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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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まさかの遭遇

 依頼を終え、ハイセとクレアは宿に戻るために歩いていた。

 話題は、今日討伐したS+レートの魔獣『イーターアント』だ。

 

「いやー……食べられるかと思いました!!」


 クレアは頭を掻きながら笑う。

 イーターアント。単体での討伐レートはA。姿形は大型の『アリ』で、大きさは全長一メートルほど。

 単体ならばそこまでの脅威でもない。だが……このアリは群れる。それはもう、とんでもない数で。

 特徴としては、地面に穴を掘り、地下に巨大な空洞を作って繁殖する。

 

「あのアリ、でっかいし硬いし、顎がチキチキ鳴るし怖かったです……やっぱりまだわたしにS+レートは早かったです」

「でもお前、泣かなかったし漏らさなかったし腰も抜かさなかっただろ」

「そ、その言い方はちょっと……」

「度胸も付いてる。実力も付いてる。というかお前、アリ三匹くらい倒したよな」

「え、ええ……」


 イーターアントは肉食。人間や魔獣を巣に引きずり込み食らう。

 幸いなことに、イーターアントの巣は入口から一直線に延びて大きな空洞となっており、その空洞にイーターアントがびっしりといる。

 なので、ハイセはまず穴に大量の爆弾を投入。大爆発を起こしアリを大量に殺した。そして、辛うじて生き残り巣から這い出したアリを銃で殺した。

 その時、クレアは三匹ほどアリを斬った。ハイセは二百匹ほど殺したが。


「でもまぁ……やりすぎたかな」

「え、ええ。あの~……あの地面、どうするんですか?」

「知らん。別に討伐方法の指定はなかったから、気にするな」


 イーターアントの巣が大爆発を起こしたことで、地面が陥没した。

 それはもう、大規模な陥没だが、ハイセとクレアの二人ではどうしようもないので、討伐報告と状況だけ説明をして、こうして帰路についている。


「魔獣の素材はお前の倒したアリの甲殻だけだったな。俺のは穴だらけだし使えなかった」

「あの……お金、ほんとにいいんですか?」

「ああ。俺は依頼の報酬があるし、素材の金はお前のだ」

「えへへ……ありがとうございます。あ!!」

「な、なんだいきなり……」


 いきなり声を上げたクレア。

 

「シムーンちゃんに、お塩を買ってくるように頼まれてたの忘れてました!! すみません師匠、ちょっと買って帰りますー!!」

「お、おい」


 クレアはダッシュで行ってしまった。

 仕方なく、ハイセは一人で帰ろうと歩いている時だった。


「う、ぅぅ……うぉぇぇっ!! うぅぅぅぅ」


 路地裏で、誰かが吐いていた。

 ハイセは露骨に嫌そうな顔をして通り過ぎようとした時、吐いていた人物が振り返った。


「んあぁぁ? あぁぁ!? てんめぇ~……ハイセェェ」

「……ぴ、ピアソラ?」

「んふふふ。なに、わたしで悪かったわねぇ~!! う、うぅぅ」

「…………」


 ハイセは無視して歩き出した。

 だが、ピアソラがハイセの背中にタックルしてきた。

 

「待てェェ!! うぅぅ、お前が、お前がぁぁぁ~!! サーシャは、サーシャはぁぁ!!」

「なんだお前、くっつくな、離せ!!」


 普段なら考えられない。ピアソラがハイセの背中に抱きつき、離れようとしない。

 猛烈な酒臭さにハイセは嫌悪。突き飛ばして逃げようとしたが。


「ううう……サーシャ、サーシャ」

「……おい、離せっての」


 さすがのハイセも、大嫌いなピアソラが涙を流しているのを見て、突き飛ばすのをためらった。

 ハイセはため息を吐き、アイテムボックスから水のボトルを出す。


「おい、飲め。臭いぞお前」

「うぅぅ……ハイセェェ」


 ピアソラが水を飲み干すと、大きなゲップをする。

 とても『教会』に所属していた優秀な回復術師とは思えない。


「…ハイセェ……話、聞いてぇ…」

「あ?」

「ううう……寂しいよぉ、サーシャがあぁ……」


 サーシャ。

 ハイセは何となく、先の『四十人の大盗賊(アリババ)』が関わっているような気がした。

 それが関わっているなら、自分とも無関係ではない。

 よほど寂しいのか、毛嫌いしているハイセに甘えるように見つめてくる。


「……ったく」


 本当に嫌だったが、ハイセは仕方なくピアソラに肩を貸した。


 ◇◇◇◇◇◇


 向かったのは、ヘルミネのバー。

 まだ少し酔ってるピアソラを席に座らせ、酔い覚ましのお茶を注文。

 ピアソラは、ちびちび飲み始める。


「で……何があったんだ。サーシャがどうかしたのか?」

「……うう。サーシャが、私たちに黙って、見ず知らずのS級冒険者と、依頼を受けましたの」

「……で?」

「ロビンも一緒に……せっかくの休暇だったのに、私たちに内緒で依頼を受けて……なんの相談もなしに。私たち、仲間なのに……なぜ、何も相談してくれなかったの……う、うぅぅ」


 ピアソラは泣きだしてしまった。

 ハイセは何となく察した。


「で、拗ねて家出してきたのか」

「……私だけじゃありませんわ。レイノルドも、タイクーンも……もう、セイクリッドはバラバラですわ」

「なーるほどな」


 ハイセは、自分用の甘茶を飲む。

 特に注文していないが、ヘルミネが『新作なの』と出してくれたのだ。

 甘い豆を煮だしたお茶だ。甘茶と名前が付いているが甘さ控えめで、優しい味がした。

 

「サーシャにも事情があるんだろ。その辺りは聞いたのか?」

「……事情」

「あいつのことだ。話せない理由、あったんだろうな。お前たちに迷惑がかかるとか……」

「それでも、話してほしかったですわ!!」

「……」


 ハイセは迷っていた。

 この件は、自分が関わっている。サーシャがどこまで話したのかわからないが、ピアソラの悲しみが恨みとなり、自分に振りかかる可能性はゼロじゃない。

 めんどうなことになるかも…。と、思ったが。


「サーシャが『四十人の大盗賊(アリババ)』を討伐した話だな?」

「ええ…そうですわ、S級冒険者序列五位と一緒に倒したって……」

「それ、俺も関わってる」

「え」


 ハイセは事情を説明した。

 シムーンが攫われたこと、それを救うために『四十人の大盗賊(アリババ)』を皆殺しにしたこと。突如サーシャが現れ、メンバーの1人セイナを助けに来たこと。セイナを救う依頼を受けたのが序列五位のウルで、その手伝いをしたこと……そして、『四十人の大盗賊(アリババ)』の討伐の報告をサーシャに押し付けたこと。


「…………」

「『セイクリッド』は休暇中だったんだろ? そこで全員で動いて、町にいる『四十人の大盗賊(アリババ)』に警戒されるわけにはいかなかったんだ。だから、お前たち三人は休暇を楽しんで、サーシャとロビンで帽子野郎…ウルだかの手伝いしたんだろ。まぁその、つまり……間接的に、お前とレイノルド、タイクーンも、『四十人の大盗賊(アリババ)』討伐に参加したようなモンだ。役割分担だ、役割分担」


 とりあえず、思いつきで言葉を並べたハイセ。

 さすがに苦しいかと思ったが、ピアソラは納得したのか薬茶を一気飲みした。


「そうだったのですね!! 役割分担……そう、役割分担!! それならヨシ、ですわ!!」

「お、おう」

「よし!! もう許しますわ。そしてこの話はおしまい!! ハイセ、飲みますわよ!!」

「は?」

「ヘルミネさん!! お酒をお願いしますわ!!」

「はぁ~い」

「お、おい……気が済んだなら帰れよ」

「飲みたい気分ですの!! ハイセ、付き合いなさい!!」


 毛嫌いしてるハイセを酒に誘う。やはり、今日のピアソラはおかしかった。

 帰りたかったが、ピアソラが止まらないので、結局嫌々付き合うハイセだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] セイクリッドの面々の幼稚さが流石に酷過ぎる。 ハイセとその周りの人達が、変わったり成長したりしてるので より一層そう感じられる。 一度アイビスかセイファート辺りにしっかり指摘させないと…
[一言] 銀の明星編楽しみにしてたのに何故かハイセとセイクリッドの関係修復というありえない話になりそうだからセイクリッドの個人的な感想でも書いてみる サーシャ:感想欄で散々語られてるから割愛するがキ…
2023/08/31 23:42 退会済み
管理
[一言] 和解は良いと思うが、ヘイズを常に見下しているレイノルズがいる 復讐のためではなく、彼らの存在を証明するために、将来彼らの間に戦いが起こるはずです。 レイノルズに彼を過小評価するのをやめてほし…
感想一覧
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