表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

210/422

プルメリア王国へ


 さて、想定外の人数となった。

 ハイセ、クレア、ヴァイス。プレセアにヒジリ。そしてタイクーンとサーシャ。最後にウル。合計八人という大所帯の旅は、タイクーンが事前に用意していた大きな幌馬車に乗ることになった。

 御者はウル。意外に何でも器用にこなすとロビンが言っていたことをサーシャは思い出す。

 ハイセは、馬車の中で自動拳銃を弄っている。


「ハイセ、少しいいか」

「ん」


 タイクーンが隣に座った。

 現在、ヒジリは昼寝、プレセアはクレアとお喋り、ヴァイスは機能停止したように微動だにせず、サーシャは目を閉じて瞑想していた。

 タイクーンの手には、魔法国に関する本があった。


「サーシャから事情を聞いたが……きみは、S級冒険者序列二位、エクリプスについてどれだけ知っている?」

「女ってこと、S級冒険者序列二位ってことくらいか」

「……つまり、ほぼ何も知らないということか」


 タイクーンは眼鏡をくいっと上げる。


「情報は武器だ。最低限のことだけでも、知っておいた方がいい。相手は『禁忌六迷宮』の情報を持っているんだろう? 交渉を有利にするためにも、情報は必要だ」

「ごもっとも……じゃあ、軽く頼む」


 自動拳銃のスライドを引いて調子を確認しながらハイセは言う。


「エクリプス・ゾロアスター……彼女は、プルメリア王国貴族、ゾロアスター公爵家の長女だ。そして、世界で一人しかいない『マジックマスター』の能力者でもある」

「……『マジックマスター』か。『賢者』と『聖女』を合わせたような能力だろ」

「単純に言えばな。だが、ボクでも苦手な魔法はあるし、ピアソラも全ての回復魔法を得意としているわけじゃない……だが、『マジックマスター』には、得手不得手というのが存在しない」

「………へえ」


 マガジンを装填し、スライドを引いて弾丸を装填する。

 そのまま、安全装置を掛けて腰のホルスターに収納。

 今度は、アサルトライフルを具現化し分解。タイクーンは言う。


「……真面目に聞いているのか?」

「聞いてるよ。ちょっとした手慰み、勘弁しろよ」

「やれやれ……こほん。『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』は、もともとは魔法を研究する小さなクランだった。だが、エクリプスがクランマスターに成り代わった途端に急成長……プルメリア王立魔法学園を乗っ取りクランの一部として、魔法研究者と魔法職の能力者を世界中から集め、プルメリア王国自体を急速に発展させた。信じられんが、エクリプスが十歳にも満たない時に行われた……天才としか言いようがない」

「お前がそこまで言うとはな」

「ふん。今や、プルメリア王立魔法学園はクランそのもの。エクリプスは『生徒会長』として、学園に君臨している。その立場は教師よりも上」

「……めんどくせえ野郎だな。クランか、学園か、どっちかにしろよ」


 シャキッと、マガジンを装填。

 銃口を幌馬車の外へ向け、満足したのか手元から消す。

 そして今度は、大型拳銃を手元へ生み出し、再び分解する。


「戦いの可能性があるなら、戦力は知っておくべきだ。学園には『生徒会』という組織がある。通称プルメリア王立学園生徒会。『黄金夜明(ゴールデンドーン)』……クラン『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』最高戦力だ」

「最高戦力ね……強いのか?」

「全員がS級冒険者だ」


 タイクーンが眼鏡をくいっと上げる。特にズレてはいないが、クセなのだろう。


「『生徒会長』はエクリプス・ゾロアスターだ。残りは『副会長』、『書記』、『会計』、『風紀委員長』……全員が、恐ろしい強さだと聞く。ハイセ、戦う時は全員同時に戦おうとするなよ。さすがのキミでも対処できない可能性がある」

「なんだ、雑魚を引き受けてくれるのか?」

「あり得ないね。きみはともかく、ボクとサーシャは敵対する理由はない。今回はあくまで挨拶、そしてキミに同行して『禁忌六迷宮』の情報を聞き出すのが目的さ」

「ちゃっかりしやがって……」


 だが、エクリプスが『禁忌六迷宮』の情報を持っていることをサーシャに教えたのはハイセだ。もし秘密にするなら黙っていればよかったのだ。


「まあ、戦うことになったら、ボクとサーシャは早々に退散する。生徒会の相手は……そこで寝ている、血の気の多い、S級冒険者序列三位にでも頼むといい」

「強敵!! って……なに? なんか呼んだ?」


 飛び起きたヒジリに「何でもない寝てろ」というと、素直に寝た。

 プルメリア王国まで、馬車で十五日ほど。


 ◇◇◇◇◇◇


 初日は、野営をすることになった。

 ウルが川沿いの木陰に馬車を止め、全員に言う。


「先は長い。今日はここで野営をするぞ。みんな協力して野営……なーんてガラじゃねぇのはわかってる。勝手に準備してくれ。見張りの順番だけ、後で決めようか」


 そう言い、各々でテントなどの準備を始めた。

 ヴァイスだけは、寝る必要がないので馬車に残り目を閉じていた。

 ハイセは、アイテムボックスから自分のテントを出していたが、クレアが青い顔をしていた。


「し、師匠……」

「何だ? ……その表情、まさかお前」

「て、テントに寝袋……宿屋で洗って干して、そのまんまでしたぁぁ~っ!!」

「……毛布に包まって外で寝ろ」

「そんなあ!! 師匠、一緒のテントで寝かせてください~っ!!」

「アホ言うな。ったく……ほれ、予備のテントと寝袋だ」


 アイテムボックスから予備のテントと寝袋を出すと、クレアが大喜び。

 すると、プレセアがハイセをジト目で見て言う。


「あなた、クレアには優しいのね」

「別に普通だろ……弟子がテント忘れたって言うから、出しただけだ」

「ふーん」


 さりげなく、プレセアはハイセの隣にテントを設置。

 ヒジリはボロボロのテントを設置し終えると、「水浴びする」と言って川辺に行ってしまった。

 プレセアも、クレアを連れて行ってしまう。

 すると、サーシャが来た。


「ハイセ、食事はどうする? その……お前が迷惑じゃなければ、私が用意するが」

「……なんで?」

「その、迷惑料というか、勝手に付いてきたのに変わりないし……しょ、食事くらいは、用意したいというか……」

「……まあ、いいけど。じゃあ頼むわ」

「っ!! ああ、任せてくれ!!」


 何が嬉しいのか、サーシャはダッシュで自分のテントへ。

 いつの間にかテーブルが用意してあり、食材が並んでいる。

 タイクーンが「手伝おう」というと、「大丈夫だ!!」とデカい声で制した。おかげでタイクーンがびっくりして、眼鏡がズレる。

 一人になったので、ハイセはテントの近くで焚火の用意をし、火を点ける。

 椅子とテーブルを出し、アイテムボックスから熱々のポットを出してカップに紅茶を注ぎ、読みかけの本を取り出し読み始めると……タイクーンが来た。


「何を読んでる?」

「ドレナ・デ・スタールで見つけた本。読めない文字があるけど、文章を読みながら補完している。意外と読めるし、面白い」

「なるほど。解読しながらの読書か……面白そうだ。ボクも今度やってみよう」


 タイクーンはハイセの近くに椅子を出し、自分も本を読み始めた。


「紅茶、飲むか?」

「いただこう」


 しばし、読書を楽しんでいると、女性陣が水浴びから戻って来た。

 同時に、サーシャが皿に乗った大量のサンドイッチをハイセの元へ。


「ハイセ、サンドイッチを作った。食べよう!!」

「あ、おいしそうじゃん。アタシも食べるっ!!」

「私もいただくわね」

「私も欲しいです!!」

「ま、待て。これはハイセに作ったのであって、お前たちのはない!! 食事は各自で食べればいいだろう!!」

「つれないわね。別にいいでしょ」

「そうよそうよ!! ってか、肉系サンドイッチばっかりじゃん!! アタシ好み!!」

「こ、こらヒジリ!! 勝手に食うな!!」

「うんまっ!! めっちゃ塩利いてんじゃん!!」

「私も欲しいですー!!」


 女どもがやかましい。

 サーシャが持つ皿に手を伸ばすヒジリ、クレア、プレセア。

 三人寄れば姦しいというが、読書している二人にとっては最悪だった。

 ハイセはため息を吐き、アイテムボックスからサンドイッチを出す。


「食うか? あっちは期待できそうにないし」

「いただこう。代金は後で払う」

「ああ」


 ギャーギャー騒ぐサーシャたちを無視し、ハイセとタイクーンはサンドイッチを食べるのだった。

 この様子を、少し離れた場所で見ていたウルが言う。


「オレは一匹狼、一羽の荒鷲だが……こういう騒がしいのも、悪くねぇな」


 そう呟き、スキットルのウイスキーに口を付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
eqwkhbr532l99iqc5noef2fe91vi_s3m_k1_sg_3ve7.jpg

お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[気になる点] プルメリア王立魔法学園⋯どこぞの中央トレーニングセンター学園みたいだな。生徒会も似たような構成だし⋯(笑) 生徒会長のエクリプスは某ルドルフのような高貴な人柄なのだろうか。
ウルさんよ、鷲か狼かはっきりしてくれw
基本的なコンセプトは良いのに作者の浅い考えが全てを駄目にしている その程度の恋愛経験しかしてこなかったのか、恋愛対象に甘いのか 恋愛物を描くのには向いてないんだと思う こう言うお花畑的な作品を描きた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ