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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十五章 神の箱庭

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お悩みクレア

 エクリプスが部屋に入った。

 幸か不幸か、エクリプスの部屋はハイセの隣。

 現在、この宿は二階に部屋が六室ある。ハイセが二つ、クレアは一つ、エクリプスが一つと四部屋埋まっている状態だ。

 食事は一階の食堂スペース、さらに風呂も一階にある。

 今は夕食前。ハイセは部屋にいるだろうし、エクリプスも荷物の整理をしているだろう。

 クレアも、自分の部屋で考えていた。


「う~ん……師匠とエクリプスさん」


 ちょっと話しただけで、なんとなくわかった。

 エクリプス・ゾロアスター。彼女は『自分が楽しむ』ために、策を弄したり他人を動かしたりすることに長けている。その過程で誰かを怒らせたり、恨みを買うことが多いのだろう。

 性格は真面目。頭脳明晰。他人の考えを察知することが得意……だが優れすぎるが為に、誰かを尊敬したり憧れたりしたことがなかったのでは。


「恋愛……」


 誰かを好きになる、という感情が欠落して育ったような箱入りお嬢様……それがクレアの思ったエクリプスという少女だ。

 初恋。恋愛という感情を完全に持て余し、戸惑っている。

 演技ではない、本気の恋愛感情が手に取るようにわかった。

 もし、これが計算されたことで、ハイセを弄ぶための行動だったら、クレアも無視して手を貸すことはなかっただろう……だが、表情と言動で嘘ではないとわかったのだ。

 女としての勘───……間違いはない、と思った。


「……恋愛かあ」


 クレアはベッドの上で腕組みし、考える。


「私、師匠のことは好きだけど……恋愛じゃないよね」


 自分のことは、よくわからない。

 なので、とりあえず、エクリプスのために行動することにする。ハイセ、サーシャを嵌めた経緯はあるが、なんとなく放っておけないと思ったのだ。

 

「よし。ちょっと行動してみようかな」


 クレアはベッドから降り、部屋を出た。


 ◇◇◇◇◇◇


「あの~……師匠、います?」


 クレアは、ハイセの部屋のドアをノックする。

 すると、ハイセがドアを開けた。


「なんだ」

「あの、ちょっとお話いいですか?」

「……入れ」


 ハイセの部屋へ。

 ハイセは、シムーンが「ぜひ部屋に!」と置いた一人用ソファに座り、読書をしていた。

 本棚には大量の本。クレアが読めない字の本ばかり。今読んでる本も、まるで理解のできない字だ。

 机には、大量の羊皮紙。文字の研究をしているのか、細かい字がビッシリ書かれている。

 そして、ハイセが大事にしている古文書も置いてあった。


「何か用か」


 ハイセはソファに座り、読書を再開する。

 クレアは許可も取らずベッドに座った。


「あの~……エクリプスさんのことですけど」


 ピクリと、ハイセが不機嫌になる。


(うわぁ……これ相当キレてます。エクリプスさん、無理かもです……)


 クレアは緊張する。そして、おずおずと言った。


「エクリプスさん、師匠と仲良くしたいみたいですけど……師匠的にはどうです?」

「お前、あいつにいくらもらった?」

「はい!? い、いえいえ、もらってないです!!」

「じゃあ何企んでる」


 好感度ゼロ……ここまで嫌われているとは。

 これまでやってきたこともあるし、仕方ないとはいえる。


「え、えっと……その、これから一緒に生活するわけですし、やっぱり、私としても、お二人が仲良くしてた方が……なーんて」

「同じ宿にいるだけだ。共同生活じゃねぇよ」

「で、でも……顔は合わせるわけですし。エクリプスさん、師匠のこと、好きみたいですし」

「俺は大嫌いだ。あいつは、俺とサーシャを弄んで楽しんでたヤツだぞ」

「そ、そうですよね~……あはは」

「用事済んだら出てけ。俺は忙しい」

「は、はい~……」


 クレア、撤退。

 がっくり肩を落とし……エクリプスの部屋を見た。

 まだ会ったばかり。いきなり部屋を訪ねるのも……と、思ったが、意を決してドアをノックする。


「どうぞ」

「し、失礼しま~す……って!?」


 なんと、エクリプスの部屋はとんでもなく豪華だった。

 壁紙は白く、天井にはシャンデリア、机、椅子、ソファ、ベッド、クローゼットは高級品。というか……部屋が明らかに広くなっていた。


「え、え!? へ、部屋……どうなって」

「これ?、魔法で広くしたの」

「ま、魔法って……」

「私は『マジックマスター』よ。この世に存在する魔法は全て使えるし、希少魔法も全て使えるわ。それに、魔法と魔法を混ぜる『融合(ブレンド)魔法』も使えるの。空間拡張なんて寝ててもできるわ」

「……へ、へえ」


 全く理解できなかったが、とりあえずクレアは頷いた。

 すると、エクリプスは頬を染め、クレアをチラチラ見ながら言う。


「あ、あの……ハイセの部屋、行ってたんでしょ? その……私のこと、何か言ってた?」


 大嫌いと言ってました……とは言えないクレア。 

 どう見ても「恋する乙女」だった。何をどうすればここまで好きになるのか。

 聞いた話では、ハイセの「兵器」でクランが吹き飛ばされたらしいのに…。ほんとに何をどうしたらこんな風になるのか、クレアには理解できなかった。


「えっと……まあ、何も言ってませんでした。はい」

「そう。ん~……どうすればハイセの気を引けるのかしら。裸で寝込みを襲えば、ハイセも獣になるかしら?」

「ぶっ……そ、それはダメです!!」

「なぜ? 男性は女性の裸体が好きなんでしょう? それに私……ハイセになら、いいわ」


 ポッ……と、顔を赤らめるエクリプス。クレアは頭を搔き毟りたくなった。


「え~……と、とりあえず。今はやめた方がいいと思います。さっきの師匠見たでしょ? エクリプスさん、その……あんまりよく思われていませんし、今は少しずつ、挨拶とか、隣の席でごはん食べるとかして、ちょっとずつ距離を縮めたほうが……」

「なるほど……うん、そうするわ」

「は、はは……」

「ね、クレア…私とお友達になってほしいの……ダメ?」

「い、いいですよ。うん」


 こうして、クレアに新しい友達ができた。


 ◇◇◇◇◇◇


「もう、疲れて死にそうです……」


 その日の夜。

 夕食は宿で食べた。クレアの言った通り、エクリプスはハイセの隣で静かに食事をした。そして、ハイセに向かって「おやすみ」とだけ言い、部屋に戻ったのだ。

 ハイセはとにかく無視……今は部屋に戻り、読書をしているだろう。

 クレアは、バー『ブラッドスターク』で飲んでいた。

 誘ったのはプレセア、ヒジリ、ラプラス。サーシャに声を掛けようとしたが、忙しいのかダメだった。

 クレアは、エクリプスが来たことを全員に話した。


「……ってわけで、エクリプスさん、師匠のこと好きになって、追いかけてきちゃったんです。師匠は本気で毛嫌いしてるし、エクリプスさんは恋する乙女だし……板挟みの私、もう死にそうです」

「…………ふーん」

「あの魔法女、ハイセのこと狙ってんのね……」


 プレセアが、ムスッとしていた。

 ヒジリもどこか面白くなさそうだ。

 ラプラスは、高級ワインをガブガブ飲みながら言う。


「うぃっく。神は言ってます『共同生活は意識を変える』と……ふふふ。ハプニングが楽しみです。着替えの遭遇、お風呂の遭遇、ふとしたボディタッチ……わくわく」

「ラプラスさん、何言ってるんですか?」

「ね、クレア。宿の部屋は余ってる?」

「余ってますけど……もしかして来るつもりですか? やめた方がいいと思いますよ……これ以上増えたら、今度は師匠が出て行っちゃうかも」

「……そう。じゃあやめておくわ」

「むー、なんかムカつくわね」


 すると、ラプラスがクレアに言う。


「……あの、クレア?」

「なんでしょう?」

「なんでこのメンバーに相談したんですか?」

「え? いえ、特に理由はないですけど」


 プレセア、ヒジリ。

 共にハイセを気に入っている女子二名。

 その二人に『ハイセと結婚したいほど好きになっているエクリプスが来た』と相談する。

 そのあたりの配慮ができない程度には、クレアも子供だった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒジリがハイセを意識しだした事 [気になる点] エクリプスの恋愛観が暴走して変な風にならないと良いが。 それにサーシャはエクリプスがハイセへの求婚の為に来てる事を知ってるのか?感じとしては…
[気になる点] 今までのヒジリなら興味なさそうに飯食ってるイメージなのに今回のヒジリは無自覚な嫉妬をしていた。 [一言] ハイセってシムーンやクレアには優しいのに初期から寄り添ってくれるプレセアには悪…
[一言] 序列一位と二位でマスター系能力者が三人、オーバースキル持ちの魔族が二人。この宿だけで戦力凄くない!? 一国ぐらい楽に滅ぼせそう。
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