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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十六章 氷結王国フリズドにて

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クレアと一緒

 禁忌六迷宮を踏破して数日。

 ハイセは冒険者ギルドで依頼掲示板を眺めていると、クレアが隣に並ぶ。


「師匠、今日はどうします?」

「依頼。お前もだろ」

「えへへ、今日は師匠と一緒に行きたいなーって」

「……俺と一緒だと、お前の等級評価には繋がらないぞ」

「わかってます。まだC級になったばかりですし、のんびり焦らず頑張ります!!」


 クレアはビシッと敬礼。

 ハイセは無視し、SSレートの討伐依頼書をはがし、ミイナの元へ。


「どもどもハイセさん。なんだか久しぶりですねー」

「これ、頼む」

「は~い。もう、少しくらいお話し……あ、そうだ。ね、ハイセさん、久しぶりにお仕事終わったら飲みに行きませんか? ギルマスも誘って!!」

「……お前と二人は嫌だけど、ガイストさんがいいなら構わないぞ」

「うう、なんか酷い!! じゃあ、声かけておきますね」

「ああ」

「あ、クレアさんも一緒に!!」

「はーい。えへへ、師匠と飲み会っ!!」


 やけに嬉しそうなクレア。ハイセの腕を取り、妙に甘えてくる。

 ハイセはむずがゆくなり、クレアの腕を外す。


「お前、俺に付いて来るのはいいが、準備できてるのか?」

「はい!! 武器防具、非常食に、野営の道具とばっちりです!!」

「……評価には繋がらないが、戦闘できるようにしておけ」

「はい!!」

「はいはーい、受理しました。ではお気をつけてっ!!」


 ハイセ、クレアは冒険者ギルドを出て、魔獣討伐へ向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 ハイベルグ王国、屋台街にあるガポ爺さんの屋台にて。


「……で、師匠はすごいんです!! 銃をバンバン撃って、おサルの群れを一気に討伐して!! 私は五匹した倒せなかったんですけど、師匠ってば五十匹以上やっつけて!!」

「さすがハイセさんですねー、カッコいいです!!」

「ははは。それにしても、討伐レートSSの『グレイトフル・モンキーズ』の群れを二人で討伐か……ハイセ、ますます強くなったな」

「……なんだかんだで、場数踏んでますから」


 半日足らずで討伐を終え、その日のうちに屋台に来た。

 ハイセはドワーフの日酒を飲みながら言う。


「クレア、お前も強くなった」

「え!!」

「グレイトフル・モンキーズ。一体一体の討伐レートはSくらいだ……お前、苦戦することなく五体倒したよな。冒険者等級がCの強さじゃない」

「えへへ、褒められました」


 照れるクレア。すると、ミイナが煮物を食べながら言う。


「クレアさん、同世代の冒険者たちの間じゃ人気ありますよ。『青白の双剣姫(ロスヴァイセ)』って二つ名まで付いてますし」

「なんですかそれカッコいい!! 初めて知りましたっ!!」

「クレアさん、人気者でパーティー誘いたいって声がけっこうあるんですけど……ハイセさんの弟子なので、みんな気軽に声かけられないんですよねぇ」

「えー? 師匠、優しいしカッコいいし、私は大好きなのに……」

「わーお……クレアさん、今までにないくらい大胆な人ですね。このこの、ハイセさん」

「つつくな。ガポ爺さん、煮物と日酒おかわり」

「はいよっ、ははは、ハイセは愛されてやがる。煮卵サービスだ」


 大きな煮卵をフォークで半分にし、ハイセは口に入れる。

 ガイストも日酒をおかわりし、ハイセに言った。


「そういえばハイセ、お前に依頼したダンジョンの調査だが」

「明日にでも始めます。迷宮、遺跡型で、探査階層は二十まで、ですよね」

「ああ。ワシの見立てでは、百階層ほどあるダンジョンだ。気を抜くなよ」

「わかりました。って……なんだよお前」

 

 クレアは、眼を輝かせてハイセを見て、ガイストを見る。


「あの、ガイストさん!! その調査……私も師匠に同行したいです!!」

「何? ふむ……構わんぞ」

「やったあ。えへへ、師匠、よろしくお願いします!!」

「…………」

 

 ハイセは嫌そうな顔をして、ガイストをジト目で見るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 クレアを連れ、ハイセはハイベルグ王国から西に進み、フリズド王国との国境付近までやって来た。

 国境には大きな町があり、国境の向こう側には雪が積もっているのが見える。

 その様子を、クレアは無言で眺めていた。


「おい、行くぞ」

「あ、はい」


 ハイセは、地図を見ながら進む。

 街道から外れて、森の奥へ進んでいくと、大きな遺跡があった。

 遺跡前には小屋があり、冒険者とギルド職員がいた。

 ハイセに気付くと、全員が頭を下げる。


「お疲れ様です!! ハイベルグ王国冒険者ギルドから伺っています。ダンジョン調査をするS級冒険者、ハイセさんですね?」

「ああ」

「と……こちらの方は?」

「クレアです!! 師匠の補佐で一緒に行きます!!」

「あ、ああ……はい」


 冒険者カードを見せるが、やや困惑するギルド職員。

 だが、ハイセを見て言う。


「えー……一階層だけこちらの冒険者チームの方が調査しましたが、現れる魔獣の討伐レートは平均でB……下層に進めば間違いなく、高レートの魔獣が出現します」

「問題ない。今回の調査は二十階層までだったな」

「はい。我々はこちらで待機しています。攻略期間は二十日で、それを過ぎると死亡とみなしますので、二十階層まで進めなくても、二十日以内にお戻りください」

「わかった。じゃあ、行ってくる」


 注意事項を聞き、ハイセはクレアとダンジョンへ入っていく。


 ◇◇◇◇◇◇


 言われた通り、やはり現れる魔獣は強かった。

 しかし、既に現在七階層。ハイセは魔獣をクレアに任せ、ダンジョンの地図、特徴を羊皮紙に記していく。


「ふむ、薄暗く、遺跡地下に相応しいな……だが、道は崩れているなどの形跡もないし、歩きやすい。道はけっこう入り組んでいるか……ふむ」

「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 闘気を纏い、現れるゴブリンを斬る。

 普通のゴブリンではない。武器を持ち、技を使う『ソルジャーゴブリン』だ。討伐レートAの魔獣であるが、今のクレアには対処できる。

 

「……よし、こんなもんか。クレア、休憩できる場所を見つけた。今日はそこで休むぞ」

「は、はい!!」


 ハイセは銃を抜き、ドンドンドン!! と三連射。

 クレアを囲んでいたゴブリンの頭を撃ち抜くと、そのまま歩き出した。


「あ、師匠、待ってくださいー」


 クレアは剣を鞘に納め、ハイセの隣に向かって走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 ダンジョンには、魔獣の襲ってこない『安全圏』が必ず存在する。

 今回は七階層にあり、遺跡の通路にあった洞窟のような大きな窪みで休むことにした。

 テントは十分広げられ、椅子やテーブルを置いても問題ない。焚火をしても煙が天井の穴から逃げるため、理想の休憩所だ。

 ハイセは当然、地図に安全圏の情報を書き込む。


「……ふん、明日か明後日には調査を終えられるな。クレア、このタイプのダンジョンは、十階層にボス魔獣が存在する……やるか?」

「やります!! よーし、頑張るぞ!!」

「じゃあ任せる」


 そう言い、ハイセは紅茶を飲みながら、自分で書いたダンジョンの調査報告を読み直している。

 いくつか手直しをして、クレアに言った。


「お前は先に寝ていいぞ」

「え、でも……」

「ここは安全圏。魔獣が入ってこれない場所だ。もう少ししたら俺も休む」

「……あの、師匠」

「ん」

「……少しだけ、私の話、していいですか?」

「……少しだけな」


 そう言い、ハイセは羊皮紙の確認を続ける。

 クレアは、椅子に座り直し、ハイセに向かって言う。


「私、本当は……フリズド王国の第一王女です」

「…………」

「驚かないんですね」

「予想はしていた。その剣……俺の銃弾に耐えるほどの剣だ。王族、貴族が特別に作らせた剣と考えるのが普通だ」

「そうですか……」


 クレアは、自分の剣を手に取って眺めた。


「私、能力が『ソードマスター』で……私の侍女だった子に、『冒険者になりたい』って毎日言ってたんです。そしたらその子が『じゃあ、わたしがクレアになってあげる』って言って……私に変身する能力を使って、今もフリズド王国で『クレア』を演じています。自分の人生を捨てて……」

「……お前がそう命じたのか?」

「違います!! でも、私……彼女のおかげでこうして、冒険者として剣を振っている」

「……後悔してるか?」

「わかりません。毎日すっごく楽しいですし、大好きな師匠も、妹や弟みたいなシムーンちゃん、イーサンくんもいる。でも……その幸せの裏で、今もダフネ……私の侍女だった子が、私を演じている。ずっと、見ないようにしてきました。でも……やっぱり、もう一度ダフネに聞きたい。私を演じて、本当にいいのか……って」

「それが、お前のフリズド王国に行く理由か」

「はい……」

「……まあ、俺に何かを期待するな。俺は、ただ付いて行くだけだ。答えはお前が出せ」

「……師匠なら、そう言うと思いました」


 クレアは少しだけ微笑んだ。

 こうして、ハイセはクレアの「理由」を聞くのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「グレイトフル・モンキーズ」って何で複数形?「グレイトフル・モンキー」の群れじゃなくて? [一言] クレアの事情にいよいよ踏み込むんですね。
[良い点] 師弟だけでの冒険の話は良いですな(ほとんどデートな感じに思えるけど)。 [気になる点] ガイストって本当にギルマスか?って思うんですが。確かにクレアは等級以上の力は持っていてもまだまだ冒険…
[一言] 六つの禁断の迷宮の認定により、クレアは一級冒険者に、プリシアはS級冒険者に昇格することができたが、作者はサーシャへの愛に抗えなかった。
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