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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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セイクリッドの和解

 レイノルド、タイクーンの二人は、王都にある小さなバーで飲んでいた。

 レイノルドはかれこれジョッキ七杯目。タイクーンは濃いブランデーを四杯目。二人ともかなり酔っている。

 すると、バーの扉が開き……クレスが入ってきた。


「ん……おう、クレスゥ」

「やあ。といっても、ここにいるボクは『分身体』だから、本体のボクがボクを消すまで、キミたちと会ったことは知らないけどね」

「……便利な能力で羨ましい」


 クレスは、レイノルドとタイクーンの間に座る。

 バーはレイノルドたち三人だけ。マスターも初老の男性で、王族であるクレスを前にしても気付く様子はない。

 クレスは、店内を見回して言う。


「それにしても、こういう店は初めてだよ」


 ここは、カウンター席が六つしかないバーで、すぐ背中は壁になっている。一番奥の席に座ると、出口までたどり着くのに一苦労だ。

 ここは、そんな小さな店がいくつも並ぶ区画。区画の中でもさらに人気がない場所で、レイノルドのお気に入りの場所でもあった。

 クレスは酒を注文し、タイクーンと軽くグラスを合わせる……レイノルドは突っ伏し、今にも寝てしまいそうだった。


「で、何があったんだ? ボクに相談とか珍しいじゃないか」


 クレスがワインを飲むと、タイクーンが言う。


「……こんな言い方はアレだが、他に相談できる人がいなくてね」

「ふむ……」

「実は──……」


 タイクーンは事情を説明する。

 休暇中に受けた依頼。その依頼をサーシャがレイノルドたちに内緒にしており、どこの誰かとも知らないS級冒険者、そしてロビンの三人だけで終わらせたこと。

 休暇が終わり、ハイベルク王国に戻って初めて、サーシャに説明された。

 『四十人の大盗賊(アリババ)』の壊滅。それ自体は嬉しいことなのだが、何もしていないレイノルドたちは称賛を受け入れられず、黙っていたサーシャに幻滅して出てきてしまったことを伝えた。


「なるほどな」

「……黙って依頼を受けるなんて、仲間と認めていないと遠回しに言われたようでね……気が付くと、クランを飛び出していた」

「キミらしくないな。常に冷静沈着だと思ったけど」

「限度がある。というか……ボクも、自分の限界を初めて知った。やはり、許せないことはある」


 タイクーンはブランデーを飲み干し、息を吐く。

 レイノルドが顔を上げ、クレスに言う。


「仲間なのによぉ……相談してもいいじゃねぇか」

「まぁ、そうだね。ところでタイクーン、キミはサーシャが内緒にしていた理由、思いつかないのかい?」

「……む」

「どうやら、考えていないようだね。ふふ、思った以上に頭に血が上っていたんだな」

「…………」


 クレスに言われ、タイクーンは硬直した。

 確かに、頭にきていたので、理由なんて考えずに飛び出してしまった。

 

「マスター、水を」


 水を注文し、一気に飲み干す。

 そして深呼吸をして、今ある情報を整理する。


「サーシャが黙っていた理由……あのサーシャが、ボクたちに内緒で、見ず知らずのS級冒険者とロビンの三人で『四十人の大盗賊(アリババ)』討伐依頼を? 待て、そもそも『四十人の大盗賊(アリババ)』討伐なら、どう考えても三人で行くよりボクら全員で向かった方がいい。そうしなかったのは理由がある? そもそも、なぜロビン? 問題のS級冒険者……まさか、ロビンの知り合いか? ボクたちが動かせなかった理由……『セイクリッド』として動くのはまずいということか? そもそも、本当の目的は『四十人の大盗賊(アリババ)』討伐ではない可能性もある。普通に考えたら、サーシャがボクたちに黙って行くなんてあり得ないからな……ふむ、浅慮だった。もう少し事情を聞くべきだった」


 と、長い独り言を終え、タイクーンはレイノルドに言う。


「レイノルド。ボクはサーシャに事情を確認する。理由もなく黙ってサーシャが依頼を受けるなんて、やはりあり得ない。サーシャは、全ての事情を説明する義務がある」

「……あー、そうだな…。ったく、ウジウジするのはやめた!。オレもだが、サーシャも頭が冷えただろうさ。おし!! じゃあ、クランに戻るか」


 レイノルドは、金貨をカウンターに置く。

 タイクーンはクレスに言った。


「クレス。きみの言葉で目が覚めた……礼を言う」

「いやいや、オレは思ったことを言っただけさ」

「それでも感謝する。では」

「ありがとよクレス。ここはオレの奢りだぜ」


 レイノルドはクレスの肩を叩き店を出た。

 タイクーンも一礼。二人はスッキリした顔をしていた。


「とりあえず、丸く収まったかな……よかった」


 そう呟き、クレスはワインを飲み干した。


 ◇◇◇◇◇◇


 クラン『セイクリッド』に戻ったレイノルド、タイクーン。そしてピアソラ。

 ピアソラは、頭を押さえ酷い顔色だった。


「うぅぅ……飲み過ぎましたわ。しかも、あんな醜態を……は、ハイセに!!」

「「ハイセ?」」

「なな、何でもありませんわ!! 酔っていたせいですわ!! 普段の私が、あんな……うぐぅぅぅ!!」


 妙な動きで頭を押さえるピアソラ。

 とりあえず無視し、レイノルドとタイクーンはサーシャの執務室へ。

 執務室のドアをノックすると、ロビンが出てきた。


「あ、みんな!!」

「よう。頭も冷えたし、帰って来たぜ」

「……いろいろ、説明もしてほしいからね」

「うぅぅ、頭痛……」


 三人が部屋に入ると、サーシャ、そしてウルがいた。

 ウルが立ち上がり、帽子を脱ぎ、三人に頭を下げる。


「この度は、迷惑をかけてすまなかった」

「お、おい……誰だ、こいつ?」

「……もしかして、S級冒険者序列五位、『月夜の荒鷲(ヴェズフルニル)』か?」

「男がサーシャの執務室にぃぃぃ!! 誰だテメェェェ!!」


 ロビンがウルの前に立ち、レイノルドたちに言う。


「タイクーンの言う通り。この人、S級冒険者序列五位の人。で、今回の元凶……で、あたしのお兄ちゃんなの」

「「「……お兄ちゃん?」」」

「うん。今回の件、お兄ちゃんからちゃんと説明させるから」


 ロビンは肘でウルの腹を突くと、ウルが大げさに痛がった。


「い、痛いぜロビン」

「うるさいし」

「……そういや、よく見ると似てるな」

「確かに」

「ロビンにお兄さんがいたなんてねぇ」

「あー……とりあえず、今回の件を説明する」


 ウルは、レイノルドたちに『四十人の大盗賊(アリババ)』たちの件を説明。

 タイクーンは納得したのか、大きく頷いた。


「なるほどな。『四十人の大盗賊(アリババ)』を警戒させないために、『セイクリッド』では動けない。だから、サーシャとロビンに協力してもらい、ボクたちは『休暇』を満喫することで『セイクリッド』は無関係に見せかけたのか」

「そうだ。サーシャもロビンも悩んでいた。だが、オレの依頼のために、最も信頼する仲間であるアンタたちを欺いた……本当に、申し訳なかった」


 ウルが再び謝ると、レイノルドは手で制した。


「もういい。理由があるならな。サーシャ、オレも勝手に飛び出して悪かった」

「謝るな。謝らないでくれ」

「サーシャ、今回は水に流そう。だが、もしこのようなことがまたあったら、どんな理由があろうと『セイクリッド』の仲間には伝えてくれ」

「タイクーン……」

「むぅぅ、私も許しますわ。サーシャ、次はちゃんと言ってね!!」

「ピアソラ……うん、ありがとう」


 こうして、『セイクリッド』は和解した。

 すると、ウルが五人に言う。


「和解したところで頼みがある……『闇の化身(ダークストーカー)』と会って話がしたいんだが、手ぇ貸してくれ」


 まるで、これが狙いだとばかりに、ウルが申し訳なさそうに言うのだった。


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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 分身体が酒飲んで、本体に戻ると本体が酔っ払ったりするのかな?
[一言] ウルが本当にセイナを生かしたいなら真っ先に考慮すべきは殺そうとしているハイセだし、それでどこかへ預けるとしたらハイセに見つかりにくいところかハイセと殺し合ってでも守ってくれる相手かなんで、そ…
[良い点] 皆んなには嫌われているみたいだけど、個人的にはウル好きだわ。 ハイセにセイナを引き渡すのが次の仕事をスムーズに進める 手段になり得ると分かっていても、「殺さない」と決めたら 損得や善悪に関…
感想一覧
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