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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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氷雪の決意、フリズド王国①/雪国へ

 ハイセ、クレアの二人は、乗合馬車でフリズド王国の国境にある大きな町へ向かった。

 乗合馬車の客はハイセたちだけ。クレアはハイセの隣で嬉しそうに言う。


「ラッキーですね。私たちだけですっ」

「ああ。混雑するなら徒歩のがマシだ」

「えへへー、師匠」


 クレアはニコニコしながらハイセの腕を取り甘えてくる。

 最近、クレアが懐いた家ネコのように甘えてくる。ハイセはその近さに違和感を覚えつつ、クレアから腕を外して言う。


「お前、なんでそんなに擦り寄ってくるんだ。ネコじゃあるまいし」

「師匠の隣、すっごく安心するし、あったかいからですよー」

「意味わからん。とにかく、くっつくな」

「えー」


 クレアから距離を取るが、乗合馬車には二人しかいないのですぐ距離を詰めてくる。

 ハイセは諦め、クレアが腕にくっついたまま聞いてみた。


「とりあえず、フリズド王国でどうするつもりだ」

「……ダフネに会いたいです。でも、王女は普通謁見しませんし、謁見の申請をするには顔を見せないといけないし、私の顔だとすぐに王女だってバレちゃいます。なので……考えます」

「考える、って……お前、無策でここまで来たのかよ」

「えへへ。昔はよく、城を抜け出して遊びに行ってたんで。けど……今のダフネはきっと、一人じゃ脱走とかしないはず。脱走するのは基本的に、私の意志だったので」

「で? どうするんだ?」

「え、えーと……か、考えさせてくださいっ」


 今の『クレア王女』に会うには、何か策を考えねばならなかった。

 乗合馬車は国境の町に到着。馬車から降りると、気温がかなり低い。

 ハイセは白い息を吐いた。


「……寒いな」

「フリズド王国領地はもっと寒いですよ。この国境の町で、あったかい上着とか下着、買った方がいいです。毛糸のパンツがおススメです。私も履いてますし」

「……そーいうのは言うな」

「あ」


 クレアはスカートを押さえ頬を染めた。

 もう夕方なので、今日は宿で一泊。翌日に町で準備をして、二日後にフリズド王国に向かうことにした。

 宿は防寒対策をしたレンガ造りの宿。ロビーは暖炉で魔石が燃えており温かい。

 部屋を二つ取ると、クレアが速攻でハイセの部屋に来た。


「師匠、ご飯行きましょっ!! 宿屋のおばさんに聞いたんですけど、ここの食堂で出す『フリズベア』のお肉は絶品だそうですっ!!」

「わかったわかった。ったく、子供かお前は」


 食堂でフリズベアのステーキを注文したが、確かに絶品だった。

 食事を終え部屋に戻ると、外は雪が降っていた。


「わぁ……どうりで寒いわけですね」

「だな。その割にはお前、寒がってないな」

「そりゃ、雪国出身ですから。このくらいの寒さなら慣れたモンです!!」


 胸を張るクレア。そして、ポンと手を叩く。


「あの~……この宿、サウナがあるんですけど、一緒にどうですか?」

「……一緒?」

「はい。フリズド王国では、混浴が当たり前なんです。サウナやお風呂も、少ない燃料を使うので……え、えっと、タオルはちゃんと巻くので。ダメ、ですか?」

「嫌だ。行くなら、一人で行け」

「うう……」


 クレアは一人で、宿屋のサウナへ。

 ハイセは一人になり、窓際に椅子を持っていき、アイテムボックスから紅茶を出した。


「雪、か……今更だが、クレアと二人旅か。ただの観光になりそうだし、イーサンやシムーンも連れて来ればよかったぜ」


 そう言い、紅茶をカップに注ぎ、雪景色を楽しみながら飲むのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ハイセとクレアは朝食後、町にある服屋に防寒着を買いに来た。


「防寒着も大事ですけど、もっと大事なのはブーツです。足下、雪でかなり動きにくいですからね。防水で、裏起毛のあるブーツがおススメです!!」

「ふむ……」


 アドバイス通り、ハイセは裏起毛のブーツ、そしてコートを買った。

 着てみるとかなり温かい。クレアも似たようなデザインのコートを買い、耳当ても買う。


「師匠、似合いますか?」

「ああ」

「むー、適当ですね」

「それより、明日には出発だ。ここから乗合馬車は出ているのか?」

「えーと、馬車は途中まで出ていますね。経由地である村で、ソリに乗り換えます」

「……ソリ?」

「はい。スノウドッグっていうでっかい犬に引いてもらうんです。季節によっては馬車でも行けるんですけど……今回は途中の村までしか行けませんね」

「わかった。案内は任せる。道中、魔獣は出るのか?」

「出ます。ちなみに、フリズドの魔獣はみんな毛深い魔獣が多いので、毛皮は高く売れま……まあ、師匠はお金とかどうでもいいですよね」

「金は大事だろうが」


 ハイセは大金持ち。クレアはそう認識していた。

 この日は、二人で宿の暖かい料理を食べ、早々に就寝。

 翌日、フリズド王国行きの乗合馬車に乗り、出発した。


「さすがに、今回は人が多いですね」

「……はあ」


 乗合馬車は、ギュウギュウ詰めとは言わないが、けっこうな人がいた。

 国境を超えると雪国。寒さも段違いであるが、コートやブーツが暖かく、寒いことは寒いが凍えることはなさそうである。

 クレアは、ハイセの腕を取りギューッとしがみつく。


「あったかいですねぇ~」

「くっつくな。暑い」

「いいじゃないですか。寒いのはイヤです」

「……はあ」


 ハイセはもうクレアを無視。外の景色を眺めている。

 街道は雪こそ積もっているが、馬車で進めるほどの厚みだ。現に、馬四頭で馬車を引いているが、問題なく進んでいる。

 そして、特に魔獣も出現することなく、中継地点の村に到着した。

 本来なら、ここでスノウドッグのソリに乗り換えて、フリズド王国まで進むのだが。


「あれ、なんか揉めてますね」


 馬車の乗り換え場で、スノウドッグのソリ引きが、御者と揉めていた。

 ソリ引きが首を振り、御者が頭を抱えている。

 乗合馬車にいる人たちも「まだか」や「何をしているんだ」と、乗り換えの案内がないのでじれ始めていた。


「私、聞いてきますね」


 クレアが御者たちの元へ。

 それから数分後、戻って来る。


「フリズド王国に向かう街道に、『ホワイトオーク』の群れがいるそうで、今はソリを出せないそうです。冒険者に依頼を出して討伐に当てるみたいですけど……」

「……そもそも、依頼は出せるのか?」

「そっか。この村に冒険者ギルドはないし、近場で冒険者ギルドがあるのは……さっきの国境の街ですね。引き返して、冒険者ギルドに依頼を出して、冒険者を連れてくるとなると、時間かかりますね」

「……はあ、仕方ないな」

「お、まさか師匠!!」


 クレアはウキウキしていた。ここまで説明口調だったのも、何かを期待しているからだろう。

 ハイセは馬車から降り、スノウドッグのソリ引きの元へ。


「おい、ソリは出せないのか」

「だから、ホワイトオークの群れの足跡が見つかったんだよ。道中、襲われてエサになるわけにいかねぇだろ? あいつら、単体が討伐レートBの魔獣なんだぞ。国境に戻って討伐依頼を出して、討伐終えるまで数日はこの村に待機するしかねぇよ」

「だったら、俺がそのオークを始末してやる。ソリを出せ」

「あ? お前、何を」


 と、ハイセは冒険者カードを見せた。

 そこに輝く『S級』の文字に、ソリ引きだけじゃなく、乗合馬車の御者も仰天する。


「え、S級冒険者!! おお、こいつはスゲェ!!」

「まず、俺とクレアとソリ引きの三人でオークのいる場所に行き、そこで魔獣を殲滅する。後から乗合馬車の乗客を連れて進め」

「し、しかし……いいのか? 依頼も出してないし、依頼料は」

「いらん。今回はサービスだ。俺たちは、さっさとフリズド王国に行きたいんでな」

「というわけで!! 私と師匠にお任せくださいっ!!」


 いきなり現れたクレアが、ソリ引きに向かって拳を突き付けた。

 こうして、ハイセとクレアによる、オーク退治が始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] フリズド国内にダークストーカーの噂が、…… 暇な美少女カルテットの雪国観光はあるのかな?
[気になる点] 毛糸のパンツ [一言] ハイセが寒がって、それに地元民のクレアが厚意からお勧めした事に、「……そーいうのは言うな」は流石にデリカシー無さ過ぎでしょう······。
[一言] 今の所ハイセとクレアのみでの旅ですが・・・こんな例えは失礼かもしれませんがハイセが行く先々で何かしらのトラブルに遭遇するなんて某探偵漫画みたいな展開だなぁ~と思ってしまった。氷結王国フリズド…
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