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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第三章 鉱山に潜む者

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補給

「ふぅ……」


 サーシャは、一人で温泉を堪能していた。

 ピアソラたちは長湯し、温泉から出ると同時にベッドへダイブ。そのまま寝てしまったのである。

 レイノルドたちはまだ戻ってきていない。恐らく、二軒目、三軒目と久しぶりの酒場を満喫しているのだろう。なのでサーシャは、一人で温泉を楽しんでいた。


「ここの温泉、とろみが強いな……だが、それがいい」


 トロッとした温泉は少し熱い。だが、サーシャにはちょうどいい。

 温泉から上がった後は、冷たい果実水でも飲みながら剣の手入れをしようと思っていた。

 温泉から上がり、リビングへ行くと。


「おぉ~っす、サーシャぁ、今日も美人だねぇ~……うぃっく」

「うう、もう飲めない……」

「眼鏡……ぼくの眼鏡ぇ」

「お前たち……まったく」


 レイノルド、クレス、タイクーンが酔いつぶれた状態で玄関に転がっていた。

 仕方ないので、サーシャがベッドまで運ぶ。

 『ソードマスター』に覚醒してから身体能力が強化されたので、大人を担いで運ぶ程度は朝飯前。レイノルドたちを部屋のベッドに放り投げ、サーシャはリビングで剣の手入れを始めた。

 汚れを落とし、油を塗る。それだけの作業。

 過去、A級冒険者になって討伐した『シルバーレイ・ドラゴン』の牙から作った、自慢の剣だ。


「真面目だね、サーシャ」

「クレス。寝ていたんじゃ」

「酔い覚ましの薬草を噛んだら、すぐによくなったよ」


 クレス。

 薬師の才能も有り、回復職がいなければ他のチームに引っ張りだこだろう。

 サーシャの前に座り、作業を眺めている。


「見ててもつまらないぞ?」

「そんなことないさ。サーシャ、キミは……剣を持つ姿が、本当に美しいな」

「え?」

「魅力的、ってことさ」

「ふ、からかうな」

「からかっていない。本心さ」


 クレスは笑った。

 サーシャは、からかわれていると感じたのか、クレスに言う。


「クレス。お前は王子だろう? 私なんかより、社交界に出てる令嬢の方がよっぽど美しいと知っているはずだ。私は教養もない平民だし、剣を振るうことしかできないからな」

「それが、魅力的なんだ。着飾らない、素のキミが美しい。そう思ってる」

「……む」


 噓偽りのない賞賛と気付いたのか、サーシャは少しだけ頬を染め、そっぽ向く。

 

「サーシャ、キミはこれからクランを作り、禁忌六迷宮に挑む予定だよな?」

「ああ、その通りだ」

「キミならきっとクリアできる。で……その後の予定は?」

「……その後?」

「迷宮を一つでもクリアすれば、キミの名は世界に轟く。クランの加入希望者は増えるだろうし、キミのクランは四大クランを超えるクランになる。キミ自身が戦わなくても、一生安泰だろう。オレが聞きたいのは、冒険者引退後の話さ」

「急に言われてもな。クランすら作っていないのに、終わった後のことなど、考えていないよ」

「なら───その先の人生、オレが予約してもいいか?」

「…………は?」


 クレスは、真面目な表情で言った。


「サーシャ、全て終わったら……オレと結婚しないか?」

「え」


 サーシャは、剣を磨いていた布をポロっと落とした。


「返事はいつでもいい。明日でも、数年後でも、引退してからでもいい。しっかり考えて決めてくれ」

「ま、待て。いきなり何を」

「オレさ、社交界で着飾っている女性より───サーシャみたいに、全力で輝こうとする女性が好きなんだ。サーシャは、オレの理想そのものだ」

「ま、待て待て。冗談は」

「冗談じゃない」


 まっすぐな眼だった。

 サーシャは、熱意ある瞳に射抜かれ、真っ赤になった。

 どストレートな告白など、初めてだったのである。


「い、いきなり、言われても」

「だから、返事は焦らないさ。オレの気持ちを知ってて欲しかっただけ」

「……ぅぅ」

「あはは。悪いな、混乱させるつもりなはない。じゃ、オレは寝るよ。明日は買い出しだろ?」

「あ、ああ」

「おやすみ、サーシャ」


 クレスは、軽く投げキッスをして部屋に戻った。

 残されたサーシャは、剣を磨いていた布を拾い、ため息を吐く。


「……クレス、私をそんな眼で視ていたのか……わ、私が輝いているだと?」


『サーシャは、キラキラしてる。ぼくの理想だよ』


「───えっ」


 ふと、昔を思い出し……サーシャは、首をブンブン振るのだった。


 ◇◇◇◇◇


 翌日。

 食材買い出し担当のサーシャ、ロビンの二人は、食材を買い込んでいた。

 持てる物は持つ、歩けるなら歩く、できることは自分でやる。がモットーの『セイクリッド』だが、例外もある。

 チームには、いちおうアイテムボックスもある。容量も大したことのない安物だが、今回はこの中に食材などを入れていた。

 ロビンは、買った干し肉をアイテムボックスに入れながら言う。


「ねーサーシャ、アイテムボックスもっといいの買おうよぉ」

「まだまだ使えるだろう? 無駄はできない」

「でもでも、このアイテムボックス、クレスの個人的なやつよりも容量少ないしー……初めて買ったやつで大事にしたい気持ちはわかるけどさぁ」

「……そうだな、考えておくよ」


 サーシャは、思い出していた。

 そのアイテムボックスは、ハイセが選び、サーシャとハイセが二人で貯めたお金で買った、初めてのアイテムボックスということを。

 仲間たちは知らない。まだ、二人だけで活動していた時のアイテムボックスだ。

 サーシャにとって、とても大事な物でもあった。

 が───ロビンに言われ、いつまでもこだわり続けるのも、仲間に悪い。


「ね、サーシャ……何かあった?」

「えっ……なな、何か、とは?」

「めっちゃ動揺してんじゃん……」


 ロビンは、買ったばかりのリンゴを取り出し、腰に装備しているナイフで半分にカットする。

 半分をサーシャに差しだし、豪快にシャリッと齧る。


「愛の告白でもされた~?」

「ブッっふ!? なな、なんで知ってる!?」

「え…………マジなの? 冗談だったのに」

「う……」


 墓穴。

 サーシャはリンゴをかじり、そっぽ向く。

 昔からの癖だ。サーシャは、都合が悪くなったり、恥ずかしくなるとそっぽ向く。

 

「ピアソラが知ったら発狂するかもねぇ~」

「か、からかうな……全く、もう」

「で、誰? クレス?」

「ブッ!? おま、見ていたのだろう!?」

「いや冗談……サーシャ、わかりやすすぎ」

「…………」

「まー確かに、ここ最近、クレスってばサーシャのことばかり見てたよねぇ」

「え……」

「気付いてないの、サーシャくらいだよ? ミュアネも『お兄さま……まさか』なんて言ってたし」

「…………」

「サーシャ、後悔だけはしないようにね」

「こ、後悔……?」

「いつかわかるとき、来るよ」


 それだけ言い、ロビンは残ったリンゴをパクッと食べた。


 ◇◇◇◇◇


 全ての準備が整い、七日後。

 サーシャたち『セイクリッド』は、借宿での最終確認を終えた。

 そして、防具屋に依頼してしっかりと磨いた鎧を着たサーシャが、全員に言う。


「これより、クリスタル鉱山へ向かう。討伐対象はクリスタルゴーレム。道中の魔獣も排除しつつ進む。作戦はすでに伝えた通りだ……クレス、ミュアネ、覚悟はいいか?」

「当然。日は浅いけど、『セイクリッド』のメンバーとして貢献させてもらうぜ」

「私も、大丈夫です!!」

「よし……では、レイノルド、ピアソラ、タイクーン、ロビン。いつも通りに行くぞ」

「「「「了解」」」」

「では、チーム『セイクリッド』……これより、依頼を遂行する!!」


 サーシャたちは、クレスタル鉱山に向かって歩きだした。

 そこで待ち構えているのが、何なのか知らずに。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
ここのクレスだけはエヴァの加治さんが浮かんじゃうね。口説き文句がそれっぽい
[気になる点] >サーシャは、思い出していた。そのアイテムボックスは、ハイセが選び、サーシャとハイセが二人で貯めたお金で買った、初めてのアイテムボックスということを。 サーシャの感情は正しく尊い。け…
[気になる点] 「これより、クレスタル鉱山へ向かう。討伐対象はクレスタルゴーレム。道中の魔獣も排除しつつ進む。作戦はすでに伝えた通りだ……クレス、ミュアネ、覚悟はいいか?」 以前はクリスタルだったの…
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