな……」


 ハイセの声が徐々に遠くなり、エアリアは気を失うのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
At least we have 4 top s rank here Haise, Sasha, Hijiri, and Aerosmith or Aria
[一言] クレアとダフネの件はお互いに納得して王女(偽)と冒険者としてお互い生きていくのは解ったけど話をキチンと終わらせずに『狂乱磁空大森林』の攻略編に行ったんで無理矢理感が凄い。 前回の章で解った…
[一言] 作者は全員参加型のイベントをするつもりのようですが、エクリプスの出番が減ってしまい残念です、作中で一番素敵な女の子です。
感想一覧
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