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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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言霊の魔女カーリープーランの秘宝⑧/交渉開始

 ハイセ、ダンタリオン伯爵婦人ことカーリープーランは、テラス席に移動。

 カーリープーランはワインを一本持ってきた。ハイセ用にグラスを持ってきたが、ハイセは拒否。

 ワインオープナーを使うことなく言う。


「『開け』」


 ワインのコルクがポンと飛ぶ。

 ハイセの手には、サプレッサーを付けた自動拳銃が握られている。

 カーリープーランはハイセを『言霊』で洗脳することも考えたが、ハイセは洗脳を察知した瞬間、カーリープーランの脳天をブチ抜くだろう。

 ハイセの勘の良さは異常と判断し、洗脳はしないことにした。

 ワインをグラスに注ぎ、カーリープーランは言う。


「見逃してくれないかい?」


 最初の一言が、それだった。

 ハイセの眉がピクリと動き、カーリープーランはワインを飲む。


「あんたは、この国になんの義理もないはずだ。どうせ、エクリプスに言われてアレコレやってるんだろう? あの子は楽しんでるだけ。まあ、あの子の『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』に手を出せば、あたしも狙われるからやらないけど」

「……お前、国を乗っ取るつもりだろうが」

「まあね。でも、やましいことは考えてないよ。国王を木偶にして、あたしら『大魔盗賊(アリババ)』に都合のいい場所を作るだけ……どっかの国に戦争仕掛けたり、人間を滅ぼそうとか、そんな大それたことは考えていないよ」

「…………」


 ハイセはカーリープーランを睨む。自動拳銃を一定のリズムでポンポンさせながら。

 そして、怒気を強めて言う。


「お前は、シムーンを攫った」

「人間界じゃ貴重な魔族だしね。片割れの弟は『オーバースキル』の持ち主だし、魔界で高く売れると思ったんだ」


 正直に全て話す。カーリープーランはハイセに正体がバレてから、嘘は言わないことにした。

 容赦のない冷徹な少年。それがカーリープーランの評価するハイセ。


「でも、もう諦めるさ。あんたみたいなバケモノが傍にいるってわかったしね」

「…………」

「もう一度言う。見逃してくれないかい? あたしらは、人間界での拠点が欲しいだけ。今まではエクリプスの庇護だったけどね」

「…………」

「国王を洗脳したら、居場所をもらうのと、資金提供、情報提供してもらうだけ。あたしらは盗賊……欲しいモン、珍しいモンは、自分たちの手で手に入れる。もし見逃してくれるなら、アンタの周りで『仕事』はしないと誓う。どうだい?」

「……………」


 ハイセはカーリープーランを睨んだままだった。

 カーリープーランはワインをグラスに注ぎ、言う。


「エクリプスに踊らされて悔しい気持ちはわかるけどね。ここであたしを殺しても意味はないよ。ああ、もし見逃してくれるなら、あんたの頼みを聞いてもいい……どうだい?」

「…………」


 ハイセの眉が、ピクリと動いた。

 少し、考える。

 確かに、ハイセはプルメリア王国がどうなろうと関係ない。カーリープーランの言うことが本当なら、ただ国は『利用』されるだけ。

 ハイベルグ王国に宣戦布告したり、魔法師部隊を差し向けたりするわけではない。

 

「何度も言うけど、あたしたちは盗賊さ。欲しいモンを手に入れるために、アレコレ動いてるだけ。どうだい、納得してもらえたかい?」

「…………」


 ハイセは、椅子に深く腰掛ける。


「……その話、本当だろうな」

「ああ。あんた相手に嘘はつかないさ……あたしも、命は惜しいからね。あんたの目を見ればわかる。あんた、さっきまであたしを殺す気満々だっただろう?」

「そうだな。どうやって殺そうか考えていた。国王や貴族の前で脳天ブチ抜いて、魔族としての正体を露見させてやろうかとかな」

「怖い怖い……敵対はしたくないね」


 ここでカーリープーランを始末するのは簡単だ。

 サーシャたちが戦っている仲間も恐らく問題ない。だが……。


「……それじゃ、あいつの思い通りってわけか」

「エクリプスかい?」

「ああ。あの野郎は、俺を……俺たちを嵌めようとした。その報いは受けさせたい。というか、あの女のクランを壊滅させたい」

「……恐ろしいことを言うね。きっと、この会話も聞かれてるよ」

「構わない」


 とー……ここでハイセは、アイテムボックスから小さな羊皮紙を出す。

 それを、テーブルに滑らせてカーリープーランに渡す。

 カーリープーランは眉を顰め、ハイセをチラッと見てニヤリと笑った。


「お前を見逃してもいい」


 ハイセは、腕を組み、二の腕をトントンさせながら言う。


「いいのかい? エクリプスの思うつぼだよ? あの子は、あんたが意趣返しであたしを見逃すことも想定している。というか、考え付く全ての可能性を考慮したうえで、あんたに取引を持ちかけたはずだ。きっと、あんたがあたしを見逃すことも想定しているさ」

「関係ない。あいつの思惑とか関係なく、俺がそうしたいだけだ」


 カーリープーランは、ワイングラスを指でトントンさせながら言う。


「ただし……イーサンとシムーンをもう一度狙うようなら、容赦はしない」

「わかっているよ。盗みの過程で味わう命の危機と、命を奪われる可能性が高い危機じゃ次元が違うからねぇ……よし、話は終わり、交渉成立だね」

「…………」


 カーリープーランが口をパクパクさせ、頷く。


「戦闘は終わったよ。じゃあ、あたしはこれで」

「……おい」

「わかってるよ。洗脳以上はしない」


 カーリープーランは胸元に隠していた扇を取り出して開いた。


「ふふふ、『闇の化身(ダークストーカー)』……あんたとは真の意味で、長い付き合いになるかもねぇ?」

「……こっちはお断りだけどな」


 カーリープーランは、軽く手を振って行ってしまった。

 すると、狙いすましたようなタイミングで、エクリプスが来た。


「お疲れ様。ふふ、見逃しちゃうのね。私に対する当てつけかしら? でも……カーリープーランは、私と敵対する意味を知ってるから、国王の洗脳以外は絶対にしない。あなたが彼女を始末しようがしまいが、私には何の影響もないってわけ。ふふ、あなたたちがどう踊るか見たかったけれど……これも一つの結末ね」


 テラス席から玉座を見ると、カーリープーランが国王に挨拶している。カーリープーランが何かを言うと、国王は虚ろな目になり、ウンウン頷いていた。


「たぶん、領内のどこかにある土地を手に入れると思う。そこが『大魔盗賊(アリババ)』の拠点となるでしょうね。プルメリア王国に守られた、人間と魔族を股にかける大盗賊たちの、ね」

「…………」

「ああ、楽しかったわ。ハイセ……今夜はどうもありがとうね。おかげで、とても楽しいショーだったわ。ね……時間があるなら、私の部屋に来ない? あなたになら、抱かれてもいいわ」


 ハイセは立ち上がる。

 すると、上空からサーシャが落下、音もなく着地した。


「ハイセ、敵がいきなり引いた。目的は達成したとか言っていたが……」

「話はあとだ。ここを出るぞ」

「あ、ああ……」


 サーシャはエクリプスをチラッと見るが、エクリプスはニッコリ笑うだけ。

 剣をアイテムボックスにしまい、ハイセと並んでパーティー会場を出るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 宿に戻り、ハイセはいつもの服に着替えた。

 すると、ヒジリ、クレア、プレセアが部屋に飛び込んでくる。


「ハイセ!! あーもう、マジ何なのよ!! あのジジイ『用は済んだ』とか言っていなくなっちゃうし!!」

「液体みたいな子も消えたわ」

「何だったんでしょう……急にいなくなっちゃって」


 どうやら、無事なようだった。

 そして、宿のドアが開き、ヴァイスが普通に入ってくる。


『ムッシュ。申し訳ございません……戦闘中、敵が逃走しました』

「気にすんな。お前も無事で何より……というか、心配してなかったけどな」

『ありがとうございます。では、命令あるまで待機します』


 ヴァイスは部屋の隅に移動し、そのまま動かなくなった。

 着替えを終えたサーシャ、そしてタイクーンが部屋に入ってくる。


「ハイセ。説明してもらうぞ、依頼はどうなった?」

「全部終わりだ。カーリープーランは国王を洗脳した。そして、この国に自分の居場所を作る。『大魔盗賊(アリババ)』のアジトをな」

「なっ……ハイセ、きみはそれを知ってて、何もしなかったのか!?」

「ああ。できなかった。殺すのはできたが、それじゃ意味はない」

「どういう……」

「悪いなタイクーン。カーリープーランは悪人だが、もうどうでもいい。それよりもムカつくのは……エクリプスだ」

「なに?」

「……そこからは、私が説明する」


 サーシャは、エクリプスが言った真実を全員に話した。

 全て、エクリプスが仕組んだ『遊び』だったこと。そして、ハイセたちはエクリプスの手の上で踊っていただけのこと。


「……なにそれ。アタシ、そいつ殺していい?」

「お、落ち着いてください、ヒジリさん。あの師匠……確かにムカつきますけど、どうするんですか?」


 クレアがそう聞くと、ハイセは言う。


「俺は、あいつのクランを潰す。今回は本気で頭にきた……」


 ハイセがそう言うと、タイクーンはため息を吐く。


「潰す、か……まさか、殴り込みでもするつもりか?」

「さあな。でも……今回の件、落とし前は付けさせる。悪いなサーシャ、タイクーン……『神の箱庭』の情報はあきらめてくれ」

「「…………」」


 ハイセがそこまで言うと、プレセアが言う。


「で、私たちに手伝うことは?」

「ない。というか、今回ばかりは手を出すな……いいな」

「……わかったわ」


 ハイセは静かだったが、力の籠った声で言った。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
バンカーバスター級のやつぶちこんで新聞には魔法実験に失敗したでエエやん。
[一言] どうせ今回も口先番長なんでしょ?
[一言] この小説は大失敗に終わった。 読者がヘイズをサーシャの犬と呼ぶ理由がわかりました。 物語を通して、ハイセがサーシャたちのクズたちに復讐しなかったのは、彼が善良だからだと思っていましたが、今で…
感想一覧
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