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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第三章 鉱山に潜む者

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二人のサーシャ

 サーシャが二人。

 戦力は二倍……どころではなかった。


「銀星剣、『蓮刃』!!」

「銀聖剣、『空牙』!!」


 銀色の斬撃、銀色の飛ぶ斬撃が同時に放たれ、クリスタルゴーレムの一体が砕け散る。

 さすがのサーシャも、一人ではクリスタルゴーレムの防御を突破するのに時間がかかる。だが、サーシャがもう一人増えたことで、クリスタルゴーレムの防御を軽々と突破できるようになった。


「恐ろしいな……」


 タイクーンが冷や汗を流す。

 当然、恐ろしいのはサーシャのことだ。

 ロビンも、援護をしようと矢を番えていたが、最初の数発だけでもう必要がない。


「サーシャ、やっばあぁ……無敵じゃん」

「むぅぅ~……アタシの能力、活躍できないじゃん!!」


 ムスッとするミュアネ。

 そして、盾を構えて仲間を守るレイノルドが言う。


「よく見とけ。あれがオレらのリーダーだぜ」

「あぁぁん!! サーシャ、本当にカッコいい!! もう、素敵すぎて……はうぅぅっ!!」


 ピアソラの吐息が怪しかったが、仲間たちは全員無視。

 それから、三分しないうちにクリスタルゴーレムが七体、破壊された。

 サーシャは、サーシャ(分身)に言う。


「助かった、ありがとう」

「気にするな」


 分身は笑い、消えた。

 サーシャは剣を鞘に納め、レイノルドたちの元へ。


「終わったぞ」

「サーシャ、素敵っ!!」

「っと……ピアソラ、まだ敵がいるかもしれない」

「あぁん」


 抱きつくピアソラを引きはがし、サーシャはクレスに言う。


「『倍加(ダブル)』か……素晴らしい能力だ」

「ありがとう。だが、一度倍加したものは、一日経たないと再び倍加できない弱点もある。倍加した《物》ならさらに倍加できるけど、消える時間も短い」

「ねーねー、ごはんとかも倍加できる?」

「できる。ちなみに、倍加した食物は、食べると固定されて消えないよ。理由は不明だけどな」

「……すっげぇ便利な『能力』じゃねぇか。うちの正規メンバーで欲しいぜ」

「あはは……」


 だが……それは難しい。

 今回はあくまで、S級冒険者に同行するという、王族の依頼だ。

 恐らく、クレスとミュアネは、『四大クラン』への加入が待っているだろう。


「むぅ……もっとアタシの能力、活躍させて欲しいかも」

「あはは。あたしの援護、ほとんどいらなかったもんねぇ」

「ボクの魔法も必要なかったな」

「私は、余計な治療をせず助かりましたけどね」


 すると、レイノルドが砕けたクリスタルゴーレムの身体の一部を手にして言う。


「なぁなぁタイクーン。魔獣の素材はオレらのだよな?」

「ああ。それは変わっていない」

「っしゃ!! へへへ、クリスタルゴーレムの身体も、立派なクリスタルだ。こいつをギルドに売れば、いい金になるぜ。おいお前ら、早く集めろよ!!」


 レイノルドたちはクリスタルの欠片を集め、クレスのアイテムボックスに入れた。

 タイクーンは息を吐く。


「ふぅ……とりあえず、依頼は完了だ。撤収しよう」

「待て、タイクーン」


 サーシャが止めた。

 サーシャの視線は、奥にある加工場へと続いている。


「…………妙な気配がするな」

「おいおい、マジか?」

「ああ。クリスタルゴーレムではない……呼吸をして、一定間隔で歩き……こちらに、気付いている」

「マジか。チッ……盗賊の類か?」

「それを、確認する」


 サーシャは、採掘場奥の加工場へ向かって歩きだす。


「全員、警戒を」


 クリスタルゴーレムと対峙した時より、サーシャは力強く言った。


 ◇◇◇◇◇


 クリスタル加工場。

 正確には、採取したクリスタルを分別するための場所だ。

 分別することを『一次加工』と呼ぶので、加工場と呼ばれている。

 採掘場と同じくらい広い空間に、山積みの空き箱。そして、分別するための大きな建物がある。

 サーシャは、歩を止めた。


「来ちゃったか」


 そこにいたのは、サーシャたちよりも年上の男だった。

 

「見張りを倒して満足するなら、それでよかったのに」


 二十代前半ほどの男だった。

 褐色の肌、灰銀の髪、瞳が真紅で、頭にツノが二本生えていた。

 着ている服は鉱山内を歩くのに相応しくない、パーティーにでも出れそうなスーツにベスト、革靴だった。


「オレの気配を感じたのは褒めてやる。そっちのお嬢ちゃん、かなりのヤリ手だね」


 男は、ニヤリと笑い、サーシャを指さした。

 サーシャは笑っていない。

 全身で警戒しているのを、仲間たちは感じていた。


「貴様、何者だ」


 サーシャは言う。

 左手の指でサインを送る。

 サイン名は『戦闘準備』だ。


「オレ? オレはクレイン。あー……『魔族』って言えばわかるか?」

「な……ま、魔族だと!?」


 これには、タイクーンが驚く。

 魔族。

 かつて大昔、人間たちと存在を賭けた大戦争を行った種族。

 世界が二分されるほどの大戦で、とある人間の『能力』により、大陸が真っ二つにされ、戦争は終結した。

 真っ二つにされた大陸の一つが、サーシャたちの住む『人間界』……そして、もう一つが魔族たちの住む『魔界』だ。

 人間界、魔界の行き来は不可能とされている。

 陸はない。大陸を分断した後に『海』が出現し、互いの領地への行き来を封じるように海が荒れ狂っている。空を飛んでいくにも、空は常に雷が鳴り、飛ぶものを容赦なく撃ち落す。

 タイクーンが叫ぶ。


「馬鹿を言うな!! 人間界と魔界の行き来は絶対に不可能だ!! 海路では船が沈み、空路では雷に必ず撃たれる!! 禁忌六迷宮の一つ『ネクロファンタジア・マウンテン』に向かう者は、その場に到達する前に必ず死ぬと言われているんだぞ!?」

「長々と説明ありがとう。まぁ、人間には無理だよなぁ? でもよ───魔族は見つけたぜ? 人間界に行くための道を、な」

「な───……ば、馬鹿な」

「オレが証拠さ」


 クレインは自分の胸に手を当てる。

 タイクーンは、冷や汗を流し、震える手で眼鏡を上げた。


「褐色の肌、灰銀の髪、真紅の瞳、そして……頭部に生えた漆黒のツノ」

「その通り。そこの眼鏡、ほんと博識だね。じゃあ……魔族の力も、知ってるよなぁ?」

「……ッ」


 タイクーンは、全員に言う。


「……サーシャ、撤退だ」

「なに?」

「魔族の力は、S級冒険者を凌駕する。文献で読んだが……かつて大陸を分断した大戦争で、人類は全人類から戦える者をかき集めて挑んだ。だが魔族は、たった数千だけで、人類と互角に戦ったんだ」

「……なんだと」

「当時の人類軍は、数万を超える軍勢だったはず。それほど、魔族という種族は個が強い」


 クレインはパチパチ手を叩く。


「眼鏡くん、ほんとすごいな。そこまで賞賛されると気分よくなっちゃうよ。うん、そこの眼鏡くんに免じて、きみたち全員見逃してやるよ。まぁオレ、高純度のクリスタルを採取しに来ただけだしな」


 クレインは、シッシと猫を追い払うように手を振った。

 だが、サーシャは引かなかった。


「一つ、質問に応えろ。そのクリスタルをどうするつもりだ?」

「大したことじゃないよ。『魔導船』……言ってもわかんないだろ? それのコア部分に使うんだ。魔界には、こんな高純度のクリスタルを採掘できる場所、ないからな」

「……ほう」

「人間界は資源の宝庫。オレら魔族にとっては宝の庭さ。邪魔しなきゃ駆除しないでやるから、さっさと失せな」

「……駆除?」

「あ? そりゃあそうだろ? お宝にたかる害虫みたいなモンじゃねぇか。お前ら人間ってさ。普通は足で踏みつぶしたりするだろ? でもオレは優しいから、シッシって追い払うだけ。慈悲よ慈悲」


 次の瞬間、サーシャの飛ぶ斬撃が、クレインの持っていたクリスタルを粉々に破壊した。


「…………なにすんの?」

「決まっている。宝にタカる害虫(・・・・・・・)を始末しようとしただけだ」

「さ、サーシャ!?」


 タイクーンが驚くが、レイノルドは盾を構え前に。


「タイクーン、忘れたのか? ここは王族専用の採掘場だ。無許可で入ったら問答無用で処刑だぜ?」

「ミュアネ、矢にいっぱい《爆破》込めといて」

「…………クソクズが。サーシャの敵は私の敵。ブチ殺すぞ」


 ロビンも、ピアソラも戦闘態勢だ。

 タイクーンは盛大にため息を吐き、杖を取り出した。


「……ミュアネ、覚悟を決めようか」

「え、え……ま、ま、魔族、ですよね?」


 クレスはどこか吹っ切れたように、ミュアネは未だに理解していない。

 クレインは、サーシャを見てグチャリと歪んだ笑みを浮かべた。


「あーやだやだ……今日の服、お気に入りなんだよね。血で汚れちまうわ」

「安心しろ。汚れるのは貴様の血でだ」


 チーム『セイクリッド』と、魔族の戦いが始まった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃ面白いです。 追放ものでダブル主人公はめちゃくちゃ難しそうですが、頑張ってください。 [気になる点] サーシャが突然攻撃を加えたのが…眼鏡君の話聞いてた? 王族がパーティーメン…
[一言] 魔族というイレギュラーはともかく、他者の力に助けられて自分の手柄とするサーシャ一行 自力で手に入れたものを他者に渡し、あえて手柄を捨てるハイセとの対比を狙ってる感じかな (プレセアの協力もな…
[気になる点] 「ざまぁ」がタグについてないから両方成り立たせる感じで書くのでしょうか? [一言] 更新お疲れ様です。 面白いです。 ハイセもサーシャも成功させる……想像するだけで難しそうです。 …
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