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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第三章 鉱山に潜む者

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魔族

 魔族。

 クレインは、両手両足に『風』を纏わせ浮き上がった。

 サーシャは剣を構え、クレインを睨む。


「人間ってさ、『能力』持ってんだろ? 見せてよ」

「お望みならみせてやる」


 答えたのはタイクーン。

 杖に光が灯り、サーシャに向けられた。


「『全身強化(オーバー)』」


 サーシャ、レイノルドの全身が輝いた。

 クレスはロビンの肩に触れる。


「『倍加(ダブル)』!!」

「お、いいね」

「あたしが二人っ!! 援護も倍だねっ!!」

「うん!! やっちゃおう!!」


 二人のロビンはハイタッチし、ミュアネがせっせと力を込めていた『爆発矢』を番える。

 タイクーンは、さらに呪文を詠唱する。

 タイクーンの能力は『賢者』で、主な魔法は強化と弱体化。それ以外にも呪文を必要とするが攻撃系の魔法を使える。

 攻撃魔法が本職の『魔法師』は攻撃魔法しか使えないが、『賢者』のタイクーンは全ての魔法が使えるのだ。攻撃よりも味方の強化、敵の弱体化を優先して覚えたため、攻撃魔法はあまり得意ではない。


「ふーん、おもしろそうじゃん。それが能力ね。でも……魔族にもあるんだよ」


 サーシャは、クレインに向けて超加速。

 強化されたサーシャの加速は、並みの冒険者では対応できない。

 だが───サーシャの身体がズレた。


「!?」


 クレインに向けて走ったはずなのに、なぜか位置がずれた。

 そのまま近くの壁に激突し、壁が砕けサーシャがめり込む。


「ぐ……」

「サーシャ!!」


 ピアソラがサーシャに手を向けると、サーシャの身体が淡く輝き、傷が回復した。

 能力『聖女』による回復魔法だ。修道女でもあるピアソラの祈りは、傷だけでなく病気も癒す。今代最強の聖女とも呼ばれていた。

 クレインは、風を纏わせた拳でサーシャに殴りかかる。


「させるわけねぇだろ!!」


 だが、レイノルドの盾が拳を防いだ。


「お、やるじゃん」

「やかましい!!」


 大きな盾で防御して弾く。

 そして、小型の盾を振り、クレインに叩きつけるが……盾は『風』によって阻まれた。

 見えない『風の膜』が、クレインを守っている。


「魔族には『スキル』って力が宿る。人間の能力と似たようなモンだけど……規模は桁違い。オレの場合は『気流操作』で、空気の流れを自在に操れる。こんな風にな」


 指を鳴らすと、クレインに向かって飛んできた数発の矢が、空中でピタッと止まる。


「「えっ」」


 矢は向きを変え、サーシャを守るように立つレイノルドの盾に直撃。爆発を起こした。


「ぬ、っぐ……!?」

「お、すごいな」


 だが、『シールドマスター』の能力を持つレイノルドの盾は、たとえ木の盾だろうと能力の恩恵で鉄並みの硬度を持つ。シルバーレイ・ドラゴンの骨と外皮を加工して作られた盾の硬度は、王都一と言われていた。

 クレインは、両手に風を集めて周囲にばらまく。

 風は、加工場を破壊し、積んであった木箱を吹き飛ばし、狭い加工場内に暴風が吹き荒れた。


「あっはっはっはっは!! わかるか? 本気出せば、町一つ暴風で覆うなんてワケないんだ。人間とは力の規模が違う。だから魔族は最強なんだよ。ムシケラ共がよぉ!!」

「なるほどな」


 サーシャが言う。

 亀裂の入った壁から出て、髪がふわっと揺れた。

 そして、どこか余裕のある表情で言う。


「確かに、大層な力だ。だが───貴様は、愚かだな」

「あぁ?」

「ふっ……」


 サーシャの全身に『闘気』が発生する。

 

「お前が愚かだという理由を教えてやる。かかって来い」

「はっ、生意気なメスだぜ。決めた、テメェは持ち帰ってペットにしてやる」

「できるものならな」


 ボッ!! と、サーシャの闘気が爆発するように全身から吹きあがる。

 クレインも風を全身に纏うが、周りに散らばった木箱や小屋の残骸が舞い、クレインの顔にぺしっと当たる。クレインは舌打ちし、頬を撫でた。

 が───戦闘中に頬を撫でる、という意味のない行為が起こした、ほんのわずかな『隙』をサーシャは見逃さない。

 闘気の七割を足に込めて瞬間移動並みの速度でクレインの背後へ。一瞬で背中を斬りつけた。


「ぐっ……!?」

「遅い」


 連続斬り。

 クレインの背中が裂け、血が噴き出した……血は、濃い緑色をしていた。

 クレインは落下。サーシャも空中で加速し、落下したクレインの腹に剣を突き立て、そのまま地面に固定する。


「っぐぁっがぁ!?」

「貴様は馬鹿だ。確かに、風を操る能力は素晴らしい……だが、こんな密閉された空間では、その本領を発揮することはできない。鉱山が崩壊すれば、貴様も生き埋めだろうからな」

「そして何より……貴様は、人間を舐めている。魔族のが上だと決めつけ、本気を出さずに遊んだ。それが貴様の敗因だ」

「この、ガキ……ッ!!」


 ギロリとサーシャを睨み、殺意をむき出しにするが、サーシャは剣を抜き、クレインの心臓に剣を突き立て、グリグリとねじる。


「ぐぉっぼぁぁぁぁ!?」

「油断はしない。そのまま死ね」

「ぅ、ぁ……」


 ビキビキと、クレインの身体に亀裂が入っていく。

 すると、タイクーンが言う。


「サーシャ、魔族は死ぬと完全に消滅する!! そいつが死ぬ前に、ツノを落とせ!!」

「わかった」


 サーシャは、なんの迷いもなく、クレインの頭に生えるツノを切り落とす。


「は、はは……容赦、ねぇの」

「慈悲を与える理由が?」

「へ……かわいい、顔、してるくせに、よぉ……へ、へへへ」

「最後に聴かせろ。魔族はどうやって人間界へ?」

「……『転移魔法陣』だ」

「転移、魔法陣?」

「そうだ。魔法で『入口』を作り、人間界に『出口』を作って開ける。そこから出入りできる。だが……まだ未完成。魔族が数人、数回の出入りしたら完全に消滅する。オレが作った出口もあるが、オレが死ねば消滅する……へへへ……この研究は魔界じゃ最優先で行われてる。いずれ、魔族の大群がいきなり現れる日も、近いかもなぁ?」

「……なぜ教える? 正直、喋るとは思っていなかった」

「決まって、らぁ……オレが死んで、残った魔族が生きて、人間界を蹂躙するのが、むかつくから、だ……へへへ、せいぜい、対策、し……な」


 クレインが砕け散り、残ったのはツノだけだった。

 サーシャは剣を鞘に納め、ツノを回収する。


「サーシャ、平気!?」

「ああ。ありがとう、ロビン。みんなは平気か?」


 レイノルド、タイクーン、ロビン、ピアソラ、クレス、ミュアネ。

 仲間たちは全員無傷。暴風が吹き荒れた時に飛び散った木箱や石でけがをしたが、ピアソラがすぐに治療をしたようだ。

 タイクーンは、歯を食いしばる。


「魔族だと……? クレス、このことを」

「わかっている。父上に報告し、周辺国にも情報を送る」

「お兄さま……」

「ミュアネ、しばらく忙しくなりそうだ」

「……はい」


 こうして、サーシャたちの依頼は成功で終わった。

 魔族という、新たな火種を持ちかえることになったが。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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