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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』⑯/真なる猛牛

 たっぷり休憩を取ったハイセたちは、九人並んで扉の前に立つ。


「開けるぞ」


 正面に立つハイセが言い、扉に触れる。

 これまでの扉と違い、観音開きの扉だ。取っ手を掴んで押し込むと、扉がゆっくり開く。

 扉の先は、真っ暗な空間だった。先が見えないので、何があるかわからない。


「さて、この先には『宝』を守る最後の番人がいるはずだが……」

「俺が倒したからな」


 タイクーンの疑問にハイセが答える。


「なら、すぐに宝があるのか?」

「ふふ、そう簡単にいくとは思えないけどね」


 サーシャの疑問にエクリプスが答える。


「き、緊張してきました……」

「ま、落ち着いて行こうぜ」


 緊張するクレアに、ウルが軽い声で言う。


「そんなの行けばわかるわ!! ふふん、楽しみ!!」

「お気楽ね」


 拳を合わせるヒジリ、どこか呆れたようなプレセア。


『…………』


 ヴァイスだけは、いつもと変わらない無言。

 それぞれが踏破は目前と感じていた。そして、ハイセは進む。


「行くぞ。全員、気を抜くな」


 ハイセが扉の先に消え、サーシャが続き、残った全員も進む。

 先に進むとそこは───……広大な『平原』だった。

 何もない平原だ。地面があり、空がある。木々は生えておらず、遮るものが何もない。

 かなり広い空間。タイクーンは言う。


「何度驚けばいいのか……『神の箱庭』の中は無限の空間なのか? これも魔族の『スキル』で生み出した空間だとしたら、人間の『能力』とは規模が桁違いだ。ふむ……興味深い」

「……私も魔法で『空間』を作ることはできるけど、これだけの規模は不可能ね。確かに、興味深いわ」


 タイクーン、エクリプスが感心するが、ヒジリはゲンナリする。


「な~んもないじゃん。ぜんっぜん興味深くないし。で、何ここ?」

「俺に聞くな。とりあえず、辺りを探索して───……っと」


 すると、地面が揺れ出した。

 ヒジリが驚きハイセの腕を掴み、各々が揺れに備えている。

 そして……最初に気付いたのは、ヴァイスだった。


『ムッシュ。警戒を』

「え?」

『何かが来ます』


 ヴァイスが見ている方向には何もない……だが、数秒してハイセも、ウルも気付いた。

 何かが、来る。

 遅れてサーシャ、タイクーン、プレセア。そしてヒジリ。

 エクリプスも気付き、最後に気付いたのはクレアだった。

 地面の揺れが激しくなり、ヴァイス以外立つこともできない。

 そして、その揺れの正体───何かが物凄い勢いで地面を駆け、その振動で地震を起こしているとわかった。


「な、なんだ……アレは!?」


 向かってくる正体が視認できた。

 それは、黒い山が迫って来るようで…大きさは百メートルを遥かに超える。しかし『山』……ではない。

 下半身は馬。上半身が漆黒の体毛に包まれた『牛』だった。

 手には、歪な棍棒がある。それで地面を叩きながら向かってきた。


『グォアアァァァァァァァァァァァァァ───!!』


 恐るべき雄叫びだった。

 空気が振動し、ビリビリとハイセたちの全身に叩き付けられる。

 耳をふさぐが、その振動の凄まじさは耳をふさぐ程度では打ち消せない。


「───『振動軽減(ノイズキャンセル)』……っ」


 エクリプスが辛うじて魔法を発動、振動を中和し、ようやく動けるようになった。

 そして、その怪物がハイセたちの前まで来ると急停止。


『フゥゥゥゥゥォアォォォォォォォ……』


 呼吸を荒くし、全身の毛が逆立っている。

 間違いなく、怒り狂っていた。

 ハイセは立ち上がり、呟く。


「なるほどな……コイツが本当の、『コルナディオ・ミノタウルス』か。俺が倒したのはこいつの子供か、劣化版みたいな存在……今なら納得できる」


 そして、サーシャが立つ。


「つまり、こいつを倒せば……『神の箱庭』は踏破、か」

「ああ。間違いなく、こいつは強敵だ。以前、俺はヤマタノオロチ・ジュニアとかいう『七大災厄』の劣化版と戦ったが、こいつは間違いなくオリジナルだ」

「確かにな。私たちもショゴスというスライムと戦ったが……オリジナルというのは、こうも強大だとはな。それに、どう見ても怒り狂っているぞ」

「たぶん、ここに閉じ込められたことで怒ってるんじゃないか? ここはこいつにとって檻みたいな場所だしな」


 ハイセとサーシャが並んで喋っていると、ヒジリが拳を合わせ並ぶ。


「滾る……!! ね、ハイセ!! アレやっていいんでしょ!?」

「ああ。でも、回復役はいないから、死んだら終わりだぞ」

「フン!! 面白いじゃん!!」


 そして、エクリプスが並ぶ。


「治療なら私もできるわ。忘れた? 私は『マジックマスター』……攻撃も支援も治療も、私が世界最高峰よ」

「やれやれ、ボクの出番をあまり奪わないで欲しいね」


 タイクーンが並び、興味深そうにミノタウルスを観察する。

 ウルが並び立ち、アイテムボックスから大きな変形機構のある弓を取り出した。そして、本気で戦う時だけに吸う煙草に火を着ける。

 そしてプレセアも弓を取り出した。


「やーれやれ。久しぶりに本気で戦うしかねぇか。ま、援護は任せておきな」

「あら、私もできるわよ」

『ムッシュ、マダム……危険度大。私だけでは対処不可能です』

「安心しろ。ここにはS級冒険者たちが揃ってるからな。さて……クレア」


 ハイセは、未だしゃがみ込んだままのクレアを見た。

 クレアの位置は、S級冒険者たち、そして最後に並んだプレセアとヴァイスの背中が見える位置。

 

「お前はどうする。戦うか、隠れているか」

「…………っ」


 クレアは立ち上がった。

 自分は未熟だと、クレアは理解している。それでもハイセは『共に戦うか』と、言葉ではない、態度で示してくれた。

 

「私は……」


 今なお、フリズド王国で『クレア』を演じ、冒険者になるという夢を支えてくれているダフネのために、クレアは至高の冒険者を目指す……そのために、立ち上がらなければならない。

 立ち上がり、双剣を抜き───闘気を一気に解放した。


「私も戦います!!」


 青藍の闘気に銀が混ざり、青銀色に輝いた。

 これまでとは比較にならない闘気の出力に、サーシャが驚く。


「ふ……私も、負けられんな!!」


 純白銀に輝く闘気。質も出力もクレア以上……まだまだ、『ソードマスター』の後輩であるクレアには負けないという意思を感じた。


「ふむ……支援に徹しよう」

「私は臨機応変に支援、回復を」


 タイクーン、エクリプスが魔力を漲らせる。


「私は援護」

「オレもだ。フッ……怒れる猛牛に教えてやるぜ。夜を駆ける荒鷲の爪を」


 プレセア、ウルは援護に徹するのか、言葉と同時に姿を消した。


「フン、ハデに行くわ!! ちょっとアンタ、今回は味方だからね!!」

『了解しました』


 ヒジリは四肢にオリハルコン製の具足を装備。

 ヴァイスはアイテムボックスから『鎖付き鉄球』を取り出しブンブン振り回す。

 そしてハイセ。


「さあ───……ここからが、ハイライトだ」


 両ホルスターから自動拳銃を抜き、クルクル回転させてミノタウルスに向ける。

 九人の戦意を受けたコルナディオ・ミノタウルスが、怒りの咆哮を上げ襲い掛かってきた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
逆に味方がいるからハイセは全力出せない可能性アリだね
[一言] 序列1位から5位の共闘にAランク冒険者が勢揃い豪華メンバーですね! ハイセの攻略をスルーしたのは、このためでしょうか?
[一言] 『コルナディオ・ミノタウルス』のイメージは某カードバトルに出て来たミノケンタウロスみたいだな。 ハイセが倒したのは本体を劣化コピーした幻覚みたいなものなのかな?それとも魔物の単為生殖で生まれ…
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