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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十三章 四十人の大盗賊

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精霊の声

 ハイセと敵対する。

 それは、サーシャの選択肢にはなかった。ロビンを見ると困惑しているのか、弓を構えずにハイセを見ている。

 逆に、ウルは弓を構えてハイセに向ける。


「死神くん、どうしても戦わないといけないか?」

「俺は、『四十人の大盗賊(アリババ)』を皆殺しにできればそれでいい」

「だったら……今は退いてくれ。どうせ、この子は『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』から断罪される。クラン追放、実家からの除名が待っている。死より辛い現実が待っているはずだぜ」

「だから?」


 ジャキッと、ハイセは自動拳銃をウルへ向けた。

 すると、サーシャがウルの前に立つ。


「ハイセ……」

「サーシャ。今言った通りだ。こいつらはシムーンを攫った。そこにいる魔族が、シムーンとイーサンの脳を喰らうんだとよ」

「っ」

「それでも、その片棒を担ぐ連中を守るのか?」

「そ、それは……」

「ロビン。お前もだ」

「う……」

「……チッ」


 ウルは舌打ちした。もう、サーシャとロビンは戦えない。

 ウルも、一度依頼を受けた以上、投げ出すわけにはいかない。依頼は『セイナを連れてくること』だ。このままだとハイセと戦うことになり、高確率で敗北する。

 だが───ウルも、冒険者としての意地がある。


「死神くん……何度でも言う。この子だけは諦めてくれ」

「…………」


 ハイセは無言で、自動拳銃をウルに向けたまま引き金に指を添えた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ハイセから少し離れた場所で、ホーキンス・チョッパーは床にめり込んでいた。

 

「…………」


 恐ろしい腕力だった。

 腕力だけじゃない。身体という『武器』を全てフルに稼働させた拳の一撃は、生身で石壁を容易く破壊する。

 妙な飛び道具、そして地面を爆発物に変える能力……それだけじゃない。

 序列一位は、人間ではない。


「素晴らしい」


 めり込んだ床から顔を抜き、ホーキンス・チョッパーは笑う。

 血の一滴も出ていない。貼りつけた笑みが歪んでいた。

 そして、ハイセを見て──……一瞬で、目が血走った。


「───なっ」


 ホーキンス・チョッパーは見た。

 流れるような銀髪。女神の如きスタイル。そして戦神のように佇む少女。

 サーシャがいた。

 サーシャを見て、ホーキンス・チョッパーは欲情しかけた。


「な、なんだ、あの女神は……!!」


 彼は、これまで何人もの女性を愛用の鋏で『切り』、『解体』し、『喰らって』きた。強き肉、美しき肉は絶品であり、ホーキンス・チョッパーの生き甲斐だ。

 そして───目の前に現れたのは、ハイセを凌ぐ極上肉。


「お、オォォ……」


 ヨダレが止まらない。下半身をモジモジさせ、両手に持つ鋏をジョキジョキジョキと執拗に動かし音を立てる。

 その様子に、サーシャが気付いた……サーシャとホーキンス・チョッパーの目が合った瞬間、ゾクリと背筋が震えあがる。

 ホーキンス・チョッパーの標的が変わった。


「く、ォホホ……!! 食わせてェェェ!!」

「なっ……」


 ハイセ、ウルも同時に反応──……だが、ハイセの背後から現れたシャーレイが、氷の剣をハイセに向かって振り下ろす。

 ハイセは自動拳銃の銃身で受け、舌打ちする。

 ウルは好機とばかりにロビンへ言う。


「ロビン、離脱する!!」

「え、え」

「目的は達成した。あとはここから離脱するだけだ!!」


 ガキン!! と、サーシャの剣とホーキンス・チョッパーの鋏が正面からぶつかり合う。


「くっ、なんだ貴様は……!!」

「素晴らしい!! 素晴らしい!! あなたは最高の肉!! くはははっ!! ぜひ、味わいたい!!」

「サーシャ!! ……ごめんお兄ちゃん、あたしサーシャを援護する!!」


 ロビンは矢を番え、最適な狙撃位置を探すためにウルの傍から離れた。


「……ああ、いつまでもガキじゃないもんなぁ。ってわけで──……オレは離脱するぜ」


 そう言い、ウルは離脱。

 セイナを連れ、ウルは『黒の砦』から脱出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 プレセアは、ラスラパンネと剣戟を繰り広げていた。

 互いに、姿は透明。

 しかし同じ『精霊使役』の能力を持つゆえに、互いの姿が見えている状態だ。

 武器も同じ、剣と弓とロッドに変形する『剣弓(ソードアロー)』だ。だが、モデルが違うのか形状は違う。

 プレセアのはロングソードなのに対し、ラスラパンネの剣は双剣。合体し、弓に変形する。

 ラスラパンネの剣を弾き、プレセアは距離を取る。そして、一瞬で弓に変形させ、矢を番え放つ──……同じことを、ラスラパンネも繰り出すと、空中で矢と矢がぶつかり落ちた。


「やるじゃない。お姫様」

「…………」

「ふふ、無口なのねぇ」

「あなた、喋りすぎ……ダークエルフ」


 ダークエルフ。

 エルフ族の特徴は、エメラルドグリーンの髪、瞳、そして華奢な身体と長い耳だ。

 五大クランの一つ『神聖大樹』のアイビスは白髪だが、エルダーエルフという始祖のエルフであるが故の白髪。

 だが、ダークエルフは違う。

 ダークエルフは、『森に嫌われたエルフ』と言われ、魂が濁ることでダークエルフに落ちると言われていた。

 プレセアは知らないが、この世界のどこかにダークエルフの国もある、らしい。

 ラスラパンネは言う。


「『(ダーク)』」


 精霊が双剣に纏わりつき、刀身が黒くなる。

 対するプレセアは、弓を剣にして刀身を撫でる。


「『(アーク)』」


 刀身が輝く。そして、ラスラパンネと同時に踏み込み、剣と剣がぶつかった。

 光と闇が、互いの力を打ち消し合うことで、弾き合う力が発生する。

 そして、互いの剣が弾かれた。


「やるわね。道具を上手く使いこなしている」

「……道具?」

「精霊のことよ。『精霊使役』は、精霊という道具をいかに上手く使えるか、そこに全てがかかっている」

「…………」

「あら、何か言いたそうね?」

「あなた、馬鹿ね」


 プレセアは剣を弓に変形させ、矢を番える。


「精霊は道具じゃない。私たちの能力は私たちの声を『精霊』に届けて、お願いする能力」

「違うわね。精霊は道具。能力は、精霊を利用するためのもの」


 ラスラパンネも矢を番える。そして、鏃が黒くなり、闇がまとわりつく。

 プレセアが使役するよりも濃い『闇』が、鏃を覆い尽くした。


「私の闇と、あなたの光。どちらが強いか勝負しましょう」

「……するまでもないわ」

「あら、諦める?」

「いいえ。私は……お願いするだけ」


 プレセアは、ラスラパンネを憐れむように微笑んだ。


「『(アグニ)』───……『(ルドラ)』」

「えっ」

「『融合(フリンジ)』……『炎嵐(テンペスト)』」

「なっ……」


 火と風。二つの力が矢に集まり、熱を持った竜巻が鏃に纏わりつく。


「ふ、二つの属性を合わせた!? そんな器用な真似を……!?」

「別に、大したことじゃないわ。私はただ、精霊にお願いしただけ」

「……小癪な!!」


 互いの矢が放たれ、衝突する。

 ラスラパンネの闇がプレセアの『炎嵐』を包み込む──……が、熱を持った竜巻が闇を掻き消し、ラスラパンネの矢を砕き、そのまま一直線に飛んだ。

 そして、ラスラパンネの胸に矢が突き刺さると、一気に燃え上がる。


「ギィィヤァァァァァァァァ──ッ!!」


 メラメラと、全身が燃え上がるラスラパンネ。

 そして、火が消えると、真っ黒焦げになったラスラパンネが崩れ落ちた。

 プレセアは、事切れたラスラパンネを眺めつつ、静かに言った。


「闇に身を染めたダークエルフは、見つけ次第狩る……エルフ族の掟よ。恨まないでね」


 そう言い、プレセアは一度だけ、ラスラパンネのために祈りを捧げるのだった。

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
この後はエクリプスに乗り込みやな
[良い点] 流石にここで敵対選ぶほどサーシャがアホではなかった [気になる点] ウルは火種撒くのが本当の仕事なのではと疑うレベルで全方位に不利益もたらしてるように見える
[気になる点] あーあ、持ち逃げしちゃったか ここは意地でも留まって着地点を探るべきだったのに 獲物の横取りというか強奪が容認されると冒険者の秩序が崩壊しかねないねぇ 更に銀の明星とハイセの間に遺恨…
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