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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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氷雪の決意、フリズド王国⑧/ツンドラ山脈

 ハイセ、クレアが戦場に向かうと、そこは酷い有様だった。


『ギャオォォォン!!』

「そっち行ったぞ!!」「怪我人を優先しろぉ!!」


 ダイナリザード。

 青い鱗を持つ巨大な二足歩行のトカゲ……ハイセはそう思った。

 担当のS級冒険者がいない。そう思い、近くにいた冒険者に聞く。


「おい、ここ担当のS級冒険者は!!」

「あぁ? あいつなら、馬鹿やって飛び出した新人を庇って大怪我だ!! 始まって十分で運ばれた!!」

「チッ……」


 新人のヘマ。

 それは仕方ない。ダイナリザードの討伐では稼げるのだ。

 手が足りない状況で、高ランク冒険者に同行してくる新人はいる。そして、金を稼ぐために無茶をした結果、ベテランの足を引っ張る。

 考えても仕方ないと、ハイセは切り替える。

 自動拳銃を抜き上空に向けて何発か発砲し、大声で叫んだ。


「S級冒険者序列一位『闇の化身(ダークストーカー)』ハイセだ!! 救援に来た!! 今いる冒険者は全員下がって怪我人の治療を!! 態勢を立て直せ!!」


 S級冒険者序列一位の声は、戦場でよく響いた。

 ある者は歓喜し、ある者は安堵する。そして、怪我人を担いだ冒険者たちが一斉に後退する。

 稼ぎを諦めない馬鹿な新人は、ベテランに殴り飛ばされ無理やり下げられた。

 すると、雪崩のようにダイナリザードが群れで襲ってくる。


「行きます!!」


 クレアが双剣を手に飛び出す。

 ガトリングガンで一掃しようと思ったが、それを見たハイセは大型拳銃を手にする。


「クレア!! 一掃するぞ!!」

「はい!!」


 ハイセは大型拳銃を発砲。ダイナリザードの硬い鱗を容易く貫通する。

 クレアの闘気を纏った双剣は、ダイナリザードの首を両断した。


「よーっし!! いっくぞー!!」

「馬鹿、周り見て動け!!」


 現在、ハイセたちのいる場所は斜面。

 近くには洞窟もあるが、ダイナリザードは斜面を駆け降りてくる。

 ハイセは銃を乱射。


「くっそ……数が多い。ヒジリとかいればもうちょい楽だったかもな!!」

「おりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」


 一方のクレアは張り切っている。

 闘気も輝きを増し、剣の柄に紐状にした闘気をくっつけて投げ、振り回す。

 サーシャではあり得ない戦法。だが、ハイセは評価した。


「はっ、やるな」

「まだまだいけます!!」


 過去と向き合い、ダフネと話したことで、心の中のわだかまりが消えたクレア。

 青銀に輝く闘気はさらに輝きを増す。ここに来てさらに、クレアは強くなった。


(A級……下手したら、S級下位くらいか)


 本当に、強くなった。

 これからの稽古では、実弾を使わなければならないだろう。それに、銃弾だけじゃない、体術も織り交ぜた戦いをしなければ、足元をすくわれる可能性もある。

 

「……」

「師匠、どうしました!? 怪我しました!?」

「してない。集中しろ」


 ダイナリザードの群れがいなくなるまで、ハイセとクレアは戦い続けた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ダイナリザードの群れがひとまず消えた。

 ハイセ、クレアの足元には、多くのダイナリザードの死骸が転がっている。

 ハイセは大型拳銃を消し、周りを確認する。


「……ひとまず、終わりだな」


 白い息を吐き、寒いが身体は温まっていることに爽快感を感じていた。

 すると、無事な冒険者たちが集まってくる。


「す、すげえ……」

「二人でこんな……」

「ちょうどいい。お前ら、こいつらの素材持っていくんだろ。無事な連中に任せていいか?」


 ハイセがそう言うと、冒険者たちは驚いていた。

 そして、そのうちの一人が言う。


「言うまでもないが、この素材はアンタらのモンだが……」

「いらん。そもそも俺はクレア王女の護衛としてここにいる。魔獣の素材に関しては俺の自由……ってわけで、これはお前らで好きにしろ」

「い、いいのか?」

「ああ。こいつの素材、金になるんだろ。俺は護衛としての報酬はもらってる。いいから、さっさと運べ」


 自動拳銃のマガジンをチェックしながら適当に言うと、集まった冒険者たちが大喜びで素材の回収を始めた。

 ハイセは、クレアに言う。


「……素材、お前の分も好きにしろ。早く持っていかないと手遅れになるぞ」

「いりません。えへへ、私は師匠と一緒に護衛依頼受けてますから!!」

「そうか」

「あの~……師匠、その代わり……後で私と、カフェに行きませんか? いいお店あるんです」

「…………まあ、いいぞ」

「やったあ!!」


 それから十分ほどして、冒険者たちが素材を回収……下山を始めた時だった。

 ハイセはクレアと周りを確認し、そろそろ引き返そうとした時。


「……ん?」

「あれ、地震ですか?」


 地面が、揺れた。

 ハイセは特に何も気にしていないが、周りの冒険者たち、そしてクレアが叫ぶ。


「じ、地震!! おいやべーぞ!!」

「下山だ、下山!!」

「師匠、早く下山しないと!!」

「……何を焦ってるんだ?」


 ハイセにはピンとこないが、雪国に住む冒険者たちは知っていた。

 クレアが叫ぶ。


「これ、地震じゃありません!! これ……雪崩の前兆、いえもう雪崩が始まっています!! ここは斜面、やばいです!!」

「雪崩……うおっ」


 地震が一層強くなり、立っているのも厳しい状態になった。

 確かに、このままではまずい。


「クレア、逃げるぞ!!」

「はい───……って、あれっ」


 クレアの身体が、がくんと落ちた。


「クレア、おい!!」

「あ、あれ? やば……ち、力が入らない」

「まさか……」


 サーシャも何度かあった。

 闘気の使いすぎによる、全身疲労。

 最近はうまく調節をして戦っていたのだが、今日は全力を出し尽くしていた。

 

「し、師匠……」

「おい、クレア!!」

「……っさ、先に行ってください!!」


 地震が強くなる。

 ハイセにもわかった。もう、このままでは巻き込まれる。

 冒険者たちはすでにいない。


「私、師匠の下で戦えて、幸せでした」

「───馬鹿野郎が!!」


 ハイセはクレアを担ぎ、全力を振り絞って雪の上を走った。

 そして───……恐るべき威力の雪崩が、周囲一帯を飲み込んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセ、クレアは間一髪で、近くの洞窟に避難できた。


「───……ぅ」

「おい、クレア!! おい!!」


 雪崩の雪は重く、水を含んでいたせいか身体がびっしょり濡れてしまった。

 身を突き刺すような寒さに、さすがのハイセも震える。

 クレアは気を失った。


「───落ち着け」


 ハイセは深呼吸。

 洞窟を見回す。

 洞窟は思ったより広く、天井は高い。奥には通路がありどこかへ続いているようだ。

 現在は、洞窟入口にいる。雪があるのでもう少し奥まで進み、アイテムボックスからランプを出して吊るす。

 

「……まずは、体温」


 ハイセはテントを用意。着ている服を全て脱ぎ、身体を拭いて新しい服に着替え、コートを着た。

 そして、焚き火台を出し魔石を入れて火を着け、湯を沸かす。

 自分の安全を確保したところで、クレアを見る。


「おい、起きろ」

「…………」


 完全に気を失っている。

 呼吸はしているが、体温が下がり始めている。濡れた服もこのままではまずい。


「…………クソ。緊急事態だ」


 ハイセはアイテムボックスから『湯を入れた樽』を出す。

 ハイセが考案した『ダンジョン内で清潔を保ち、ストレス解消となる風呂』だ。

 湯はいい感じに暖かい。


「……くっそ」


 ハイセはもう一度だけ舌打ちし……クレアの服を脱がしはじめた。

 上着を脱がし、下を脱がし、靴、靴下、カツラ……そして下着。

 クレアを裸にすると、お湯を少しずつ身体にかける。


「ん……」

「……おい、おい!!」」

「…………んん~」


 寝ているのだろうか。

 身体をお湯に慣らすと、クレアを担いで樽にぶち込んだ。

 上も下も見えてしまったが、非常事態とハイセは割り切る。

 首までお湯に浸かったクレアの顔は、どこかほっこり、安心しているようだった。


「……よし。とりあえずいいか」


 ハイセは、クレアに無理やり入れられた着替えをアイテムボックスから出す。『自分が忘れた時のためにお願いします!!』と、ハイセのアイテムボックスにはクレアの着替えが入っていた。

 着替えを用意し、この間に椅子やテーブルを用意しておく。

 そして数分後。


「んあ……あれ? 師匠?」

「起きたか」

「……あったかい。あ!! 雪崩!!」

「馬鹿、立つな」

「え? あ」


 樽から立ち上がったクレアは全裸。隠すのを忘れてポカンとしていると、顔を真っ赤にして胸と股間を隠し、樽に隠れた。


「ひゃぁぁぁぁ!? なな、なんでぇ!? しし、師匠ぉぉぉ!?」

「か、勘違いするな!! 非常事態だったんだよ!!」

「え……あ」

「そのまま聞け」


 ハイセは、雪崩で洞窟に逃げたこと、濡れていたので無理やり風呂にぶち込んだことを説明。納得したクレアは風呂から上がり、新しい服にコートを着て椅子に座った。


「あったまりました~……その、師匠、ご迷惑をおかけしました」

「……お前の迷惑は今に始まったことじゃない」

「うう……師匠、私のハダカ……見ましたよね」

「非常事態だ。でもまあ、悪かった」

「し、師匠ならいいです……」


 微妙な空気になり、ハイセは「とにかく」という。


「ここから脱出するぞ。クレア、だいたいの位置覚えてるか?」

「えっと、ここ近くにあった洞窟ですよね……この奥、どこに繋がってるのかな」

「入口は完全に塞がっている。穴を掘るのもいいが、雪崩の雪は水分を含んで重くなっている。かなりの重労働だぞ」

「……その前に、凍り付くと思います」

「……あ」


 クレアは、どこか青ざめた表情で言う。


「あと数時間で夜に、日を超えたら一気に気温が下がります……ツンドラ山脈は、今日しか温度が上がらないんです。このままじゃ私たち、間違いなく凍死しちゃいます」


 絶体絶命の危機。

 銃を撃つだけでは解決できない事態に、ハイセとクレアは遭遇するのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
兵器なら火炎放射器、呼び出せないかな
So Haise already saw Claire naked 3 times. if it were other anime, they would say they have to marry…
[良い点] 当初の目的は達成したので、もう畳むかと思いましたが、雪山と言う強敵に襲われましたね。 [気になる点] ハイセ達は洞窟探検でしょうが、外の面子がどう動くのか? [一言] 風呂にぶち込むだけな…
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