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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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古ぼけた木箱


「ふむ……」


 サーシャは、クラン『セイクリッド』のハイベルグ支部にある執務室で、『神の箱庭』の木箱を眺めていた。

 どこからどう見ても、ただの古ぼけた木箱。

 鍵穴はないのに、なぜか開かない。

 力任せに開けようかと思ったが、木箱が壊れたら意味がないのでやっていない。

 

「これが、禁忌六迷宮……本当に、意味不明だな」


 箱を器用に指先で回転させ、サーシャはテーブルに置いた。

 やはり、鍵がないと開かない。そう思い、ため息を吐く。


「鍵はハイセ、か……協力を要請したら、受けてくれるだろうか」


 過去の経緯はある、が……最近のハイセは優しい。

 もちろん、過去のことをなあなあで済ませるつもりはないが、ハイセに話しかけ、返事が普通に返ってくることは、サーシャにとってうれしいことであった。

 この辺りは、サーシャも子供だ。クランマスターとはいえ、まだ十七歳なのだ。

 

「……よし。ハイセのところに行くか」


 現在、他のチームメンバーは、クランメンバーの指導などで不在だ。

 近く、禁忌六迷宮『神の箱庭』を攻略することになる。今のうちに、できることはやっておこうと仲間たちで決めたのだ。なので、サーシャは休日……プルメリア王国での疲れを癒すことが仕事となった。 

 タイクーンも、本部でのんびり読書をしているだろう。だがサーシャは、休む気にはなれなかった。

 それよりも……ハイセと話したかったので、支部まで来ていた。


「……お、お土産とかあった方がいいかな」


 そんな風に、悩んでいる時だった。

 執務室のドアがノックされ、事務員が言う。


「あの、お客様です」

「ここに来客? 今日は約束していなかったが」

「えっと……『エクリプス・ゾロアスター』と名乗っています。すっごく綺麗な方で……」

「え……エクリプス? こほん、わかった。会おう……ここに通してくれ」

「はい」


 事務員は行ってしまった。

 いきなりのエクリプスに、さすがのサーシャも驚いてしまう。

 そして、再びドアがノックされ、エクリプスが案内されてきた。


「お久しぶり。というほどではないわね……サーシャ」

「エクリプス……本当にお前が? まさか、ハイベルグ王国に来るとは」


 サーシャは、クラン『銀の明星』が壊滅したことを知っている。

 表向きは『魔法実験による爆発』だが……エクリプスがハイセの逆鱗に触れた結果だと、なんとなく察していた。

 ソファに案内すると、事務員が紅茶を運んでくる。さっそく一口飲むと、エクリプスは言う。


「いい茶葉ね。でも……シムーンの淹れた紅茶のが美味しいかも」

「そうか。私も、近く飲みに行くとしよう。で……要件は? それと、聞きたいことがある」

「焦らないで。そうね……先に、あなたの質問に答えるわ。なんでも聞いてちょうだい」


 エクリプス・ゾロアスター。

 白いワンピース、帽子、バッグ、靴……すべてが白で統一されていた。

 余命幾ばくも無い窓際の令嬢、そういえば誰もが信じてしまいそうな儚さを感じる。だが、実際はS級冒険者序列二位の怪物だ。

 サーシャは、テーブルに置いてあった『神の箱庭』を、エクリプスの前に置く。


「これを送って来た真意を聞かせてくれ」

「……私、ハイセを怒らせてしまったの」

「……は?」

「最初は、あなたたちを躍らせて楽しもうと思った。でも……私の想像を超えた光景を、ハイセは見せてくれたわ。ふふ……クランが潰されて胸がときめくなんて、クランマスター失格ね。でも……私、初めて恋をした……ハイセに」

「え」

「ハイセとあなた、禁忌六迷宮を攻略しているんでしょう? だから、それはお詫びの証。あなたとハイセで、禁忌六迷宮を攻略して欲しかったの」

「…………えっと」


 何からツッコめばいいのか、サーシャは考えた。

 そして、言う。


「こ、恋……とは?」

「そのままの意味。私、ハイセに恋をしたわ。生まれて初めての恋……胸の鼓動が止まらない。気が付いたら、クラン復興の指示を出したあと、ハイベルグ王国に来ていたわ。今は、ハイセの住む宿に部屋を取って、一緒に暮らしているの」

「え」

「でも……ハイセは、私を毛嫌いしている。私、もう一度ハイセとやり直したいの。だからサーシャ……協力してくれない?」

「…………」


 いつの間にか、サーシャが質問するはずなのに、エクリプスのお願いになっていた。

 ハイセに恋……サーシャは、S級冒険者としてでなく、一人の女としてエクリプスを見た。


「サーシャ、あなたはハイセと幼馴染でしょう? 追放の経緯はあるでしょうけど、協力してくれない? もちろん、お礼はするわ」

「……う」


 サーシャが、ハイセに恋をするエクリプスのために、手を貸す。

 考えただけで、胸がモヤモヤした。


「…………い、嫌だ」


 そしてサーシャは、顔を赤らめそっぽ向くという、子供っぽい返答をした。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方ハイセは、冒険者ギルドにいた。


「…………」


 今日は傍に誰もいない。

 クレアはヒジリに誘われ討伐依頼へ。プレセアも採取依頼を受けて行った。

 時間は昼の少し前。基本的に、依頼は早朝に張り出され取り合いとなり、残ったのは新人が受けるような低ランク依頼か、達成困難な依頼ばかり。

 つまり、残った依頼こそ、ハイセの望む依頼。


「……お」


 掲示板の隅に、『ブルーマリン・ドラゴン討伐』とあった。

 討伐レートSS。ハイベルグ王国から西の湖に住み着いた凶悪なドラゴン。生態系を破壊し、湖がただの水たまりとなる前に討伐を……と、国からの依頼だ。

 ハイセは依頼書をはがし、ミイナの元へ。


「あ、ハイセさん。すっごくお久しぶりですー」

「これ頼む」

「もう、世間話くらいしてもー……はいはい、受理しました。あのあのハイセさん、今夜ヒマですか? 久しぶりにギルマスと三人で飲みません? デイモンさんも誘ってー」


 湖の場所は、ここから三時間ほど歩いた場所だ。意外に近い。

 討伐し、戻ってからでも問題ないだろう。


「……まあ、いいぞ。ガイストさんに言っておけよ」

「はーい!! やった、プルメリア王国でのこと教えてくださいねっ!!


 それが目的か……と、ハイセはミイナをジト目で見たが、ミイナはニコニコ顔で手を振った。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 三時間ほど歩き、湖に到着した。

 湖は大きい。街道から離れた場所にあるが、ハイベルグ王国から近いのと、釣りの名スポットでもあることから道は整備されており、桟橋などもあった。

 休憩用の椅子、小屋などもあり、付近の住民の憩いの場であるのに違いない…だが、今はドラゴンを恐れ誰も近づけない。


「…………あれか」


 討伐レートSS、ブルーマリン・ドラゴン。

 見た目は『巨大な青いカエル』だ。ドラゴン要素は背中にある翼と、長いオタマジャクシのような尾だけ。水棲生物なのか、湖を優雅に泳いでおり、時折口を大きく開け、湖の生物たちを大量に呑み込んでいるようだ。

 依頼書によると、ブルーマリン・ドラゴンは海ではなく湖を主な住処としており、湖の生物を食い尽くしたらまた別の湖へ……を繰り返す。

 水中では無敵。なので、水中で戦える能力者しか相手にできないことから、倒されたことはあまりないらしい。


「水中じゃ無敵か……それなら、顔が出ている今、仕留めるチャンスかな」


 ハイセは右手を前に突き出すと……巨大な『鉄の筒』が召喚される。

 それを肩に担ぎ、バッテリーと冷却ユニットであるBCEをセット。電源を入れスコープに表示されるブルーマリン・ドラゴンに照準を合わせる。

 武器の名は、携帯式防空ミサイル。


「照準セット……喰らえ」


 ミサイルが発射された。

 一気に超音速まで加速したミサイルは、発射音と同時にハイセに気づいたブルーマリン・ドラゴンの側頭部に命中、爆発した。

 ハイセが砲筒を消すと、ミサイルの残骸も消える。残ったのは側頭部が吹き飛び、ぷかぷか浮かぶブルーマリン・ドラゴンの死骸だけ。


「依頼完了。さて、回収するか」


 ハイセはアイテムボックスからボートを出し、ブルーマリン・ドラゴンを回収するのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ギルドに報告し、素材の換金を終えると、ミイナとデイモンとガイストがギルド入口にいた。


「ハイセさーんっ!! お疲れ様でーす!!

「声がデカい。ガイストさん、お疲れ様です」

「ああ。さて、飲みに行くか」

「はい。デイモンさん、やっぱあそこ?」

「おう。ミイナとも話したけど、やっぱあそこ……お?」


 と、デイモンが何かに気づき、視線を前に。

 ガイスト、ミイナも前を見ていた。

 ハイセもつられてみると、そこにいたのは。


「あら、ハイセ」

「……は、ハイセ」

「……なんでお前らが」


 なぜか、サーシャとエクリプスが一緒にいた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロイン以外は全てモブ女化。(• ▽ •;)(アイアン・シュガーさんのエェトコ、悪いトコが点呼森。)
[気になる点] エクリプスはマジで100%恋愛感情だとしても、まだ裏があるようにしか見えないんだよね これこそ因果応報と言うべきか てかマイナスにマイナスを掛けてプラスになるのは数字だけだと思うんだ…
[気になる点] 過去のことをなあなあで済ませるつもりはないとありますが過去とはどの部分を指しているのでしょうか? 追放の件だったらリーダーが決めた事だし戦力外ではあったから謝罪する必要はないと思いま…
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