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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』⑩/それぞれの状況

「む? ああ、もう終わりなのか……」


 タイクーンは、一万問目の問題を解いてしまった。

 そして、巨大な扉がゆっくりと開いていく……が、それを無視。


「まあ、もう少しだけ読書に時間を割いても……うん、問題ない。もう少しだけ、もう少し……」


 扉は開いた。

 だが、まだまだ読んでいない本がある。この素敵な空間から出ることなどありえない……と、タイクーンはウキウキニコニコしながら、まだ手を付けていない本棚へ向かった。

 この空間では、食事も睡眠も必要ない。

 タイクーンの仮説では、時間の流れも違うと確信していた。なので、思う存分読書をしても問題ない……そう思い、本棚へ向かう。

 

「ククク、ああ素晴らしい……人生最高の時間だ」


 本に囲まれ、時間を気にせず、睡眠も食事も取る必要のない空間。

 タイクーンがこの空間に踏み込み、実に十六万四千時間が経過。普通なら精神崩壊を起こしてもおかしくないのだが、むしろ今が最高とばかりに、タイクーンは楽しんでいた。

 そして、長時間の読書で速読法をマスターしたタイクーンは、実に扉が開いてから四千二百五十万時間後に、ようやく扉の先に進むのだった。

 その時、この部屋で最後に言った言葉が。


「ふう……楽しい時間は、一瞬で終わってしまうものだ」


 精神崩壊どころではない。

 タイクーンは、初めからいろいろな意味でおかしかった。

 こうして、『知識の試練』はクリアされた。


 ◇◇◇◇◇◇


 コツ、コツ……と、静かな足音が響いていた。

 手には巨大なケース。服装はシックなドレス。そして帽子。

 人ならざる者……ヴァイスは、戦火に包まれている街を、たった一人で歩いていた。


『…………』


 声は出さない。なぜなら、出す必要がないから。 

 ヴァイスの通った道には、数多くの『機械人形』が転がっていた。

 それらすべては、ヴァイスが撃破した人形である。


『…………』


 ヴァイスは、広場に出た。

 周囲を探索。すると、巨大な塔の最上階から何かが飛び降り、ヴァイスに向かって来た。


『───!!』


 ヴァイスは後方に飛び回避。

 目の前に着地したのは、両手が巨大鉄球となっている、寸胴な頭をした機械人形だった。

 頭部に、『リュクサンブール・アルキミヤ』と彫られており、この機械人形の名であることがわかった。

 そして、建物を突き破って巨大な塊が現れた。

 

『……二体目』


 真ん丸で黒い鋼の装甲。球体から手足が現れヒト形となり、全身が紫電に包まれる。

 ボディに、『アンヴァリッド・ヘッジホッグ』と彫られている。

 そしてさらに、空を飛んで何かがやってきた。

 巨大な鳥……いや、ヒト形の人形に、いくつもの翼を継ぎ接ぎした歪な姿をしている。


『三体目』


 ボディに、『シテ・ラスパーク』と彫られている。

 ヴァイスは理解した。

 この『戦火の試練』に現れる最強の機械人形たちが、ヴァイスを脅威と判断し、徒党を組んで襲い掛かってきたのだ。

 ヴァイスは、スーツケースから二本の剣を装備……ヴァイス自身の装甲を削り作った特製の剣だ。

 ヴァイスは、一度だけくるりと回転し、剣を構えた。


『参ります』


 孤独な機械人形は、生き残るために戦いを始めた。

 戦い続け───……そしてついに、機械人形最強兵器と対峙する。

 ヴァイスにはどうでもいいことだが、この街は城下町であり、大きな城があった。

 その城の中央広場に、それはいた。


『どうやら、最後のようですね』


 全長四メートルほど、両手に剣を持つ『女性型』の機械人形。

 スカートのように広がる装甲から、紫電が放たれる。

 ボディには『アイアン・クイーン』と彫られていた。

 そして……広場の奥に、巨大な扉が。


『あなたを破壊すれば、ここから出られるのでしょうか?』


 鉄の女王に問うが、答えはない。

 その代わり、剣を突きつけられた……向かって来いと言わんばかりに。

 ヴァイスは、両手に扇を持ちバッと開く。


『では、答えは自分で見出します。私には……まだまだ、お客様にお見せしていない踊りや歌が御座いますので』


 『戦火の試練』……最後の戦いが始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


「……ふぁ」


 プレセアは一人、大きな欠伸をした。

 森の中。綺麗な泉。集まる動物。周囲の木々には美味しい果実……何もすることがなく、時間だけが過ぎていく。

 

「あら……」


 プレセアの肩に、可愛らしいリスがいた。

 指を差し出すと、その指にピョンと飛び乗る。

 それを見てクスっと微笑み、プレセアは呟く。


「思えば……こんな穏やかな時間、冒険者になってから初めてかもね」


 プレセアは、ヒマなのでアイテムボックスから『種』を取り出した。

 そして、農具も出し、泉の近くでちょうどいい場所を探す。


「たぶん、ここは『待つ』だけ……だったら、種でも植えてみようかしら」


 買って植えていない種や苗はいくらでもある。

 それに、水も日光もある。植物を育てる環境としては最適だ。

 プレセアは、シャベル片手に呟く。


「長いお休みだと思って、いろいろやってみようかしら」


 エルフは長寿種族。

 この試練はプレセアにとって、すこし長い休暇のようなものだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 エクリプスは考えていた。

 現在、『黄色の扉』を潜った先にあった国、ユートランド。

 数千年前に滅んだ国に、エクリプスはいた。

 とりあえず、宿を取り椅子に座って考える。


「金貨……」


 机の上に金貨を置く。

 たった今、宿屋で支払いをしたばかりなのだが。


『あらあんた、運がいいわね。今日は宿屋の開店記念日で、なんと無料宿泊をやってるのよ!! 最後の一部屋はあんたのモノだよ。それと、あんたはうちの宿屋が始まってちょうど一万人目のお客!。金一封のプレゼントだよ!!』


 と、支払った直後に金貨が増えて戻ってきた。

 エクリプスは整理する。


「ここは、滅びたはずのユートランド王国……どういう原理か知らないけど、人々はちゃんと暮しているし、この世界では魔法も使えるわ。まるで、あの扉の先が過去につながっていたようにね……」


 チャリンと、金貨を指で弄ぶ。


「増える金貨……おかしな話。確か、カーリープーランは……『扉の先に試練があり、それをクリアすれば道は開かれる』って言ってたわ。つまり、増える金貨……これが試練に関係している」


 エクリプスは金貨を指でつまみ、じっくり見る。


「使うと増える。では……どうにかして手持ちの金貨をゼロにすれば、何か起こるかも。ここで生きる以上、食事や宿の費用もあるし、お金を使わないわけにはいかない……。さて……考えるのはこれくらいにして、この世界を調べないとね」


 エクリプスは立ち上がる。


「ふふ……なんだか楽しくなってきた。何から手を付けようかしら」


 その表情は、どこまでも楽しそうだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] この『神の箱庭』って迷宮じゃなくて元々は試練を乗り越えさせて強化するための場所だったんじゃないか?という気がしてきた。 [一言] なんか破滅のグレイブヤードみたいに高難易度とか言いなが…
[良い点] 読みも読んだり500年分かぁ〜 こりゃ、迷宮のことや魔族のこととか色々あったでしょうなぁ。 師匠に近づけたかな?なかで論文書いてたりして…
[良い点] 赤の扉(タイクーンの試練) 『もぅヤダぁぁぁコイツ面倒臭ぁぁぁい』
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