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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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氷雪の決意、フリズド王国②/討伐依頼(無償)


 ハイセは、ソリ引きが用意した『スノウドッグ』を眺めていた。

 見た目は『デカい犬』だ。どことなくフェンリルに似ているような気がして親近感を覚え、何となく近づいて撫でてしまう。


「かわいいですね~」

「デカいな。足も太いし、パワーがありそうだ」

『オフ、オフ』


 クレアが抱きつくと、スノウドッグは嬉しそうに吠えた。

 そして、手綱を付けてソリを連結させる。

 ソリは、馬車の荷車に滑走用の板を取り付けただけのモノだ。荷車に乗り込むと、確認のためにソリ引きが言う。

 スノウドッグは二匹で、ソリ引きも二人。もう一人のソリ引きは、連絡用に連れて行くそうだ。


「これからホワイトオークの出現地に向かう。頼むぜ、S級冒険者さんよ!!」

「ああ」

「お任せくださいっ!!」

「よし、出発!!」


 スノウドッグに命じると、雪原の上を走り出す。

 走り出すと、ハイセは言う。


「こりゃいいな。馬車と違って揺れは少ないし、音もない」

「雪って音を吸収しちゃうんですって。だから、フリズド王国の夜はすっごく静かなんですよ」

「へえ……」


 ハイセは、自動拳銃のマガジンを抜き、スライドを弄りながら、もう一度マガジンを入れてスライドを引く……戦闘準備をしていた。

 クレアも、アイテムボックスから双剣を取り出し、腰に装備する。

 

「お前なら討伐レートBは問題ないだろうが、油断するなよ」

「は、はい」


 ハイセのアドバイス。クレアは気合を入れ直し、窓から外を眺めていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから一時間ほど走ると、ソリが急停止。

 

「こ、ここだ。S級冒険者さん、見てくれ……ホワイトオークの足跡が大量に…」

「……なるほどな」


 雪の上には、ホワイトオークの足跡が大量にある。

 近づき、確認する。


「数は四十ほどか。そして、意外にも馬鹿じゃない」


 ハイセは自動拳銃を抜き、安全装置を解除する。

 クレアはソリの前で、震えるスノウドッグを撫でて落ち着かせていた。

 そして、ハイセは叫ぶ。


「クレア!! ソリを守ってろ!!」

「え、あ、は、はい!!」


 ハイセは森に向けて発砲──だが、手ごたえがあまりない。

 藪から飛び出してきたのは、白いオーク。

 雪国に適応するため、皮下脂肪を増やし、皮膚の色を白く変え、手には氷の棍棒を持つ、フリズド王国領地の固有種族だ。

 一匹の腕から血が出ているが、雪を当てて血管を収縮させ止血した。

 その行為にハイセは驚きつつ自動拳銃を連射。


『ぶもももも!!』

「チッ……」


 分厚い皮下脂肪が銃弾を皮膚で止めダメージが少ない。

 そして、足下……クレアの言う通り、ブーツを履いていなければ、雪に沈んで動けなかっただろう。

 分析していると、残りのオークが藪から一斉に飛び出して来る。

 待ち伏せ……やはり、ホワイトオークは頭がいい。


「まあ、俺には関係ないが」


 ハイセはカービン銃を具現化し、オークの一体に向けて乱射。

 銃弾は貫通こそしなかったが、全身に浴びた銃弾が皮膚に食い込み、大量に出血。

 頭部に数発喰らうと、そのまま倒れ絶命した。


「クレア!! 頭を狙え!!」

「はい!!」


 クレアは青銀の闘気を纏い、高速で動きオークを攪乱する。

 雪国育ちで、雪上での移動はお手の物なのだろう。


「やっ!!」


 闘気を纏った双剣の一本を投げると、オークの頭に突き刺さる。

 そして、手を引く動作をすると、手から離れた剣がクレアの手元に戻って来た。双剣なら、剣が手から離れても、もう一本を握っている限り剣に闘気は残る。そして、闘気を操作してある程度の距離なら、剣を自由に操れるようになっていた。


「……へえ」


 本当に、強くなった。

 恐らく、あと一年もしないうちに、単独で討伐レートSの魔獣を討伐できるだろう。

 そうなればもう、ハイセの役目は終わる。

 ずっと師でいてほしい……クレアはそう言ったが、ハイセはいつまでも師をするつもりもない。


「このフリズド王国で、あいつも俺がもう必要ないことに気付くといいけどな」


 カービン銃を連射しながら、ハイセはそう呟くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 五分後。

 ハイセ、クレアの活躍で、ホワイトオークが殲滅された。

 ハイセは、一際体格のいいホワイトオークの死骸を軽く蹴る。


「こいつが群れのボスか……」

「みたいですね。えっと、ホワイトオークは集団で行動、群れにはボスが必ずいて、ボスを討伐すると、残りのオークは逃げちゃう習性を持つ……だったっけ」


 思い出しながらクレアは言う。

 すると、ソリ引きが来た。


「いやーよかった!! ボスを倒したならもう安心!! さっそく遣いを出して後続のソリに来るように言うよ!! きっと冒険者たちも一緒に来るはずだ」


 すると、ソリ引きと一緒に来たもう一人のソリ引きが来た道を戻る。

 

「ささ、乗ってくれ。ああ、死骸はどうする? その、素材とか」

「いらん。オークなら肉も食えるだろ。近くの村に寄付するから、自由にしろ……クレア、いいか?」

「はい!! 寒いからすぐに腐ることはないだろうし、冒険者も後から来るなら大丈夫だと思います!!」


 二人は荷車に乗り込み、ソリは走り出す。

 クレアは嬉しそうに言う。


「師匠、ありがとうございます」

「何が」

「オーク討伐です。その……私はもう王女じゃないし、関係ないけれど……やっぱり、私の国の人たちが困っていましたから。助けてくれてうれしいです!!」

「お前も戦っただろ」

「そうですけど、師匠が無償でやってくれたからうれしいんですー……あ、じゃあ私から報酬を出します。師匠、フリズド王国の案内はお任せください!!」

「お任せも何も、お前がするのは決定事項だろうが」

「えへへ、そうでした」


 上機嫌なクレアは、ハイセの隣でどこまでも上機嫌。

 二人を乗せたソリは、特にトラブルに巻き込まれることなく、フリズド王国に到着するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 フリズド王国正門。

 正門の隣に、スノウドッグソリ用の停車場があり、ソリはそこで止まった。

 荷車から降りると、ソリ引きがハイセたちに言う。


「いやー、本当にありがとう!! あんたたち、礼にしてはささやかだが……帰りの運賃はタダにしてやるよ。今後とも御贔屓にっ!!」


 最後、スノウドッグがハイセとクレアに擦り寄って来たので撫でてやる。

 ソリ引きと別れ、二人は正門へ。

 すると、クレアはアイテムボックスから金髪のカツラを出してかぶり、さらに帽子を被る。そして、マフラーを巻いて口元を隠してしまった。


「変装です。……あと『クレア』はマズイので…。師匠、今から私のこと『ダフネ』って呼んでください」

「ダフネ……その名前って」

「私の親友です。今はもういない……」

「……わかった」


 正門に向かい、ハイセは門兵に冒険者カードを見せる。すると、S級冒険者序列一位の名に驚き、カードとハイセを何度も交互に見た。こういう反応はどこも同じであった。

 そして、クレアを見る。


「そっちは?」

「俺の連れ、ダフネだ。身の回りの世話をさせるために連れて来た……何か問題あるか?」

「い、いや……顔だけ見せてくれればいい」

「……はい」


 クレアは控えめに顔を見せる。門兵が確認し、すぐに視線を戻した。


「よし、問題ない。フリズド王国へようこそ」


 入国完了。

 クレアは小さなため息を吐き、ハイセの腕を取る。


「んふふ、お世話しちゃいますね~」

「くっつくな。それで、どうする」

「まずは宿を取りましょう!! その後は……寒いので、あったかいお茶でも」

「お前、王女に会う方法、考えてるのかよ」

「……お茶、飲みながら」

「……ったく」


 こうして、ハイセたちはフリズド王国に入国した。

 クレアが、『クレア』に会うために。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 『神の箱庭』での試練の時のクレアとダフネの2人は主従関係と言うより幼馴染又は親友みたいに思えるがあのダフネはクレアの記憶から再現された存在なので現実のダフネがどうなのか又はどうなってるか解ら…
[一言] ダブネの心境は如何に? いくらクレアの為とは言えダフネとしての自分を捨てるとか生半可な覚悟では出来ない事だし。 ダフネはクレアの為の自己犠牲だったのか? 王族の暮らしをしてみたかったんだよ…
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