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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』⑫/クリア続出

 エクリプスは、金貨を一枚手に取り、クスクス笑っていた。


「残り一枚……ふふ」


 膨れ上がった金貨は、総額四万六千枚。

 だが、その全てを使い切り、手元には残り一枚だけ。

 そしてその一枚は、たまたま路上を歩いていた孤児の女の子に寄付した。

 たった今、エクリプスは所持金がゼロになった。


「あら……」


 そして、エクリプスの目の前に、扉が現れる。

 その扉を前に、エクリプスは振り返った。


「思った以上に、簡単だったわね……能力も使わなかったし」


 エクリプスは、祭りが開催されている(・・・・・・・・・・)街を眺めつつ言う(・・・・・・・・)

 この祭りは、エクリプスが膨れ上がった所持金を全てつぎ込み、開催させた。

 街の食材、酒、楽団や劇場、商会を買収し、祭りを開催するように指示した。

 いきなり現れた女が大金を手に『祭りを開催しろ』と言う……だがエクリプスの神秘的な雰囲気、そして目の前にある大量の金貨が、町長や町の有職者たちの首を縦に振らせた。


 そして、準備期間を経て、祭りは開催された。

 だが……『金貨は使えば増える』仕組み。祭りを開催したら、エクリプスの手には大金が転がり込んでくるのは間違いない。エクリプスもそう思っていた。


 なので、エクリプスはこう指示した。

 『祭りの収益は全て、祭りが終わった後に報告すること』……と。

 エクリプスが推測した通りだった。

 祭りの開催中は、エクリプスの元に金貨が来ることはなかった。


「このお祭りが終われば、私の元に莫大な金貨が入ってくる……でもね、今、私の所持金はゼロになった。つまり……ゲームはクリア。私の勝ち、ね」


 エクリプスは、目の前に現れたドアノブを掴む。

 このドアノブ。街の道路のど真ん中にあるのに、誰も気付いていない。

 やはり、この街は幻覚……エクリプスはそう思い、ドアノブを捻った。


「さ、ハイセに会いに行かなきゃ……ふふ、褒めてくれるかな?」


 恋する乙女の表情で、エクリプスはドアを開けて先に進んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇

 

「あら……おしまい?」


 プレセアは、如雨露片手に、唐突に現れた扉を見てため息を吐いた。

 泉の傍には畑があり、丁寧に柵まで設置されている。

 そして、テントにテーブル、椅子。焚火の跡もあり、どう見ても生活の場として馴染んでいる。

 

「いいところ……ここ、私の避暑地にしたいわ」


 扉を見て、これまで生活していた跡地を見る。

 今も、動物たちがプレセアの野営地に集まり、昼寝をしたり、水を飲んだりしている。

 プレセアはため息を吐き、泉の傍にいる鹿を撫でた。


「ごめんなさいね。私、行かなくちゃいけないの……二百年間(・・・・)、一緒に過ごせて楽しかったわ」


 そう、二百年間。

 プレセアは、ここで二百年間……実に、七万二千日過ごした。

 動物に首輪をつけ、名前を付けた。

 二百年生きる動物はそういない。ましてや、ただの鹿が二百年も生きるわけがない。

 ここは、時間の流れが違う空間。プレセアの身体も成長しないし、そういう空間なのだろう。

 鹿は、プレセアに頭を寄せる。プレセアは鹿を抱きしめ、そっと撫でた。

 他にも、リスや小鳥が、名残惜しそうに集まってくる。


「……二百年。ふふ、けっこうな時間が過ぎたけど……エルフである私にとっては、一瞬ね」


 野営道具を片付け、ドアの前に立つ。


「久しぶりに……会えるわ。ハイセ」


 二百年間会わずに過ごした。それでも、想い人の顔は色褪せない。

 ドアを開け、プレセアは先に進むのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


『…………』


 鉄の女王(アイアン・クイーン)を撃破したヴァイス。

 左腕を失い、顔にも亀裂が入っていた。

 だが、鉄の女王の転がった腕を拾い、口を開け咀嚼する……すると、体内にある修復器官が作動し、損傷個所が少しずつ修復される。

 鉄の女王の腕、足を完食し、完全修復。


『……戦利品を頂きます』


 ヴァイスは、鉄の女王が使っていた剣を拾った。

 切れ味、耐久性、そして装飾……次の舞台の演武で使うのもいいし、このまま戦闘で使うのもいい。

 ヴァイスは剣を手に、破壊した鉄の女王に一礼した。


『鉄の女王。あなたとのダンスは、私に新たな機能を授けてくれました。感謝します』


 すると、ヴァイスの目の前に扉が現れる。

 この試練。最後の敵を倒したことで、道が開かれたのだ。


『……お客様を待たせてはいけません。では』


 それだけ呟き、ヴァイスはドアを開け先に進んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 クレアは、ダフネと二人でフリズド王国の城下町を歩いていた。

 

「……寒いね」

「そう? いつもより暖かいじゃない」


 クレアは苦笑する……いつの間にか、故郷であるフリズド王国より、ハイベルグ王国の気候に慣れてしまっている自分がいた。

 今も、しんしんと雪が降っており、フード付きのコートを着ているせいか、フードに雪が積もっている。それを手で払い、白い息を吐く。


「ね、クレア。ケーキ楽しみだね」

「う、うん」

「……なーんか元気ないね。どうしたの?」

「……べ、別に?」


 そっぽ向くクレア。

 いえるわけがない。

 ケーキを食べた後、二人にとって人生の岐路ともいうべきイベントが起きる。

 今のクレアだからわかる。教会に行けば、人生が変わる。

 自分だけじゃない……ダフネも。


「あ、あのさダフネ……ケーキ食べたら、どうする?」

「そりゃ帰るでしょ。でもまあ、ちょっとぐらい寄り道してもいっか」

「───!!」


 クレアは迷った。

 今、クレアが冒険者として活動できるのは、ダフネの犠牲によるものだ。

 教会に行かなければ、ダフネは犠牲にならずに済む。

 その代わり……クレアの冒険者としての人生は、終わる。


「…………ダフネ、その」

「ほら、いこっ」

「あ……」


 ダフネに手を引かれ、クレアは走り出す。

 どこまでも楽しそうな、『今はもう存在しない』親友、ダフネ。


(……どうしよう)


 ここが、禁忌六迷宮だとクレアは自覚している。

 だが、もう一度親友を犠牲にする覚悟は、まだなかった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 天才少女が一番かっこいい。 物語全体を通して、彼女のキャラクターであるエクリプスはあらゆる面で完璧だと思います。 あとプリシア、クレア、ハジリも可愛い子ですね 正直、前にも言いましたが、こ…
[良い点] 金勘定を後回しにして「所持金」を無くすアイデア。 [気になる点] 寄付はノーカンなのか? その場で相互にカネのやり取りを発生させなければ良いのか? [一言] エクリプスのも割とあっさり終わ…
[一言] エクリプスは流石ですね 金貨を使い切るではなく、仮に一定額に増やすという条件だったとしても構わないような手段を選んでる 状況的に少ない可能性であってもちゃんと保険はかけておいたわけっすね
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