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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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言霊の魔女カーリープーランの秘宝①/大魔盗賊

 カーリープーラン。

 身長二メートルを超えた筋骨隆々の女性。外見の年齢は四十代前後。真紅の眼、白い髪はお団子にまとめ、肌は褐色……そして、頭部に生えた二本のツノ。

 カーリープーランは、魔族。

 スキル『言霊』を操る、魔族の女だった。


「ねぇ、あなた……パーティーの件、だけど」

「ああ、わかっている。建国祭だろう? 安心なさい、ちゃんと連れて行ってやるさ」

「ふふ、ありがとう」


 現在、カーリープーランは、プルメリア王国貴族のダンタリオン伯爵夫人となっていた。

 スキルを使い、ダンタリオン伯爵を洗脳……本当の妻は殺害し、平原の魔獣に食わせた。

 カーリープーランは、夫とワインで乾杯。酔ったフリをして自室へ戻った。


「ふぅ、人間の妻ってのも、楽じゃないねぇ」


 カーリープーランの今の姿は、二十代後半ほどの『人間女性』だ。

 元の身長は二メートルだが、今は百六十センチほど。髪は金色で、肌も白く美しい。

 部屋で髪をほどき、ソファにどっかり座ると……部屋の片隅にいつの間にか、車椅子に乗った老人がいた。

 

「カーリープーラン……」

「なんだ、いたのかい。ノーデンス」


 ノーデンス。

 年齢は九十以上に見える。褐色肌に、ねじくれたツノが二本、側頭部から生えていた。

 髪は生えておらず、ボロボロの白衣に眼鏡を掛けた、今にも死にそうな老人だった。


「カーリープーラン、仕事はまだかの~」

「ったく。もうすぐだから待ちな。もうすぐ、あんたの大好きな『実験』がいくらでもできる。この国を乗っ取ればいくらでもね」


 そう言うと、車椅子の『影』から何かが現れた。

 真っ黒なコートを着て、黒い帽子を被り、腰に剣を差す青年。

 褐色肌、額に一本のツノが生えた魔族の青年だ。


「殺しはまだか」

「だから、まだ!! ったくドレーク、あんたはいつも急ぎすぎなんだよ!!」

「む、すまん」

「はいはい。カルミーネは?」

「買い物だ」

「……はぁぁ。あいつも、自分が魔族ってこと忘れてんじゃないだろうね」

「たっだいま~!!」


 と、閉じた窓の隙間から、十八歳ほどの少女……ただし魔族……が、現れた。

 どう見ても、窓は閉じている。だが、窓とサッシの隙間数ミリから、少女は身体をねじ込んで入って来た。カーリープーランは言う。


「カルミーネ、あんた、どこ行ってたんだい」

「お買い物! 人間の服とか、お菓子とか~、すっごいんだもの。カーリープーランってばズルいよねぇ。人間界に行く手段見つけて、それ魔族たちに共有しないで独り占めしちゃうんだもん」

「アンタら三人には教えてあげたろうに……全く」

「えへへ、あたしたち真の『大魔盗賊(アリババ)』だしね!!」


 大魔盗賊(アリババ)

 その名は、四十人いる大盗賊の名前ではない。

 カーリープーラン、ノーデンス、ドレーク、カルミーネ。

 四人の魔族による、魔界でも有名な大盗賊。

 人間界に渡る方法を見つけ、それを独占し、魔界ではなく人間界で活動をする盗賊たち。

 すると、人間の姿をしていたカーリープーランの身体が、ゴキゴキと変形していく。


「あいたたた……ノーデンス、あんたの『改造医療(マッドメディスン)』の効果、少し甘くなってるよ。今度の仕事はデカいんだ、失敗は許されないからね」

「仕事はまだかの~」

「あはは。おじいちゃん、誤魔化してるし」


 カルミーネがケラケラ笑うと、ノーデンスも「ほっほっほ」と笑った。

 すると、ドレークが言う。


「カーリープーラン。魔族の少年、いつ殺す」

「だから、殺さないっての。数百年ぶりの『オーバースキル』保有者だ。とっ捕まえて、魔界錬金術師に高く売る……と言いたいけど、厄介な人間が傍にいるから後回し……って、前にも言ったじゃないか」

「む、そうだったか」

「あはは。ドレークってば忘れっぽい」


 カルミーネがケラケラ笑うと、ドレークは「むう」と唸る。

 カーリープーランは、煙管を取り出して火を点ける。


「ガキは後回し。まずは、この国を奪う」

「計画は~?」

「建国祭で、王様をアタシの『言霊』で洗脳する。ふふっ、王様を傀儡にして、アタシらが好きに動かせるようになれば、面白いだろ?」

「……オレら四人でできるのか?」

「人間も使おうかと思った。でも、使えそうな手下は、ガキどもに壊滅させられちまった。やっぱりアタシは少数精鋭のが好きだね」

「ま、なんとかできるんじゃない? ね、カーリープーラン」

「ああ。あと……一個だけ、不安要素があるんだよ」

「不安要素?」


 カルミーネが首を傾げた。


「エクリプス・ゾロアスター。この国の影の支配者みたいな女さ。そいつに賄賂として、以前手に入れた禁忌六迷宮の入口をあげて、この国の貴族を洗脳して居場所にする許可をもらったんだけど……そいつ、どうやらアタシの真の目的が、この国を乗っ取ることだって気付いてるみたいなんだよねぇ」

「それ、マズイんじゃないの~?」

「エクリプスは基本的に、自分たちのクランを脅かさなきゃいいと思ってる。国王を洗脳してもいい、そういうふうに思ったんだけどねぇ……」


 カーリープーランが煙を吐き出すと、綺麗なワッカとなった。


「どーも嫌な予感がする。あんたら、気ぃ引き締めなよ」

「はーい。あ、カーリープーラン。そういえばさー、どうして国を手に入れようなんて思ったの?」

「そんなの決まってる。国なんて、誰も手に入れたことのない、デカいお宝だからさ」

「ふーん。じゃあ、この国を手に入れたら?」

「別にどうもしないさ。隠れ場所としては最適だと思うけどね。くくっ、人間界にはまだまだデカいお宝が山ほどある。こんな小さい国じゃなくて、いつかはもっとデカい……ハイベルク王国なんて、手に入れてみたいと思うけどねぇ」

「わお、面白そう!!」


 カーリープーランがニヤリと笑うと、カルミーネがケラケラ笑った。


「……殺しが近いな」

「仕事はまだかの~」


 ドレーク、ノーデンも、どこか嬉しそうに笑っていた。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
なんか神秘的で私は強者、みたいな雰囲気のゾロアスターさんなのに魔族の相手はしないんだねー
[気になる点] 追々解るとは思うがエクリプスとカーリープーランとの出会いが気になるな。最近なのかそれともそこそこ長い付き合いなのか。 後、読者はハイセ達が禁忌六迷宮の情報を欲しがってるからまぁ話の都合…
[気になる点] 魔族視点でエクリプスを警戒してたって事はサーシャにした暗殺依頼は何か裏があるわけじゃなくて本当? いずれ語られるかもしれないけど、エクリプスとカーリープーランの出会いとか カーリープ…
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