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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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ブライアンホークにて

 古商業区。

 ハイセは一人、バー『ブライアンホーク』に向かった。

 話を聞くだけ聞く。その後どうするかは適当に決める……そう、思ったのだが。


「ウル殿……何を話すつもりなんだ」

「あの、師匠。夜の古商業区ってちょっと不気味ですね」

「…………」


 なぜか、サーシャとクレアも付いてきた。

 サーシャは「私にも責任がある」と言い、クレアは「弟子なので!」と意味不明。ウルには二人を連れてくるなと言われなかったので、このまま行くことにした。

 そして、古商業区の裏通り、同じような二階建ての家が並ぶ区画へ到着。細い路地ですれ違うのも大変で、二階建ての家は全てバー、一階、二階と店舗が別になっている、古商業区の名物区画だ。

 その中の一つに、バー『ブライアンホーク』はあった。

 ドアを開けると、店内は非常に狭い。


「おう、来たか」


 ウルが軽く手を上げる。

 席は六つしかない。カウンターだけの席で、椅子の後ろがすぐ壁になっている。

 カウンターでは、初老の男性がグラスを磨いていた。

 ハイセはウルと一つ間を空けて椅子に座る。


「おいおい、サーシャちゃん、クレアちゃんも来たのか?」

「私は、責任があるからな」

「私は弟子なので!」

「お、おう……」


 ウルは苦笑し、マスターに「お任せ、よろしく」と言う。

 マスターが磨いたばかりのグラスに、琥珀色の酒が注がれ、オリーブが添えられた。

 ウルがグラスをハイセに向けるが、ハイセは無視。


「用件は」

「お前さんとは世間話もできねぇか」


 ウルはグラスを揺らす。

 ハイセはウルを見ようとしない。


「セイナの件……すまなかった」

「…………」

「あの子は、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』の一員でな、オレが回収依頼を受けていたのは知ってるな? で、お前さんたちが『四十人の大盗賊(アリババ)』たちと戦りあってる間に回収、そのままエクリプスの元へ連れて行った」

「で?」

「セイナの心は壊れちまった。まあ、それはいい。問題なのは……エクリプスが、お前さんに興味を持っちまったってところだ」

「…………」

「クラン『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』の幹部をお前さんは再起不能にしたってことになってる。エクリプスは一度、お前さんに話を聞きたいらしい」

「……ほう」

「お前さんが、クランに損失を出した。その件での話だ」

「断ったら?」

「……ハイベルク王国冒険者ギルドに、抗議くらいはするだろうな。ヘタしたらそれ以上……ってか、エクリプスが何を考えてるのか、オレにはわからん。お前さんと同じ十七歳とは思えないほどの圧を感じる」


 ハイセが思ったのは、「断ればガイストに迷惑がかかるかも」ということだけ。

 セイナがどうなろうが、エクリプスが何を言おうが無視するつもりだったが、ガイストにだけは迷惑を掛けたくないと思った。


「頼む。一度、エクリプスに会ってくれ。会うだけでいい……その後、お前が何を話そうが、何をしようが、オレは関わらねぇ」

「…………」


 ウルは、懐から一通の手紙を取り出し、ハイセの前に置く。


「エクリプスからの手紙だ。今、オレが言ったことが書いてある」

「…………」

「ハイセ、どうするんだ?」


 サーシャに言われ、ハイセは少し考えた。

 そして、ウルが困ったように言う。


「あー……その、もう一つ。冗談でも何でもない、真面目な話だが」

「あ?」

「エクリプスはその、お前さんに求婚するかもしれん」

「……はぁ?」

「きゅ、求婚!? なな、何を言ってるんだ!?」

「し、師匠が……結婚!!」


 動揺するサーシャ、クレア。

 ハイセは何の興味もなさそうだ。


「あくまで可能性だ。可能性……たぶん」

「…………」

「これでオレの話は終わりだ。エクリプスに会うなら、プルメリア王国まで行ってもらうことになる。道中の案内はオレがする」


 ハイセは、エクリプスの手紙を開く。

 書いてあったのは、ウルが言った通りの内容──だが。


「───……!!」


 とある一文に、ハイセの目が見開かれた。


『禁忌六迷宮の一つ、「神の箱庭」についての情報あり』


 ◇◇◇◇◇◇


 ウルと別れ、ハイセとサーシャ、クレアの三人は夜の町を歩いていた。


「ハイセ、どうするんだ?」

「……サーシャ、エクリプスとかいうヤツは、禁忌六迷宮の情報を持っている」

「えっ……」

「『神の箱庭』……その情報だ。相手の思惑はともかく、会って話を聞くのはアリかもしれない」

「……会うのか」

「ああ。そろそろ、禁忌六迷宮の新しい情報が欲しかった」


 残る六迷宮は三つ。

 狂乱磁空大森林、神の箱庭、ネクロファンタジア・マウンテン。

 ネクロファンタジア・マウンテンは魔界にあり、狂乱磁空大森林に関してはデマ情報ばかり。そして、神の箱庭に関しては存在すら怪しく、何の情報もなかった。


「その……疑うわけではないが、エクリプス・ゾロアスターはお前に興味を持っている。その、求婚とか」

「お前、俺がそんなの受けるような奴に見えるのか? 今のところ、エクリプスに関する評価は最低だ。向こうの出方次第では戦いになる」

「……むぅ」

「あの、師匠。出発はいつですか?」

「なるべく早く行く。明日は準備するぞ」

「え!! 私も行っていいんですか?」

「…………」


 ハイセは、クレアも当たり前に付いて来ると思っていた。

 クレアに指摘され、思わず黙り込む。


「えへへー、師匠と一緒に旅ですね」

「くっつくな、うっとおしい」


 クレアがハイセの腕を取り、嬉しそうに微笑む。

 最近、クレアも遠慮がなくなってきた。


「……ハイセ」

「ん」

「私も行く」

「……は?」

「禁忌六迷宮の情報と聞いて、黙っていられない。構わないだろう?」

「お前、卑怯だな……」

「すまんな。よし……私は、レイノルドたちを説得する。すまんが、ここで」


 そう言い、サーシャは行ってしまった。

 どこか嬉しそうに見えたのは、気のせいではないだろう。


「サーシャさん、あんなこと言う人だったんですね……ちょっと意外」

「冒険者らしいな。まあ、俺が拒否しても、神の箱庭に関してクラン『セイクリッド』からエクリプス・ゾロアスターにコンタクトくらいは取るだろうな」

「……師匠も、変わりましたね」

「あ?」

「いつもなら、すっごく怒ると思ったのに。サーシャさんにはお優しいんですねー」

「んなわけあるか」

「あいたっ」


 クレアにデコピンし、二人は夜の町を歩くのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
最近は馴れ合いが強くなってきてるかなってね
[一言] エクリプスに対する評価は最低とは言うけど甘くなって流されまくってるハイセさんは求婚を受けるような奴に見えますねー
[一言] ハイセが功績放棄したもんで、セイナがアリババだったことを証明できるのってサーシャとロビンだよね。 エクリプスは、セイナがハイセに壊されたことでクレームつけて、セイナアリババですって二人が証明…
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