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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』⑦/黄、緑、黒


 黄色の扉を潜ったエクリプスは、周囲を見回して首を傾げた。


「……ここは?」


 全く見覚えのない場所だった。

 そして、エクリプスの足元に、大きな宝箱が置いてある。

 どう見ても、この空間と無関係ではない。エクリプスはしゃがみ込み、人差し指で宝箱に触れた。


「『探知(スキャン)』」


 エクリプスは、世界に一人だけしかいない『マジックマスター』というマスター系能力を持つ。文字通り、この世に存在する全ての魔法を操ることが可能。

 この能力を持つものは、操る魔法の得意不得意が消える。

 タイクーンは『賢者』の能力を持つが、攻撃魔法より支援魔法の方が得意。

 ピアソラは『聖女』の能力を持つが、解毒魔法は苦手で、治癒魔法は何よりも得意。

 だがエクリプスは、得意不得意がない。

 それだけじゃない。魔法の属性を組み合わせ、自分だけのオリジナル属性をいくつも開発……そして、それらを論文としてまとめ、世の魔法使いたちに教えたのだ。


「……特に、怪しいものはないわね」


 例えば、『火魔法』と『風魔法』を組み合わせた『嵐魔法』を開発。火魔法、風魔法の使い手が連携することで、更なる力を行使することができるようになった。

 他にも、魔法同士を組み合わせて使用する技術を、世の中に多く輩出……エクリプスは今代最強最高の魔法使いとして、ある意味でハイセより知られている。


「この箱を開けないと、先に進めないようね」


 室内は、何もない。

 どこかの遺跡のような場所。四方に扉はなく、あるのは宝箱だけ。

 エクリプスは宝箱をジッと見つめ……蓋に手をかけた。


「さて、何が出るか……ふふ、冒険をするのも、自らを危機に晒すのも、命を賭けるのも久しぶり。たっぷり楽しませてもらおうかしら」


 エクリプスが蓋を開けると、そこにあったのは……一枚の金貨だった。


「…………金貨?」


 金貨を摘まんだ瞬間、周囲の空間がブレた。

 そして───……景色が切り替わり、エクリプスの周りが一気に騒がしくなった。


「え?」


 そこは、町。

 ハイベルグ王国ではない。ハイベルグ王国よりも賑わっている。

 路上には数多くの露店。周囲の建物は全て店。

 商店だけじゃない。カジノや飲食店も数多くあり、まるで娯楽の街。

 

「聞いたことがあるわ。確か……ファンタスティック・ファンタジアだったかしら? この世で最も栄えている歓楽街……でも、違うわね」


 歓楽街は娯楽の街。だがここは、生活感がある街だった。

 歩いてみると、人とぶつかる。


「おい、気を付けろ」

「……私を認識している。幻覚でもなさそうね」


 ふむ……と、エクリプスは考える。

 そして、手元にある一枚の金貨を見て首を傾げる。


「ヒントは、この金貨……普通の金貨と違うのかしら?」


 エクリプスは、自分が持つ金貨と比べようとして、アイテムボックスにある財布を出そうとした時だった。


「……あら?」


 財布がない。

 予備の財布もない。それだけじゃない……エクリプスが持つ全ての現金が、消えていた。

 冒険者カードもない。完全に無一文……いや、手にある一枚の金貨だけ。


「……お金」


 エクリプスは、一つの推理をした。

 そして、それを検証すべく、一枚の金貨を持って近くの串焼き屋へ。

 串焼き屋からは、ジュウジュウと香ばしい香りがする。


「おじさん、串焼きを金貨一枚分、くださいな」

「お、べっぴんさんだね。金貨一枚とは太っ腹!! ああ、べっぴんさんに言う言葉じゃねぇなあ!! はっはっは!!」


 威勢のいいおじさんだった。

 そして、大量の串焼きをエクリプスに渡し、エクリプスが金貨一枚をおじさんに渡した時だった。

 

「ん? おいおいお嬢ちゃん、この金貨……どこで手に入れた?」

「……さあ?」

「こいつはユートランド王国が発行した初代の金貨じゃねぇか!! もう存在しない金貨と思ってたが、こんなところで見れるとはなぁ!!」

「詳しいのね」

「ま、昔は冒険者だったからな!! 初代金貨には、今じゃ使われていない『タマコガネ』って金が使われてな、換金すりゃ金貨千枚はくだらねぇ……ちょっと待ってろ!!」


 おじさんは、屋台近くの建物に入る。そして、数分で戻って来た。

 手には大きな袋。その中には大量の金貨。

 その袋を、エクリプスに押しつける。


「店にある分全部焼いちまった、おつりだ。落とすんじゃねぇぞ!!」

「……ありがとう」


 串焼きをアイテムボックスに入れ、金貨袋もアイテムボックスに入れる。

 近くのベンチに座り、考えをまとめる。


「ここはユートランド王国……有り得ない、と言いたいけど……禁忌六迷宮だし有り得るのかしらね。まさか、数千年前に滅んだ王国にいるなんて。そして、一枚の金貨が千枚に化けた」


 エクリプスの前を、新聞屋が通った。

 エクリプスは引き留め、金貨一枚を差し出して言う。


「新聞をひとつ」

「はいよ。じゃあおつりね!! ありがとうございます!!」


 新聞屋は走って行ってしまった。

 そして気付く。


「おつり……金貨?」


 金貨一枚を払ったはずなのに、おつりは金貨二枚だった。

 金貨が、また増えた。


「……まさかと思うけど」


 『富豪の試練』……金は、使えば使うほど増えていく。

 金を全て使い切るのが試練。エクリプスがそのことに気付くまで、そう時間はかからなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 プレセアは、森の中にいた。

 静かな森だった。魔獣の気配がなく、動物たちの楽園と言っていいほど、多くの野生動物たちがいた。

 綺麗な泉があったので向かうと、シカや小動物たちが集まり、水を飲んでいた。


「くす……」


 警戒していたが…平和な光景だった。

 子供の頃、よく姉と一緒に遊んだ森を思い出し、プレセアは泉の傍にしゃがみ込む。


「綺麗な場所。エルフにとって楽園のような場所……でも、私にとっては危険かも」


 危険。

 何故なら、この場所には……精霊が全く存在しない。

 つまり、『精霊使役』を使うプレセアにとって、能力が封じられた場所だ。

 考えていると、ウサギやリスがプレセアの元へ。

 小鳥が肩に止まり、リスがプレセアの太ももに上る。


「ね、あなたたち……私は、ここで何をすればいいの?」


 動物たちの返事はない。

 周囲を見渡すと、木々に様々な果実が生っていた。

 周囲の草花には薬草も多い。


「まるで箱庭。どうすればいいのかしら……」


 まさに、その通り。

 ここは『箱庭の試練』……何もない、平和な森。

 出口もない。目的もない。あるのは平穏な箱庭の世界。

 ここですべきことは、『時間経過』だけ。時間が過ぎれば、いずれ扉が開く。

 全くヒントのないこの空間で、ただ待つだけ。

 それがどれほど辛いのか。常人にはきっと耐えることができない。

 

「しばらく様子を見て……まあ、待つのは嫌いじゃないし」


 人差し指を差し出すと、小鳥が止まった。

 ただ『待つ』だけの試練。プレセアはそのことに気付かず、のんびりと泉に足を付けた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセは一人、真っ暗な空間を歩いていた。

 暗いが、道はあるし、地面は石畳だ。

 星のない夜のような場所だ。ハイセは松明を手に周囲を照らす。


「……平原か。そして、街道を歩いているのか」


 歩きながら考える。


「……今までの禁忌六迷宮は、文明の名残があった。でもここはそういう感じじゃないな」


 かれこれ数時間、ハイセは歩いている。

 魔獣もいない。星のない夜のような平原。


「……正直、嫌いじゃないな」


 静かな、星のない夜は嫌いじゃなかった。

 真っ暗な夜空も悪くない。だが、ここは禁忌六迷宮……やはり、何かある。

 ハイセは立ち止まり、松明を投げ捨てた。


「ああ……やっぱり、いたか」


 前方───……ハイセの正面に、深紅の瞳が二つあった。

 それを確認すると同時に、夜空の向こうから太陽が昇る。

 周囲はやはり平原……そして、おびただしい人骨が転がっていた。

 そして、前方にいたのは。


『ブモォォォォォォォォォォォォォォ!!』


 身の丈百五十メートル以上。肩幅も八十メートル以上ある、ハイセがこれまで出会った魔獣の中でも、最大に近い大きさだった。

 上半身は巨牛。鎧を付け、城の塔や、城塞そのものも両断できそうな大戦斧が両手に握られていた。

 下半身は馬。その足の太さも巨木の幹どころではない……完全なバケモノ動く城だ。

 ハイセは確信した。


「おいおい……九つの扉の先に、いるんじゃなかったのか?」


 間違いなかった。

 ハイセの目の前にいるのは『七大災厄カタストロフィ・セブン』の一体。

 その名は、『コルナディオ・ミノタウロス』だ。

 そう、ここは『厄災の試練』……九つの扉で最も過酷な、七大災厄が封印された扉。

 この扉に踏み込んだ者は死。それはもう、確定事項だった。

 だがハイセは───……凶悪な笑みを浮かべた。


「ああ……感謝するよ、禁忌六迷宮」


 ハイセの手には、仮面……いや、『ガスマスク』があった。

 そして、背後には大量のミサイルが浮かんでいる。

 上空には、巨大すぎる『筒』が浮かんでいた。


「ここなら、試せる……『武器(ウェポン)マスター』最強の力、俺が持つ七つの最終兵器を。くくっ……ああ、名前と効果は知ってるんだ。でも、あっちじゃ試せなくて、ずっとモヤモヤしてたんだ……でも、ここなら遠慮しなくていい。悪いなヒジリ、この牛……俺の実験台になってもらう」


 ハイセはガスマスクを被る。

 すると、ハイセの周囲にガスが発生した……毒ガスである。


「さあ、やろうか。俺の『兵器』を全て味わってもらう……簡単に死ぬんじゃねぇぞ」


 果たして、ハズレを引いたのはハイセなのか、ミノタウロスなのか……戦いが始まった。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
ミサイルまでくりゃミノタウロスは瞬殺コースまっしぐら⋯(笑) 16式機動戦闘車(MCV)なども運用できそうだな⋯
ハイセ、今の段階で能力がカンストしてしまったん?
"I am not trapped in here. You are trapped here with me" ~ Haise probably
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