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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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その頃、三人の女の子たち

 プレセアは、ハイベルク王国郊外の森で、薬草採取をしていた。

 薬草採取。一見、冒険者なりたての新人が受けるような仕事だが、A級冒険者であり、『神の箱庭』を踏破したことでS級昇格も間違いないと噂されているプレセアが受ける薬草採取は、高難易度の薬草採取だ。


「……この薬草、妖艶草の採取は……ふぅん…」


 プレセアの前に咲く薄紫色の花。茎、葉の部分が薬草なのだが、決まった順番に花弁を抜かないと、瞬く間に毒草と化す採取難易度A級の薬草だ。

 プレセアは『花』の精霊に聞き、ゆっくりと花弁を抜いていく。


「……よし、おしまい。ふぅ……野生の妖艶草って探すの面倒ね。『神の箱庭』で作った薬草園にならいくらでも生えていたのに」


 プレセアは、『神の箱庭』の試練で、人間の一生以上の時間を過ごした。美しい泉の傍でただ過ごすという試練だったが苦も無くクリア……時間があったので薬草園を作ったのだが、踏破と同時に消滅した。

 なので、久しぶりの高難易度採取依頼に、ややウキウキしている。

 加工を終えた妖艶草を採取し、布で丁寧に包んでアイテムボックスへ。


「よし、おしまい……思ったより早く終わったわね」


 比較的安全な場所に妖艶草が生えていたので、魔獣との戦闘もない。

 プレセアは大きく伸びをして、近くを漂う精霊に聞いた。


「……水浴びでもして帰ろうかしら」


 ◇◇◇◇◇◇


 ヒジリは、一人でのんびりとハイベルク王国郊外にある岩石地帯で、一番大きな岩の上に座っていた。

 特に何か依頼を受けたわけでもない。

 珍しく、考え事をするために外出し、見晴らしのいい大岩の上にいるだけだ。


「……恋、かあ。おばあちゃん、ホントに難しいこと言うわね」


 最近の悩み……それは、恋。

 恋をすれば、まだまだ強くなれる。

 師はそういうが、強さを求め続けてきたヒジリには全く理解できない。


「オトコは、性欲の獣って酒場のおっさんが言ってたけど……ハイセは違うのよね。プレセアとかの裸見ても何とも思わなかったって言うし。うーん……見せてもいいけど、どんな反応するかな」


 ヒジリは自分の胸を揉みながら言う。

 邪魔な塊。月イチくらいで来る下腹部の抉るような痛み……女は面倒でありハンデと思っているヒジリだが、女であるからこそ得られる強さもあると師が言った。そのことをずっと考えてはいるが、答えが出ずに悩んでいる。


「あ~わっかんない。恋するなら強い男がいいけど、ハイセくらいしか思いつかないわ……ガチ勝負もしたいけど、なんか勝てない気がするし……う~、頭痛いっ!!」


 首をブンブン振ると、長い薄紫のポニーテールが揺れる。


「こんなに悩むなんて、アタシらしくないかも……でもでも、わっかんないし……あ~もう、こうなったらとにかくハイセにくっついて『恋』してやろうじゃん!!」


 そう言い、ヒジリは大岩から飛び降りて走り出す。


「とにかく、まずはハイセを探そうっと。あ、その前に腹ごしらえも!!」


 ◇◇◇◇◇◇


 エクリプスは、冒険者ギルドにいた。

 冒険者ギルド、ギルドマスターの部屋……ガイストの部屋である。


「……エクリプス・ゾロアスター。ワシに何か用かな?」

「ええ。ギルドマスター……あなたがハイセの師で、間違いないかしら」

「そうだが」

「その……ハイセのことで、いろいろ知りたいの」

「……」


 ガイストは、エクリプスの表情で察した……ハイセ、またか、と。

 頬を染め、髪を指で掬ってクルクル巻きながら言う姿は、どう見ても恋をしている。

 ガイストはため息を吐きたくなったが、なんとか堪えた。


「それで、何を聞きたい? あまり踏み込んだ個人情報は言えんが」

「まずは、好きな食べ物と……行きつけのお店」

「好きなモノか……辛い物は好んで食べているな。行きつけは屋台と、ハイセの宿から近いバー、『ブラッドスターク』だな」

「ふむふむ……」


 エクリプスは、真面目に聞いていた。

 ガイストは、初めて出会ったエクリプスを思い出す。

 人を嘲笑うような、だが何に対しても興味を持てない目をした、憐れな少女。

 力を、自己満足のためにしか使えない壊れた子……そう思っていた。だが、ハイセと出会い、恋をしたことで、雰囲気が変わった。

 一途な恋する女の子……変わりすぎだと思った。

 一体、ハイセはエクリプスに何をしたのか気になった。

 エクリプスの質問を答えつつ、逆にエクリプスに質問をする。


「なあ、エクリプス。お前はハイセのどこに惚れた?」

「……決まってるじゃない。全てよ」

「そ、そうか……」

「ふふ、いずれ結婚したいわ。子供は二人、まあ……側室も認めてあげるけど一番は私。できれば十代のうちに可愛がってもらいたいわ」

「…………」

「でも私……ハイセの前で何度か『見せたくない顔』しちゃってるから、まだ警戒されているの……だから、ハイセの好きなことをして、少しでも近づきたい…ふふ、ハイセに会いたくなってきたわ」

「……そ、そうか」


 けっこう重いな……と、ガイストは思った。

 満足したのか、エクリプスはガイストに礼を言って部屋を出る。

 すると、受付嬢のミイナがいた。


「あ、エクリプスさん。お疲れ様ですー」

「…………」

「な、なんですか?」

「……あなたは、まあ、ないわね」

「……はい?」


 そう言い、エクリプスは冒険者ギルドを出た。

 残されたミイナはポカンとしたのち、悔しがった。


「なな、なんですか『ない』って!! 何がないんですか!! 胸ですか!? きぃぃ、悔しい!!」


 ◇◇◇◇◇◇


 プレセアが城下町に戻ると、偶然ヒジリと出会い、さらにエクリプスとも会った。

 

「珍しいわね、汚れていないヒジリなんて」

「何よそれ」

「あなた、いつも依頼で血や泥にまみれるじゃない。汚くないってこと」

「うっさいし。ちゃんとお風呂は入ってるし、洗濯もしてるし」

 

 プレセアに「いーっ」と歯を見せるヒジリ。高貴な猫を威嚇する猛犬のように見え、エクリプスはクスっと笑う。


「ところでプレセア、ヒジリ……あなたたち、どこに行くの?」

「アタシはハイセのところ。いろいろ考えたけど、考えるの面倒くさいから、猛アタックして解決する!!」

「……意味不明ね。ちなみに私もハイセのところよ」

「同じなのね……ちなみに私は宿に帰るから、結局みんな目的地は同じってこと」


 三人は歩く。

 S級冒険者が二人、そしてS級間近の冒険者が一人。しかも全員が美少女となると、かなり目立つ。

 エクリプスは言う。


「……ハイセに会いたいわ」

「アンタ、ハイセのこと大好きね」

「ええ。愛しているわ」

「……愛。ねえ、アンタって『恋』を知ってる?」

「恋。当然よ……だって今、ハイセに『恋』をしてるもの」

「……ね、『恋』ってさ、女を強くするって話……知ってる?」

「当然。ハイセと出会う前の私と、今の私では、今の私の方が圧倒的に強いわ。当然、あなたよりもね」

「……へえ」


 喧嘩を売る行為であるが、ヒジリは気にしていない。

 むしろ気にしているのは、エクリプスの言葉だった。


「……アタシも、恋したいなー」

「してるでしょ?」

「……へ?」

「あなた、ハイセのことばかり考えてるじゃない。それ……『恋』でしょう」

「……え」


 ヒジリがエクリプスを凝視、たっぷり一分ほど黙り込み……顔が真っ赤になった。


「こ、恋って……あ、アタシが、ハイセのこと?」

「ええ。好きなのね。あなたにもちゃんと、女の子の部分があるじゃない……ふふ、可愛い」

「かか、かわいい、って……」


 プレセアは黙って聞いていたが、クスっと微笑む。


「顔、真っ赤」

「っ!! なな、なにこれっ!! も、戻んないしっ!!」

「ふふ……プレセア、そろそろイジメるのやめましょっか」

「ええ。倒れちゃうわね」

「~~~っ!! なんかアンタらムカつくっ!!」


 こうして三人はハイセの宿に到着。

 入口のドアを開けると、イーサンが掃き掃除をしていた。

 ハイセはどこにいるかと聞いてみると。


「ハイセさん、クレアさんと一緒に『フリズド王国』ってところに行きました。しばらく留守にするそうですよ」

「「「…………」」」


 クレアと二人でフリズド王国へ。

 何となく出鼻をくじかれ、三人はしばし黙り込むのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
中身と過去の所業がアレだけど、恋する乙女全開でエロく見える女の子は華があっていいね……
[良い点] エクリプスがレギュラー化してサーシャout、エクリプスinの新3人娘みたいになってる!? 戦闘面でもハイセが味方いる時でも全力出せるのにエクリプスが必要不可欠になって相性良いしサーシャより…
[良い点] 何時の間にかエクリプスが主要キャラみたいな立ち位置になって所。 [気になる点] プレセアは『神の箱庭』で栽培した薬草が消失したなら先の試練で一番得したのは試練で知識を得たタイクーンただ一人…
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