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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十四章 S級冒険者序列二位『聖典魔卿』エクリプス・ゾロアスター

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罪の在処

 ハイセたちに日常が戻り、十日ほど経過した。

 いつも通り、ハイセは起床して一階の食堂スペースへ。

 自分がいつも座る場所に腰掛けると、シムーンが新聞を手渡してくれる。


「おはようございます。ハイセさん」

「ああ、おはよう」

「すぐ、紅茶を淹れますね」


 ハイセが座ると、シムーンが新聞を渡し、紅茶を淹れる。

 新聞を半分ほど読むと、シムーンが朝食を運んでくる。それを食べ、残りの新聞を読みながら新しい紅茶を飲む……これが、ハイセの朝。

 だが、ハイセの座る席の対面に、騒がしい少女が座る。


「おはようございます!! 師匠、シムーンちゃん!!」

「おはようございまーす。クレアさん、すぐに朝食にしますね」

「はい!!」


 クレアだ。

 早朝訓練を終え、シャワーを浴びたクレアがハイセの前に座る。

 すると、泥だらけのイーサンが宿に入って来た。


「あ、ハイセさん。おはようございます」

「ああ。朝から精が出るな」

「えへへ。おれ、強くなりたいんで。クレアさん、お相手ありがとうございました」

「いえいえ。私にもいい修行になりました」


 イーサンは、オーバースキル『雷神』に覚醒。その力を使いこなすために、クレアの早朝訓練、模擬戦の相手を買って出た。

 クレアにとっても、イーサンの『雷』は脅威らしい。まだ覚醒して間もないが、イーサンはクレアといい勝負をするようになっていた……もちろん、本気ではないが。

 ハイセも新聞を閉じると、二人分の朝食が運ばれてきた。


「あの、師匠は討伐依頼受けますか?」

「……いいのがあればな」

「その……私も、付いて行っていいですか?」

「俺が選ぶのは、最低でもSレートだ。いけるのか?」

「はい。功績にはなりませんけど、経験にはなるので!!」

「そうじゃない。大丈夫か、ってことだ」


 以前、クレアはハイセと討伐依頼に赴き、Sレートの魔獣を見て腰を抜かした。

 その件を思い出したのか、クレアは苦笑い。でも、すぐに力強く頷いた。


「大丈夫です!!」

「……わかった。じゃあ、メシ食って食休みしたら、ギルドに行くぞ」

「はい!!」


 日々成長。クレアは、心も身体も強くなっている……ハイセはそう感じた。


 ◇◇◇◇◇◇


 サーシャは、王都郊外にあるクランの自室で考え込んでいた。

 自室にはロビンもいる。サーシャのベッド上でコロンと転がり、サーシャを見た。


「サーシャ、何悩んでるの?」

「いや……『四十人の大盗賊(アリババ)』の顛末と、私たちがしたことについてだ」

「まだ悩んでるんだねー……気持ち、わかるけど」


 SS級盗賊団『四十人の大盗賊(アリババ)』崩壊。

 シムーンの件を知らなかったとはいえ、結果的に邪魔をしたサーシャ。ボスのカーリープーランと、メンバーのセイナを取り逃がしてしまった。

 ハイセたちに謝罪をしたサーシャ。するとハイセは言った。


『悪いと思ってるなら、「四十人の大盗賊(アリババ)」を壊滅させたことを、お前の口から報告しろ』

『わ、私が? ……事の顛末をギルドに報告すればいいんだな?』

『ただし、これをやったのは全て、お前たちだ。お前とロビンが、あの帽子の野郎に依頼されて、三人で壊滅させたことにしろ』

『い、偽りの報告をしろと言うのか?』

『偽りじゃないだろ。俺たち、お前たちでやったことで、俺たちを省いて報告するだけだ』

『……何故、そんなことを』

『俺が目立ちたくないから。お前なら、SS級盗賊団を壊滅させたとしても不思議じゃない。あの帽子の野郎もS級冒険者なら問題ないだろ。それに……』

『……?』

『いや、なんでもない。とりあえず、頼んだぞ』

『……わかった』


 と、ハイセの頼みで、『四十人の大盗賊(アリババ)』を崩壊させたのは、サーシャとロビン、そしてサーシャたちを巻き込んだウルの三人ということになった。

 おかげで、クラン『セイクリッド』の人気が再び上昇……加入希望の冒険者チームが増えたり、持ち込まれる依頼も増えた。

 だが、サーシャは全く喜んでいない。


「はぁ……私は、噓を」

「サーシャぁ~……もう考えすぎだよ。そりゃ報告は正確にしなきゃいけないけど、ハイセが自分の名前を出すなって言ったんだしさ」

「わかっている」

「お兄ちゃんも有名になっちゃったし、普段目立つの嫌いなお兄ちゃんにはいい薬になったかもね」

「…………」

「問題は……レイノルドたち、かなぁ」

「…………ああ」


 そう、レイノルドたちはクランにいない。

 その件でも、サーシャは頭を抱えていた。


「まぁ、怒るよね……休暇中なのに、みんなに内緒で、お兄ちゃんの誘いに乗って、三人でSS級盗賊団と戦っちゃうんだもん。しかも、内緒で行ったことバレちゃうし」

「報告する以上、隠すわけにもいかんからな……」

「仲間なのに、隠し事……そりゃ、言いたくないこととかあるけどさ、今回はさすがに、限度超えちゃったね」

「……ああ」

 

 休暇を終え、ハイベルク王国に戻った後に、サーシャとロビンは全てを話した。

 レイノルドは「悪い、頭を冷やしてくる」と出かけて十日。

 タイクーンは「流石に限度を超えている」と冷たく言い出て行った。

 ピアソラは「サーシャのバカ!!」と叫んでクランを出てしまった。

 探したが、三人は見つからない。ロビンが王都中探し回っても、痕跡すら見つからない。


「……ね、サーシャ。もしこのまま、みんな戻らなかったら」

「……」


 ポロリと、サーシャの瞳から涙があふれた。

 一筋の涙をサーシャは拭い、ロビンに笑顔を向ける。


「やっぱり、こんなことをするべきじゃなかった。ウル殿の頼みを聞かなければ……」

「それは違うよ!! サーシャは、セイナって子を助けたかったんでしょ? ハイセが殺しちゃうかもしれないから……救いたいって気持ちに、噓はないはずだよ!!」

「ロビン……」

「悪いのは、お兄ちゃんだよ……最初から、あたしとサーシャだけじゃない、『セイクリッド』に依頼すれば、こんなことには……」


 ロビンも、ぽろぽろ泣き出してしまった。

 サーシャはベッドに移動し、ロビンをそっと抱きしめる。


「ロビン。もう一度、みんなを探しに行こう。もう一度しっかり謝って……『セイクリッド』をやり直そう」

「……うん」


 ロビンはサーシャの胸で甘え、ようやく笑顔を見せてくれた。

 すると、ドアがノックされた。


「あの、サーシャさん。お客様が来ました」


 ドアを開けると、クランの事務員の少女がいた。

 

「来客か。記者や加入希望の冒険者ではないのか?」

「冒険者です。その……S級冒険者『月夜の荒鷲(ヴェズルフェルニル)』ウル・フッドと名乗っています……えっと、帰ってもらっても」

「会うよ」


 と、ロビンがサーシャの隣に来た。


「いろいろ言いたいことあるし、会うから。客間に通して」

「は、はい」


 客間に移動すると、紅茶を啜るウルがいた。

 サーシャ、ロビンを見て軽く手を上げる。


「よ、お二人さん」

「お兄ちゃん!! 何で逃げたの!!」

「な、なんだいきなり……」

「お兄ちゃんに怒るの筋違いかもだけど……今はお兄ちゃんの顔、見たくない!! お兄ちゃんがあたしとサーシャに依頼したせいで、レイノルドたちが……」

「落ち着け、ロビン」

「……サーシャ」

「……いろいろ、あったみてぇだな」


 サーシャが、レイノルドたちが出て行ったことを説明する。

 ウルは立ち上がり、帽子を外し頭を下げた。


「クラン内で揉め事が起きてるなら、サーシャちゃんとロビンを誘ったオレの責任だ。仲間たちに事情を説明させてくれ」

「……みんな、どこにいるかわかんないもん」

「それにウル殿……結果的に、誘いに乗り、事情を仲間に秘密にした私たちにも責任はある。今回の件、あなただけの責任ではない」

「……そう言ってくれると、少しは心が軽くなる」


 ソファに座り直すと、サーシャは確認する。


「ウル殿。あなたの依頼は達成できたのか?」

「まぁ、な……」

「歯切れ悪いね。何かあったの?」

「……」


 希少な、生物を収納できるアイテムボックスから出したのは──……セイナだった。

 驚くサーシャ、ロビン。


「生きてはいる。エクリプスに報告もしたが……この通り、心が壊れちまった」


 セイナは、虚ろな目をしたまま動かない。

 シンプルなワンピースを着ており、頬はこけ、痩せ細っていた。


「仲間が虐殺され、ハイセの殺気をモロに浴びて、心が壊れちまった。実家からも除名されて、クランからも除名……報酬ってことで、オレに預けられたが、どうしたらいいかわからねぇ」

「お兄ちゃん、まさか……」

「アホ。こんなガキに……いや、こんな状態の女に手を出すほど飢えてねぇよ」

「ご、ごめん」


 ウルは、もう一度帽子を取り、頭を下げた。


「サーシャちゃん。この子を……引き取ってくれねぇか?」

「……え?」

「オレにはどうすることもできねぇ。殺すことも一度だけ考えたが……やっぱり無理だった。幸せにしろとは言わねぇし、金も出す。心の傷が治るまで、預かって欲しい」

「……その後は、どうするのだ?」

「さあな。でも……オレには、重い荷物だ」

「お兄ちゃん……」


 サーシャは、少しだけ考えた。


「……わかった。その子は、クランで預かろう」

「感謝する」

「……サーシャ、いいの?」

「ああ。この一件、私にも責任があるからな」


 サーシャは、セイナの隣に移動し、手を取った。


「辛いことがあったのはわかる。だが……生きてくれ」


 その言葉に、セイナの目から一筋の涙が流れ落ちるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
ハイセが知ったらどうなるかね?
意識的にやってた犯罪者のゴミを拾う意味があるのか?全滅を望んでたハイセとの亀裂になるだけだろ
いや。なんで匿う必要ある? 全然意味わかんね。
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