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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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氷雪の決意、フリズド王国③/王女に会うために

 宿を取り、クレアはハイセの部屋に来るなり、暖炉に火をつけた。

 魔石を入れ、火をつけるだけ。薪はいらないし、魔石は小さくても一日燃え続けるので、フリズド王国では一般的な暖炉の燃料である。

 ハイセはコートを脱ぎ、椅子に座って本を開く。

 外を見ると、もう暗くなり始め、雪も降ってきた。


「フリズド王国は、日が落ちるのすごく早いんです。夕方前には薄暗くなって、夕方にはもう真っ暗で雪も降ってきます。明日の朝には住人たちが雪かきする光景が見れますよ」

「へぇ……ほら、飲め」

「あ、お茶ですね。ほんとは外に行きたかったですー……師匠に案内したいカフェとかいっぱいあるんだけどなあ」

「そんなことより、城にいる『クレア』に会う方法、考えろ」

「それなんですよねぇ」


 クレアは、ハイセの淹れた紅茶を飲みながら考える。

 一般的に、王族への謁見はできるが……基本的には『国王』のみだ。王女殿下に謁見したいと言っても、謁見の申請で跳ねのけられる。

 それに、今の王族である『クレア』に会いたいと申請して通ったとしても、問題がある。

 今、クレアは変装しているが……王族に謁見する場合、武器やアイテムボックスなどは全て預けなくてはならない。身体検査もあるし、クレアがカツラを被っているのもすぐばれる。

 本物のクレア、偽物のクレア。もしだましていることがバレたら、クレアは連れ戻され、偽のクレアは処刑される可能性だってある。


「呼び出し……は、無理。手紙……出しても、王族の目に入る手紙は全て検閲されるから無理」

「八方塞がりだな」

「うう……ダフネがこっそり町に出て、偶然出会う……なーんて、無理だしぃ」

「……やれやれ。フリズド王国に付き合うとは言ったが、長期になるようだったら帰るからな」

「ああ!! そ、そんなあ……」


 さすがに、ハイセもそこまでお人よしじゃない。

 紅茶を飲みながら外を眺め、ハイセは呟いた。


「……雪、まだまだ降りそうだ」


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 目を覚ましたハイセは、眼帯を付ける。そして窓を開けると……冷たい風が一気に入り込み、身体を震わせた。


「さむっ……」


 外はカラッと晴れていた。

 そして、路上では多くの住人が雪かきをしており、大きな馬車に雪を積んで、スノウドッグが運んでいた。初めて見る光景を眺めていると。


「あれは『雪捨て場』まで雪を運ぶスノウドッグですねー……ふああ、師匠おはようございます~」

「お前、俺のベッドで寝たことまず謝れ」

「ふぁぁ、すみません~……」


 昨夜、考え事をしているうちに、クレアはハイセのベッドで寝てしまった。

 仕方なく、ハイセはソファで寝た。

 いい加減、寒いので窓を閉め、廊下にいた宿の使用人にお湯を持ってきてもらう。

 湯桶を貰い、顔を洗い、ハイセはようやく目が覚めた。

 相変わらず、クレアは寝ぼけている。


「さっさと顔洗って着替えてこい。俺は先にメシ食ってるぞ」

「あぁ!! わ、私も行きますっ!!」


 バシャバシャとお湯で顔を洗い、クレアはアイテムボックスから服を出し、ハイセの前で着替え始めた……見られてもいいのか、ハイセだから気にしないのか、クレアは下着姿を豪快に晒す。

 ハイセはその様子を見ないようにし、部屋を出た。

 宿の一階にある食堂に向かい、テーブルに座ると、朝食が出てきた。


「お客さん、冒険者かい? うちのシチューは温まるよ。お仕事前にたくさん食べな」

「ああ、ありがとう。そうだ……新聞あるか?」

「あるよ。銅貨二枚だけどいいかい?」

「じゃあ頼む。それと、紅茶も頼む」


 手間賃合わせて銀貨を一枚渡すと、使用人が喜んで新聞を持ってきた。

 シチューを食べていると、クレアがバタバタと階段から降りてきた。


「もう!! 師匠、待っててもいいのにぃ!!」

「うるさい」


 クレアは座り、シチューが運ばれてくる。

 具だくさんのシチューを食べ、パンを浸して食べていると、ハイセはすでに紅茶を飲んでいた。

 新聞を読んでいるハイセをジッと見ていると……クレアは気付いた。


「……あれっ?」

「?」


 クレアが見ていたのはハイセ……ではなく、ハイセが読んでいた新聞の裏面記事。

 凝視しているのにハイセが気付き、裏面を見た。


「……『ツンドラ山脈での魔獣狩り、今年も始まる』……これがどうかしたか?」

「……そういえば」


 クレアは少し考え、手をポンと叩いた。


「こ、これだ!! 師匠、思いつきました!!」

「……まず、静かにしろ。それと、デカい声出すな」

「あ」


 朝食を終え、再びハイセの部屋に戻る二人。

 クレアは咳払いし、ハイセの読んでいた新聞を手に言う。


「ツンドラ山脈。フリズド王国領内にある大きな山脈で、氷山なんですけど、一年に一回、ここに住みつく『ダイナリザード』っていう魔獣を、フリズド王国冒険者ギルドが主導で狩るんです」

「へえ、そんなイベントあるのか」

「ええ。毎年狩るんですけど、なぜかすごく増えちゃうんですって。洞窟から溢れる前に駆り尽くすんですって」

「それと、お前の閃きの関係は?」

「実は、狩りが始まる前に、フリズド王国の第一王女が激励するんです。私も何度かやりましたし、ここに『クレア王女』が来るのは間違いないと思います……そこで、私と師匠が冒険者として参加して、こっそりダフネに近づいて接触する……っていう作戦です」

「なるほどな……」

「長くはお話できないと思うので、後日どこかでお話できるよう話してみます」


 ハイセは記事を読む。


「……主導は『フリズド王国冒険者ギルド』で、討伐部隊のリーダーはS級冒険者序列七位『空の支配者(スカイライナー)』エアロ・スミス……序列七位か。どんな奴だろうな」

「毎年、S級冒険者が主導で行ってますけど、七大冒険者は初めてかもですっ」

「とりあえず、作戦は固まったな……じゃあ、参加の意思を冒険者ギルドに伝えるか」

「はい!!」


 二人は宿を出て、冒険者ギルドに向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 フリズド王国冒険者ギルド。

 ハイベルク王国とは違い、分厚く着込んでいる冒険者が多い。

 武器も、大剣や大斧などの重量級の武器が多く、体格のいい者が多かった。

 なので、この中では小柄で、しかも見慣れない冒険者であるハイセとクレアは少し目立つ。

 ギルドに入ると同時にいくつもの視線が刺さるが、ハイセは全て無視。クレアも後に続いた。

 ハイセは、冒険者カードを出して受付へ。


「ギルドマスターに会いたい。取り次いでくれ」

「し、師匠。別にギルマスじゃなくても、受付で参加表明すれば」


 すると、ギルドカードを見た受付嬢が仰天する。


「え、S級冒険者序列一位『闇の化身(ダークストーカー)』!? しょ、少々お待ちください~!!」


 そう叫び、受付嬢はダッシュで裏へ消える。

 その声はよく響き、ギルド内からの視線が背中に突き刺さった。

 ハイセは言う。


「参加表明だけなら受付でいいが、俺はS級冒険者だ。しかも序列一位とかいう面倒くさい位置づけ……一応、こういうイベントに参加するなら、事前にギルドマスターに話を通しておいた方がいい。そう云う理由だ」

「な、なるほど……すみません、勉強不足でした」


 すると、受付嬢が戻って来た。


「あ、あの。ギルドマスターが会われるそうです。部屋にご案内します」

「行くぞ」

「は、はい」


 こうして、ハイセとクレアはギルドマスターと面会するのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] "空の支配者(スカイライナー)"⋯京成の特急電車かっってツッコみたくなった(笑)
[一言] ここで出てくる7番目の人!(• ▽ •;)(見事に旗回収。)
感想一覧
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