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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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氷雪の決意、フリズド王国⑤/ダイナリザード

 向かったのは、エアリアたちが行きつけの大衆食堂。

 個室もあり、ハイセとクレア、エアリアたち三人の計五名で入った。

 個室内には大きな円卓があり、レイオスとハルカが料理を注文。運ばれてきたのは豪華な肉料理で、エアリアとクレアがヨダレを垂らしていた。

 さっそく食べ始める。


「うんまっ!! ん~……やっぱりフリズドの肉料理は最高だ!!」

「同感です!! エアリアさん、こっちの肉も美味しいですっ!!」

「エアロ・スミスだ!! まったく、そっちの偽名で呼ぶなっ!!」


 クレア、エアリア。二人が肉をがっついているのを横目に、ハイセはハルカに聞く。


「ツンドラ山脈、ダイナリザードについて説明を頼む」

「はい。ツンドラ山脈はフリズド王国で最も標高が高く気温が低い、この世界でも危険な場所の一つですね。霊峰ガガジア、破滅のグレイブヤード、灼熱のインフェルノ砂漠と並ぶ危険地域…あ、禁忌六迷宮は別格ですが…正直、わたしやレイオスみたいなA級冒険者でも、近づこうとは思いません」

「だが、年に一度……だろ」

「はい。年に一度だけ、ツンドラ山脈には太陽の光が差すんです。その日だけは気温も上がり、山に入ることができるようになります」

「……なるほどな。霊峰ガガジアは魔獣の繁殖期が近づくと入山禁止になるが、逆に入山可能になるんだな」

「そうです」

「肉おかわり!!」

「私もです!!」

「はいよ。っていうかエアリア……ハイセさんとハルカが真面目に話しているし、ちゃんと聞けよ?」

「フン、レイオスが聞いておけ!! あたいは肉!!」


 横がうるさい。ハイセはそう思ったが無視。

 ハルカも苦笑していたが、説明を続ける。


「ダイナリザードは、討伐レートBの魔獣です。でも、ツンドラ山脈には天敵となる魔獣がいないのか、一年で爆発的に増えちゃうんです。なので、冒険者を募り、一年に一度だけツンドラ山脈に入り、ダイナリザードを限界まで減らす……」

「放っておけば人里にも降りてくるのか?」

「それもありますけど、実はダイナリザードの素材がすごく優秀なんです。皮や爪や牙は武器防具に加工できますし、お肉は絶品ですし、血や内臓は珍味だし薬の材料になります。それと、ダイナリザードの核は燃料としても非常に優秀です」


 フリズド王国に生息する魔獣の核は、よく燃える。

 魔石自体が発熱し火を発生させるので、暖炉に数個入れて燃やせばそれでいい。


「質のいい魔石は何度も燃やせます。ダイナリザードの核は、一個でかなりの火を発生させますし、完全に燃え尽きるまでに二十日は持ちますので」

「便利だな……知らなかった」

「あはは。フリズド王国の出身じゃないと知らないかもですね」

「勉強になる」

「あ、ありがとうございます。えっと……基本的なことはこんな感じです。冒険者ギルドは『特別依頼』と称して、フリズド王国にいる冒険者チームやクランを招集し、ダイナリザードの討伐に向かわせます。依頼はフリズド王家からで、報酬も王家から支払われるので、みんなノリノリで参加します。それに今回は七大冒険者が制定されて初めての依頼です。エアリアがリーダーに指名されて張り切ってるんですけど……この子、見ての通りなんで、指揮とかできないんですよね……だから、ハイセさんが来てくれて感謝しています」

「……ああ」


 当然だが、ハイセもソロなので指揮などしたことがない。

 サーシャがいればな……と、一瞬だけ思ってしまった。ハイセと違い、チームを率いて指示を出しつつ、自らが全線で戦うなら、サーシャがうってつけだ。

 

「そういや『クレア王女』を迎えに行くんだっけか」

「───!!」


 ハイセの質問に、骨付き肉を食べていたクレアの手が止まった。

 その質問にはレイオスが答える。


「そうなんですよ!! いや~……クレア王女、優しいし美人だし、オレらみたいな冒険者にも温かい言葉をかけてくれるから、みんな慕ってるんですよ。ダイナリザードの討伐依頼も王家からだから、当日はオレらが城まで迎えに行くんですけど……今から楽しみです!! っていてて!?」

「デレデレしすぎ。ただ迎えに行くだけじゃない」


 ハルカがレイオスの耳を引っ張る。少しだけムスッとしているのは気のせいじゃない。

 すると、エアリアが言う。


「フン。あたいが空飛んで迎えに行けばすぐなのだ!!」

「だからダメでしょ。あんたの『スカイマスター』は自分を浮かすのは得意だけど、物とか人は吹っ飛ばすくらいしかできないじゃない」

「むぅ……」


 図星なのか、エアリアがムスッとする。

 ハイセはようやく、大皿にある肉を取り食べ始めた。


「とりあえず、俺はそいつの補佐に入る。直接的な戦闘は、参加する冒険者に任せていいのか?」

「はい。あたしとレイオスは、若い冒険者たちと一緒に全線で指揮を執りつつ戦います。ハイセさんとエアリアは後方で全体指揮を」

「おいエアリア、暴走するなよ。ハイセさん、エアリアが暴れ出したらやっちゃっていいんで」

「おいレイオス!! あたいだって暴れたいぞ!!」

「だから、お前は指揮をする立場って言ってんだろうが」

「むーっ!!」

「……おいダフネ。お前はレイオスたちと前線で戦え」

「わかりました」


 こうして、食事をしながらの情報整理は進むのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 エアリアたちと別れ、ハイセとクレアは宿に向かって歩いていた……正確には、クレアをおんぶしてハイセが一人で歩いていた。


「んん~……師匠のせなか、おっきいですぅ」

「この馬鹿。寒いからって飲みすぎだっつの」


 エアリアと意気投合したクレアが、酒を飲み始めたせいで酔っ払った。

 ちなみに、エアリアも飲み過ぎたのか、レイオスに抱えられて帰って行った。


「ししょぉ~……寒いぃ。あっためてぇぇ~……んん」

「おい、首を舐めるな気持ち悪い。置いていくぞ」

「んん~……」


 猫のように甘えてくるクレア。ハイセの首を噛んだり舐めたりするのが気持ち悪い。

 本気で雪の上に投げ捨てようと思ったが、宿に到着した。

 そのままクレアの部屋のベッドに投げ捨てて帰ろうと思ったが、部屋が寒く、ベッドに投げ捨てただけでは風邪をひく可能性もあった。

 ハイセは大きなため息を吐き、魔石を暖炉に入れて火を着け、クレアを見る。


「……あ~もう、雪国の二人旅なんて二度としないぞ」


 ハイセは仕方なく、クレアの上着を脱がし、ベッドに入れて毛布を掛けてやる。

 クレアは眠っていたが、嬉しそうに顔をほころばせた。

 そんなクレアを見て、ハイセは。


「…………妹ってこんな感じなのか」


 ぼそりと言い、ハッとして左右に首を振った。


「馬鹿か俺は……ったく、くだらない」


 そう吐き捨て、自分の部屋に戻ろうとドアに近づく。


「ん……師匠、すき」

「…………」


 クレアの寝言を聞き、ハイセは無言で部屋を出るのだった。

 ツンドラ山脈のダイナリザード討伐まで、もう間もなくだ。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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