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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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言霊の魔女カーリープーランの秘宝⑦/液体生物

 サーシャはドレスのスカートを破き、下半身を解放。アイテムボックスから『銀聖剣』を抜き、パーティー会場の屋根に向かって跳躍、闘気を纏い、屋根に近づくにつれて……見えた。

 屋根の上にいるのは四人。

 車椅子の老人、クレア、プレセア、ヒジリ。そして、屋根を包み込むスライムのような何か。

 サーシャは闘気を剣に纏わせ、スライムに向けて一閃。


「───何ッ!?」


 斬れた、が……一瞬で塞がった。

 同時に、サーシャにクレアが気づき何か叫ぶと、ヒジリとプレセアも気付く。

 声も、気配も、何もかも断絶するようなスライムだ。すると、スライムから声がする。


『お、危険人物の一人、サーシャじゃん。むっふっふ~……あたしの『液状態(スライマー)』は打撃斬撃を無効化しちゃうから相性最悪~!! むふふ、中に入りたいなら入れてあげよっか?』

「!!」


 すると、スライムの口が開き、サーシャが呑み込まれた。


「くっ……」

「ちょ、アンタ!! パーティーどうしたのよ!!」

「事情が変わった。話はあとだ、加勢する!!」


 サーシャはヒジリの隣へ移動し剣を構える。


「そーいや、共通の敵を相手にして戦うの、初めてかもね」

「ふ……そうだな」

「そんなこと言ってる場合じゃないと思うけど」

「あわわっ、き、来ますよっ!!」

「殺しはまだかの~」


 すると、車椅子に乗った老人魔族……ノーデンスの車椅子が変形した。

 タイヤ部分がガチャガチャと変形して足のようになり、ノーデンスのアイテムボックスから追加パーツが現れくっついていく。そして、スライムが各部を補強し、ノーデンスが頭部に座っていた。

 まるで、鉄の巨人。


「か、カッコいいじゃん!!」

「そ、そうか?」

「……趣味最悪」

「あ、あたしはけっこうカッコいいと思いますけど!!」


 ヒジリ、クレアが目を輝かせ、サーシャとプレセアはジト目で見ている。

 ノーデンスは、しわだらけの顔を歪めて笑った。


「殺しの時間じゃ。この魔族イチの医師であり発明家、『改造医療(マッドメディスン)』ノーデンスが相手をしてやろう」


 ◇◇◇◇◇◇


 ダンタリオン伯爵夫人ことカーリープーランは、ワインを飲みながら他の貴族夫人と談笑していた。


(……戦いが始まったねぇ)


 ドレーク、カルミーネ、ノーデンスの三人は交戦状態。

 三人の主な仕事は「カーリープーランが『言霊』でプルメリア王を洗脳するまで脅威を排除する」ことだ。この中での脅威は三つ……ハイセ、サーシャ、エクリプス。

 特に、ハイセ。彼はカーリープーランを間違いなく殺そうとする。

 なので、パーティーが始まると同時に先手を打った。


「伯爵夫人、如何なされました?」

「いえ。ああ……皆さん、『私に危害が及んだら自害なさい』」


 カーリープーランがそう言うと、話を聞いていた貴族夫人たちが一瞬だけビクンと震え、すぐに頷いた……こうしておけば、人質となる。

 そして、その場を離れ、何人か『自害候補』として洗脳していく。

 もう、自分の正体はハイセに見破られていると想定する。エクリプスが傍にいる以上、そう考えて行動するべき。

 可能性は低いが、ハイセはこの国と無関係……もしかしたら、貴族たちを無視してカーリープーランを攻撃する可能性もゼロではない。


「……あまりやりたくないけど」


 カーリープーランは、扇で口元を隠して言う。


「……『一度だけ、あらゆる攻撃を無効化する』」


 そう自分に言った瞬間、魔力がほぼ失われた。

 ズシリとくる強力な身体の重みに、カーリープーランは倒れそうになる。


「おお、大丈夫か?」

「ええ。少しフラついただけですわ。ありがとう、あなた」


 いつの間にか近くにいたダンタリオン伯爵が、カーリープーランを支えた。

 本当の妻はとっくに魔獣の餌になったというのに、なんとも哀れ……そう思いつつ、旦那の手を取り微笑んでいる。

 すると、プルメリア王国の王、ヨハイネスがグラスを片手にやってきた。


「おお、ダンタリオン伯爵夫人。気分が悪いのかね? 休むのなら、部屋を用意してあるが」

「陛下、お心遣いありがとうございます。少し足がもつれただけで」


 チャンス───……だが、タイミングが悪い。

 今の魔力量では、大した洗脳はできない。あと数分休めば、魔力は多少回復する。

 完璧な『木偶』にするためには、カーリープーランの魔力総量の半分は必要だ。

 簡単な命令を実行させる『傀儡(デプロ)』と、完全な支配下に置く『木偶人形(オードレア)』では、意味が違う。

 なので───……一言だけ。


「陛下。ありがとうございます、『後ほどお礼がしたいので、お伺いします』」

「───……ああ、わかった」


 そう言い、ヨハイネスは行ってしまった。

 ついでに、支える夫にも言う。


「ありがとうあなた。『もう大丈夫だから、離れてお酒でも飲んでなさい』」

「……ああ、わかった」


 ダンタリオン伯爵も行った。

 あとは、魔力を十分に回復させ、ヨハイネスに『木偶人形(オードレア)』を掛ければ終わり。プルメリア王国はカーリープーランたちの意のままだ。

 カーリープーランは息を吐き、ワインをもらおうと給仕を呼ぼうとした時だった。


「───……動くな」


 腰付近に、妙な『筒』を突きつけられた。

 

「あら、すみません。どちら様でしょうか?」

「ここでブチ抜かれたいのか?」

「…………」


 カーリープーランは、自分の腰に『筒』を突きつける少年、ハイセを見た。

 知っている。この『筒』は銃だ。

 魔界にて、研究者たちが研究をしている『異世界』の武器。この世界で最も凶悪な武器であり、魔族が欲している物の一つ。

 この力で、『四十人の大盗賊(アリババ)』は壊滅した。

 なので、カーリープーランはもう誤魔化さない。


「やれやれ。あたしの正体は……ああ、エクリプスかい。あんた、あの子に篭絡されたかい? 性格は最悪だが、見てくれと身体はいいモン持ってるからねぇ」

「それが最後の言葉でいいのか?」

「待った。フフ、あたしを傷つけると、大勢の貴族が死ぬよ。そういう『言霊(リアルワード)』を仕込んだからねぇ」

「…………」

「ここであたしを殺したら、あんたはどうなる? 王族主催のパーティーで殺人を犯した犯罪者だ。いくらS級冒険者序列一位とはいえ、間違いなく手配される……それは、あんたの望むところじゃないだろ?」

「…………」


 ゴリッ……と、銃口が押し付けられる。

 カーリープーランは言う。


「ま、いいさ。あたしはアンタにも興味があったんだ。少し、話をしないかい?」

「……お前の仲間」

「ああ、戦ってるね。でも、あたしに止めることはできないよ。見ての通り、非力だしねぇ……それに、あいつらは仲間だけど、上下関係はない。あたしの言葉で止まる連中じゃない」

「…………」


 ハイセは銃口を下ろした。

 カーリープーランはにっこり笑い、テラス席を指差した。


「ワインでも飲みながら、楽しもうじゃないか……序列一位『闇の化身(ダークストーカー)』」

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] 人質がいるなんて想定外。恐るべし魔族って感じの展開? いやいやそんな馬鹿な。サーシャじゃあるまいし 言いくるめられた様に見えて実は何か狙っている・・・といいな
[一言] カーリープーラン自体には戦闘力無いのか。 言霊はエクリプスが解除しそうな気がする。 今は高みの見物を決め込んでるっぽいけどフリーだし。 それでハイセとエクリプスが敵対するのも有耶無耶になりそ…
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