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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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九つの試練『神の箱庭』②/七人目


 ハイベルグ王国郊外にある、魔獣も人の気配もない平原。

 ここに、エクリプス、ヒジリ、プレセア、そしてイーサンとシムーン。さらに治癒士として雇われたラプラスが、対峙するハイセ、クレアを遠くから見つめていた。

 ハイセは、ゴム弾が装填された自動拳銃を両手に持ち、クレアに向ける。


「殺す気で来い。手抜きを感じた時点で終わらせる」

「……あの、師匠。一ついいですか?」

「なんだ」

「その。いきなり『本気』って、どういうことですか? 嬉しいですけど……」

「お前に頼みがある。でも、その頼みを言う前に、お前の実力を知りたいんだ。お前、俺と訓練する時には使わない技とかあるだろ。それも使え」

「で、でも」

「……あまり俺を舐めるなよ。それを使ったところで、お前に俺は倒せない」

「……」


 ほんの少しだけ、クレアがムッとしたのをハイセは見逃さない。

 首を鳴らし、ニヤリと笑う。


「俺がお前を認めたら、そうだな……ご褒美をやる。お前の望むこと、なんでもしてやるよ」

「なんでも? マッサージしてとか、足揉んでとか、ケーキ買ってきてとかも?」

「ああ」

「……よーし。わかりました。師匠、あまり私を舐めない方が───……いいですよ!!」


 双剣を抜き、青く輝く闘気が全開となった。

 薄青、輝くブルーの闘気。空よりも濃く、海よりも澄んだ青色は、サーシャと違う美しさがあった。

 双剣を構え、クレアは叫ぶ。


「では、参ります!!」

 

 闘気を全開、真っすぐ突っ込んでくる。

 猪突猛進。いつもクレアはがむしゃらに突進してくるが、今回は違った。


「ふっ!!」


 緩急を付けた動きにより、分身したように見える。

 サーシャも似たようなことをやったことがある。ハイセは腰を落とし、真正面から迎え撃つ。


「来いよ」

「青藍剣、『青の煌めき(ブルースエッジ)』!!」


 緩急を付けた分身、そして四方からほぼ同時に放たれる斬撃だ。

 速く、鋭く、ハイセの死角を突いた一撃……そして剣に籠る殺気は本物。

 クレアはハイセを殺す気だ。

 当然、ヒジリとエクリプス、プレセアは気付いていた。


「へえ、殺す気じゃん」

「……でも」

「ハイセは、見えてるわね」


 ハイセは、四つの斬撃を全て上体を逸らすことで躱した。

 だがクレアは想定内なのか、ハイセが躱すことを当然と思っていたのか……ハイセは気付いた。

 クレアは、剣を一本しか持っていない。


「遠隔起動!!」

「!!」


 ハイセの足元に、剣が刺さっていた。

 しかも……クレアの手から離れているのに、闘気を纏っている。


(ソードマスターは剣を握ることでその能力を発揮する……なるほどな。双剣なら、一本に闘気を込めたまま手を放しても、二本目が手にある限り込めた闘気は維持される。しかも、遠隔操作が可能……これには気付かなかった)


 一瞬の思考。

 地面に刺さった剣が勢いよく抜け、闘気を纏ったまま回転しハイセの身体を引き裂こうとする。

 が───ハイセは自動拳銃を発砲。真下から迫ってきた剣の柄に銃弾が命中し、剣が弾き飛ばされた。

 しかし、弾き飛ばされた剣は、闘気を纏ったままクレアの手に戻る。

 クレアは、剣の切っ先をハイセに向け、闘気を連続で放出した。

 大きな、人間を飲み込めるような大きさの青い闘気の玉が三発。

 ハイセは横っ飛びで躱し、クレアに向かって自動拳銃を連射。


「う、っぎ……!!」


 ゴム弾を、クレアは全身と闘気で覆うことで防御を上げ、生身で受けた。

 腹、腕に四発。闘気のガードがあっても、銃弾だったら皮膚が裂け血が出るがゴム弾は衝撃だけだ。だが、その衝撃に顔を歪めつつも、クレアは闘気をハイセに向け連射する。


「痛くないのかしら」


 と、プレセアが言う。


「気合で耐えてるわね。イーサン、アンタも見習いなさいよ」

「は、はい……クレアさん、すげえ」


 ヒジリは感心し、イーサンは見入っている。

 ラプラスは無言で、シムーンは祈るように手を合わせ、エクリプスは腕組みをしていた。

 クレアは遠距離が愚策と判断。闘気を双剣に乗せ、さらに全身にこれまでにない量の闘気を注ぐ。

 短期決戦。ハイセは自動拳銃を腰に納め、グレネードランチャーを手に持った。


「青藍剣───……『青の無限漣斬(ブルー・エクセレンス)』!!」


 サーシャに勝るとも劣らない速度。

 だが、ハイセが引金を引く方が早かった。

 グレネード弾が、クレアを超える速度で迫ってくる。

 クレアは叩き落とそうと剣を抜き弾丸を斬った瞬間、爆発に巻き込まれ吹っ飛んだ。

 剣が舞い、鎧が砕け、火傷を負ったクレアが吹っ飛び……地面に落下する瞬間、ハイセがしっかり抱きとめた。


「俺の勝ちだ」

「……う、ぅぅ」

「ラプラス、頼む」

「お任せを。治療費は」

「俺持ちだ」


 ラプラスが近づき、クレアの身体を治療……傷一つなく、クレアは回復した。

 クレアは、ハイセに抱っこされたまま言う。


「師匠、すごかったです……」

「ああ。お前もなかなかだった……正直、ゴム弾だけで行けると思ったが、大人げなくグレネード弾を使っちまった」

「……それ、すごいんですか?」

「ああ」


 すると、エクリプスたちも近づいて来た。

 ハイセはクレアを下ろし───……顔を逸らす。


「皆さん、私、すっごく強くなった気がします!! えへへ、なんかうれしいです」

「ね、ねえちゃん、何を」

「み、見ちゃ駄目!! あの、クレアさん……服」

「え?」


 シムーンが、イーサンの目をふさいでいた。

 ハイセも目を逸らしている。クレアが自分の姿を見て、気付いた。


「え、あ……」

「……悪い」

「申し訳ございません。私の治療では、服まで直せないのです」


 クレアは鎧が砕け、服が派手に破れ……ほぼ裸の状態だった。

 慌てて身体を隠し、アイテムボックスから着替えを出すのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 着替えを終え、宿に移動……道中ハイセは「裸にした」だの「スケベ」だの言われたが甘んじて受けた。爆風で服が吹っ飛ぶとは思っていたが、すっかり忘れていたのである。

 クレアは、裸にされたがあまり気にしていないようだった。

 宿に戻り、シムーンの紅茶を飲みながらクレアは聞く。


「あのー、私にお願いって何ですか?」

「禁忌六迷宮『神の箱庭』……そこに出現する九つの扉、その一つを任せたい」

「え」

「今の実力を見て確信した。お前はもうA級冒険者上位か、S級に届く」

「わ、私が……ですか?」

「ああ」

「で、でも……それじゃあ」


 師匠との師弟関係は終わりですか? と、クレアは口に出せなかった。

 言ったら、ハイセが「ああ」と答えてしまうのが、とても怖い。

 だが、ハイセは言う。


「……あー、さっきの戦いだが」

「っ」


 クレアがビクッと反応する。ハイセは言いにくそうに言った。


「俺はゴム弾しか使わないって言ったが、自分のルールを曲げてグレネード弾を使った。その……勝負はお前の勝ちってことでいい」

「え……じゃあ」

「願いがあるなら聞いてやる。ただし、常識の範囲内な」

「っ!! じゃ、じゃあ!! ずっと私の師匠でいてください!! お願いします!!」

「……わーったよ」

「やったあ!! えへへ、師匠、大好きですっ!!」

「「!!」」

「はいはい。で、受けてくれるのか?」

「私でよければ!! それに、今の私、すっごく気合乗ってます!! 禁忌六迷宮だろうが師匠だろうが、ブッ倒しちゃいますよ!!」

「……調子乗りすぎだ。さっきの願いなしにするぞ」

「わわわ!! じょ、冗談ですっ!!」

「よし……話はここまで。近いうち、サーシャたちとミーティングするから、そのつもりでいろ」


 全員に言うと、シムーンがキッチンのドアを開け、イーサンと一緒に大皿をたくさん持ってきた。


「みなさーん!! お昼ご飯の時間ですっ!! いっぱい作ったので食べてくださいね!!」

「よっと。じいちゃんも一緒に!!」


 イーサンが皿を置き、受付カウンターにいる主人を引っ張ってくる。

 大皿には、山盛りのサンドイッチ、唐揚げ、ステーキ、サラダなどが盛りだくさん。トングで好きに取って食べる形式だ。

 

「やった!! 肉食べよっ!!」

「おい、一人で食うなよ」

「おれも食うっ!! 姉ちゃん、追加焼いといてっ!!」

「はいはい。一杯食べてくださいねー」

「師匠、サンドイッチ食べましょう!!」


 宿の食事スペースは、一気に騒がしくなった。

 プレセアは、エクリプスと距離を詰め……ボソッと言う。


「ね、クレアだけど……すごいわね」

「ええ……あんなにあっさり好意を伝えるなんて。もしかして、あなたも?」

「かもね……ハイセとは長いけど、クレアには心を許してる感があるの。なぜかしら?」

「さあ? でも、あなたとは気が合いそう」

「同感。私、プレセア……よろしくね」

「エクリプス。ふふ、今度一緒にお茶しない?」


 こちらでは、どこか互いを認め合ったような雰囲気が流れていた。

 宿の主人は、さりげなくハイセに言う。


「お前さん、いろいろと大丈夫なのか?」

「何が?」


 ハイセはどうも、わかっていないようだった。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何処で箱を開けるんだろ。こんだけのメンバーで攻略するのなら国で見送りとか? [一言] ハイセ側の選抜メンバーは熟練度はともかくマスター系ですね ※プレセアの「精霊使役」って「フェアリー…
[気になる点] ハイセに着いて行けるようにする為なのかソードマスターの能力が何でも有りになり過ぎてるのでここら辺で一旦やめた方が良い気がする。まぁハイセにも言えるが。 [一言] もう物語を進める為に謎…
[一言] 何かおかしいのですが、なぜエクリプスはクレアを治療しなかったのでしょうか? 魔法の達人でどんな魔法も使いこなす彼女は、クレアの友人でもある。
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