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S級冒険者が歩む道~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~  作者: さとう
第十三章 四十人の大盗賊

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遅れてきたのは

  サーシャ、ロビン、ウルの三人は、『夢と希望と愛の楽園ファンタスティック・ファンタジア』から北にある、人間界屈指の危険域、最上級難易度ダンジョンの一つ『黒の砦』へ向かっていた。

 移動は、ウルが手配した馬車。御者はウルが勤め、御者席の両隣にはサーシャとロビンが座っている。

 ウルは、煙草を吸いながら言う。


「確認するぜ。これから確保するのは、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』所属の冒険者、ラスタナ子爵家令嬢、セイナだ。こいつと、ラスタナ子爵家次男のアルクが『四十人の大盗賊(アリババ)』の一員で間違いねぇ。アルクは二十二歳にしてS級冒険者。優秀だねえ」


 馬車は走る。

 その速度は、どう見ても急いでいた。


「アルクはともかく、セイナは必ず確保する。『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』の幹部であるセイナは必ず生かせとの命令だ。どうやら、セイナはクランの情報を不正に利用して『四十人の大盗賊(アリババ)』の役に立ててたようだ……クランとしては、責任を取らせたいだろうな」

「お兄ちゃん……急いでるのって、やっぱり」

「ああ。『闇の化身(ダークストーカー)』がすでに、奴らの根城へ向かった。しかも一人じゃねぇ・……『金剛の拳(ヘラクレス)』も一緒にいる」

「お兄ちゃんの情報網、どうなってるんだろ?」

「そりゃ秘密だ」


 サーシャは言う。


「ハイセが向かったのは、『四十人の大盗賊(アリババ)』の殲滅……」

「それしかないだろうぜ。SS級盗賊団の連中は、見つけ次第殺害してもいいってことになってる。まずいぜぇ? もし『闇の化身(ダークストーカー)』がセイナを殺せば、エクリプスが黙っちゃいねぇ。序列一位、序列二位が揉めるとなったら……考えただけでも恐ろしいぜ」


 S級冒険者序列二位『聖典魔卿(アヴェスター・ワン)』エクリプス・ゾロアスター。

 サーシャが知っているのは、女性ということ、プルメリア王国で魔法学園を経営する理事長であり、学園そのものをクランとしていること。

 序列二位。順位に興味はないが、自分やヒジリよりも上という格付けに、サーシャは不安を感じた。


「さぁてさぁて……間に合えばいいがなぁ」

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」

「さぁな。はぁぁ~……雇われ傭兵なんて、やっぱオレには合わないかもなぁ」


 そう言い、ウルは馬に鞭を入れた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ダンジョンに到着すると、ウルはアイテムボックスから弓を取り出した。

 サーシャ、ロビンも戦闘態勢。ロビンは言う。


「お兄ちゃんの弓、小さくない?」


 ウルの弓は、片手で持てるほど小さい。普通のショートボウよりもさらに小さい特注品だ。

 ウルは、弓をロビンに見せながら言う。


「ダンジョン用だ。アイテムボックスにはいろんな用途で使える弓がある。そういうお前は?」

「うぐ……あたしは、これだけ」


 ロビンは、いつも使っている愛用の弓を見せる。

 

「それも悪くねぇがな。ま、オレは恋人が多いってこった」

「変な言い回し。やっぱお兄ちゃんだね」

「……仲がいいな。ふふ」


 ロビンとウルのやり取りに、サーシャは少しだけ微笑んだ。

 ウルは苦笑し、サーシャに言う。


「サーシャちゃんよ、最優先はセイナの確保だ。最低でも、生かしておけ」

「ああ、わかった」

「ね、お兄ちゃん。『黒の砦』だっけ……ここのどこにいるかわかるの?」


 ウルは自信満々に、自分の胸を叩く。


「こう見えて、探し物は大得意。S級冒険者最高の狩人であるオレに任せておきな」


 三人は、『黒の砦』に向かって歩き出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 何が起きているのか───……セイナは、荒くなった呼吸を整えるの精一杯だった。


「セイナ、おいセイナ!!」

「っ!!」


 兄であるアルクが、セイナの肩を叩く。

 仲間であるサーズ、ウルフスも近くまで来た。


「お、お兄ちゃん……」

「どうだ、戦えるか!?」

「う、うん」

 

 真っ青な顔で言うが、セイナはとても戦闘なんてできない。

 セイナの能力は『発信地点(ナビゲーション)』だ。マーキングした物の位置を知ることが可能で、普通はオークションに出され落札されたお宝などにマーキングしたりするのが普通の使い方だ。

 学園では、能力より事務処理の速さに目を付けられ、会計士として役立っている。

 今、目の前で起きている『戦い』には、ついていけなかった。


「ドララァァ!!」


 拳を繰り出すヒジリ。そして、その拳を右腕の表皮だけで防御するマッシモリッチ。

 マッシモリッチと戦っている間も、『四十人の大盗賊(アリババ)』の構成員たちはヒジリに襲い掛かる……だがヒジリは、狂気を孕んだ笑みを浮かべ、向かってくる構成員たちを殴り殺した。

 そう、殴り殺した。

 四肢を覆うオリハルコン製の具足には、鋭利な刃物が付与されている。それで顔面や体を殴られ、肉が飛び散り臓物が破壊されていた。

 どういう嗅覚なのか……ヒジリは最初に、『聖女』の能力を持つ少女の首を掴み、容赦なくへし折った。おかげで、回復ができず死体の山が築かれていく。

 対抗できているのは、マッシモリッチだけだろう。

 おそらく、兄であるアルクたちでは太刀打ちできない。いかにカーリープーランの強化があってもだ。


「お、お兄ちゃん……ど、どうしよう」

「どうしようもなにも、戦うしかないだろ。サーズ、ウルフス、いけるか」

「……気乗りしないけどね」

「オレはイケルぜ!!」

「よし……セイナ、お前は下がってろ。行くぜ、サーズ、ウルフス」


 狙うのは、ヒジリ。

 サーズはナイフを抜き、ウルフスは拳を合わせ、アルクが剣を抜く。


「シャァ!! まずはオレが


 ウルフスが走り出した瞬間、ウルフスの足元が爆発───……ウルフスが吹きとび、地面を転がった。


「う、ウルフス!?」

「う、っぐぁ、ォォォォォォッ!?」


 両足が膝下から吹き飛び、右腕が肘から消失。腹から内臓が零れ落ち、白目を剥いて吐血していた。


「う、ウルフス!! ウルフス!!」

「ォ、ぉ……」


 生きている。

 獣人の生命力のおかげだろう。

 アルク、セイナは動けない。すると、サーズが翼を動かし飛んだ。


「どうやら、地面を爆破させる能力だね。だったら───……」


 サーズが飛ぶ。

 そして、アルクに言う。


「アルク、セイナ、援護を」


 次の瞬間、ハイセのガトリング砲が火を噴き、サーズの翼が穴だらけになった。

 翼だけじゃない。腕、足、腹、胸にも弾丸が突き刺さり、ほとんど身体が引きちぎられていた。


「さ、サーズ……」


 アルクの声はしぼんでいく……サーズは頭部に銃弾を受け、すでに事切れていた。

 しかも……ガトリングはサーズを狙ったのではない。ハイセと戦うシャーレイ、ホーキンスを狙って放たれていた流れ弾を喰らったのだ。


「あ、あ……」

「動くな、セイナ。いいか、動くな!!」


 アルクは歯を食いしばる。

 条件は不明だが、動くと爆破する地面。他のメンバーは動いている者も多いことから、何か条件があるはず……と、アルクは考える。

 セイナは、震えていた。

 涙を流し、震え、足元にはいつの間にか水溜り……粗相していた。

 いくら『四十人の大盗賊(アリババ)』の正規メンバーとはいえ、セイナは荒事とは無縁の盗賊だった。盗みたいものにマーキングし、ウルフスやサーズ、アルクが盗む……小悪党のようなものだ。

 それが、こんな。


「う、ウルフス……」

 

 ウルフスは、すでに死んでいた。

 サーズも、虚ろな目をしたまま死んでいる。

 アルクは、地雷の恐怖で動けない。

 すると、シャーレイがハイセの蹴りをモロに食らい、物凄い勢いで壁に吹き飛び叩きつけられた。

 そして、鋏を振るうホーキンスは、攻撃を軽々と躱され、カウンターの要領で顔面に拳を食らい床に叩きつけられる。

 

「…………」


 そして───ハイセの目が、セイナに向いた。


「ひっ……」


 ハイセは大型拳銃を手に持ち、近づいてきた。

 アルクが動きかける。だが、ハイセが睨むとビクッと震え、動けない。

 動けば爆死。ハイセの目が語っていた。

 慈悲はない。ハイセは大型拳銃をセイナに向け───……引金を引いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 死んだ。

 セイナは目を閉じ、痛みを覚悟し、死への恐怖から再び粗相した。今度は尿だけじゃない、別の物まで粗相してしまったようだ。

 が───……痛みが来ない。


「…………ぇ」


 ゆっくりと、目を開ける。

 そこで見たのは───……輝くような、銀色の髪。


「…………どういうつもりだ」


 ハイセの声。

 セイナの前に立っていたのは、S級冒険者序列四位『銀の戦乙女(ブリュンヒルデ)』サーシャだった。

 サーシャは剣を盾のように構え、大型拳銃の銃弾からセイナを守ったのだ。


「何があったのか、事態はまるで飲み込めない。だが……いまこの子を死なせるわけにはいかない」


 そう言って、サーシャはハイセの前に立った。

 ハイセは銃を向けたまま、サーシャは剣を構えたまま。

 

「……お前、こいつが『四十人の大盗賊(アリババ)』だってわかってんのか?」

「わかっている。だが、彼女は『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』の幹部でもある。ハイセ、お前と『四十人の大盗賊(アリババ)』の間に何があったのか知らないが、この子を殺したら、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』が出てくるぞ」

「だからどうした。教えてやる……こいつらは、シムーンを攫って喰おうとしてんだ」

「……なっ‼」


 サーシャは揺らいだ。が……次の瞬間、ウルが現れてセイナをローブで包み、自分のアイテムボックスに収納した。


「悪いな『闇の化身(ダークストーカー)』……この子を殺させるわけにはいかんのよ。お前さんも、序列二位のエクリプスを怒らせたくねぇだろ?」

「…………」

「この子は、『銀の明星シルヴァー・ヴェスペリア』に引き渡す。とりあえず、この超希少な生物専用のアイテムボックスに入れておけば、な」

「…………お前ら」


 ハイセは、大型拳銃をウルに向けた。


「俺を怒らせるのと、エクリプスとかいうヤツを怒らせるの……どっちがマシか、教えてやるよ」

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〇S級冒険者が歩む道 追放された少年は真の能力『武器マスター』で世界最強に至る 2巻
レーベル:GAコミック
著者:カネツキマサト
原著:さとう
その他:ひたきゆう
発売日:2025年 10月 11日
定価 748円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
やれやれ!ヒャッハー
いけぇー!ついでにサーシャを殺せぇー!(曇らせ過激派)
[一言] 序列一位に向かって『序列二位を怒らせたくねえだろ』って警告を装った挑発かな 序列二位さんがハイセを嫌ってて対立上等って姿勢ならともかく、普通は序列二位の依頼人の方に報告&警告すべきでは …
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