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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』⑱/踏破、そして

 『七大災厄』の一体、コルナディオ・ミノタウルスの完全消滅。

 ハイセは自動拳銃をホルスターに納め、小さく息を吐いた。


「ソロだったら、そこそこ面倒だったかもな」

「やったぁぁぁぁぁ!!」

「うおっ!?」


 なんと、背中にクレアが飛びついて来た。

 いきなりのことで驚くハイセ。


「師匠!! 勝ちましたぁぁ~!!」

「わ、わかったから放せ!! くっつくな!!」


 引き剥がそうとするが離れない。それどころか、正面に移動し、思いっきり抱き着いている。

 柔らかな部分、女の甘い香り……クレアは弟子だが『女』でもあると、ハイセは初めて認識した。

 すると、エクリプスが前に出る。


「……勝ったわね」

「おい、そっぽ向いて言うな。それとお前の魔法でこいつ引き剥がせ」

「む……そうね」


 エクリプスが指を鳴らすと、クレアがふわりと浮かび、クルクル回転した。


「あわわわわわわわっ!?」

「過度なスキンシップは不許可。ね、プレセア」

「そうね。それとハイセ、デレデレしないこと」

「してねぇよ。ってかお前ら、いつの間に仲良くなりやがった……ったく」


 ハイセは距離を取ると、ウルが来た。


「お疲れさん。いやはや、デカい牛だったぜ」

「ああ……」

「恐らく、このチームじゃねぇと討伐できなかっただろうな。全員が全員、自分の役目を理解し全力で動いた。戦闘時間は三分もかかってないし、楽勝な感じだったが……まあ、強かったぜ」

「そうだな。でも、これでクリアだ」


 すると、ミノタウルスが消滅した付近に、大きな扉が出現した。

 サーシャがハイセの傍に来る。


「ようやく、踏破……か」

「もうこれ以上は勘弁して欲しいな。腹いっぱいだ」

「ふふ、そうだな。さて……さっそく行くか」


 そのまま扉に近づこうとすると、ヒジリがハイセの前に立つ。


「ちょっとハイセ、もう行くの?」

「そりゃ行くだろ」

「ね……アタシへの報酬、覚えてるわよね? 全力で戦うっての。それ、ここでじゃダメ?」

「は? ここで?」

「うん。ここ、暴れても地形に影響なさそうだし……早く戦いたいのよね」

「……ダメだ。報酬はクリアしてから、だろ」

「むぅ……やっぱり言うと思った。はいはい、わかったわよーだ」


 ムスッとしたヒジリがハイセの腕を取り、胸を押し付けてくる。


「……何だよお前」

「言ったでしょ。アタシ、恋をして愛を知りたいの。そのために、アンタを利用するから」

「……」

「アンタだって、依頼の報酬って形でアタシのこと利用したでしょ。別に構わないわよね」

「む……」

「ヒジリ、こ、恋はその、探すものじゃない。恋はするものだぞ」

「なにサーシャ、アンタは恋を知ってるの?」

「それは、その」

「関係ないなら放っておいてよね。アタシ、強くなるために真剣なんだから。さ、行くわよ」

「おい、引っ張るな」


 こうして、一行は扉の前に立つ。

 ハイセが扉を開けると、中は真っ白な空間……まず、ハイセが踏み込んだ。

 そして、次にサーシャ、ヒジリと続き、全員が中に入った。


「真っ白な空間……」


 タイクーンがポツリとつぶやく。

 

「いや……見ろ、あれを」


 ハイセが指を差した先に、淡い虹色の球体が浮かんでいた。

 その球体に近づくが、特に何かが変わることがない。


「触れなければならないのか?」

「……よし。俺がいく」


 誰も異存はなかった。

 ハイセが手を伸ばすと……サーシャの手も伸ばされた。


「おい」

「この迷宮を踏破すると言ったのは、私とお前が最初だ。なら……私にも、触れる権利はある」

「……ったく。何言っても無駄だろうな。じゃあいくぞ」

「うむ」


 ハイセとサーシャが球体に手を伸ばし、同時に触れた時だった。

 球体が輝きだし、ハイセとサーシャの手に、虹色の水晶球が現れた。

 二人でそれを掴み、ゆっくりと手を下ろす……そして、球体が淡く輝く。


『真なる強者たちよ。ダンジョンクリアおめでとう……報酬を与える、どのような願いでも一つ叶えよう』


 そう、球体がしゃべった。

 

「ほ、報酬……?」

「確か、このダンジョンは魔族のスキルで作られたもの。この水晶、そして報酬も、このダンジョンを作った魔族が用意した物……なのか?」

「……報酬はどうする? 一つだとよ」

「 ハイセ……私は……願いが何でも叶うなら、お前の目を治したい……だが…それはお前が願うものと違う、独り善がりだとも理解している……だから…他に願うとすれば一つだけだ」

「……フッ……アリガトよ……俺の願い…一つあるな」


 ハイセとサーシャは互いに見つめ合い、振り返る。


「話は聞いたな? この水晶は、願いを一つだけ叶えてくれるらしい……お前たち、願いはあるか?」

「はいはーい!! アタシは肉いっぱい食べたーい!!」

「俺が死ぬほど奢ってやる」

「……私はあるけど。そんな怪しげな水晶の力に頼ることはないわね」

「プレセア、いいんだな?」

「ええ」

「その水晶を思う存分調べるという願いがたった今できたよ」

「タイクーン……すまないが、勘弁してくれないか」

「冗談だよ、サーシャ」


 ヒジリ、プレセア、タイクーンは願いを辞退した。


「オレはダンジョンクリアが報酬、で名誉だ。過分な報酬は身を焦がすぜ」

「……踏破したら、俺が酒を奢ってやる」

「ほ、それはいいね。約束だぜ、闇の化身(ダークストーカー)

『私の願いは踊ることです』

「ふふ、そうだな。ここを踏破したら、『セイクリッド』の全員でお前の踊りを見にこう」

『ありがとうございます。マダム』


 ウル、ヴァイスも願いを辞退。

 ハイセはエクリプスを見る。


「お前は?」

「……あなたの傍にいることが、私の願い。ハイセ……これからも、傍にいていい?」

「……好きにしろ」

「ありがとう」


 エクリプスは、すっかり恋する乙女になっていた。

 かつて『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』でハイセを出迎えた威厳、恐ろしさは皆無。人はこうも変わるのかと、ハイセはある意味感心していた。


「クレア、お前は?」

「ん~、私も大丈夫です。師匠が今度一緒に、フリズド王国まで行ってくれるし。えへへ」

「ったく、仕方ない奴だな……まあ、お前は頑張ったし、それ以外でもちゃんと報酬はやる」

「やった。じゃあ師匠、私と一日デートしてくださいねっ!!」

「……わーったよ」


 と……なぜか、プレセア、エクリプス、サーシャ。ついでにヒジリからジロッと睨まれたハイセ。

 その視線を無視し、サーシャに言う。


「サーシャ、お前の願いは?」

「ハイセ、お前の願いも聞きたい」

「……じゃあ、同時に言うか」


 何を言うか、二人はわかっているような口ぶりだった。

 水晶を二人で掲げ、ハイセとサーシャは同時に言う。


「「禁忌六迷宮『狂乱磁空大森林きょうらんじくうだいしんりん』の場所を教えてくれ!!」」


 そう叫ぶと、水晶は輝く。

 そして、輝きが収束し、一つの形となっていく。

 それは、地図だった。

 この世界の精巧な地図が具現化され、ハイセとサーシャの前に落ちてきた。

 同時に、水晶が砕け散り、真っ白な世界がねじくれていく。

 ハイセは地図を手に取り、次いでサーシャを強く抱いた。


「は、ハイセ!?」

「空間が捻じ曲げられる……おい!! 全員気を付けろ!!」


 ハイセがそう叫ぶと、空間がさらにねじ曲がった。


 ◇◇◇◇◇◇


「───…………っぅ」


 ハイセがゆっくり目を開けると……そこは、地下のような場所だった。

 見覚えのある空間だった。

 周囲を見ると……人がいた。


「は、ハイセ?」

「レイノルド……だよな」

「おま、え? な、なんで」

「ここは……『セイクリッド』の地下、か?」

「ひゃっ!?」


 ぎゅっと手に力を込めると、柔らかな物を握りしめていたことに気付く。

 

「あ……」

「さ、サーシャ……? げっ、す、すまん!!」


 サーシャの胸を鷲掴みにしていたことに気付き、慌てて離れた。

 サーシャは顔を赤くしながら胸を押さえている。

 動揺するハイセの代わりに、タイクーンが言った。


「全員、いるようだな……どうやら、願いを叶えると脱出できるようになっていたのか。水晶も割れたし、もう調べることはできない……完全踏破だな。む、レイノルドか」

「た、タイクーン!? おい、マジか!?」

「やれやれ。見て分からないのか? まあ、かなり時間が経過したようだが」

「は? 時間? 時間って……」

「む? どうした?」


 レイノルドは、やや怪しげな目をしながら言う。


「お前たちが禁忌六迷宮に挑んでから、まだ二分と経過してないぞ」

「……は?」

「ほ、ほんとだよっ……お、驚いた~」

「サーシャ!! 大丈夫ですの!?」


 ロビンが驚き、ピアソラがサーシャに飛びついた。

 ようやく落ち着いたハイセは言う。


「現実じゃ、ほぼ時間経過していないのか。『神の箱庭』……本当に、不思議だったな」

「あ、ああ。くぅぅ……し、調べたい!! だがもう、完全踏破した以上、調べることはできないだろう……うう、残念だ」

「まあいい。目的のブツは手に入った」


 ハイセの手には地図があった。

 禁忌六迷宮『狂乱磁空大森林きょうらんじくうだいしんりん』の位置が描かれた地図。

 それをアイテムボックスに入れ、ハイセは言う。


「さて、四つ目……『神の箱庭』は完全制覇だ」


 こうして、四つ目の禁忌六迷宮『神の箱庭』は、完全踏破された。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 弱くて馬鹿にされながらも必死に食らいつこうと頑張ってた頃のハイセが一番格好良くて、人間的に一番強かったと個人的には思う。 覚醒後は強いだけで魅力あんまないんだよな。 そしてそんな時代に想いを…
[一言] 目に関しての改稿は良いけど、これでサーシャの人格とか浅はかな行動とかに作者さんが伏線を仕込んでいたからと言う事は無くなったと(他人の意見で直したわけだから)。 ハイセの目よりも迷宮攻略が大…
[良い点] 願いとして、踏破で一回だけなら大森林の位置は納得(「目」はハイセがOKしないと思うし。けど、触れて欲しいかな・・)。 →改稿感謝!! [気になる点] 最初の迷宮踏破から1年たってない・・・…
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