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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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墓参りを終えて

 墓参りを終え、ハイセとサーシャは野営地へと戻った。

 そこにいたのは、ボロボロのヒジリ。そして無傷のヴァイスと、ヒジリを手当するプレセア、クレアに、どこか呆れた様子のタイクーン。

 ウルは、焚火傍で二人に向かって手を軽く上げる。


「おう、おかえり。墓参り、済んだかい」

「ああ。ウル殿、寄り道感謝する」

「気にすんな。故郷を想い、涙を流し、骨を埋めた大地に酒を撒く時間は何よりも尊いモンだ」


 言い回しがいちいちキザったらしいとハイセは思う。

 ハイセは、無傷のヴァイスに言う。


「おつかれ。ヒジリはどうだった?」

『問題なく制圧完了しました』

「そうか」


 ヒジリを見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 そして、ハイセに突撃してくる。


「なんっっっなのよコイツ!! マジで、マジで!! ぜんっっっぜん、アタシの攻撃通じないし!!」

「だから言っただろ。俺でもこいつを倒すのは難しい」

「勝てない……こんな、ボッキボキに負けたの初めて。サーシャと戦った時より、『四十人の大盗賊(アリババ)』の時より……本気で『勝てない』って思ったの初めて」


 ヒジリは落ち込んでいた。 

 ハイセの胸に顔を埋め、グリグリと抱きついてくる。


「おい、離せ」

「やだ……慰めて」

「はぁ?」

「マジでくやしい。でも、こいつともう戦いたくない。こいつ、手加減してるし……アタシ、マジでこいつには勝てない。ううう……ハイセのばか」

「おい、離れろっての」


 ヒジリを引き剥がそうとするが、ギュッと抱きついて離れない。


「ちょっと、くっつきすぎ」


 プレセアの抗議。


「は、ハイセ!! あまりベタベタするのは、よろしくないぞ!!」


 サーシャの抗議。

 二人がムッとしているが、ハイセにはどうしようもない。


「ったく。おいヒジリ、悔しいのはわかった。もしかしたら、プルメリア王国で派手な戦いになるかもしれない。その時、思いっきり暴れて鬱憤を晴らせ」


 ぴくっとヒジリの身体が反応した。

 その隙に、ハイセはヒジリを引き剥がす。

 ヒジリの顔は、涙を流していたのか赤くなり、鼻も赤くなっていた。


「暴れていいの?」

「ああ。俺が許可したらな。いきなり暴れるのはナシだ」

「……わかった」

「よし。今日はもう寝ろ。メシは?」

「……いらない」

「じゃあテント戻れ」

「うん」


 ヒジリは自分のテントに戻り、毛布を被って寝てしまった。

 ハイセは大きなため息を吐く。


「あいつ、落ち込むとあんな風になるのか……」

「なんか、普通の女の子みたいでしたね。ヒジリさん」

「しおらしいヒジリって、少し気持ち悪いわね」

「そ、それは言い過ぎではないか?}


 クレア、プレセア、サーシャが、ヒジリのテントを見ながら言う。

 ハイセは腹を押さえた。


「腹減ったな……適当にメシ食うか」

「あ、私も食べるぞ。ハイセ、何か作ろうか?」

「お前が作るのか?」

「うむ。初日のサンドイッチはこいつらに食われたからな……ステーキでも焼こうか」

「肉か……ちょっと飲みたいし、いいかもな。じゃあ、頼んでいいか?」

「任せろ!!」

「私も作ろうかしら。クレア、手伝ってくれる?」

「はい!! 師匠、私も作るのでお任せを!!」

「何!? ま、待てプレセア、クレア。ハイセの食事は私が」

「さ、作るわよ」

「ま、待て!!」


 相変わらず、女たちは騒がしい……ハイセはそう思い、まずは自分のテントを用意するのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 見張りは交代制。ハイセは、ウルと二人で焚火を囲んでいた。

 ウルはスキットルのウイスキーを飲みながら火を見つめ、ハイセは椅子に座り銃の分解をする。

 特に会話はないが、ウルが言う。


「なあ、聞いていいか?」

「……」

「エクリプスと戦うことになったら、勝てるか?」

「……少なくとも俺は、勝ち負けじゃない。戦うなら殺すだけだ」

「覚悟キメてるな……恐ろしいくらいに」

「……」

「エクリプスは、遊ぶぞ」


 ウルはスキットルの酒を飲み、小さく息を吐く。


「あいつは、善悪を弄ぶ。自分が強いか弱いかなんて、考えたことがないと思う……腹の中が読めねぇ異端だ。正直、真正面に立つのも嫌だぜ」

「…………」

「わかるのは、あいつは興味を持ったモンに対し、徹底的に関わる。そして、遊ぶ。そうやって壊されたオモチャを、俺は何人か見てきた……それができるのは、あいつが強いから。そして、自分の強さに自覚を持っていない、出来て当然という想いがあるからだ」

「…………」

「正直……お前さんたちには、あんな冒険者とも呼べないような連中に関わって欲しくない」

「関係ない」


 ジャキッ、とハイセは自動拳銃のスライドを引いた。


「お前、冒険者ならわかるだろ? そういう冒険者をナメた連中は必ず、痛い目を見る」

「…………」

「ナメた態度で俺と遊ぼうとするなら後悔させるだけだ。俺がエクリプス・ゾロアスターに会いに行くのは、禁忌六迷宮の情報を聞きに行く……それだけだ」

「……まっすぐだねぇ」

「お前は、考えすぎなんだよ……お前、ロビンの兄貴なんだっけ?」

「ああ、そうだ」

「……似てないな」

「ほっとけっつの」


 ウルは苦笑し、スキットルを一気に飲む。

 

「今回限りで、オレは『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』との契約を解除する。そろそろ、自由きままな一羽の鷲に戻らせてもらうぜ」

「……」

「やっぱり、組織は肌に合わねぇ。まぁ、そこそこ稼げたし、また流れるとするか」

「……好きにしろ」


 ハイセは適当に言い、もうウルの話を聞くことはなかった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 ウルから離れ、ハイセは棒立ちで停止しているヴァイスの元へ。

 ハイセが来ると、ヴァイスは目を開ける。


『お疲れ様です。ムッシュ』

「ああ。なあ、ヒジリはどうだった? 強かったか?」


 暇だったので、興味本位で聞いてみる。

 ヴァイスは何度か目をぱちぱちさせて言う。


『脅威レベル、上の下。特に問題ないレベルです』

「ヒジリで上の下か……お前の中で最大の脅威は?』

『現時点で最高はムッシュ、あなたです。脅威レベル上の中。マダムは上の下です』

「なるほどな。はは、お前を敵にはしたくないな」

『私はムッシュと敵対するつもりはありません。ムッシュ、マダムは私に『存在していい理由』をくれた恩人。あなたたちのためなら、私はあらゆる脅威から、あなたたちを守ります』

「……そっか」


 ハイセはヴァイスの傍に座る。


「お前に命令しておくことがある」

『はい』

「俺が『容赦するな』と命じたら、一切の容赦なく敵を叩き潰せ。ただ命は奪うな。殺すなら心を殺せ……お前の恐怖を刻み付けてやれ。もし戦うことがあれば、そういう連中が相手だと思え」

『……心を、殺す。申し訳ございません。私には理解できない』

「とりあえず、半殺しにすればいい」

『かしこまりました』


 ハイセは、高確率でエクリプスと戦うことになると想定している。

 ヴァイスなら、単騎で『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』を壊滅させることができるとも考えている。

 

「まあ……まずは、話を聞いてからだ。ククク、楽しみだな」


 禁忌六迷宮の一つ、『神の箱庭』

 まずは、その情報から……そう思い、ハイセは嗤うのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[一言] 作者が書きたい話にハイセとサーシャの仲が追いついてない印象を受けました。 サーシャと会う度にハイセの態度が軟化してるのは感想欄で多くの読者が指摘されてます。 セイクリッドとの和解は終盤でもい…
[一言] サーシャはクズのレイノルズをロマンチックに見ていないと思います。 しかし、 彼女の立場は明確ではなく、 著者はこれについて十分な理由を示していません。 彼女はヘイズを愛しており、とても嫉妬…
[良い点] ヒジリの本気の落ち込みが可愛い。しかも素直にハイセに慰めてとか抱き着きながら言うのが普段と違うギャップがあって良かった。 [気になる点] ここまで余裕でヒジリを下しておきながら脅威度上の下…
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